2015年07月号

NO.38
発行日
:2015年7月1日
連絡先
國分富夫(会長)
原発事故被害者
相双の会
住所
〒975-0017
南相馬市原町区牛越字遠藤 88-3
電話 090(2364)3613
メール [email protected]
事務局
鈴木宏孝 090-2909-6133(浪江)
関根憲一 090-4889-3726(富岡)
板倉好幸 090-9534-5657(南相馬)
原発事故被害者の「生の声」に胸痛む
原発被災者義援の会・代表
矢内
世夫
(富岡町出身)
◆「原発被災者生活保障法」制定目指し
て
3・11 以降、私の一族 28 人も避難生
活をしており、事故直後から支援活動を
続けてきた。目的は「原発被災者生活保
障法」(別記骨子)の制定である。東京電
力の損害賠償の打ち切り後に、多数の生
活困窮者が出ると予想したのであるが、
既に現実化している。
昨年、幸いにも衆議院法制局の協力を
得て法案・骨子がまとまり、今年4月か
ら、福島県内の仮設住宅などで法案の説
明会を始めた。序に出席者にアンケート
をお願いし、今回、中間集計の形で小冊
子にまとめた。国会議員に配るためであ
る。標題は「これが福島の現実です!」
(副題:原発被害者の「生の声」
)。
る積りだった。だが、今回のアンケート
回収で、表面的なことしか分かっていな
かったと再認識した。
アンケート用紙に、国、県・市町村へ
の要求などを書く欄を設けたところ、回
答者の 75%が長短さまざまな書き込み
をしてくれた。その2~3例を紹介して
みる。
(その1)憎いとしか言いようがない。
避難者を馬鹿にしている(浪江、34 歳男
性)。
(その2)財産を汚した責任を強く感じ
てほしい。家や田畑を守ることがどれだ
け大変で大切か、日本の農業を守る大事
な仕事をしてきた 40 年。こんな形で終
わることがどんなに辛いか、政府や東電
の人たちには分からないだろう。これで
はダメだと土地を見つけ家を造ったけ
れど、今までの生活にはならない。友達
がいない。田畑がない。庭は少しで何も
できない。これで賠償したと言うのだろ
うか(浪江、61 歳女性)
◆アンケートに見る声
私は事故 100 日後から、たびたび福島県
に足を運び署名集めをしてきたので、被
害者の避難と生活の実態は分かってい
1
(その3)除染後の廃棄物で町中が覆わ
れている今、そんな所に帰そうとしてい
るのが現実。活字に左右されているの
か? もっと被災地の現実を見るべき
です。他人事ではないのです(富岡、59
歳女性)
被害者の生活支援に関する
法律案・骨子要約(矢内世夫起案)
◆目的 略
◆援護対象者の条件
1.指定市町村に住所があったこと(指
定市町村は政令で定める)
2.避難指示の長期化により失業したこ
と(事故当時、高齢等で就業、就職し
ていなかった者、及び生計を同じくして
いた学業者、単身赴任者も含む)
3.住居費、生計費面で生活困窮状態に
あること。
4.上の条件を満たす世帯単位に援護す
ること。
◆生活困窮状態
1.住居費を継続的に払えないこと。
2.恒常的に日常の生活費に事欠くこと。
3.世帯単位の可処分所得(収入から税
金・保険料等必要経費を差し引いた残
額)が、恒常的に標準生計費に満たない
こと。
◆標準生計費(家計支出統計に基づき政
令で定める)
(財)日本統計協会が定期的に各県庁所
在地で家計支出をサンプル調査してい
るが、大震災年度の福島市の統計による
と、世帯人数 3.12 人、月間家計支出
300,527 円(住居費を除く)、1人平均
96,322 円(参考)
◆援護施策の3本柱
1.長期・安定賃金を得られる職業の斡
旋(無料)
2.住居困窮者に対する公営住宅または
それに準ずる住宅の提供(有償)
3.生活困窮世帯の可処分所得が標準生
計費を下回る差額部分の金銭給付
以下略
◆差別が壊す住民の絆
上の気持ちは被害者共通の思いだろ
うが、敢えて紹介した。これらの書き込
みを総括して分かったことは、被害者の
人心が凄まじいほど荒廃していること
である。
被災地を3つに線引きし、帰還困難区
域を優遇扱いした結果、不条理な差別と
賠償格差が出たことが原因である。富岡
の 75 歳女性は「国は帰還困難区域のみ
手厚い賠償を行い、その他の区域を軽ん
じています。このような差別は町民の間
の絆を壊してしまい、かつての友人達と
も疎遠になってしまいました」と嘆いて
いる。
◆神も仏もない帰還強制策
国は被害者の嘆きや怒りに、どう応え
ようとしているのか。
5月、自民党の東日本大震災復興加速
化本部が、帰還促進策を発表した。帰還
困難区域を除き、精神的損害賠償(10
万円)を 18 年3月で打ち切るという。
多くの原発被害者にとっては「神も仏も
ない帰還強制策」になるだろうと思われ
る。なぜなら「10 万円がなくなったら生
活できない」とアンケート多数派は書い
ているのである。
2
20 世紀が 21 世紀に残した最悪の負の遺産=原発
治療費を全額支払いを県が行うと報じ
ました(県外に住民票を移した人の自己
負担分も全額支払う)。当然と言えば当
然だが、本来は国策として進めてきた国
が方針を立てるべきでしょう。
福島の原発事故で、これから何十年も、
いや何百年も放射能との闘いが続くの
です。
20 世紀は核武装のための核開発とし
て原発が造られ、命を脅かし地球そのも
のを汚してしまっているのです。原発開
発が何百年何千年のつけをつくってし
まいました。後始末は孫、ひしゃご…と
何代も続くのです。
私たち 20 世紀の世代が最大の汚点を
残してしまった事に責任を持つことで
す。
賠償や支援が打ち切りになったら、生
活困窮者が続出する事は目に見えてい
ます。
今後の生活見通しがないまま帰還し
ても、特に子供や高齢者のいる家庭の事
情は深刻でしょう。家族がバラバラの状
態がかえって固定化してしまうかもし
れません。
晩発性障害についてまだまだ分から
ない事が多くありますが、これで安全と
言う保証はどこにもありません。
2015 年 2 月 12 日に公表された最新の
調査報告書によると、福島県の小児甲状
腺がん及び疑いの子供達は、1 か月半前
…前回の 112 人から 5 人増えて合計 117
人になりました。福島民友新聞(6月 24
日)は、原発事故時18歳以下の甲状腺
3
現実を理解できない裁判官では困る
裁判も 11 回目(6 月 10 日)にしてやっと本
あなたは故郷を失ったわけではないということ
人尋問に入りました。私たちは裁判などとは縁
ですか」という質問をしてくる。原告が「故郷
の遠いものでしたが、今裁判を経験して裁判官
喪失に対する損害賠償」を求めている意味がわ
は被害者いじめなのかと思われるところが多く
かっていない。
「何十年後か分からない」自分の
あります。東電と国が 100%悪いにも関わらず
代に出来ないかも知れないが、子どもたちの代、
腹が立つことばかりです。
その次の代に再興したいと言うことなのです。
やっと提訴が出来たと思ったら一回目の裁判
被害者に対しこのような愚問を発するのが裁
になるまでの時間があまりにも長い。その間に
判官の対応なのです。現場検証をしていないか
何人の方が亡くなったでしょうか、この切羽詰
らこのような発言がでてくるのではないでしょ
まった被害者の気持ち環境を理解しているので
うか。
しょうか。裁判官の現場検証もいまだにやらな
弁護団、原告団は、今年 12 月に結審し来年2
いのである。現場が分からなくて何が出来るで
月頃には判決を出さないと、被害者は高齢者が
しょうか。
多い。毎月裁判を開催し、3人の裁判官が別れ
て行えば3倍速く進行が出来るのではないかと
やっと本人尋問に入れば、今度は被害者に対
進言しています。しかし全てにおいてノラリク
して重箱の隅をつつくような尋問ばかり。
ラリの対応です。
裁判官は原告が「将来は双葉に戻りたい。双
葉の農地を再興したい。
」と供述すると、
「では、
精神科医 蟻塚亮⼆(ありつかりょうじ)さんの講演会を開きます
10 ⽉ 11 ⽇(⽇)10 時〜
南相⾺市(詳細は後⽇)
◇1947 年⽣まれ。1972 年弘前⼤学医学部卒業。2004 年に沖縄県に移住。沖縄戦体験者の「晩発性 PTDS」
とりくみ、2013 年4⽉から相⾺市に移住してメンタルクリニックなごみ所⻑として原発事故による PTDS
と向き合う(昨年 NHKETV 特集で紹介)。
◇蟻塚さんの著書の⼀部を紹介します 『沖縄戦と⼼の傷』(⼤⽉書店 2014)から。
「いつになったらこの街は昔のように賑わいを取り戻すのか、それとももう⼆度とあの賑わ
いは戻らないのか、それすらもわからない。…⼈は『⽩か⿊か』といわれたほうが、いっと
きつらくても受け⼊れやすい。『⽩でもなく⿊でもない、灰⾊の状態』にほったらかしにさ
れることには耐えがたい。そんな『どっちつかず』のあいまいな苦悩を毎⽇感じながら⽣活
していると、些細な落胆にも、ふっと死にたくなる。…このような精神状況と、岩⼿・宮城
と異なって福島県だけが⾃殺者が増えていることとは無関係ではないと思う。
「相双の会」
会報に ご意見を
是非ご投稿をいただき「声」として会報に載せたいと考えています。
匿名でもけっこうです。
電話 090(2364)3613 メール(國分) [email protected]
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