日本の英語教育と体 験的英語こぼれ話

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大島昌二
EFC 第 68 回例会
2015 年 3 月 17 日
私たちが外国語を学習するのは、外国語こそが、下手に身につけても決して無
駄に終らぬ唯一のものだからです。 カトー・ロンブ『わたしの外国語学習法』
1.日本人はなぜ英語が不得手か?
「恥の文化」(ルース・ベネディクト)と「武士の文化」(飯沢匡、配布資料参
照)
偉い武士(威張る人間)ほど外国語が下手だ。「語学屋を使えばよい」などと負け惜し
みを言う。誤りを指摘して恥じ入らせることが語学教育ではない。
日本人は今でもサムライとその文化が大好きだが、飯沢は次のような傾聴すべき指摘をし
ている。
「
(福沢はじめ洋学派によって)漸く『四民平等』の思想を植えつけられた町民は急速に武
士化して旧武士の風俗習慣を町民のものにしたのが明治維新である。ために笑うことを最
も危険に思っていた武士の真似をして町人まで謹厳に謹厳にと武士風に笑わなくなったの
が明治、大正の日本の文化界で日本は近代化したとしながら大切なユーモアを置き忘れし
かも、軽蔑したのが日本であった。特に学界は武士文化を改革せぬままに受けつぎ西洋文
化をとり入れてもユーモアは漉してとり去り武士文化に相応しい西洋文化をとり入れたの
であった。
」
(飯沢匡『異史明治天皇伝』
)
問題の設定:今に続く不思議
○目から学んで耳から学べない(学べなかった?)→リューネブルグでの経験
一定水
準までは習熟
○読み書きはできるが会話はできない?→読み言葉と書き言葉の違いはあるが…
○インド人の英語は下手か?→英語は英国人の手を離れた?
Mid-Atlantic accent
○たかが「語学」と言ってよいか?→「言葉は文化の乗物」という考え 英語学習の二
大潮流
○第二外国語について(ドイツ語、フランス語、イタリア語はどうか?)→贅沢(ぜい
たく)説
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英語学習の現実
1.H.E.Palmer と A.S Hornby Institute for Research in English Teaching, Tokyo
“Advanced Learner’s Dictionary of Current English” (1942) 動詞の活用と名詞の単複を
掲載
2. Meaning of a word is in the context. ソシュール
英和辞典の功罪
二か国語以上は贅沢か?(Mr Gibson とチェーホフ「三人姉妹」)
(Subjunctive mood ←ドイツ語の語法)
ソシュールが、言語は一つの体系をなすと言ったとき、彼は単語について二つのことに気
づいていた。一つは、実際に使われる語の意味が、文脈の中の数々の語の相互の関係で決ま
ることである。いま一つは、選ばれて文脈の中で使われる語は、実は文脈の上では使われな
かった単語との間の潜在的な関係において制約されながら使われているということである。
(例えば、
「眺めやる」という単語が文脈の中で使われるということは、実は、「見る」「見や
る」
「眺める」
「眺望する」
「望見する」などの単語群との間に保たれている潜在的な関係の制
約のもとで「眺めやる」が選択され、使用されるのだということである。
(
「類語国語辞典」
大野、浜西著「序」より)
3. Idiomatic English
a. containing expressions that are natural to a native speaker of a language.
b. containing an idiom (= a group of words whose meaning is different from the
meaning of the individual words. ”Let the cat out of the bag” is an idiom meaning to tell
a secret by mistake.
4. Colloquialism: a word or phrase that is used in conversation but not in formal speech
or writing. “(The suit) hangs better.”
5. Americanism (and mid-Atlantic English): Get wed when get wet at Yosemite.
Kissinger’s ‘d’ for ‘t’. どちらかで一貫していればよい。”I’m gonna …”
英米間の”culture gap”。 中世のない文化と言語を類推する。
6.発音の問題 Rhythm as well as Accent →chromatic scale(半音階)cf. ドイツ語
“Warmer out than in!”(The coin has dropped.)
“The best prime minister we have.” Rab Butler’s commendation of Lord Home as the
prime minister.
高木東六の日本音楽論(pentatonic scale)
疑問文の末尾
音声テープから digital dictionary へ
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7.誤りは避けられない。
キャンベル首相の LOL。
日本人は頭がいいと言う Prof. Kaldor’s funny English …
Ovary instead of Aviary. Mrs Keynes
森嶋道夫 vs 福田恒存の再軍備論争と“chorus 論争”(”Uncle Jo” について)
Aussie waitress の “Enjoy!” (recommend の活用)
Heavy rain & strong wind
The rain became more heavy. (heavier)→rain steadily
The wind is so strong he could hardly stand (=high wind). Light /gentle/cold/chill wind
張競:北京でも上海でも子供の姿がやたらと少ない。Cf.男の肩に頭がもたれている女性…)
ロナルド・ドーア:佐藤(栄作)がいかに狼狽したかは想像にたやすい。
8.たかが誤訳ですむか?
森山尚実著『ゆがめられた昭和天皇像』
(原書房)誤訳が天皇の戦争責任論を歪曲する。
誤訳の見本 阿部知二の『白鯨』
(岩波文庫)、吉田裕監訳の『昭和天皇』
(ハーバード・ビ
ッグス、講談社学術文庫)小林章夫訳の『前代未聞のイングランド』
(Jeremy Paxman ”The
English-- a portrait of a People”)
(筑摩書房)など
大半の誤訳は不審な文脈から発見できる。映画”Niagara” の「ずらかれ!ずらかれ!」
9.和英辞典は Wikipedia にならうべし (例文重視の英々辞書。英語辞書は Oxford の
独壇場であったが Cambridge の辞書も登場した。)
木洩れ日 sunlight filtering (shifting) down through the trees (研究社新和英中
辞典)
Dappled: marked with spots of colour, light, or shade: the dappled shade of the
trees.
Dappled sunlight :( when sunlight comes through trees) the dappled sunlight of the
forest
飛行機雲 (contrail) , vapour (concentration), vapour trail
10.分析的言語 Short, simple, and clear.
「論理をなさないのは英語ではない」
幣原喜重郎の回顧談(アメリカ人翻訳官に翻訳を
断られた。
)
「お言い付けになりました電文は一行も書けませんでした。実は、小村(寿太郎)大臣、
あなたの本当の覚悟が私には判りません。…
そこのところ、即ちあなたの最後の腹を聞
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かないと、どっちにも通ずるような文案は、私には書けません。
(幣原喜重郎『外交五十年』
p250「デニソン(ヘンリー・ウィラード)を憶う」より。この引用文の前後に詳細がある。
翻訳の極意ともいうべき言葉がある。)
文意が通らなければ誤訳を疑え。上掲3訳書と映画「ナイアガラ」のマリリン・モンロー。
三菱 UFJ の釈明 「指摘を受けたことは遺憾です」→「指摘を受けたようなことをしたの
は遺憾です」でなければならない。
(監査法人に圧力をかけて虚偽のレポートを米金融当局
に提出した。
)
11. 思想、表現力(そして人生の英知)の transfer と enrichment
英米の社会を理解する。→人間性を理解する。
新しい技術や文化の進展とともに歩む国際共通語?
internet 時代のインド、アイルランドの躍進:smart phone 問題解決には英語が顔を
出す。Online (funding) platform なども。
未知の概念や文化に接する(
「言葉は文化の乗物」
)。→「うるし」japan, lacquer (樹脂
ワニス、(特に)漆(Japanese ~)
「ドゥーングル」
(トナカイを飼って暮らしを営むシベリアのトファ族)
「家畜化し、人
を乗せられる、去勢されていない三歳の雄(トナカイ)で、初めての交尾期を迎えたが、
まだ後尾の準備が整っていないトナカイ」K.デイビッド・ハリソン『亡びゆく言語を
話す最後の人々』
中国の格言(日本の言語や文化に入り込んでいる)や英語の諺を参照
“There is no friendship at the top.”
“No man is a hero to his valet.”
“The more I see of people the more I like my dog.”
He should have a long spoon who sups with the devil.
⒓.
(日本語ですむところで)やたらに英語を使うな。
半数以上、いやほとんどが誤りを含んでいる上に英語にする意図が不明(効果がない)
Super lative Service
YEBISU, THE LEGENDARY CHARACTER, BRINGS YOU A GOOD LUCK. (エビス・
ビールのレッテルの文字)
人間ドッグ
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2.「英語学習こぼれ話」
いろいろな問題への関心と並行して常に英語があった。関心の主流ではないま
でも大河であった。
彼はわかっている。
(黙っているのは)今考えているのだ。
“It’s me.” “I’m tea.”
“New York World” から来た「ワールド・シリーズ」
US Constitution Amendment 2
銃を所有する憲法上の保障?
A well regulated militia, being necessary to the security of a free state, the right of the
people to keep and bear arms, shall not be infringed.
『日本人の英語』という(偉そうな)題名→the English (produced) by native speakers of
Japanese (Mark Petersen)。
英語表現を支えている(独特の)論理や感覚を説明する。
英語研究の先達たち
福沢諭吉(蘭学から英学へ)
、田中菊雄(独学で岩波英語辞典編纂まで)、小川芳男、(基礎
英語講座)
、福原麟太郎、
(東京商大の教授陣から)米本新次
上田辰之助 Vere Redman
など。
チェコで出会った日本語ガイド(日本語の敬語を見事に操った)
:カトー・ロンプ、マーク・
ピーターセンの悪戦苦闘
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