27 e-mail 3 31 [email protected] CReSS , CReSS CReSS CReSS CReSS WG WG CReSS , , 研究課題名 火 星 版 CReSS を 用 い た 火 星 表 層 環 境 評 価 共同研究者名(所属を含む) 杉 山 耕 一 朗 (JAXA 宇 宙 研), 小 高 正 嗣 (北 大・理), 中 島 健 介 (九 大・理), 高 橋 芳 幸 (神 戸 大・理/CPS), 西 澤 誠 也 (理 研 AICS), 乙 部 直 人 (福 岡 大・理), は し も と じ ょ ー じ (岡 山 大・自 然), 坪 木 和 久 (名 大・地 球 水 循 環 研 究 セ ン タ ー) 研究目的 近 年 の 惑 星 大 気・表 層 探 査 に お い て, 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル は 探 査 計 画 立 案 や デ ー タ 解 析 の た め の 必 須 の 道 具 と な っ て い る. 日 本 の コ ミ ュ ニ テ ィ に お い て 検 討 が 進 ん で い る 着 陸 機 を 用 い た 火 星 探 査 計 画 に お い て も, 探 査 機 を 設 計 し, 運 用 計 画 を 作 成 す る た め に, 着 陸 予 定 時 期 に お け る 着 陸 候 補 地 点 の 表 層 環 境 予 測 が 必 要 と さ れ て い る. 本 研 究 課 題 で は CReSS を 火 星 大 気 に 適 用 し, 着 陸 予 定 地 点 の 表 層 環 境 予 測 を 実 施 す る た め の 環 境 整 備 を 行 う. 着 陸 候 補 地 点 の 周 囲 1000 km 四 方 の 表 層 環 境 を 1 km 程 度 の 解 像 度 で 予 測 し, 気 温・地 表 面 温 度 等 の 気 象 学 的 物 理 量 の 日 変 化 お よ び そ の 移 動 平 均 と 標 準 偏 差 等 の 統 計 量 を 得 る こ と が , 最 終 的 な 目 標 で あ る. 研究内容 従 来 の 数 値 的 研 究 (Odaka et al., 2001) と 類 似 の 地 形 を 考 慮 し な い 理 想 的 な 条 件 設 定 を 与 え た 実 験 を 行 う こ と で, 火 星 版 CReSS で 得 ら れ た 地 表 面 温 度 や 対 流 圏 の 気 温 の 日 変 化 の 妥 当 性 を 検 討 す る. こ れ は 昨 年 度 か ら の 継 続 課 題 で あ る. 昨 年 度 末 時 点 で 残 さ れ た 大 き な 問 題 は, 火 星 版 CReSS に よ っ て 得 ら れ た 接 地 境 界 層 の 温 度 勾 配 が 他 の 数 値 モ デ ル を 用 い た 同 様 の 数 値 実 験 や こ れ ま で の NASA 探 査 ロ ー バ ー の 観 測 結 果 に 比 べ て 非 常 に 大 き い こ と で あ る . こ の 問 題 へ の 対 処 方 法 を 確 立 す る こ と を 目 指 す. 理 想 化 実 験 に 引 き 続 き, 地 形 と 大 規 模 循 環 の 影 響 を 考 慮 し た 数 値 実 験 を 実 施 す る こ と で, 火 星 の よ う に 地 球 に 比 べ て 大 気 が 薄 く (地 上 気 圧 ∼ 7 hPa), 起 伏 に 富 む 地 形 に お い て も CReSS が 動 作 可 能 か 確 認 す る. 大 規 模 循 環 の 効 果 は 初 期 値 お よ び 境 界 値 と し て 大 循 環 モ デ ル DCPAM に よ っ て シ ミ ュ レ ー ト さ れ た 火 星 全 球 気 象 デ ー タ を 導 入 す る こ と で 考 慮 す る. 計 算 地 点 は 日 本 の 探 査 計 画 に お い て 挙 っ て い る 着 陸 候 補 地 点 を 基 本 と す る が, モ デ ル の 検 証 を 念 頭 に こ れ ま で の NASA 探 査 ロ ー バ ー の 観 測 地 点 に お い て も 数 値 実 験 を 行 う. 1 研究成果 a. 理 想 化 実 験 地 形 を 考 慮 し な い 理 想 的 な 条 件 設 定 を 与 え た 実 験 を 行 っ た. 系 は 水 平 鉛 直 の 2 次 元 で あ り, 水 平 方 向 に 50 km, 鉛 直 方 向 は 約 60 km で あ る. 解 像 度 は 水 平 方 向 に 200 m, 鉛 直 方 向 に 平 均 で 200 m, 地 上 付 近 で 2 m で あ る. NASA の 火 星 探 査 ロ ー バ ー Spirit と Opprtunity の 観 測 地 点 の 日 射 量 条 件 を 与 え た. 火 星 版 CReSS で 得 ら れ た 接 地 境 界 層 の 温 度 プ ロ フ ァ イ ル は, 鉛 直 1 次 元 の 放 射 対 流 計 算 (DCPAM-1D) の 結 果 や NASA の 探 査 ロ ー バ ー の 観 測 結 果 か ら 外 れ る. そ の 一 方 で, 得 ら れ た 地 表 面 温 度 の 日 変 化 と 地 表 面 熱 収 支 は, 鉛 直 1 次 元 の 放 射 対 流 計 算 (DCPAM-1D) と 概 ね 一 致 し た. 火 星 版 CReSS と DCPAM-1D は 同 じ 放 射 計 算 コ ー ド を 用 い て い る こ と, お よ び 大 気 の 薄 い 火 星 で は 地 表 面 温 度 や 熱 収 支 は 放 射 で お お よ そ 決 ま る こ と を 勘 案 す る と, CReSS を 火 星 化 す る 際 に 行 っ た 火 星 大 気 用 放 射 計 算 コ ー ド の 移 植 に は 問 題 が 無 い と 判 断 で き る. 接 地 境 界 層 の 温 度 プ ロ フ ァ イ ル の ず れ は 別 の 要 因 に 起 因 す る も の と 考 え ら れ る. 上 記 の 問 題 に 対 す る 理 解 を 進 め る た め に, 追 加 実 験 と し て 乱 流 過 程 に 含 ま れ る 混 図1 感度実験で得られた温度プロファイルと探査ローバー Spirit の観測した温度プロファ イルの比較. 感度実験では, CReSS オリジナルの混合長 (地表面近傍で Prandtl の混合距離 理論に従うように Deardorff (1980) を修正したもの) と Deardorff (1980) の混合長の 2 つ を利用した. 2 合 長 を パ ラ メ タ と し た 感 度 実 験 を 行 っ た. 文 献 調 査 に よ っ て 従 来 の 火 星 LES モ デ ル 研 究 (Spiga et al., 2010) と CReSS で は 混 合 長 の 扱 い に 違 い が あ る こ と が 判 明 し た か ら で あ る. 感 度 実 験 に よ っ て 得 ら れ た 対 流 運 動 の 強 度 お よ び 地 表 面 付 近 の 温 度 プ ロ フ ァ イ ル は 混 合 長 の 与 え 方 に 強 く 依 存 す る も の で あ っ た. Spiga et al. (2010) と 同 様 に 混 合 長 と し て Deardorff (1980) を 採 用 す る こ と で, NASA の 探 査 ロ ー バ ー Spirit の 観 測 し た 日 中 の 鉛 直 温 度 プ ロ フ ァ イ ル と 整 合 的 な 計 算 結 果 が 得 ら れ た (図 1). 図 に は 示 さ な い が, 探 査 ロ ー バ ー Opprtunity の 観 測 結 果 に 対 し て も 同 様 の 結 果 が 得 ら れ た. こ れ ら の 結 果 を 踏 ま え, 火 星 版 CReSS で は Deardorff (1980) の 混 合 長 を デ フ ォ ル ト と す る こ と に し た. b. 地 形 と 大 規 模 循 環 の 影 響 を 考 慮 し た 数 値 実 験 NASA の 探 査 ロ ー バ ー 着 陸 点 お よ び 日 本 の 火 星 探 査 計 画 の 着 陸 候 補 地 の そ れ ぞ れ に つ い て, 気 温・地 表 面 温 度 等 の 気 象 学 的 物 理 量 の 日 変 化 を 計 算 し た. 以 下 で は 例 と し て, NASA の 探 査 ロ ー バ ー Opportunity の 着 陸 地 点 (1.9S, 2.5W) 付 近 で の 数 値 実 験 を 示 す. 計 算 領 域 は 水 平 360 km, 水 平 解 像 度 は 720 m と す る. 鉛 直 計 算 領 域 は お お よ そ 60 km で あ る. 鉛 直 格 子 ス ト レ ッ チ ン グ を 用 い る た め 鉛 直 解 像 度 は 最 下 層 で 20 m, 大 気 上 部 で 500 m 程 度 で あ る. ダ ス ト の 光 学 的 厚 さ は 0.3 と し た. な お, 大 規 模 循 環 の 図2 Opportunity 観測点におけるモデル最下層の格子点 (高度 ∼ 20 m) での鉛直速度およ び考慮した地形. 3 効 果 は 初 期 値 お よ び 境 界 値 と し て 大 循 環 モ デ ル DCPAM に よ っ て シ ミ ュ レ ー ト さ れ た 火 星 全 球 気 象 デ ー タ を 導 入 す る こ と で 考 慮 す る. DCPAM の 格 子 間 隔 は 約 200 km で あ る. 図 2 は 活 発 な 対 流 運 動 が 生 じ る 地 方 時 LT = 14:00 で の 鉛 直 速 度 で あ る. 地 表 面 付 近 に お い て 鉛 直 速 度 の 分 布 は 細 胞 状 と な り, ク レ ー タ ー の 縁 に 対 応 す る 場 所 で 鉛 直 流 が 強 ま る 傾 向 が あ る . こ の 細 胞 状 の 形 状 は, 解 像 度 や 地 形 の 有 無 と い う 違 い が あ る に も か か わ ら ず, Michaels and Rafkin (2004) や 理 研 の SCALE に よ る LES の 結 果 と 似 て い る. Opportunity の 着 陸 地 点 の よ う に 火 星 地 形 の 中 で も 起 伏 が 比 較 的 緩 や か な 地 点 を 選 べ ば , 時 間 ス テ ッ プ や 格 子 の ア ス ペ ク ト 比 を 調 整 す る こ と で, 対 流 運 動 の 日 変 化 を 計 算 可 能 で あ る こ と を 確 認 で き た. 成果発表 • 杉 山 耕 一 朗 , 小 高 正 嗣 , 中 島 健 介 , 高 橋 芳 幸 , 乙 部 直 人 , 西 澤 誠 也 , 林 祥 介, は し も と じ ょ ー じ, 長 谷 川 晃 一, 榊 原 篤 志, 坪 木 和 久, 2014: 火 星 版 CReSS を 用 い た 火 星 表 層 環 境 評 価, 名 古 屋 大 学 地 球 水 循 環 研 究 セ ン タ ー 共 同 研 究 発 表 会 2015 年 3 月 2 日, 名 古 屋 大 学 地 球 水 循 環 研 究 セ ン タ ー • 杉 山 耕 一 朗 , 小 高 正 嗣, 中 島 健 介, 高 橋 芳 幸, 乙 部 直 人, 西 澤 誠 也, は し も と じ ょ ー じ, 長 谷 川 晃 一, 榊 原 篤 志, 坪 木 和 久, 2014: 雲 解 像 モ デ ル CReSS の 火 星 大 気 へ の 適 用: 混 合 長 の 取 り 扱 い 日 本 気 象 学 会 2014 年 度 秋 季 大 会, 2014 年 10 月 21 日, 福岡国際会議場 • K. Sugiyama, M. Odaka, K. Nakajima, Y. O. Takahashi, S. Nishizawa, N. Otobe, G. L. Hashimoto, K. Hasegawa, A. Sakakibara, and K. Tsuboki, 2014: Assessment of Mars surface environment for a exploration program using CReSS-Mars, a convection resolving numerical model adjusted for Mars atmosphere, The Joint Workshop of 6th International Workshop on Global Cloud Resolving Modeling and 3rd International Workshop on Nonhydrostatic Numerical Models. 24th - 26th, September, 2014, RIKEN/AICS, Kobe, Japan. 今後の問題点 Opportunity の 着 陸 地 点 (図 2) の よ う に 火 星 地 形 の 中 で も 起 伏 が 比 較 的 緩 や か な 地 点 で は 対 流 運 動 の 日 変 化 を 計 算 で き た が, 地 形 の 急 峻 な 地 点 で の 数 値 実 験 は 現 時 点 で は 成 功 し て い な い. 長 い 時 間 ス テ ッ プ を 0.1 秒 ま で 小 さ く し, 最 下 層 の 格 子 点 間 隔 4 を 50–100 m に 拡 大 し て も, 数 値 計 算 は 破 綻 し た. 数 値 積 分 に 関 す る パ ラ メ タ の 調 整 方 法 の 検 討 や, 他 の 火 星 領 域 モ デ ル で 使 わ れ て い る パ ラ メ タ の 調 査 お よ び 検 証 実 験 を 進 め る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る. 5
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