コンクリート構造物乾式切断 ■ 従来工法と問題点 従来、ワイヤーソー切断工法の主流は「湿式」及び「引き切り」であり、現在でもワイヤーソーによる ほとんどの切断工事は、この工法で行われている。 《従来工法 の問題点》 ① ワイヤー速度が異常に速く、危険を伴う ⇒ 秒速20m/s以上のワイヤー速度は「切削」ではなく、切削と研磨を理解していない ② 切断効率(時間当たりの切断面積)が、データ化できない ⇒ 工期短縮、スケジュール管理が困難である為、利便性が低い ③ 引き切りの為、切断の時に必ずワイヤーを切削物に巻き付ける必要がある ⇒ 稼働率の低下(=作業の無駄)及び、作業の危険性が高くなる(=作業者の危険区域への進入) ④ 湿式の場合、切削効率向上の為に水を使用する。(誤った認識) ⇒ 汚水発生、及び汚水処理の為に、切断工事の場所が限定される ■ 従来工法の問題点の解消法 - 乾式必要条件 ① ワイヤー速度を下げる ⇒ ワイヤーの持つ運動エネルギーは、速度の二乗に比例するので、速度を下げると、 飛躍的に安全性が増加する ② 切断効率を上げる ⇒ 数値による理論制御により、最高切断効率を引き出す (勘による仕事の排除) ③ 押切切断により、切換作業、ワイヤー巻き付け作業、ワイヤー接合作業等の無駄及び危険 作業を徹底的に排除する ⇒ MVE, IE分析による無駄の排除 ④ 乾式切断により、使用区域が限定されないようになる ⇒ 集塵方式の改善 ■ 新工法による大型コンクリート構造物の切断工事例 下記図面に示す大型コンクリート構造物(配筋率0.7%程度)を、乾式押切工法にて切断。 (世界初) お客様のご要望により、写真及び構造物詳細の提示は控えさせていただいております。 《工事概要》 地上 水面 切断物の一部概要 上記のような切断を合計8回実施 (合計 約50㎡切断) 《切断の制約条件》 ① 作業性の関係で、通常工法の引き切り切断不可(ワイヤーを切断物に巻き付けて切断不可) ⇒ 切断物裏面への作業員進入が不可である為 ② 作業区域での汚水発生の禁止 ⇒ 周囲環境が汚染禁止である為 ③ 大断面の高能率切断による工期短縮 ⇒ 全体工事のスケジュール短縮の為 《切断仕様》 切断方法 乾式押切切断 切断装置 HILTI DSW 3018-E 切断ワイヤー ダイアテック社製 Mir型ワイヤー 《切断状況図面》 ① 切断開始後1時間 (切断効率: 4.8㎡/h) 切断部 (約4.8㎡) プーリー位置が下部にセットされているので、切断開始時の切断効率は高い(=4.8㎡/h) 切断面に配筋ではなく、H鋼が入っているが、通常配筋と同様の状況で切断されている ⇒本来であれば、H形鋼より右側の切断線はもっと上がる ワイヤー送り速度は、最高8m/sであり、切断時の騒音が低く、安全性が高い ② 切断開始後2時間15分後 (切断効率: 1.76㎡/h) 切断部 ワイヤー角度が小さくなり、切断効率が下がっているが、プーリー位置を上記図面位置よりも 下方に30cm下げれば、切断効率は、飛躍的に向上する。 ⇒しかし、本工事では構造物下面と水面の距離が短い為、これ以上プーリーを下げられない ■ 結果 これまで行ってきた金属切断の実績と合わせ、ワイヤーソーによる新しい工法の確立ができた。 ① 平均切断効率 2.8㎡/h (プーリー位置により、効率は変化する) ⇒ 従来工法よりも切断効率は高い ② ワイヤー送り速度 8m/sの超低速切断を達成 (安全性の飛躍的な向上) ⇒ 装置の小型化が可能になった ③ ワイヤーソーの切断余裕度 装置能力の75%能力で切断 (余裕あり) ④ 切断面の平滑性 平坦で切断物を容易に引き抜ける (厚壁の開口に最適) *弊社工法では、走行中のワイヤーの蛇行が最小になり、カッター 切断と同様の面精度切断が可能になる。(実績多数) ⑤ 押切のメリット ワイヤーを被切削物に巻付ける作業がないので、自動切断が可能 ■ 今後の工法開発 弊社は、本ダイヤモンドワイヤーソー工法をさらに向上させる為、以下の工法開発を行なっている。 コアドリル削孔技術 ・コンクリート、金属の大口径削孔(乾式を含む) ⇒この技術との複合で、より大きな構造物の効率的な解体切断が可能 (例) 大型金属ヴェッセル、大型鋼製煙突、配管等 ② 半自動切断解体装置 ・押切切断と自動コア削孔の併用による遠隔解体 ⇒ 現在、ヨーロッパ、米国等で開発が進んでいる原子炉設備の切断 解体をイメージ ③ 水中自動切断工法 ・放射能汚染有害構造物等の水中切断による減容化等への利用 ④ 高速道路、床板等の 乾式高速切断装置 ・コアドリル削孔との組み合わせによる乾式切断が可能となる。 ・今回の切断事例を床板切断に置き換えると、 ⇒4.8㎡/h切断 = 0.35m厚床板 、13.7m長/h切断となる。 ①
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