主体的学習を深め思考力を刺激する授業をめざして

主体的学習を深め思考力を刺激する授業をめざして
沖縄県立那覇高等学校
教諭 上里 博美(英語科)
概要:本稿は、生徒の主体的学習態度の育成を目指し、アクティブラーニング(AL)型授業を英語コ
ミュニケーションⅡの本文理解に取り入れた試みを記したものである。英文をAL型で学ぶことにより、
生徒の授業に取り組む姿勢に好ましい変化が見られ、今後の授業改革に向け手ごたえが感じられた。更
なる成果を得るためには、AL型授業の基礎となっている理論を理解し、ファシリテイターとしての教
師の役割を学び、綿密な授業計画で実践を重ねることで達成できると確信した。
キーワードAL型授業、英語コミュニケーションⅡ、本文内容理解、教師の役割
単元名:第一学習社 "Perspective English Communication II"の
Lesson 3 Eating Up the Sea
Lesson 5 Amazing Tool users
Lesson 6 Haiti's Mother Teresa
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はじめに
1.受講の理由
平成25年度から年次進行でスタートした新高等学校学習指導要領の実施にともない、教科「英語」
は、英語で授業を行うということを基本にし、生徒の英語による言語活動が中心となった授業を展開
することが要求された。私の勤務する那覇高校英語科では、その年度の1年生に対し5名の教師チー
ムで研修を重ね、
“英語コミュニケーションⅠ”で、英語での授業を展開した。ペアーワークやグル
ープワークを取り入れ、80パーセント程度は英語で授業するということができた。しかし、生徒の
英語による言語活動に関しては、なかなか定着せず課題が残った。
その生徒達が2年生に進級し、平成26年度も引き続き“英語コミュニケーションⅡ”で英語での
授業を展開していたが、教科書の英語の難度が増すにつれ授業での生徒の活動に停滞が見られ始めた。
それまでの授業形態は、生徒が内容解釈の問題に取り組み、教師はその解答をしながら易しい英語で
説明をするというパターンで行っていた。しかし、内容が生徒にとって難しくなると、理解できない
生徒の割合が増え、
「難しい」
「解らない」を繰り返し、ペアーワークやグループワークにも影響が現
れ、マンネリ化が見えはじめた。
現状を打破し、どうしたら生徒の理解を深め、思考力を刺激するような授業を展開できるのだろうか
と、授業改善に向け2年生教師チームで検討を重ねた。その結果、2学期はグループ学習に取り組み
グループで要約の発表という形態で取り組もうという結論に到った。
2学期の最初のレッスン教材のワークシート作成を終えた頃、本校職員研修で小林昭文先生の「ア
クティブラーニング(AL)型授業」に出会った。2学期の授業に向け、刺激的で学ぶことの多い、
タイミングの良いで出会いであった。
「AL型授業」は、グループの中で自由に話し合い、尋ね合い、問答することで生徒が主体的に学
習に関わり、理解の早い生徒にも遅い生徒にも何かを「学んだ」というある程度の達成感を得ている
という点に魅力を感じた。さらに、確認テストにより、学びの達成度を生徒本人が確認し、リフレク
ションカードで授業を振り返ることで自分の学習態度を客観的に見直し、次の学習に繋げることがで
きるということに納得した。
2.本講座受講にあたって達成したい目標
「AL型授業」を導入するにあたり、グループ学習を効果的に行わせる諸々のスキルを習得するこ
とが目標である。これまで生徒にグループ学習を行わせる機会はあったが、1時間程度の問題演習や
プロジェクト型の授業形態で行ったもので、継続して教科書の内容を行うことはなかった。今回タイ
ミング良く「キャリア教育プロフェショナル教員養成」講座を受講する機会に恵まれたので、そのノ
ウハウをしっかり学びたいと考えている。
まず最初に、授業のプラニング仕方や授業時間の使い方のこつ等を得たいと思う。教科によって
色々配慮する点があると思うが、50分という授業の中で、自発的学びを促し、確認テストで達成感
を感じ、リフレクションカードの記入で授業を振り返るというサイクルを自分の授業でも徹底したい。
次に、生徒の学びを促進させる教師としての役割、生徒やグループへの介入の仕方、声かけの方法
などを具体的に学びたい。例えば、学習に参加せずおしゃべりでグループに迷惑をかける生徒、ある
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いは無気力でグループ学習でも学習に取り組まない生徒は必ずいると思われるのだが、彼らへ学びを
促す言葉のかけ方や対応、接し方などである。さらに、グループ学習が回を重ねるにつけ慣れが生じ、
学習に関係のないおしゃべりが出てくると思われるが、それらに対してどう効果的に対応するのかな
どである。また、理解するのに時間の必要な生徒によっては一人でじっくり考え、周りの生徒と尋ね
合う頃には時間がない等の場合は、どのようしたら効果的に時間内での学びに繋がるのかなどである。
「AL型授業」では、教師は教えるというよりも、ファシリテイターとしての役目が大切だと理解し
ているが、その役目をいかに効果的に発揮できるのかは、授業の成功の鍵を担っていると思う。
その他、いかに効果的にさらっと、しかし内容濃くポイントの説明をするのかや教材の作り方など
学びたいものは多数ある。講座の受講と実践を平行させ体験も伴いながら達成して行こうと考えてい
る。
3.1日目講座を受講して気づいたこと
小林先生の「授業そのものがキャリア教育になる」という言葉にハッとさせられた。
実は、この職員研修の数日前に教育相談の研修を受講しており、その研修の中で、「生徒の学校生活
の80パーセントは授業、授業の中で問題を抱えている生徒への対策を図らなければ、問題行動は解
決できない」という言葉にハッとしたからである。義務教育での不登校やいじめなどの問題解決は、
全ての生徒の授業を受ける権利を保障することから始まる。つまり、生徒が授業内容を理解できるこ
とが重要であるということであった。また、高校での不登校問題は、結局、キャリア教育、つまり社
会で働き自立して生きていけるかに繋がる、という内容に胸にストーンと入ってくる物があった。
生徒が自分たちで考え、話し合い、理解を深め、学んでいく、「AL型授業」の授業形態に手応え
を感じた。2学期からグループ学習を取り入れようとしていた矢先に、「AL型授業」に出会え、小
林先生の講義を受けられたことに感謝した。
学校での職員研修で、高校卒業以来かと思われる実際の物理の授業をうけ、内容を自分なりに理解
し問題を解けたこと、そして確認テストで100点を取れたことで、
「AL型授業」の意義を納得し
た。
実際にグループ学習を導入するにあたって具体的に考えると色々な質問が生まれた。その中で質問
できた、
「グループの編成の仕方」や「グループの中にリーダー的存在を配置するのか」という質問
に対しての小林先生の回答に説得力があった。
人は人との対話を通して誉められることで、自己肯定感を得ていくのだという。学びの過程にグル
ープ学習を導入することにより、教科内容の学びと共に人生に対する前向きな姿勢も生徒が学べたら
と願う。
実践から
1.実践する授業プラン作成の背景
私の目標とする授業は、生徒が積極的に参加することにより彼らの思考力が刺激され、また思考力
を働かせることにより、生徒自身が学びを発見、体験する授業である。そのような授業をできる教師
を目指している。
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「AL型授業」を導入するのにあたり、現在考えている授業のイメージは、①生徒がお互いに学び
合いを促進できる、②居眠りしている生徒がいない、③グループ内の生徒同士の会話が活発に行われ
ている、④やるべき事をしっかり終える事ができる、⑤生徒が学びの達成感を得ることができるなど
である。
しかし、これまでの授業は、本文内容に関する質問に生徒が各自で答え、私、教師が正解を伝え
ながら内容解説を加えるという形式であった。このような形態では、英語で授業をするにあたり、音
読やペアーワーク以外の活動では、内容を理解できない生徒が注意力散漫となりボーとしたり、居眠
りしたりと活気のない授業となっていった。
目標とする授業とのギャップを縮めるには、予定していたグループ学習に「AL型授業」の要素
を取り入れた新しい形態の授業に思い切って挑戦すること、そしてその抜本的な授業改革を、2年生
担当の先生方に呼びかけチームとなって試みることが切っ掛けになると考える。
具体的な授業計画を考えるにあたり、①各パート毎の時間配分、1時間毎の授業の流れと時間配
分を決める、②各グループの人数は4~5名とし、メンバーは各パート毎に替える、③7DVN
は全員で行い、7DVN~ をグループ学習で行う、④7DVNの要約は各個人で行う、⑤レッス
ンの最後には、自由に作らせたグループ(人数は制限)で、英語要約の発表をポスターセッション形
式で行う、という授業を展開することになった。計画実行に際し大きな課題は、中間考査前にレッス
ンを終えなければならないという時間の窮屈さであった。また、クラスの雰囲気によっては、グルー
プ学習が上手く行えるのかという不安も気になった。
「AL型授業」を取り入れた新しい形態の授業実践は、2学期開始と同時にスタートした。
2.実践の概要
生徒には、2学期の授業の最初の時間に、レッスン3は新しい形態の授業で行うことを伝えた。そ
して、その授業の方法と最終目的を整理したプリントを配布し、1時間使い詳細に説明した。また、
グループ学習の意義と目的も強調し説明を加えた。ワークシートは、「AL型授業」に出会う前に作
成したものだが、グループ学習を想定して作成してあったものなのでそのまま使用した。
(5ページ、
A参照)
時間配分は、パート1と4の内容理解にそれぞれ2時間、パート2と3の内容理解にそれぞれ1.
5時間を割り当て、英語要約発表の準備に2時間、そしてポスターセッション形式での発表に2時間
と見通しを立てた。しかし、実際にはその予定した時間でこなせない 7DVNを次の時間行うなどだん
だん予定より遅れてしまった。
これまでの授業と比べ、グループ学習は生徒に好評であった。特に初めの頃は、生徒にとっても新
鮮さがあり、また教材自体もそのレッスンの導入的な内容で読み易さもあり、大変好評であった。リ
フレクションカードのコメントも前向きなものが多かった。ところが後半のパートになると内容の難
しさもあり、時間がほしい、進みが速いというコメントも出てきた。
新しい形態の授業ということもあり、毎日が慌ただしく果たしてポスターセッションまで辿り着け
るのかとうストレスも感じたが、生徒の様子を見ると学習の手応えを感じている生徒も多く前に進む
パワーとなった。最初の実践を通して、課題と良かった点を次のまとめ、2回目の実践としてその反
省を活かし、次のレッスンのワークシートを作成した。
(5ページ、B参照)
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課題:
①「AL型授業」のサイクルが徹底できず、やるべき予定の課題が次の時間に流れるなど、1時
間としての授業のケジメが付けられなかった。また、確認テストを各パート毎に行ったので、
「AL型授業」の特性が生かせなかった。
②パートが進む毎に内容が難しくなると、多くの生徒がグループ学習の時間が短いとリフレクシ
ョンカードに書いていた。
③パート1では、確認テストで100点の生徒も多かったが、後半の難しいパートでは、その数
が減ったのが気になった。確認テストの問題の出し方も検討する必要がある。また、ここまで
は理解すべきというこだわりを捨て、もっと柔軟に問題作成すべきか自問した。
④時間との戦いで、結局、要約は授業内で取り組む時間がなく、宿題となった場合が多々あった。
⑤授業の活動の中で、内容理解に配分する時間が多く、単語練習、音読や生徒間の言語活動の時
間が少なくなった。
⑥同じクラスで2回も出張のため授業時間が自習になるということがあり、新しい授業形態を定
着させるのに手こずった。
⑦生徒のグループでの活動が、構成メンバーによって差があった。比較的仲の良いメンバーが集
まると対話が弾んでいたが、そうでない場合は、しゃべる、質問する、説明するが弾まなかっ
た。また、グループを超えて質問する、対話するまで積極的に生徒が動かなかった。
⑧グループ学習に入ると、初めのうちは個々人で問題に対応する静かな時間が流れ、対話が始ま
ったかと思うともう制限時間に達しているということも多々あった。
⑨ファシテイターとしての教師の役目を十分に果たすことができてない。また、新しい試みに対
する緊張やあせりもあり、落ち着いて授業をコントロールできたか疑問が残った。
⑩グループ学習に慣れてくると、中にはただのおしゃべりをする生徒が現れてきた。
良かった点:
①ボーとする生徒や居眠りをする生徒がほとんど居なかった。
②グループ学習に前向きに取り組む生徒が多く、解りやすかった、いつもの授業より理解が深ま
った、教えてくれてより解ったなどのコメントが多かった。また、グループ内での積極的な“し
ゃべり”ができなかった場合には次は頑張るとかのコメントもあった。
③この課の目標としていた要約のポスターセッションでの発表を全員が済ませて授業を終えら
れた、中には、教師が期待していた以上の素晴らしいパフォーマンスを行い、感動をもらった。
④初めての試みであったが、2年生チームとして団結し、同じ姿勢で取り組み、全員が予定通り
授業を終えられた。
⑤私個人としては、この挑戦から多くのことを学び、また生徒の新しい形態の授業に対する前向
きな姿勢 からパワーを得られた。
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参照
A:最初の実践のワークシートの見本
表
裏
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B:2回目実践予定のワークシートの見本
表
裏
- 28 − 28 −
成果と課題
1.振り返りのプロセス
自分の一こま(50分)の授業を振り返るにあたって、授業の中でこなすべき内容を整理したい。
まず、教科書以外に学年共通して取り組んでいる語彙習得のための教材をこなすノルマがある。毎
授業時間の初頭で5分から10分程度時間を使い、語彙の暗記と発音練習に当てている。また、週
に一度は、その教材の語彙テストを行い生徒採点をさせている。これらの語彙指導のため10分ほ
どの時間が割かれることになり、正味40分しか教科書内容は扱えない状況である。
次に、教科書の内容では、ひとつのレッスンのひとつのパートを終えるのに2.5~3授業時間
かけている。それらの授業の中では、語彙指導や本文の音読、読解、リスニング、ライティングと
多様な言語スキルを養うことを目標に、様々な活動を組み合わせて授業を展開している。各パート
を終えるのに理解すべき内容やスキル習得の段階があり、それらの段階(ワークシートでは 7DVN
としている)を一つひとつこなしながら授業を進めている。
では、実際の授業、教科書の1パートを扱う流れを振り返ると、次のようになる。
1時間目
①予習のチェックと予習で上手く答えられてない難しめの語と文の解説〈10分〉
②7DVN:単語、熟語の発音練習と意味のチェック、本文の音読練習〈15分)
③7DVN3KUDVH+XQW:理解の助けとなる句を探す〈5分)
④7DVN4XHVWLRQV:英語の問題に英語で答える〈10分)→ AL型で行う 2時間目
⑤語彙の復習と本文の音読練習 〈5~10分〉
⑥7DVN4XHVWLRQV:英問英答を終え、答えをチェックする〈15分)→ AL型で行う
⑦7DVN での答を利用して、各パラグラフを要約して確認する 〈10~15分〉
⑧確認テスト 〈5分〉 → AL型を取り入れて行う 3時間目
⑨本文の復習 〈10分〉
⑩7DVN~ :要約とリスニングの問題に答える 〈10分)
⑪リフレクションカード記入 〈5分程度〉 → AL型を取り入れて行う ⑫7DVN:そのパートに関する感想や意見を書く 〈5分〉
⑬7DVN:文法事項がある場合はここで 7DVN として文法理解を行う 〈10分〉
様々な活動を通して行う語学授業の形態から、「AL型」で行う活動に適しているのは本文の内容
理解をする活動だと考え、その 7DVN を行う箇所を「AL型」で行っている。授業全体を「AL型」
にするのは無理があるので、部分的に「AL型」を取り入れ授業での活動に変化を与え、生徒一人
ひとりが学び気づくという体験ができるようにと願っている。
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2.振り返りの中で得た自分なりの気づき
このように具体的に授業を振り返ってみると、次の2点で果たして「AL型」授業の特性が活かさ
れているのか疑問になった。まず一点目として、
「AL型」授業が2授業時間にまたがっており、生
徒が主体的に学び、確認テストで達成感を感じ、リフレクションカードで振り返るという「AL型」
授業のサイクルが適切に活かされてないと感じた。二点目に、本文内容の理解を行う 7DVN を「A
L型」でこなすのに“生徒が主体的な学習に取り組める環境が与えられてない”のではないかと気に
なった。つまり、7DVN までの語彙、音読、フレイズだけでは、生徒が本文を理解する充分な情報に
なってないのではないかと感じた。
その他、計画した時間配分通りに「AL型」で行う 7DVN のグループ活動が進まず、時間に追わ
れ慌ただしく生徒を促す場合が多々ある。その慌ただしさ感を解消したいとは常に考えていることで
ある。少しでも時間的余裕を生み出し、
「AL型」をじっくり取り入れることのできる授業形態を創
り出し、生徒が達成感を得られる授業としたいという思いは強い。
3.今後の課題
実際に授業をしていると、パート毎のまとまりで授業の流れを扱うので、一点目の「AL型」が2
授業時間にまたがっていることにも違和感を感じることなく行えていたが、より大きな「AL型」効
果を引き出すために改善する価値は大きいと思う。そうすることにより生徒が主体的な学習効果が得
られれば本望である。その改善をするにあたり、二点目の主体的学習に取り組める情報を与えるため
の改善と併せて取り組み、1時間全体が「AL型」授業という時間を創り出したい。
そのためには、2時間目に行う 7DVN の後の要約をもっと大まかな要約に換え1時間目に行い、
その空いた時間を 7DVN の「AL型」に充て、2時間目は「AL型」授業で行い、確認テスト、リフ
レクションカードの記入までまかなえるようにしたい。要約を本文理解の前に持ってくることで、生
徒は本文の大まかな内容を理解することができると期待し、そうすることにより本文理解の情報を得
ることができ二点目の改善に繋がると考える。
これまで「AL型」を取り入れて二つのレッスンを終えたが、計画した時間配分で生徒が「AL型」
活動を終えられない事は、なかなか改善されない課題である。問題点として、①他の活動の時間短縮
の工夫、②グループ内で生徒同士が遠慮し合い、グループでの協力、貢献ができない、③深い気づき
を生む教師の質問(働きかけ)ができてない等が挙げられると考える。①の問題点は、すくにでも取
り組めると思うが、②、③の問題点は多くの体験を積みながらもっと時間をかけ「AL型」を学び、
じっくり取り組んでいかなければならない大きな課題だと思う。
今後の展望
1.アクディブラーニング授業における教師の役割
この日の研修は、県外への生徒引率と重なり参加できなかった。最も学びたい内容のひとつであっ
たが残念であった。このレポートは、私自身の「AL」型授業実践の中で教師として上手くできたら
なと日頃感じていることをまとめ、今後に繋げたいとの視点でまとめた。
小林先生のアクティブラーニング型授業の研修を初めて受講した時、先生の落ち着いた穏やかな話
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し方、声の調子に引き込まれた。グループ活動をしている時、先生の声かけ、質問に促され思わずグ
ループ内を見渡し、グループ学習の話し合いに積極的に関わりグループ全員が100点を取れるよう
に協力した。 この行動の変容は、私だけでなくグループ内の先生方にも同じように起こった。私はこの変化を受
講生が教師だからかなと思った。しかし、小林先生のお話では、生徒も同様だという。確かに、「A
L型」授業実践を進める中で声かけを質問ですることにより、生徒がグループ学習へ能動的に関わる
様子が、私の授業でもわずかながら見られた。このように生徒が自分自身を振り返る機会をつくり、
自分のやるべき事に戻り学習を進める変容を生み出す声かけ、質問のやり方が、アクティブラーニン
グ授業を行う教師の役割の一つとして大切だと感じている。
「AL型」授業における教師の役割は多々あるが、私自身が研修を受けながら「AL型」授業実践
を行っていく中で上手く機能せず手こずっている場面から、教師としての役割を上手く果たし、自分
なりに納得のいく「AL型」授業を行いたいと痛切に感じているのは次の3点である。
1)時間配分:
「AL型」授業の形式(グループ演習-確認テスト-リフレクションカード)を
取り入れた時間を50分の授業に確保したい。グループで演習問題に取り組み、一人ひとり
が何か「学んだ」という達成感を得て、確認テストで達成感を確認し、リフレクションカー
ドで達成感を深め、学習態度を見直し次の授業に繋げるというサイクルを確保し、時間配分
通りに授業を進められる事は、教師の役割の重要な部分だと強く思う。
2)適切な介入:グループ学習の中で話し合いが活発に行われ、さらに時間配分内で活動を終え
るようにどのようにグループに教師が関わるか、声かけや質問によって生徒が振り返り、気
づきを促し、行動に導く適切な介入は、
「AL型」授業の要だと感じている。その要である
適切な介入は、
「AL型」授業を進める教師の重要な役割だと考えている。
3)カンフォートゾーン(安心安全の場)づくり:生徒が学ぶのは、カンフォートゾーン(安心
安全な場)であると小林先生はおっしゃる。さらに、カンフォートゾーン作りとその維持は
教師の責任であるとも。
「AL型」授業を実践している中で、自分自身が教師の役割を充分
に果たせないため、戸惑い、焦りやもどかしさを感じ、カンフォートゾーン作りや維持が機
能してない不安がある。適切な介入を含めて是非習得したい教師の役割である。
2.自分の授業への活用方針
英語の授業の中では、発音練習、音読、リスニング、英作文等、色々な活動(7DVN)を行いながら
授業を行っていくのだが、それらの時間配分を良く考え、時間通りに終えられるようシュミレイショ
ンを行い、内容理解で「AL型」授業を行うまとまりのある時間を確保することを徹底したい。板書
事項は休み時間から行い(将来的には、パワーポイントの効果的利用を導入したい)
、生徒用へはプ
リントやノートに張れるようにする等の工夫をする。そして、「AL型」授業をするたびに「ルール
と目標の提示」を行い、生徒とそれらを共有することを徹底したい。生徒と教師がそれらを共有し、
お互い目標達成に協力するという雰囲気を創れるようにしたい。生徒のグループ活動の間は、今でも
行っているつもりだが、全体をリードすることを徹底して行う。介入に関しては、全体、グループ、
個人を観察し適切に介入することや質問で生徒に声かけすることは上手くできてない部分なので、授
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業後に軽く記録に残し考察できるようにし、体験を積み重ね今後に生かせるようにしたい。小林先生
の資料でも、問題演習時間の介入は、生徒に「気づき」を促し、
「行動変容」を期待しているので、
最も慎重に行われる必要があると記されている。実践を通し、充分に役割が果たせるようにしたい部
分である。確認テストの相互採点を徹底したい。時間に追われている場合など、つい自己採点で済ま
せていることもあるので、誉められるという機会を多く体験させるためにも、相互採点でそのチャン
スを創れるようにしたい。リフレクションカードの書く時間を充分に確保し、具体的に文章でかける
ようにする。授業をしていて自分自身でも気づく時があるのだが、必要以上に大きな声で話をしてい
るなと感じる時がある。教師の声が大きいと生徒のおしゃべりの声も大きくなるような気がする。声
量を意識しながら授業に臨み生徒の安全・安心の場作りを心がけたい。
3.実践の際に想定される課題
これまで、3レッスンほどを「AL型」授業で行って来たが、抱えている問題-時間配分や生徒が
時間内に演習問題を終えること等-が解決できないでいる。本文内容の難度が高くなってきただけに、
生徒の理解を深めるために、何らかの本文内容説明を効率的に行うことを考えた方が良いのかもしれ
ない。すると、さらに説明の時間を確保しなければならないが、対処しなければならない課題だと思
う。 学習態度に関して個人介入の際、授業外で一対一で個別に話したい生徒がいる場合、時によっては複
数いたりする場合がある。しかし、生徒も私も放課後忙しい場合が多々あり、休み時間は生徒が忙し
く、なかなか話をする時間が取れず面談ができない場合がある。また、生徒によっては面談を頻繁に
持たないと学習を持続できないというタイプの生徒もおり、面談の時間確保も課題となることがある。
大変幸運なことに、学年を担当している5名の先生でチームとして、教材を共有し進度も合わせて
ほぼ同じように「AL型」授業を進める機会に恵まれた。しかし、授業を見学し合って授業の細かい
点まで話合うという点までは行えてない。本来ならば、教師の学びのためにもお互いの授業で学び合
うという機会が作れたら良いのだが、チームとして「AL型」授業に取り組むには、今後更なるステ
ップアップのために次の取り組みをチームで検討するのが望ましいと思う。
総括
1.総括
言語を扱う英語という教科の特質から、授業の中で「AL型」を活用できるのは、英文理解の箇所
でだと判断し、
「キャリア教育プロフェッショナル教員養成講座」を受講しながら、本文理解の部分
に「AL型」を取り入れた授業展開で3つのレッスンを終えた。
「AL型」授業形態に手応えを感じ、
自己の授業改善に活かしたいと願ったからである。多くの課題はあるが、いくらかの成果も得られた。
一番大きな成果は、居眠りや注意散漫に陥る生徒がいなくなったということである。また、グループ
で発表する等の難度の高い課題に対し、生徒が前向きに取り組めたのも成果の一つであると思う。今
後授業実践を積み重ねることにより、更なる成果が得られることを期待したい。
総括では、これからの展望をふまえ、講座と授業実践を通して学び感じた事を、①理念・理論の理
解、②教師の介入、③教科の特徴、の視点からまとめたい。
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直感的に、
「AL型」授業の意義-社会で自立できる生徒を育てる-を理解、納得し、
「AL型」授
業を行うスキルを取得したいと目標をたて本講座を受講した。講座を受講するごとに新しい発見に出
会いその奥深さにうなずいた。同時に、浅はかな理解を正してくれた。その一つが、
「AL型」を始
める10のコツの一つ“理念・理論の理解”の大切さである。「AL型」授業の成果を得ることに気
が急いて、スキル面に注意が向けられていたが、講座中に触れる理念・理論について自主的に学ぶ努
力をすべきであった。理念や理論につて理解を深めることは、「AL型」授業を行う教師の行動基盤
を固め、授業に説得力が加わると思うからである。どんなに理想的な授業を真似ても、やはり独自の
環境に即した授業を創り出すことが必要である。理念や理論の理解は、そのための様々な問題に対応
する応用力や創造力を備えてくれると考える。そして、理念・理論に基づいた指導力(スキル)は、
実践を平行し授業分析と助言を得ることにより身に付けられるのであろう。
「AL型」授業について
理念・理論を深く学びたい。
次の目標は、ファシリテイターとして教師の役割を学ぶことであった。「AL型」授業の成功は、フ
ァシリテイターしての教師の介入機能によって大きく作用されると考える。叱咤激励、あめとむちの
指導を控え、講座で学んだ文言で質問をすることにより、わずかではあるが明らかに生徒の行動変容
を感じた。
“コンフォートゾーン(安全安心の場)で生徒は成長する”と小林先生は強調し、その意
義に納得するのだが、これまでの教師としてのこだわりが弊害となっていることもあり、また介入方
法が適切にできていないことから、常に不安要因であった。これからに向け是非教師の資質として高
めたい領域である。
英語の教科として、新学習指導要領に基づき、生徒の英語による言語活動を盛り込んで授業展開が求
められている。
「AL型」を取り入れてのグループ学習の中で、生徒同士が簡単な英語も使って質問
をし合う場面が創り出せないか、今後の大きな野望である。現状は、どうしても日本語で会話が行わ
れ英語で英語の授業を促進する立場としては、改善したい場面である。
以上、今後に向けての展望を記したが、最後に、アクティブラーニングリーダーコースでチームと
して励んだ教員仲間に感謝の言葉で締めくくりたい。教科を超えて意見交換をし、愛情のこもった助
言を頂き次への実践のパワーとなった。皆さんのサポートで多くを学びました、感謝の気持ちで一杯
です。
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