大阪大学基礎工学研究科 未来ラボ「デザインバイオニクス研究拠点形成」 神経回路ネットワークのレーザー操作 産業技術総合研究所 健康工学研究部門 細川 千絵 神経回路網は様々な機能分子の活動に応じて細胞ネットワークを動的に変化させ、情報処理を行う生体 システムである。個々の神経細胞は電気的活動とシナプス結合を介した情報伝達を行うことにより脳の情報 処理を実現している。我々は、この過程を能動的に、かつ非接触に操作可能な技術として、レーザー光を利 用した細胞操作技術の開発に取り組んでいる。 集光レーザービームを用いた細胞内分子動態の時空間制御 細胞 機能分子 分子動態 空間 nm ~ μm 時間 μs ~ s エネルギー kT ~数100 kT 階 フェムト秒チタンサファイアレーザー (波長800 nm, パルス幅~100 fs, 繰り返し周波数 80 MHz) 間 0 sec 対物レンズ 内部状態 層 【集光フェムト秒レーザーによる神経回路網の局所操作】 ヒト 細胞ネットワーク 8 sec 動的平衡状態 相 互 観測 作 用 多点電極上の ラット海馬分散培養系 レーザー光 焦点位置 摂動 培養中の 神経細胞 レーザー光を用いて、単一シナプス・ 単一神経細胞を操作する 近赤外レーザー光 フェムト秒レーザーの多光子吸収 に基づく選択的な切断 電極 (50 x 50 μm) 【光ピンセットによる神経シナプス操作】 従来法 単一粒子のみ光捕捉 10 μm 本手法 複数粒子が光捕捉され、 集合する。 神経電極を破損することなく、神経突起の一部を選択的 に切断することができる。 熱運動エネルギー kT ~1 μm 光捕捉ポテンシャル マイクロ粒子 神経回路網再生過程の定量評価 |Utrap| レーザー照射前 レーザー照射後 |Utrap| ∝ 粒子体積×レーザー光強度 神経シナプス 分子会合や核生成を誘起 8x8(64点) 細胞外電位 フェムト秒レーザー 計測皿 神経回路網のレーザー 切断による自発的活動 電位変化 単一神経細胞内シナプス領域の光捕捉 ラット海馬神経細胞 (培養17日目) FM1-43 色素でシナプス小胞を蛍光染色 250 μV 同期 非同期 レーザー切断後10日で神経回路網が再生 相互相関係数 Cxy(0) 相互相関関数の半値幅 (ms) レーザー照射後 レーザー照射前 300 ms 神経再生を促進する化合物 のアッセイ法としての有効性 を実証。 10 μm 主要な研究業績 1.0x10 シナプス領域の蛍光強度変化 fluorescence intensity fluorescence intensity (counts) 集光スポット内の蛍光スペクトル 1.0x10 4 0.8 0.6 0.4 0.2 500 550 600 650 700 wavelength (nm) ・ C. Hosokawa, S. N. Kudoh, M. Suzuki, A. Kiyohara, Y. Hosokawa, K. Okano, H. Masuhara, and T. Taguchi, Appl. Phys. A, 101, 423 (2010). 4 0.5 捕捉粒子濃度の増加 0 20 40 60 80 time (s) レーザー光(波長1064 nm)による 色素からの二光子励起励起蛍光 神経細胞内シナプス小胞群が集光スポット内で捕捉され、 集合することを見出した。 ・ C. Hosokawa, S. N. Kudoh, A. Kiyohara, Y. Hoso-kawa, K. Okano, H. Masuhara, and T. Taguchi, Appl. Phys. A, 93, 57 (2008). 0 ・ C. Hosokawa, S. N. Kudoh, A. Kiyohara, and T. Taguchi, NeuroReport, 19, 771 (2008). ・ S. N. Kudoh, C. Hosokawa, A. Kiyohara, T. Taguchi, and I. Hayashi, J. Robot. and Mech., 19, 592 (2007). ・ 特開2009-118817
© Copyright 2025 ExpyDoc