化学英語2:英語論文作成技法 (第1回)

化学英語2:英語論文作成技法
(第1回)
鈴木良尚
予定
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ガイダンス
英語で論文を書くということ
名詞の種類・冠詞
冠詞の例外的用法
和文の中の隠れた主語
単数・複数の区別
「∼と考えられる」「∼と思われる」の英語表現
能動態で書く!
現在完了形・過去形の区別
動詞の特徴・効果的変換
関係代名詞
否定表現
数学表現
語順
ガイダンス
成績評価基準
• 期末テスト→60%
• 毎回の小テスト→40%
総合成績=(加藤先生の授業での成績+鈴木の授業での成績)/2
ガイダンス
小テスト問題
英語で論文を書くということ
何故英語で論文を
書かなければいけないのか???
• 科学的な新しい発見→公開するのがルール
• 日本語は日本人にしかわからない
• 不幸なことに、英語が科学の世界での共通語
• 公開するためには英語でしなければいけない
• だけど英語は英米人だけのものじゃない→英語を
公用語とする国に住んでる人は14億人→うれしい
ことに英語だけでこれだけの人達と友達になれる
英語で論文を書くということ
何故
「英語論文作成技法」が必要なのか?
• 正しい使い方をしないと正確な情報が伝わらない。
• 正しい使い方じゃない英語は読む気になってもらえ
ない。
たとえば
• 精確使用法なくて正確に情報を伝えないある。
• 正しき使用法なしにして英語は読む気持ちならない
でおじゃるよ。
などと、延々書かれている、外国人が書いた日本語論文を見たら
たとえ いくら素晴らしい内容が書かれていたとしても
まず「論文作成技法」ちゃんとしてほしいと思いませんか?
名詞の種類・冠詞
名詞の色々な使われ方
• This (The) polymer has a continuous service
temperature of 155 ℃. →「ある値の温度」
• These (The) mutants cannot grow at high
temperatures. →「たくさんの高い温度」
• In these (the) wafers, the delay time
decreases with increasing temperature.
→「漠然とひとまとめの温度」
• With normal austenizing, the temperature at
which martensite starts to form is about
315 ℃. →「関係代名詞によって特定されている温度」
名詞の種類・冠詞
名詞の種類
• 「数えられる名詞」→countable noun [C]
• 「数えられない名詞」→uncountable noun [U]
の二種類と教えられるが。。。。
• 上記の二つプラス、第3のグループとして
「[C]と[U]の両方で用いられる名詞」
の三種類あると考えたい
名詞の種類・冠詞
「数えられる名詞 [C]」その1
• 単数形と複数形がある
• 単数形→不定冠詞a (an)あるいは定冠詞theがつく
• 複数形→無冠詞φもしくはtheがつく
• これらのパソコンは、インターネットのTCP/IPプロト
コルを理解できる特殊なソフトを用いている。
• These (personal computers) use special
software that can understand the Internet’s
TCP/IP protocols.
• インターネットは太陽や地球のようにただ一つしか
ないものにつけられた固有名詞→the Internet
名詞の種類・冠詞
「数えられる名詞 [C]」その2
• これらの用途では、一致許容量は一般にオーム単
位で表される。
• In these applications, conformity tolerance is
generally expressed in (ohms).
• ちなみにapplicationは、「用途」として使っているの
で[C]で複数だが、「応用すること・適用すること」の
意味で使う場合には[U]となり、第3グループに属す
る名詞となる。
• ohmはin ohm unitsともかける。
名詞の種類・冠詞
「数えられない名詞 [U]」その1
• 数の上では固有名詞が最も多い
• advice, equipment, evidence, infinity,
information, news, piping, software
• 複数形がない→無冠詞φもしくはtheしかつかない
• これらの計算によって得た情報を、実験的に得た情
報と比較した。
• (The information) obtained from these
calculations was compared with that obtained
experimentally.
名詞の種類・冠詞
「数えられない名詞 [U]」その2
• このデータベースから、各樹脂について60項目の
情報が得られる。
• The database provides (60 items of information)
on each resin.
• この他にも a piece of information, an item of
information, one piece of evidenceなどといった使
い方
名詞の種類・冠詞
「 [U], [C]二つの顔を持つ名詞」その1
• 私たちには最も扱いの難しい名詞
• 動詞や形容詞から派生したability, dependence,
measurementなど抽象名詞と考えられるもの
• atmosphere, effect, theory, force, temperature,
metal, carbon, waterなどなど科学技術分野におけ
る重要な名詞の多くがこのグループに入っている
• ともかく、使い分けが難しい。。。。
名詞の種類・冠詞
「 [U], [C]二つの顔を持つ名詞」その2
• 引き抜かれたウイスカーとマトリックスの穴がかなり
の量観察されたことから、この機構が効果的だった
かもしれないことが示唆される。
• (The observation [U]) of sizable pulled-out
whiskers and matrix holes suggests that this
mechanism may have been effective.
• これらの観察結果はSchererのモデルと一致してい
る。
• These (observations) are consistent with the
Scherer model.
• analysis, measurement, calculationも同様に使う
名詞の種類・冠詞
普通は[U]のbehaviorの[C]の用法
• これらの特殊ウレタンは、独特の温度に敏感な挙
動を示す。
• These specialty urethanes exhibit (a) unique
temperature-sensitive (behavior).
• これらのペプチドの場合、この違いは非常にはっき
りしている。というのは、2つの型の挙動は相互に
排他的であるからである。
• For these peptides, this distinction is very clearcut since the two types of (behaviors) are
mutually exclusive.
• 前者は個別的・後者はこの方が自然。。。。
名詞の種類・冠詞
名詞の意味
• 「特定」→パソコン・りんごなど数えられるものにつ
いて、どれか特定のものに決めること。特定・不特
定の区別がある。
• 「限定」→水のように広がりを持ったもの・測定のよ
うな抽象概念の範囲を決めること。限定・非限定の
区別がある。
名詞の種類・冠詞
数えられる名詞の3つの意味
• 「不特定」→店に並んでいるたくさんのパソコン
• 「特定」→店員に指示したり、自分で取り上げたりす
るパソコン
• 「一般概念」→パソコンというもの
名詞の種類・冠詞
数えられない名詞の3つの意味
• 「限定」→コップの中に入った水。
• 「非限定」→海の水。
• 「一般概念」→「水とは水素と酸素から成るH2Oの
化学式を有する化合物のことである。」
名詞の種類・冠詞
名詞の「意味」を決める冠詞
• 冠詞のない名詞→意味が定まらない宙ぶらりんの
状態→冠詞と名詞は不可分
• 冠詞の用法→「規則的な用法」と「不規則的な用
法」がある
• 冠詞→不定冠詞a, 無冠詞φ, 定冠詞theの3つ
名詞の種類・冠詞
不定冠詞の2つの用法
• 読み手から見て不特定であると、書き手が考えてい
る、「数えられる名詞」の1つにつける
• 第1用法→書き手からも読み手からも不特定
• 第2用法→書き手からは特定、読み手からは不特
定
名詞の種類・冠詞
書き手からも読み手からも不特定
• 分子の重量は、分子を構成している全ての原子の
質量の総和である。
• The weight of (a molecule) is the sum of the
weights of all (the) atoms of which the molecule
is made up.
• インターネットは20世紀末期の現象である。
• The Internet is (a phenomenon) of the late
twentieth century.
• the phenomenonとすると20世紀末期の現象はた
だ一つしかないことになってしまう!!!!
名詞の種類・冠詞
「任意の」の意味を表す不定冠詞
• この曲線上に1点を選び、その点に接線を描く。
• Pick (a point) on this (the) curve and draw a
tangent to the point.
• ちなみにa tangentのaは、第2用法のa。
名詞の種類・冠詞
不定冠詞aは必ずしも不特定ではない
• 昨日、婦人が事務所を訪ねてきた。
• (A lady) came to the office yesterday.
• この「婦人」は、話し手から見て特定の婦人である。
これが第2用法の例である。
• 試料を、JEM E-300型コントローラで制御したSiC
炉に入れた。
• The sample was placed in (a SiC furnace)
controlled with (a JEM E-300 type controller) .
• これら2つの装置は、書き手には特定されているが、
読み手には不特定である。
名詞の種類・冠詞
不定冠詞の第2用法その2
• 第2用法は、我々日本人が「aの代わりにtheを用い
るという誤用を犯しやすい」→注意が必要。
• A社は、クロロベンゼンをフェノールに変える実用的
な方法を開発した。
• The A company has developed (a practical
method) for converting chlorobenzene into
phenol.
• ディラックの理論から、点粒子として扱われてきた
運動方程式が導かれた。
• Dirac’s theory led to (an equation of motion) for
an electron treated as a point particle.
名詞の種類・冠詞
複数の[C] に用いる無冠詞
• 組成が局所的に変化する場合、結晶格子のゆがみ
が生じる。→第1用法
• Local composition changes lead to crystal lattice
(distortions).
• 図4に、基板温度140℃と400℃で作成したフィルム
のX線回折図形を示す。→第2用法
• Figure 4 shows (X-ray diffraction patterns) for
(films) prepared at (substrate temperatures) of
140℃ and 400℃.
• イソブタンのいろいろな合成法は、後に明らかにさ
れる。→第2用法
• (Methods) for the synthesis of isobutane will
become apparent later.
[U] に用いる無冠詞
名詞の種類・冠詞
• これらの試験が成功した場合、NASAの研究者たち
は7メートルのモデルを遠隔操作によりとばすこと
になっている。→第1用法
• If these trials succeeds, NASA researchers will
fly a 7-meter model by (remote control).
• 後者の説明は、Paul Greenらの理論研究により支
持されている。→第2用法
• Theoretical (work) by Paul Green et al. supports
the latter explanation.
• 無冠詞→読み手から見た場合に不特定の複数の
[C]あるいは非限定の[U]である。と書き手が考えて
いる複数の[C]あるいは[U]に用いる。
名詞の種類・冠詞
すでに出た名詞につけるthe
• 吸収とは、光エネルギーが熱に変わるために生じる
光ファイバー中でのエネルギーの損失のことである。
このことは、一般には光ファイバー中の不純物によ
り生じる。
• Absorption is the loss of energy in (an optical
fiber) resulting from conversion of optical energy
into heat. This is generally caused by impurities
in (the fiber).
• 直訳調の訳文に「その」が頻繁に出てくるのは、こう
したtheを「その」と訳しているから。
• 前者・後者の両者の同一性を理解することが重要。
• 最もわかりやすい名詞の特定・限定の方法
「この」に対応するthe
名詞の種類・冠詞
• これらの問題を避けるために、われわれは新しい方
法を考案した、この方法では、液状あるいは粉体の
プラスチックを用い、レーザービームからの光ある
いは熱を用いる。
• To avoid these problems, we have deviced (a
new process). (The process) involves the use of
plastics in liquid or powder form, and light or
heat from a laser beam.
• 最初の方法には第2用法のaがつく。
• この英文を和訳する場合、「その」とは訳さない。
• This, Theseだけが対応するわけではないことを認
識すべし。
名詞の種類・冠詞
名詞に同一性がない場合にはtheをつけない
• 工業用ロボット制御装置は、プログラムの順序を記
憶・制御・監視しなければならない。図5に工業用ロ
ボット制御装置の配置を示す。
• (An industrial robot control) must store, control
and monitor the program sequence. Figure 5
shows the arrangement of (an industrial robot
control).
• 最初の制御装置は総称。
• 二番目の制御装置は任意あるいは特定のものを意
味している。
• 同一性のないケースでは、二番目とはいえ、theを
用いてはならない。
名詞の種類・冠詞
名詞を特定・限定するその他の方法
• これらの凸曲線と凹曲線が出会う点を変曲点と呼
ぶ。
• (The point) at which the convex and concave
curves meet is called a point of inflection.
• 科学では、自動的に1つに特定されるものがある。
3点を通る円は唯一つしか存在しないし、1次方程
式の解は1つしか存在しない。このような場合には
初出でもthe circle, the solutionとする。
名詞の種類・冠詞
冠詞を省略できるケース
• The convex and concave curvesでは、2番目の
theを省略している。これは、(The convex and the
concave) curveという省略表現にもできる。
• The structures and properties of conducting
polymersのpropertiesの前の省略は、of以下が
structuresにもかかっていることを積極的に示して
いる。
修飾語句とtheの有無
名詞の種類・冠詞
• 航海士は、ジャイロスコープの原理に基づく各種の
ジャイロスコープ装置を用いている。
• Navigators employ (various gyroscopic devices)
that are based on the gyroscope principle.
• 「ジャイロスコープの原理に基づく」というだけでは、
ジャイロスコープ装置を特定することが出来ない。
総括のthe
名詞の種類・冠詞
• 物体に作用している全モーメントは、合モーメントで
ある。
• The sum total of (the moments) acting on a
body is the resultant moment.
• 名詞が指すもの全体を表すというもの。「全体は特
定されたものであるから」theがつく。
• 初出の複数の[C]にいきなりtheがついていたら総
括のtheであることが多い。
名詞の種類・冠詞
規則1
非限定
受け取る側からの意味
不特定
非限定
[U]
名詞の意味
不特定
[C]
送る側からの意味
名詞の種類
使用する冠詞
(a [C-単])
(φ [C-複])
(φ [U])
名詞の種類・冠詞
規則2
非限定
受け取る側からの意味
不特定
限定
[U]
名詞の意味
特定
[C]
送る側からの意味
名詞の種類
使用する冠詞
(a [C-単])
(φ [C-複])
(φ [U])
名詞の種類・冠詞
規則3
限定
受け取る側からの意味
特定
限定
[U]
名詞の意味
特定
[C]
送る側からの意味
名詞の種類
使用する冠詞
(the [C-単])
(the [C-複])
(the [U])
名詞の種類・冠詞
規則4
受け取る側からの意味
一般的概念 一般的概念
[U]
名詞の意味
一般的概念 一般的概念
[C]
送る側からの意味
名詞の種類
使用する冠詞
(a [C-単])
(the [C-単])
(φ [C-複])
(φ [U])