北海道の自然学散歩-8「道南・乙部町海岸の奇岩類」 北海道の自然学散歩-8「道南・乙部町海岸の奇岩類 」 道南地方の日本海側は、変化に富んだ海岸線が展開しているが、 丁度魚の尻尾のくびれた部分に当たる乙部(おとべ)町の海岸線約 15kmの間には、地学的に興味深い地質・奇岩が多数集中している。 その中でも代表的な四ヶ所を南から北へと順を追って紹介しよう。 この地域の海岸線の岬付近は、厚い砂岩層の露頭や海底火山より噴 出した安山岩層が奇岩や柱状節理を形成していて、珍しい景観を見 せてくれる。 【滝瀬海岸のくぐり岩】: 海岸の砂浜に突き出た砂岩層の壁に人が通れるトン ネルができており、 「 くぐり岩」と名付けられている。 穴は昔、人の手によって掘られたもので、ニシン漁 のために漁師の陸路として使われていたとのです。 穴の付近の層準はきれいな地層の重なりを造ってい るが、その上方を見ると成層構造が大きく乱れてい て、これを地質学ではスランプ構造と呼んでいる。 まだ完全に固結しきっていない堆積物が地震等の外 圧により水底の斜面を滑り落ちるなどして不規則に 変形することにより生じる現象です。 【館(たて)の岬の白亜の崖】: 館の岬周辺の海蝕崖には,ほぼ水平な互層からなる 地層が見事に露出している。この露頭のそばには説 明看板があり、それには「白亜の崖」という名前が 使われていた。おそらくドーバー海峡のチョークの 露頭をイメージしたものであろう。 この露頭を構成する地層は 300~500 万年前に広 い海底に堆積した白い砂岩・珪藻質シルト岩 と 黒色の礫岩の整然とした互層より成る。 右下にトンネルが見え、崖の高さが推測できよう。 (写真は光線の加減で実際より黒く写っています) 【元和漁港の窓岩】: 突符岬にある元和漁港には岩礁が広がっているが、 一か所だけ高さ約 20mの岩塔が残っている。 これは安山岩の火山岩で、マグマが海水と反応し急 速に冷やされて固まった「水冷破砕岩」という硬い 岩で出来ており、風波に耐えて残ったものです。 以前は岩の中央部に窓状に開口部があったのです が、一部分が崩落して写真の様な形になりました。 筆者は「アヒル岩」と名付けて写真を撮りましたが、 皆様はどの様に見えますか? 【鮪(しび)の岬】: 岬の形がマグロの側面に似ていることや、独特の岩肌 がマグロのウロコのように見えることから鮪の岬と呼 ばれています。 上部は鉛筆のような六角形の岩が積み重なり、下には柱 が立ち並んだようなこの独特の岩肌は湾曲した柱状節 理で、北海道の天然記念物に指定されています。 成因はこの岬全体が火山より流れ出た比較的粘度の高 い安山岩溶岩だったので、盾状に固まって徐々に冷えた ため、節理が上に行くほど曲がった状態でできました。 その後日本海の波蝕を受けて下の部分が削剥され、現在 の様な形になったのです。
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