準備書面 - 近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する自死事件

平成 26年
(ワ
11499号
)第
原
告
大野佳奈子
被
告
医療法人高寿会 外 1名
損 害賠償請 求事件
原告準備書 面(4)
平成
大阪地方裁判所
合議 1係
27年 5月
1日
第 22民 事部
御中
‐
■
│
│「 イギ
原告 訴訟 代理人
弁
護
士
高
橋
典
明■
弁
護
士
上
出
恭
子
弁
護
士
和
田
香
原告 は、本書面にて被告医療法人一裕会・第 1準 備書面 に対 し、実習中の事実経
過 を中心に反論を行 う。
第l
I「 被告一裕会の主張」の第 1「 は じめに」に対 して
精神疾患 に罹患 した者 の遺書 の内容 が、自責の念に基づ き自分を責 める内容 と
なるのは一般的であ り、そ の遺書の内容 か ら直ちに精神疾患 となつた原因等 を導
くことは出来ない。
また、実習 が学生にとつて緊張感 を強 い るもの となってい ることは、各種 の
研究・調査 から明 らか となつているが、研修先 である被告一裕会 としては、学生
に対す る現場での専門教育 を実施す る機関 として、実習 に ともな う学生の心理
的負荷に配慮する義務 を負 い、 「嫌 が らせ 、い じめ」な どのハ ラスメ ン トが生
じるよ うな事態を発生 させてはなら無 いこ とは当然 として、 さらに学生に精神
…
1・
・
‐
│
障害等 の心身 の不調 をもた らす ような強い心理的負荷 がかかることがないよ う
に十分に配慮す る義務を負 つているとい うべ きである。
本件 では、被告一裕会 が指摘す る 「教育」 の場 とい えども、 このよ うな配慮 が
十分 になされたか否 かが問題 となることに変わ りはない。
第2
1
同第 2「 事 実 関係 に つ いて 」 に対 して
同項 「 1
は じめ に」 に対 して
原告 は、不知。
なお 、実習期 間 に つい て は、平成
25年 11月
4日 か ら同年
12月 20日
まで
の 7週 間 で あ つ た (乙 2・ 6頁 )。
2
同項 「 2
亡 輝 民氏 に対す る事前情報 」 に対 して
不知
3
同項 「3
実習 の開始」
(1)実 習 の開始 日は認 める。
(2)実 習 内容
ア 亡輝民が実習 中に作成 していた文書は以下 の もので ある。
① 症例 日誌
(甲
15)
症例発表 の担 当患者 となつた● さんに関す るデイ リーが記載 されてい る。
②
実習 日誌(甲
16)
一 日ごとの実習内容 の うち●さん以外 の患者に関す るデイ リー
③ ●さんの症例 レポー ト
(甲
17)
「実習指導要綱資料 2-2」 に 「症例報告内容」 (乙 2・
19頁 )と
して説
明がなされてい るもので ある。亡輝民がフアイルの名前 を 「臨床総合実習 レポ
ー ト」 として 自己のノー トパ ソコンに保存 して いた。
④
症例 レポー トの レジメ
(甲
18)
‐
2‐
症例患者 とは関係ない以下のよ うなテーマ について文献等を調 べて検討 した
⑤
上で作成 した文書 で実習 日誌 の中に綴 じられてい る。
甲 6に おいて、 亡輝民が 「課題」 と表現 しているもの。
11月 5日
ロタオル体操 について、 □超音波療法 について
11月 9日
□魚類・爬 虫類・哺乳類 (四 足歩行)。 ヒ ト(2足 歩行)の 歩行 の特徴
11月 11日
□身体拘束 について、 □協調運動
11月 13日
□年齢及び性別が筋力 に与える影響
11月 14日
□CI療 法、 □川平法、 □立ち直 り反射
イ 被告 一裕会 は、原告が訴状 で主張 した 「③
□老化 に伴 う筋力低下
菫■ バイザーからの指示 によ りそ
の都度『 レポー ト』 を作成す ること」 (訴 状 11頁 )を 否認す るが、既述 の よう
に症例患者 とは関係ないテーマ について検討 した文書が含 まれてい る ことか ら、
これ らの文書を 「レポー ト」 と表現す るか否 かは別 として文書 自体 は存在す る。
ウ 被告一裕会 は、実習 日誌について 「症例患者や他 の患者に関す る実習内容は、
症例患者 の検査予定、 これ らに対す る自らの感想 を含む」 と主張す る
(同 準備書
面 7頁 、下線代理人による以下も同様。)。
これ に対 して、近畿 リハ学院の臨床総合実習指導要綱
(乙
207頁 )で は、 こ
れ らの文書 の内容について以下のよ うに定められ てお り、実習 日誌については
「そ の 日に観察 した症例 、検査 0汲I定 を行 つた症例」 と 「過去形」 で表記 され
てお り、いずれ もそ の 日に実施 した内容 を記載す ることが前提 となつていた。
(1) 実習 日誌
② 内容 :1)そ の 日に観察 した症例、検査・ 測定を行 つた症例、運動療法や
物理療法 を行 つた症例、習得 した知識・ 技術、指導者へ の質問、 自身 の反省 や
感想 などを各項 目にまとめて記載す る。
(2)症 例 日誌
② 内容 :担 当 した症例 の内症例報告会で発表する症例 について、評価 お よび
治療経過等 を通 して実習指導者 か らのア ドバイ スを参考に、また、症例報告会
3…
に向けて、 「統合 と解釈」や 「問題点 の抽出」等 についても記載 し、実習指導
者 か らの コメン ト等を戴 き発表資料 を完成 させてい くこと。 なお、症例 日誌 の
内容 については、 「症例報告内容 の進 め方」(資 料2‐ 2)を 参考にす ること。
工 後述 の 8(3)で 述べ るとお り、亡輝民 は、実習 日誌、症例 日誌にどういつた内
容 を具体的に記載す るのか について、日■ バイザーの指示 が明確 でなかつたことか
ら苦慮 していた。辻 クリニ ックにおいて、各作成文書 の記載事項 について事前に亡
輝民に対 し具体的かつ適切な説明がな されなかつたために、デイ リー等の文書作成
に関連 して亡輝民に不必要な過度 の心理的負担 がかかる要因 となつた。
亡輝民が、平成 25年
オ
11月
5日 に実習 を開始 して 同月 29日 に失踪す るまで
の実実習 日数 20日 間に、同人が作成 した文書 は、原告が、近畿 リハ学院 を通 じ
て被告一裕会か ら返還を受 けた文書 だけでも症例 レポー ト45頁 、実習 日誌 54
頁、及び症例検討 レポー トのたたき台及 び レジュメ 21頁 の合計 120枚 に及び
文献 の コ ピー 5枚 を除いて も合計 115枚 となる。そ の中にはい ろい ろ調べ た上
で検討結果 を記載する必要 があるもの も含 まれ、その分量及び内容 か らして、被
告医療法人一裕会 が主張す るような、実習中の合間に作成出来るよ うなものでは
到底なかった。
この点、甲 21は 亡輝民が 「デイ リー 11月 分」 と題するファイル に保存 をし
た実習 日誌 を作成 した際のフ ァイルの更新 日時の一覧であるが、以下 のよ うに深夜
・ 早朝 の更新 日時が散見 され、亡輝民 がこれ ら文書 の作成 に長時間を要 していた こ
とが分かる。
・
11月
7 日
午前
1時 14分
57分
◆ 11月 9 日
同 5時
011月
1
同 1時 09分
ell月
2 1日
同 6時
11月
2 2日
同 0時 01分
・
2日
18分
6時 29分
・
11月
2 6日
同 2時
50分
‐
4‐
で 、 これ は症例 担 当をす る こ とにな つ た 「
さん」 に対す るもの と特 定 出
来る (甲 15の 39頁 、なおこの文書は報告がないという■■バイザーの指摘を
受けて 11月
13日 の実習後 に作成 されたもので ある。)。
この点、症例 レポー トとして亡輝民が準備 していた文書
は、 11月
13日 に感覚検査 として、 「 (表 在感覚検査)
(甲
17013頁 )で
検査方法 :刷 毛を皮
膚に軽 く当てる。感 じた刺激 の強 さを、右 を 10と して基準 とし、左下肢 の同部
位 ではどのよ うに感 じたかを数値 で応 えてもらう。」、 「
(痛 覚検査)検 査方法
:楊 枝 で皮膚 を軽 く指す。感 じた刺激 の強 さを、右 を 10と して基準 とし、左 下
肢 の同部位では どの ように感 じたかを数値 で応 えてもらう。」 を実施 した とある。
被告主張の検査はそ の内容か らして 「表在感覚検査」 であつて、 11月
12日 に
実施 された 「痛覚検査」ではない と考えられ る。
「
(2)こ の ように実施 した検査 自体 が事実 と異な り、同 日に他に 表在感覚検査」
を した患者 がい ないことか らして、 「こ んなや り方では意味がないか ら」 とい う
被告一裕会 主張 の亡輝民の実施 した検査方法が問題 があつた とい う事実は認 め ら
れない。 あたかも検査方法 が悪かつた とい う事実 をねつ造 してまで主張 しなけれ
ばな らい理由は、理不尽な叱責であつたことを否定せんがためであろ う。
症例 レポー トにおいて 「余計な検査を実施 しない・・ 00」 等 の記載 があ り、
亡輝民の検査方法に不十分な点があつたことは否めないに しても、■■バ イザー
よ り十分な説明も受 けられない 中で 「検査中止 」 と明言 された ことが、ただでさ
え緊張感 をもつて実習 に臨んでい る亡輝民 にとつて、大きな心理的負荷 となつた
ことは明 らかである。
6 11月 13日
(1)ま ず、被 告 一裕 会 の 「■■ バ イザ ー は実習 当初 か ら、 デイ リー に は必ず症 例
患者 の予定や 、 い ろんな患者 の検 査 の仕方 や検 査 の流 れ な どにつ いて 、 うま く行
った こ とや 失敗 した こ と、感 じた こ とな どを書 いて欲 しい と要望 を伝 えて い た」
とす る主張 は否 認 す る。
亡輝民の真面 目・ 従順な性格 か らして、具体的な指示を受けた ことを実行 しな
い とは考 えがたいこ と、また、後述す るように 13日 の前後でデイ リーの記載 に
つい て、前述 の日■ バイザーの指摘 を踏 まえて記載 された と評価出来 る内容が記
載 され るようになつてお り、亡輝民 が事前にこの ような説明を聞いた事実はない。
(2)被 告一裕会 の主張によつて も、デイ リーに前 日の検査が中止になつたことを
記載 しなかつた理 由について、検査 を中止になつたので書 く必要 がなかつた と亡
輝民 が返答 したのに対 して、 「ボイ コ ッ トしてい るの と同 じや で。今 日帰 る
か。」 と述べたことを認 めてい る。 「ボイ コ ッ ト」 とは一般的 に 「排斥」 「拒
否」 「抗議」等 の強 い否定的な感情 を伴 う行動 を意味するもので あるが、亡輝民
がデイ リー を記載 しなかつたことがそのような意味を持つ ものだ と言われ、 しか
も 「帰 るか」 とまで言われた ことに照 らし、 これ らの■ロバ イザー の言動 が亡輝
民に対 し、強い心理的負荷 をもた らす言動 となつたことは明白である。
「
(3)ま た、被告一裕会 は、 「次ぎや つた らやめてもらう」 とは 当該患者 に対す
る同様 の検査はやめて貰 う」 との意味であり、訴状で主張の 「実習をや めさせ る
趣 旨」 は 「独 自の解釈」だ と反論す る。
しか し、甲 6で は亡輝民は 「今 日はも う見せた くない、帰 るか」 と言 われ、 3
0分 程、 リハ室角 のスペースで待機 した上で、 「次ぎや つた ら終了」 と■■バイ
ザー か ら言われ てい るのである。 「終了」 とい う表現 か らして、実習を終了す る
とい う意味 として亡輝民が受け止めたことは明 らかであ り、被告一裕会 の主張 こ
そ詭弁に他な らない。
加 えて、被告一裕会 は 「待機」 と表現す るが、実際 には、亡輝民 は どうしてよ
いか分 か らず呆然 として空 きスペース にいたのであろ うか ら■Dバ イザー か ら声
を掛 けられ るまで、何を言 われるのか ビク ビクしなが ら時間を過 ごした と推測 さ
れ るので あ り、 「待機」な どとい うものではない。
(4)原 告は、ヨロ バイザーが同 日、業務終了後 に 「明 日のデイ リーはもう遅 い し
作 らな くてもいい よ」 と述べ たとす る点は不知 であるが、亡輝民 は同 日日付 の変
わった 14日 午前 1時 57分 までかか つて、 11月
‐7‐
13日 の実習 日誌及び 12,
13日 の症例 日誌 を作成 した
(甲
21)。
(5)こ のよ うに 12日 には亡輝民が実習 中に検査 の中止 を明言 され、 13日 には
「帰 るか」 とまで言われてお り、本来であれば実習中の大きな出来事 として把握
されるべ き事実経過 である。 しか し、甲 5の 報告書 ではこれ らの点について言及
が一切ない。■E担 任 が亡輝民か ら 「実習の顛末書」
(甲
6)と
して 11月 12、
13日 のこれ らの出来事 を聞いてい るにも拘わ らず、 12, 13日 の出来事 につ
いて■■バイザー に確認 を しなかつたのか確認 を したがその内容 を書 いてないの
かその点は原告 には分か りかねるものの、甲 5が 重要な事実経過 を全て伝 えるも
のでない とい う疑義 が生 じるだけでなく、近畿 リハ学院が重要な事実 を隠蔽 しよ
うと した意図があることを示唆する。
(6)
′括
Jヽ
以上の とお り、 13日 の一連 の出来事 は亡輝民 にとつて極 めて強 い心理的負荷
をもた らす もので あ り、そ うであるか らこそ、亡輝民 は翌 14日 に■■胆任 に相
談す るためのメール を送信 したので ある。
7 11月 14日
同 日、症例対象 の 患者 が休 み だ つ たた め、他 の患者 の検 査や 治療 を行 つ た こ と
等 、 同 日の実習 内容 は概 ね 認 め る。
また、被告一裕会 の主張によつて も■Bバ イザー 「亡輝民氏に症例患者 のレポ
ー トの考察を進めておくよう伝 えた」 とあり、翌 日、考察結果 を レポー トとして
提出することや、症例患者 が休みでも何 らかの検討 をして症例 日誌を作成するこ
とを明確に伝える指示内容 とはなつていない。
イザーに連絡されたか否かは不
亡輝民が担任に相談したことが、同日、日■レヾ
知 で あ る。
8 0
11月 15日
既 述 の とお り、 亡輝 民 は、前 日の
14日
-8…
に■ロ バ イザ ー よ り症例 患者 の レポ
― 卜の考察を進めるようにとの指示 を受け、翌 日に考察結果や症例 日誌を文書 と
して出せ るように してお くことまでの指示 は受けていなかつた。
この点、被告一裕会が主張す る 「亡輝民氏か ら朝 に提出 されたデイ リー と症例
レポー トを見ると、前 日の担当症例以外 の患者 のデイ リー部分 に関 しては、その
時の出来事 が記載 されてお り問題なかつた。 しか し、肝 心の担当症例患者 につい
ては、前 日休みではあつたが、本 日実施する検査内容や検査意義、動作 について
の考察など、報告すべ き ことは多 々あるにも関わ らず記載 が全 くなかつた。」 と
あ り、 ここでい う「症例 レポー ト」 とは、 「症例 日誌」のことか 「臨床総合実習
症例 レポー ト」の どちらを指 してい るのか明確 ではない。
いずれ に しても、亡輝民 は 「■E先 生 より、症例様についてのものが出ていな
い と言 われました。前 日お休みで したので、デイ リー は作 つていない事、 自室で
口を作 つていた ことを伝 えた」
レポー トの「
(甲
5)と
ころ、予想 に反 して■■ バ
イザー より 「見てなければ出さないでいいのか ?」 と問われ、亡輝民 は、担 当症
例 の考察 をして レポー トのたたき台は作成 してい ると述べた。 それに対 し、■■
バイザー より再度、 「見てなければ出さないで よいのか」 と、前 日の指示 とは異
なることを強 く言われたため、 どのよ うに返答すればよいのか窮 して黙 つている
と 「無視 してい るのか」 と言 われたものである。
この点、前 日に、亡輝民 としては、日■バ イザ ーの指示 どお りに 「考察を進
め」ていたが、明確な指示 を受けていない 「文書 の提 出」を求 められた亡輝民が
言葉 を失 つた状態 になることは容易 に推測 される。それ に対 して 「無視をす るの
か」と■■バイザーは突き放した表現をしたのであつて、前日の日■バイザーの
指 示 内容 か らして 明確 に指 示 を され て い ない 内容 の こ とが出来 なか つ た と して 、
この よ うに亡輝 民 を一方 的 に責 め る こ とが理 不尽 な言 動 で ある こ とは明 白で あ る。
この一 連 の経過 か ら して 、前 々 日の 13日 に続 いて さ らに亡輝 民 に強 い 心理 的
負荷 が かか つた と認 め られ る。
(2)ま た 、被 告 一裕 会 の主 張や 甲 5の 報告 書 では亡輝 民 が 自分 か ら学校 へ 帰 る と
言 つた とな つてい る (甲
5011頁
)。
‐
9‐
しか し、亡輝民 が作成 した顛末書では 「お詫 び したのです が、帰るように言わ
れま した。そ の後、 クリニ ックを出ま した。」
(甲 6・
2枚 日)と あ り、亡輝民
が 自ら学校へ帰るとはなつていない。 この点、辻 クリニ ックに勤務する近畿 リハ
学院の元同級生の■Dさ んとのメールのやりとりでは、「どうしました??大 丈
夫ですか ?連 絡下さい」
(甲
20の 2)と のメールに対 し、亡輝民は 「ご迷惑を
かけて申し訳ないです。『 帰れ』 と言われまして」
(甲
20の 3)と 返信 してい
る。また、このメールに対 し■●氏は 「『帰れ』 と言つた■■先生が焦つてはつ
たし」
(甲
20の
5、
下線代理人)と あり亡輝民自らが先に学校へ 「帰る」とい
つたものでないこ とは明白である。
「亡輝民 自ら帰 る」 と言 つた とす る被告一裕会 の主張、甲 5の 報告書の内容が
事実 に反する とともに、 ここで も■Dバ イザーの亡輝民へ の指導 が正当なもので
あ り亡輝民に問題 がある、原因は同人にあると主張せんがために事実をね じ曲げ
て主張がな されてい ることが分 かる。
(3)被 告一裕会 が主張する亡輝民が辻ク リニ ックを出た後に、自■ バイザーが近
畿 リハ 学院 の担任 の‐ 教員 に伝 えた内容は原告は不知 であるが、同 日問題 とな
つてい るのは、既述 のとお り、実習 日誌 と症例 レポー トに担当症例 の患者 の記載
が無か つたことであ り、そ のことが問題 となつてい る点について、原告・ 被告一
裕会間 にも争いがない。
しか し、被告一裕会の主張や甲 5012頁 では、一連 の経過 の他 「デイ リーで
大野君 が どう思 つてい るのか、何 を感 じたのか とい う心境や感情 の変化 が少なく。
何を考 えてい るのか分か らないこ とがある。そ の心境 などを持 つて書いて欲 し
い」 と要望を述べ たに過 ぎないのだ とした ら、そもそも、亡輝民が 日々作成す る
実習 日誌、症例 レポー トに何を どこまで書 くかについ て、日■ バイザーの事前 の
指示 が 明確 でなく、その場その場でそれまでには言われてないこ とを してい ない
として毎 日のよ うに叱責 を受け、亡輝民 が追 い込まれた状態にあるとい う問題 の
本質が何 ら理解 されていないこ とを示唆する。
前記 5の
11月 12日 について も、検 査が途 中で終わ つたものについての症例
‐
10‐
レポー トを作成 していないことが問題 となっているのであり、甲 6の 記載内容か
らも、亡輝民が、デイ リーや症例 レポー トに何をどこまで書くべ きなのかについ
て悩んでい ることが明らかなのに、その事柄に沿つたや りとりが、■●バイザー
と■D教員 との間でなされていない。
まさに、 このことは両被告が亡輝民の実習中における心理的負荷を軽減するた
めに必要な連携・ 協力を欠いていたこと、その結果、亡輝民に対 し強い心理的負
荷がかかっていたことを裏付ける重要な事実の一つである。
(4)な お、被告一裕会は、 「デイ リーや症例 レポー トの記載事項について、亡輝
民が■■バイザーの指示 に従お うとしなため、■■バイザー も同氏の教育 に苦労
している」との主張をする。 しかし、既述のとおり、■■バイザーの指示が明確
でないことから、デイ リーや症例 レポー トに何をどこまで記載すればよいのか亡
輝 民 が 苦慮 して い るので あ り、 亡輝 民 が 同バ イザ ー の 「指示 に従 わ な い 」 どこ ろ
か 「従 い よ うが 」 な いので あ つ た。
また、
15日 付 け以降 の症例 レポ ー
トでは、検査 の 目的、動 作 に つ いて の 考
察等 が具 体 的 に記 載 され てお り、被 告 一 裕会 の 準備 書 面
11頁 16行 日で■日
バ イザ ー が 指摘 した とす る 「検 査 内容 や検査意 義 、動 作 につ いて の 考 察 な ど、
報 告 す べ き こ とは 多 々」 を受 けて 記載 す るよ うにな つて お り、 亡輝 民 がバ イ ザ
ー の 指示 に的確 に応 えて い る こ とが 分 か る。 さ らには、
15日
に具 体 的 に指 摘
され る以前 には こ うい つた 明確 な指示 がな され て い な い た め に、 亡輝 民 が症 例
レポ ー トに この内容 まで盛 りこむ こ とを認識 で きて い なか つた こ とが裏 付 け ら
れ る。
(5)加 えて、甲 5の 実習全体を通 じての■■ バイザー による 「私 の指導にも前向
きに修 正・ 実践 して理解 しよ うとしていた」 (甲 508頁 下か ら 5行 日)と い
う報告内容や、実習 の 3週 日に入 つた時点での 「(19日 )彼 のこれまで の実習 の態
度や内容 を途中なが ら総合的に考 えると、是非来てほしい人材 と感 じていた。
リハ ビ リ責任者 も 0・ ・ 実習 の取 り組む姿勢か ら良い人材だ と感 じてい る様
子」
(甲
5014頁 、 30行 日)の 内容 からして、む しろ、亡輝民は‐
‐
11…
バイ
ザー の指示 を出来 るだけ応 じよ うとしていた姿勢 が窺 えるのである。
以上 より、亡輝民が 「バ イザー の指示 に従お うとしない」な どとい う主張は
極 めて失当である。
(6) /Jヽ 括
このよ うに、11月
12, 13, 14日 の症例 レポー ト、実習 日誌を巡るH
バ イザー とのや りとりは、 「検査を中止 したとはいえ」
だ さないでいいのか ?」
(13日 )「 見てなければ
(15日 )等 と難癖をつ けて亡輝民 に嫌が らせをしてい る
としか評価出来ない。
9 11月 16日
同 日に被告 一 裕 会 主張 の よ うなや りと りに沿 つた記載 が 甲 5に あ る こ とは認 め、
そ の事 実 の有無 は不知。
なお 、 亡輝 民 よ り 11月
15日
の一 件 につい て 、 「説 明 を聞 いて 後 ろを向 かれ
ちゃ い ま した 」 とい う事実 はな い。
10 11月 19日 及 び 11月 20日
同 日に被告 一 裕 会 主張 の よ うなや りと りを裏付 ける記載 が 甲 5に あ る こ とは認
め 、そ の事実 の有無 は不知。
11 11月 23日
この 日は、祝 日の ため辻 ク リニ ッ クは休診 日で、 亡輝 民 は実習 に行 つてお らず 、
被告一裕会主張のようなや りとりを■■けブバイザーとしていない。
12 11月 25日
同 日に被告 一 裕 会 主張 の よ うなや りと りを裏付 ける記載 が 甲 5に あ る こ とは認
め 、 そ の事実 の有無 は不知。
なお、症例発 表 に関連 して 本書 末 尾 に求釈 明 を行 う。
…
12‐
13 11月 27日
(水 )
(1)訴 状 で も記載 の とお り、亡輝民は、症例担当患者 の● さんが 10分 後 に接骨
院 の予約をとつていたことは知 らなか つた。 このことは、原告 ら遺族が亡輝民死亡
後 の平成 26年 4月
21日 、辻 クリニ ックを訪間時、■■バ イザー らに聞き取 りを
リハ ビ リ
行 つた際、同バイザー も 10分 後 に予約が入 つていたことは知 らず、‐
部長も■■ドイザーが知らない以上、亡輝民にも伝わつていなかつたと述べており、
「亡輝 民が知 って い た 」 とい う事実 はな い。 そ の余 の事 実 は不知 で あ る。
そ もそ も被 告 一 裕 会 主張 の とお り 10分 後 に接 骨 院 の予約 が入 つていた と して、
辻 ク リニ ック の 2階 リハ ビ リ治療 室 か ら身体 の不 自由な患者 を伴 っ て同ク リニ
ックを出て道 路 にお いて 6分 間 の歩行距離 を測 定 し前後 の脈 拍 を検査 し、 さ ら
にSPOの 計測等 を終 えて 同 ク リニ ッ クに連れ て 帰 るに はあま りに も短 く時 間的
に無理 が あ る。 予約 時間ま で
10分 しか な い 中 で 、そ の よ うな検 査 の指示 をす
る こ と自体極 めて不適切 で あ る。
(2)予 約 時間 を知 らされ て い な い亡輝 民 が ● さん の 当 日の体調 を配慮 して検 査 を
す れ ば 、多少 の 時 間 オ ー バ ー はあ り得 る。 それ に も拘 わ らず 、■■ バ イザ ー は
「何 してたん ?み ん な探 し回 つてた んや 」 と亡輝 民 を責 め、 「接 骨 院 の皆 も探
し回 つ た 」 「一 言謝 つて くるよ うに」 と亡輝 民 に指示 し、 亡輝 民 は これ に従 い
「謝つてきま した」と「神妙な顔つき」で■■バイザーに報告 した
(甲
501
8頁 )と 記載 されている。
予約 時間 を知 ら されず指 示 され た検 査 を して い た に過 ぎな い亡輝 民 とす れ ば、
なぜ 「何 を して い た のか 」 と問われ る事 にな る のか 、 また、 自分 が 謝 る必要 が あ る
のか分 か らな い とい う思 い が 「神妙 な顔 つ き」 とい う表情 に繋 が つた もの と推測 さ
れ る。
(3)既 述 のよ うに原告 らとの面談時には、■■ バイザー は接骨院の予約 のことを
知 らなかつた と言 つてお り、実際の ところ■■ バイザーが知 つていたか否 か原告 に
は事実は分か らない。 しか し、仮 に知 つていてEバ イザー が亡輝民に予約 の時間
を告げることな く、そもそ も時間的 に無理な検査を指示 したのであれば、 これは、
-13-
■■バイザーに陰湿な嫌がらせの意図があつたと評価せざる得ない。
14 11月 28日
(本 )、
11月 29日
(金 )
被告 一 裕 会主張 の事実 に 沿 つた 内容 の記載 が 甲 5に あ る こ とは認 め る。
なお 、 29日 にチ ェ ックを した レジ ュ メ とは 甲 18の こ とと考 え られ るが、●
イザーが具体的に改善点を指摘 したとい う中の 「1.空 白箇所が多いのでもつ
ロレヾ
と検査内容や評価内容を書 くように。」 との点は、甲 18の どの箇所 が 「空 白箇所
が多い」 とい うことなのか、明らかにされたい。
3 ,
第 l α
同「第 3
法的評価 について」 に対 して
「 1 原告 の主張する注意義務違反及 び注意義務違反行為」に対 して
ヽ
被告医療法人一裕会 の責任 について
原告 は、被告一裕会 については、民法 715条 による不法行為 の使用者責任
をその責任原因 として主張 してい るが、以下 の とお り、被告一裕会 の安全配慮
義務違反 を理由とす る債務不履行責任 の主張を追加する。
(2)被 告一裕会 の安全配慮義務
被告一裕会 は、実習生を被告高寿会 か ら受け入れ るに際 し、被告高寿会 との
間で実習生受け入れ に関す る契約 を締結 して い ると考 えられる。そ して被告一
裕会 は、上記実習生受け入れ契約に基づ き、実習生に対する専門的な現場研修
を実施す るのであ り、実習生受け入れ研修機 関 として、被告高寿会 に準 じた実
習生に対す る安全配慮義務 を負 つてい ると解すべ きである。
被告高寿会が在学中の学生に対 して安全配慮義務を有 しているのは明らかで
あるが、被告一裕会 は被告高寿会 との契約 により、被告高寿会 に代わ つて学生
に対す る実習形式で の研修 を実施す る機 関 となつたのであるから、被告高寿会
が負 つてい る安全配慮義務 を継承 し、被告一裕会 もまた実習中の学生に対 して
安全配慮義務 を負 うことになると解すべ きである。研修機関たる医療機関 と実
実習生が研修機関の指揮命令や指導 に服す る一種 の従属関
習研修生 との関係 は、
…14
係 であ り、専門学校 と生徒 との関係 と同 じと評価 しうるものである。
(3)被 告一裕会 の安全配慮義務 の内容
。
実習 が学生にとつて緊張感を強い るもの となつてい ることは、各種 の研究 調
査か ら明 らか となつてい るが、研修先 である被告一裕会 としては、学生に対す
る現場での専門教育 を実施する機関 として、実習 にともな う学生 の心理的負荷
に配慮する義務を負 い、 「嫌 が らせ、い じめ」な どのハ ラス メン トが生 じるよ
うな事態 を発 生 させてはな ら無 いことは当然 として、さらに学生 に精神障害等
の心身 の不調 をもた らす よ うな強い心理的負荷 がかかることがない よ うに十分
に配慮する義務を負 ってい るとい うべ きである。
(4)注 意義務違反ない し安全配慮義務違反 があること
前記第 2で 指摘 したとお り、■■バイザー の言動 は亡輝民に対す る嫌 が らせに
該 当す るもの、また、亡輝民 に対 し心理的負荷 をかけるものであ り、被告一裕会 に
は注意義務違反 ない し安全配慮義務違反 が認 め られる。
2
「2
相 当因果 関係 」 に対 して
以 上 の義務 が尽 くされず 、 亡輝 民 に強度 の心理 的負 荷 がかかつた こ とに よ り亡
輝 民 が死 亡 前 には うつ 病 に 罹患 してい た と推 測 され 、 うつ 病 の症 状 の一 つ で ある
希 死念 慮 か ら自殺 に い た つた こ とか ら被 告 一 裕 会 の安全配慮 義務 違反 と亡輝 民 の
死 亡 には相 当因果 関係 が認 め られ る。
第4
求釈明
原告 は被告一裕会 に対 し、基本的 な事実関係 を認定する上でいずれ も必要な
事項 であることか ら、以下の点についての釈明 を求める。
1
■■ バイザーの略歴
(1)理 学療法士の資格 を取得 した時期
(2)亡 輝民 の実習担当にあたるまでの実務経験 は具体的に女口何 なるものか
(3)実 習時 のバイザー としての具体的経験 の内容
‐ 15…
2
実務 日誌、症例検討 の記載 内容についての説明・ 指導
亡輝民 に対 しこれ らの文書 の記載内容 について具体的 に どの ような説明・ 指導
を したのか
3
実務 日誌、症例検討 の取扱 い
症例検討
(甲
15)、 実務 日誌
(甲
16の 1)は 、 ピンクのファイルに綴 じら
れたものを亡輝民死亡後に辻 クリニ ックが近畿 リハ学院 に返還 し、原告 は近畿 リハ
学院 か らさらに返還 を受けた ものであるが、通常、 これ らの文書は どのような取扱
いがなされてい るものなのか。
このファイルに綴 じて辻 ク リニ ックで保管 されてい るものなのか、亡輝民 が 日
誌等を■ロバイザーに内容を検討してもらうために、綴じたものを■■バイザーに
提 出 して返還 を受 け るよ うにな つて い た のか。
4
実務 日誌、症例検討等 の亡輝民作成 の文書へ の書き込み の特定等
(1)亡 輝民が実習中に作成 したこれ ら文書 の中に、所 々に赤色等で指導者 の手書
きによる添削ない し指導 の コメン トと考えられる記載 があ り、日■ バイザー らによ
るものと考 えられる。
そ こで、各記載 について 、日■ バ イザーまたはその他 の辻ク リニ ックの理学療
法士 らの誰 が記載を したものかを特定 されたい。
(2)デ イ リー について、 11月 19日 以降、 「反省点」 とい う項 目が新 たに設 け
られ記載 され るようになつたが、 この記載 に関連 して、誰 が どの ような指示 をした
のか明 らかにされたい。
5
症例発表 の 日程等 につ い て
(1)症 例発表 の 日程 につい て は、 当初 、 いつの 時点 で 具体 的 に どの よ うな内容 で
決 ま ってい た のか
‐
16‐
「初期症 例発 表 」 の他 、 「中期」 、 「最終期 」 とい つ た発 表 は ある のか
(2)前 期 (1)の 内容 は事前 に 亡輝 民 に説 明 がな され て い た のか
(3)被 告 一 裕 会 の 主 張 にお い て 11月 25日 に 「■■ バ イザ ー は、 亡輝 民氏 の 間
題 点 の抽 出 が未 だ不 十分 あ るので 、 亡輝 民 と相談 して症 例報 告 を 29日
(金 )に 延
期す る こ とと した 。 」 とあ るが、何 を根 拠 に 「問題 点 の抽 出 が未 だ不十 分 」 と判 断
したのか。
そ の対象 とな つた症例 レポ ー ト等 の亡輝 民作成 の文 書 が あ るので あれ ば 、 それ
を特定 され た い。
(4)前 記 (2)と 関連 して 、 11月 25日
(甲 1507枚 目、 「 11/26(月
に提 出を され た と考 え られ る症例 レポ ー ト
)」
との記載 が され て い るが、 25日 に誤 り
で ある。 )で は、 「今 回提 出 を した レポ ー トの 内容 で は 」 とあるが、 この レポ ー ト
は どれ か 特 定 され た い。
(5)11月 25日 に予 定 され た初期症例 の発表 の延 期 が 決 ま っ た のはい つ か。
‐17…