日本の児童虐待防止・ 法的対応資料集成

日本の児童虐待防止・
法的対応資料集成
─児童虐待に関する法令・判例・法学研究の動向
児童虐待防止制度がどのように変化
し、具体化したか、そのためにいかな
る方策が講じられてきたかを膨大な
法令、判例、法学文献を分析する
ことで明らかにする。資料は年代ご
とにまとめられ、全体動向の理解に
資するとともに、利用の便を図った。
内容構成(*次の年代ごとに下記内容が収められています)
第1期(1985年から1990年まで)
第3期(2000年6月から2004年4月まで)
第5期(2007年7月から2010年3月まで)
日本における
児童虐待に関する法的対応の
変遷を俯瞰する基本図書。
吉田恒雄[編著]
◉本体価格 20,000円+税
◉B5判/上製/852頁
第2期(1990年4月から2000年5月まで)
第4期(2004年5月から2007年6月まで)
第6期(2010年4月から2012年3月まで)
各期の概要
Ⅰ 法令・判例および法学研究の動向
全体の動向/法令の動向/判例の動向/法学研究の動向
Ⅱ 主要判例解説
児童福祉法分野/民法分野/刑事法分野
Ⅲ 主要文献解説
児童福祉法分野/民法分野/刑事法分野/児童福祉分野/非行・教護分野/教育分野/
資料
医療・保健・心理分野
はじめ に
児童虐待への対応は、
医療・保健・司法・教育等、
複合的対応を必要とし、
これは現実の対応の
みならず、
研究活動についても妥当するところである。多方面の学問分野が有機的に結合するこ
とにより、
児童虐待を多面的に捉え、
その本質に近づくことができるのである。本研究は児童虐待
に関する法的対応の推移を研究するものであるが、
法学文献や法令・判例にとどまらず、
医学、
保
健学、
社会学、
教育学、
社会福祉学等の文献も視野に入れて検討したのは、
こうした趣旨によるも
のである。
とくに1980 年代以前においては、
医学や社会福祉分野からの貴重な法的提言が数多
くなされ、
その後の法律学分野における研究に大きな影響を与えているため、
法学以外の分野の
(中略)
研究も対象に含めた。
本研究は、
児童虐待に対する法的対応がどのように変化し、
具体化したか、
そのためにどのよ
うな方策が講じられてきたかを跡づけることを目的としている。
「法は家庭に入らず」
との法諺があ
るが、
児童虐待に関する法令・判例研究や法学文献は、
配偶者暴力や高齢者虐待、
障がい者虐
待等とともに、
家庭という私的分野に対する公的介入のあり方がどのように変化してきたかを探る
上で何らかの示唆を提供できるものと考えられる。
こうした点で、本研究が今後の児童虐待対応
のみならず私的生活への介入のあり方を考える上で、
少しでも役立てられれば幸いである。
吉田恒雄(駿河台大学 法学部教授・学長)
第 6 期(2010 年 4 月から 2012 年 3 月まで)
Ⅰ 法令・判例および法学研究の動向
児童福祉法 33 条の 2 第 3 項および 47 条 4 項では親権者等が児童福祉施設長、児童相談所長、
Ⅰ 法令・判例および法学研究の動向
里親等の行う監護・教育・懲戒を不当に妨げてはならないとされた。この点は国会の審議で論点
となり、これを明確にすべきとの付帯決議も行われたことから、
「不当に妨げる行為」の意味や
1 全体の動向
対応に関する通知、ガイドラインが詳細に示された。法改正に伴って、
「児童虐待防止対策支援
事業」や「子ども虐待対応の手引き」
「児童相談所運営指針」も改正された。
(1)はじめに
今期は、法令等については、2011 年に成立した児童虐待防止に関連する民法・児童福祉法等
の改正とそれに関連する通知、児童虐待等重大事例検証に関連する通知の他、臓器移植、社会的
ii)社会的養護制度改革
養護制度改革に関連する通知が数多く発出されている。判例としては「被害児童の告訴能力」に
「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法
関する刑事判例が公表された。
律」の成立に伴い、その施行に関する通知、施設基準に関する通知が数多く発出されている。社
研究の動向としては、児童福祉法関係では児童虐待防止法制度に関するシンポジウム報告や個
会的養護における里親委託の推進に関連して、「里親委託ガイドラインについて」が策定され、
別の外国法研究が、刑事法では児童福祉と警察との連携、司法面接に関する論考を数多く見るこ
里親支援のための相談員等も配置された。里親およびファミリーホームにおける養育の質の確保
とができた。臓器移植と虐待の問題については、刑事法のみならず児童福祉や医療分野でも活発
のための「里親及びファミリーホーム養育指針」も定められた。さらに社会的養護の質の向上を
な議論が行われた。児童福祉分野では、被措置児童虐待に関する研究や虐待防止における保育所
目的に、施設長の資格要件の明確化および研修の義務化、第三者評価等の義務化も図られた。
の役割、里親制度に関する論考に見るべきものがある。教育分野の研究としては、児童虐待防止
に関する学校の認識、役割の変化を指摘する研究、教育課程における児童虐待の扱いについても
iii)児童虐待等重大事例検証関係
模索が始まった。保健・医療・福祉分野では、民法改正の影響もあり、医療ネグレクトに関する
児童虐待等重大事例検証の第 7 次報告に関連して、地方公共団体における児童虐待による死亡
研究の進展が著しい。児童虐待等による死亡事例の検証については、従来の厚生労働省の死亡検
事例等の検証対象のあり方が見直された。また同報告でとくに問題となった「妊娠期からの妊
証報告(第 7 次・第 8 次報告)のゼロ歳児についての対応以外に、新たな動きのあることが紹介
娠・出産・子育て等に関する相談体制や連携体制、職員の質の向上」を求める通知が発出され、
されている。
重大事例の検証に基づく虐待対応の見直しが積極的に行われた。
(2)法改正および通知
iv)児童相談所の体制強化
①法改正
「児童福祉法施行令の一部を改正する政令」の改正により、児童福祉司の担当区域を定める基
今期の法律関係での最大のトピックは、2011 年 5 月に「民法等の一部を改正する法律」が成
準が、これまでの「人口おおむね 5 万から 8 万まで」に代えて、
「4 万から 7 万まで」が標準と
立したことである。これまで、児童福祉法や児童虐待防止法改正に際して、児童虐待防止法制度
された。他に、児童相談所の体制強化として児童福祉司等の研修の強化を求める通知が発出され
の根幹をなす民法の親権部分の改正の必要性が繰り返し主張されてきたが、今期に至ってようや
た。
く実現した。これにより民法では親権停止制度の創設、親権喪失宣告の要件の見直し、未成年後
見制度の改正等が行われた。あわせて、児童福祉法における親権関係の規定―児童福祉施設入
本 文
組見本 部分
見開きページ
v)一時保護所関係
所中や一時保護中の児童の親権に関わる規定等―が改正された。また、2011 年 8 月には、「地
一時保護の充実に関する通知として、児童相談所からの一時保護委託を受ける里親等に対し、
域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」が
新たに一時保護委託手当を支弁することとし、対象となる児童、経費等について定められた。一
制定され、
「施設・公物設置管理の基準」に関する義務づけ、枠づけの見直しが行われ、これま
時保護所における心理療法担当職員や個別対応職員の配置義務化に対応するため、児童相談所に
での児童福祉施設最低基準が「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」として条例に委任さ
付設する一時保護所への専任の心理療法担当職員の配置、個別指導等を行う個別対応職員の配
れることになり、都道府県等が条例で施設基準を設けることができるようになった。これを契機
置、乳児が入所している一時保護所における看護師の配置が定められた。
として、社会的養護制度の大規模な改正が行われ、里親委託優先の原則や家庭的養護の推進が図
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◉本体価格20,000円+税
ISBN978-4-7503-4273-3