「蟹工船」の小林多喜二を愛した母セキの生涯

図書館職員が紹介する
8 月 NO 10
「蟹工船」の小林多喜二を愛した母セキの生涯
母
三浦
綾子著
『わだしは小説を書くことが、あんなにおっ
かないことだとは思ってもみなかった。あの
多喜二が小説を書いて殺されるなんて…』
秋田弁により柔らかさを増した、素朴・率
直な語り口で物語が進みます。
貧困の中でも家族の親和に恵まれたセキ。
大らかな心で、多喜二の「貧乏な人を無く
す様な世の中にしたい!」という理想を見
守り、人を信じ、愛し、懸命に生き抜いた
セキの波乱にとんだ一生を描いた作品です。
解説には、多喜二を虐殺したような暗黒の時代を再びもたらしてはならないと
いう祈りが込められていると書かれていました。
まさに、終戦記念の 8 月に読むに相応しい一冊です。
蟹工船
小林
多喜二著
「おい、地獄さ行ぐんだで!」
という、なんとも奇妙な台詞からはじまります。
オホーツクのソ連領海を侵して蟹を捕り、缶詰
に加工する蟹工船では、貧困層の出稼ぎ労働者
たちが、奴隷のような過酷な労働を強いられて
いた、昭和初期の話です。
国策の名によってすべての人権を剥奪されてい
た彼らが、一致団結しストライキを起こします。
「自分たちが変わらなければ何も変わらない!」
と、支配者に立ち向かう姿が描かれています。