☆会員さんのお仕事拝見vol.5☆ 鈴木木工所(石島) 襖骨師 鈴木延坦(のぶひろ)さん(74歳) 東京都伝統工芸技術保存連合会会員 江東区無形文化財伝統工芸保存会理事 東京マイスター(都優秀技能者) 襖の骨組み作りで60年 競争より腕磨くことに専念 黒光りする鉋(かんな)やのこ ぎりを前に立つ鈴木さん 作業場に入ると秋田杉や青森ヒバの香りがぷーんと出迎えてくれる。壁には何種類ものの こぎりや鉋(かんな)の数々。60年近く使い込んできた道具は黒光りしている。 骨師(ほねし)とは、襖や額、屏風、衝立などの骨組みを作る人のこと。材料は木だけで、 穴を開けたり、凸凹をつけてかみ合わせたりして仕上げる。鉄の釘は1本も使わず、使って も竹製の釘だけ。がっちりと組み合わせられるように、木の溝は幾分狭めに切る。しかしあま り固く組み過ぎてもゆがんでしまうので加減が難しい。「うちの襖は片手で持ち上げても枠が たゆまない」と見せてくれた。 「物心ついた頃から端材で何か工作をしていた」。目を付けた父親が次男の延坦さんを3 代目にと15歳から仕事を仕込まれた。「他で量産する仕事を覚えても仕方ない」と修行にも 出してくれない。当時から質の高い仕事を請け負っていた先代は、「きれいな骨を作るには、 1日10枚以上やっちゃいけない」と言い渡す。1日12枚作ったら一人前と言われた時代だ。 競争することより、自らの腕を磨くことに専念した。 かつて東京だけで100人はいたという骨師は今や4、5人しかいない。襖のない 住宅も増え、あっても段ボール材など簡易なものがほとんどになった。国産材を 使った木組みだけの襖は、寺や神社など特殊な場所のぜいたく品になってしまっ た。技術的に難しい注文が、最後の最後に鈴木木工所に持ち込まれるケースも多 い。 後継者はいない。鈴木さんがやめたら途絶えてしまう技術もある。でも「継承は 個人の力では難しい」。オリンピックのように数日で終わってしまう饗宴のためでは なく、何百年も残る日本の文化を支える技術のために、税金を使えないものだろう か。 フランスの美術館に納める作品の屏 風の骨を仕上げる ☆会員さんのお仕事拝見vol.6☆ 民間学童クラブ NPO法人 子どもの放課後を豊かにする会 風の子クラブ 南砂2丁目 小川潤一郎施設長 親との共同経営で35年 異年齢で育む「私たちの場所」」 「ただいま∼」「おかえり∼」。午後1時を過ぎると小学校1年生が帰ってくる。指導員の背中に しがみつき学校での出来事を話す子、約束の宿題をすぐに始める子、駒を回す子、絵を描く 子・・・・それぞれに自分の居場所で学校にない時間を過ごす。 風の子クラブが公立クラブと違うのは、規則に縛られずに、自分たちの意志で遊ぶこと、休む 指導員にしがみついて学 こと、勉強することを決められること。少しくらい危ない場所や遊びでも、高学年が率いて挑戦し 校での出来事を話す子 ていく。今の子どもたちに不足しがちな自己決定権を育てられる貴重な場だ。 親たちも「お客様」ではない。指導員と苦楽をともにする共同経 営者だから、金も出し、口も出し、力も発揮する。保育料1万400 0円(おやつ込み)は、公立クラブの3倍と安くない。それでも延長 保育などのメリット以上の質の高さを感じるから、親たちはあえて 駒回しを教えたり 宿題を見たり指導 風の子を選ぶのだろう。15年度募集も昨年11月でいっぱいになっ 員は大忙し てしまった。 風の子は35年前、働く親が交代で子どもの放課後の面倒を見 たのが始まりだ。その後、公立学童クラブがスタートしても待機児 童は解消されず、全児童放課後事業が始まっても自主学童の ニーズはなくならなかった。公立が小学校3年生までに対し、風 の子は6年生までと異年齢集団の生活を確立している。何より親 がイニシアティブを握って運営するところに、「私たちの場所」とし ての居心地の良さがある。 現在、第4砂町小、南砂小、東陽小の47人が通い、指導員は常 指導員歴15年ほど 勤2人、パート4人。運営費約2000万円のうち区からの補助金 になる小川潤一郎 が約4割。「もう少し補助金を上げてもらえれば、保育料を下げら 施設長 れるのに」と小川潤一郎施設長は言う。 場所 南砂2−28−3 電話 3647−8155
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