【特別講演】 W. ディズニーのメディア戦略:ネオ(Matrix)とルーシー(Lucy)の日常 元山千歳(京都外国語大学) 映画は社会や時代を映すことはない。というのも映画は一つのメディアにすぎないからだ。出来事と記憶をテ クスチャーとするメディアは時空を越えて意味をつくりこれを共有させる。われわれは、自然環境、家庭、居酒 屋、スポーツ競技場、ディズニーランド、テレビや映画などさまざまなメディアと多元交錯的に関わりながら日 常をつくる。 メディアはだから戦略的である。W. ディズニーのアニメとランドが戦略的であるように。巨大メディア企業 を問題にするのではない。ノスタルジアとファンタジーというもう一つの現実をアニメ映画やランドとしてつく りつづけていることの文化的意味を問うのである。 この問いかけは、ネオとルーシーの戦いに似ている。われわれはハイパーリアルな日常にゆったり気分で浸か ったままでいいのかどうか。もしそれが映画というマスメディアなら、われわれはこれにどのように戦略的に関 わることができるかを問いかけてみたい。 【シンポジウム】 西洋文化圏における「女性的主体」のコミュニケーションの特徴について 北本晃治(帝塚山大学) 一般に、物事を分節、焦点化し、明確な意味体系を打ち立てようとする言語意識に価値を置くことを「男性的」 、 物事によって喚起される感情・感覚的非言語機能が生み出す曖昧性や一体感を重視することを「女性的」と定義 するならば、それぞれ、前者は西洋的主体の、そして、後者は日本的主体のコミュニケーションの特徴を説明す るのに有効な「対概念」として捉えることができるであろう。それでは、実際の身体的性別における「女性」の コミュニケーションは、 「男性的」と考えられる西洋的文化の文脈では、一体どのような影響を受けるのであろう か。本発表では、そのような状況下にある二人の女性主人公、 「アナ」と「エルサ」の対照的な姉妹関係と、そこ で展開されるコミュニケーションの特徴について、ラカンの「性別化の図式」における「男性的」 「女性的」の対 概念が示唆するそれぞれの属性をヒントとしながら、その考察を進めていく。 ディズニーアニメの女性像 藤倉なおこ(京都外国語大学) ディズニーアニメの人気代表作『眠れる森の美女』 、 『白雪姫』 、 『シンデレラ』などは、ジェンダー・ロールや 男女のステレオタイプを助長しそれを観るこどもたちに植えつけるとして研究者から批判を浴びてきた。近年で は『ポカホンタス』 、 『ムーラン』 」など従来の「女の子らしさ」とは違う性格の女性を主人公にしたアニメも登場 するようになった。その流れの中で空前のヒットを記録した『アナと雪の女王』は、今までのお姫様と王子様が 結ばれる過程が物語の中心であったディズニー作品とは違い、ジェンダー・ロールにとらわれない新しい女性像 を提案していると絶賛されている。 『アナと雪の女王』 」は二人のお姫様、アナとエルサを通してのどのような女 性像を提示しているのかこの発表で考えてみたい。 英語授業における『アナと雪の女王』の語学的活用法 飯田泰弘(大阪大学・院生) 『アナと雪の女王』大ヒットの陰の功労者は、Pixar 作品ファンには馴染み深いと思われるジョン・ラセターで あろう。Pixar 時代から台本をよく練り込む彼の作品らしく、本家ディズニーに「呼び戻された」あとの本作品に も興味深い英語が数多く登場する。そこで本発表では、英語授業に役立ちそうなシーンを取り上げつつ、 『アナ雪』 に語学的観点から光を当てたい。具体的には、語の観点から比較文を、音の観点から二重母音を、文法・意味の 観点から否定文を、それぞれ(1)、(2)、(3)のセリフを使って考察する。特に(3)は、否定文中の or を「か」と訳す と英語と(大人の)日本語で解釈が異なることを示す良い例であり、この点からも正しい日本語理解の重要性や 言語獲得における議論にも触れたい。 (1) Anna : You look beautifuller. I mean, not “fuller.” You don’t look fuller. But more beautiful. (2) Elsa : What is that amazing smell? ….Chocolate! (3) Olaf : I don’t have a skull or bones.
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