質問状

2015年6月4日
福島県知事
内堀 雅雄
殿
避難・支援ネットかながわ
代表 坂本 建
公 開 質 問 状
質問にあたり、
「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り
支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」を「子ども・被災者支援
法」と略します。
当公開質問状は、5月28日福島県企画調整部 避難地域復興局 避難者支援課 主査 吉田 勝敏
様にお渡しした福島県知事 内堀 雅雄 殿に宛てた、避難・支援ネットかながわ(以下、当団体)
からの「子ども・被災者支援法」の理念に基づく7項目の実現を求めた「要求書」について、ご
検討の結果等をお尋ねいたします。下記事項に関し、福島県としての見解をお示し下さい。
1.応急仮設住宅の供与期限
① 災害救助法に基づく1年ごと延長の応急仮設住宅の供与期限を撤廃し、相当の長期間無
償提供する事を求めました。ご検討等の状況を教えてください。
子ども・被災者支援法の第1条には、被災者の不安の解消及び安定した生活の実現に寄
与することを目的とする、と明記されています。
東京電力原子力事故から4年が経過しましが、現在も続く福島第1原子力発電所からの
放射能放出と廃炉への進捗状況では、今後数年で帰還する事は叶わず、早急に安定した
生活への見通しを立てることもできません。
②
国が自主避難者の住宅供与を2016年度末に打ち切ることを検討していることに対
し、現時点で期限を決定しないこと、自主避難者を生活困窮に追い込むことのないよ
う強く求めました。ご検討等の状況を教えてください。
これまで、自主避難者は、不安や恐怖といった理由により自主的に避難したとされて、
科学的根拠がないなどと非難にさらされることもあり、経済的、精神的に大きな負担
を抱えて避難を継続してきました。多くは子どもを抱えた若い世帯であり、避難によ
り、二重生活を余儀なくされ、離婚に至った世帯も少なくありません。この様な状況
下で、住宅供与打ち切りを決定するのは時期尚早です。現に福島県の放射能汚染は放
射線管理区域と同等なのが実状です。このまま解除すれば数万人の自主避難者に更な
る精神的荷重を強い、憲法25条生存権を侵害しています。
2.応急仮設住宅の住み替え要件の緩和
子ども・被災者支援法 基本理念、第2条第2項に則り、避難が継続出来るよう避難先住宅
事情(家賃、居住面積等)も考慮の上、住み替え条件を緩和することを求めました。ご検討
等の状況を教えてください。
3.被災者を対象とした公開公聴会の開催
子ども・被災者支援法 基本方針第5条第3項に則り、避難者の意見を反映させる事を目的
とした自主避難者を含む全ての避難者を対象とした公開公聴会の開催を求めました。ご検討
等の状況を教えてください。
4.避難の権利基準の修正(年間1ミリシーベルト)
新たな避難者に対する支援として、みなし仮設住宅の受入れ再開を求めました。ご検討等の
状況を教えてください。
子ども・被災者支援法 基本理念、第2条第3項には外部被ばく及び内部被ばくに伴う被災
者の健康上の不安が早期に解消されるよう、最大限の努力がなされなければならないとあり
ます。不安の原因は、事故直後の被ばくによる次世代にわたる健康リスクと現在も続く追加
被ばくです。国際的基準である公衆の被ばく限度年間1ミリシーベルト(内部被曝と外部被
曝の合算)を「避難の権利基準」として定め、原発人災による追加被ばくを受認しない避難
者には避難の選択権を与えるべきです。
5.国による保養の実施
現在行われている保養に、国家体制で取り組むことを国に福島県として求めていただくよう
求めました。ご検討等の状況を教えてください。
子ども・被災者支援法 基本理念、第5条第5項子ども(胎児を含む)が放射線による健康
への影響を受けやすいことを踏まえ、その健康被害を未然に防止する観点から放射線量の低
減及び健康管理に万全を期する。また法制上の措置等第4条には法制上又は財政上の措置を
講じなければならない、とあります。
6.検診の提供と医療費の減免措置
原発人災により年間被ばく1ミリシーベルト(内部被ばくと外部被曝の合算)を超える被ば
くをした被災者(被害者)と超える怖れのある地域に住まざるを得ない被災者(被害者)に
「被爆者手帳」と同等の権利を持つ「被曝者手帳」の交付を国に福島県として求めていただ
くよう求めました。ご検討等の状況を教えてください。
子ども・被災者支援法 放射線による健康への影響に関する調査、医療の提供等、第13条
第2項には、一定の基準以上の被ばくをした者に対し生涯にわたる健康診断の実施、健康影
響の調査について必要な施策を講ずるもの、とあります。
「一定の基準以上の被ばく」とは被害者が決める事であり、それは公衆の被ばく限度年間1
ミリシーベルト(内部被ばくと外部被曝の合算)と考えます。また同3項には被災者、そし
て被災者たる子ども及び妊婦が放射能被害により医療を受けた費用負担を生涯にわたり減
免する措置を講ずるものとするとあります。
放射能による健康被害はまだ未解明な部分があるとはいえ、福島県民健康調査では小児甲状
腺がん診断数が100人を超え、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う被ばくによる
過剰発生ではないとは言い切れないのが現段階です。
国民を守ってください。お願い致します。
7.原発事故賠償に関する新たな制度の検討
原子力損害賠償制度に公平性、正当性が担保されるよう構成委員に、原発事故被害者とその
法的救済に当たっている専門家(被害者側代理人)、原発立地地域と周辺地域住民代表の召
集を国に福島県として求めていただくよう求めました。ご検討等の状況を教えてください。
原子力委員会の下に設置された原子力損害賠償制度専門部会(部会長=濱田純一・前東京
大学総長)が2015年5月21日に、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏ま
えた賠償制度の見直し作業を開始したと報じられています。しかしながら構成委員に原発
事故被害者、被害を受けた住民の委任を受けて実務に当たっている弁護士(賠償の法的専
門家)、今後事故が起きたときの潜在的被害者となりうる原発立地地域住民の代表が選ばれ
ていないようです。そのような委員会に於いて現在検討が進められようとしている、事業
者に対する現行の無限責任制度を廃し、有限責任制度を取り入れようとすることに原発人
災被害者として断固反対します。
8.放射能汚染のある福島県内への帰還
5月28日福島県企画調整部 避難地域復興局 避難者支援課 主査 吉田 勝敏 様にお渡し
した「磐越自動車道の PASA の汚染マップ」と現在の帰還政策について福島県としての見
解と対応策をお示しください。
「磐越自動車道の PASA の汚染マップ」からは、避難指示区域外にも福島県内広域に放射
能汚染されていることが読み取れます。しかし、現在の県政は帰還政策に重きがおかれてい
ます。また、自主避難者に対する避難継続支援および避難先での生活再建策は微々たる状況
です。現状で、応急仮設住宅の無償提供を打ち切ることは、多くの生活困難者を生むことが
容易に予想されるため、福島県民の命に係わる問題として、真摯にご対応いただきたくお願
いいたしました。
9.ご回答を求める期日
内堀雅雄福島県知事はじめ県職員の皆さまにおかれましては、大変ご多忙のところ短い期
日で申し訳ございませんが、以上の8項目のご回答を2015年6月8日までにいただけ
ますようお願いいたします。
以上