「健康経営」 - 日経BP社 イベント情報

「健康経営」
導入支援セミナー
全国4カ所で500人強が講演に聞き入る
日経 BP 健康経営アクション会議は、この 9 月、アクサ生命の特別協賛で、中堅・
中小企業の健康経営のスタートアップを後押しするためのセミナーを、仙台、
東京、神戸、福岡で開催した。4 会場合わせて 500 を超える人が参加する盛
況で、参加者は企業トップが語る健康経営戦略や経済産業省の担当者による
政府動向の解説、企業の実務担当者が明かす苦労話などに、熱心に耳を傾けた。
「健康ホワイト企業で人手不足に勝つ」ためのヒントが満載の、本セミナーの
エッセンスを紹介する。
開催概要
主 催:日経 BP 健康経営アクション会議
特別協賛:アクサ生命
後 援:経済産業省、全国健康保険協会各支部、各地商工会議所
仙台 2015 年 9 月 2 日(水) 東京 2015 年 9 月 4 日(金)
神戸 2015 年 9 月 15 日(火)福岡 2015 年 9 月 29 日(火)
※「健康経営」は NPO 法人健康経営研究会の登録商標です
「健康経営」
中堅・中小も必須の
国による支援策も相次ぎ登場
「健康な従業員こそ、企業の生産性を高め、競争力の源泉となる」――。こうした考え方に立って、社員の心身
の健康管理に取り組む。社員任せだった健康の維持・増進に会社が積極的にかかわるこのマネジメント手法は、
「健
康経営」と呼ばれ、日本でも急速に脚光を浴びつつある。
その背景には、心の病で休職・退社を余儀なくされたり、がんや心臓病、脳卒中といった生活習慣病による長
期療養や後遺症などに直面する社員が後を絶たないことがある。これは健康保険組合や中小企業を主体とする全
国健康保険協会(協会けんぽ)の財政を圧迫、保険料の引き上げや保健サービスの低下という形で、会社や社員
にはね返ってきている。
さらに、人手不足と高齢化の進展をにらめば、社員の平均年齢の上昇は避けられない。 65 歳定年 を控え、高
齢の社員が健康でいきいき働けるかどうかは、生産性を大きく左右する。特に従業員数の少ない中小企業では、
この点から、健康経営は大企業以上に重要な経営課題といえる。
健康経営に取り組まず社員が健康を害せば、会社は表 1 に掲げたような様々な影響に見舞われ得る。一方、健
康経営に積極的に取り組んで「健康ホワイト企業」の評価を勝ち取れば、人材採用面で有利になる、顧客の増加
が期待できるなど、生産性の向上以外の様々な効果も期待できよう。
現場では多種多様な取り組み
健康経営の考え方の源流は、1980 年代に米国の経営心理学者、ロバート・ローゼン氏が唱えた「ヘルシー・カ
ンパニー思想」
。「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」と、経営戦略の一環として社員の健康管理の
重要性をうたったものだ。日本では、2006 年に NPO 法人健康経営研究会が設立され、理事長の岡田邦夫氏(現
プール学院大学教育学部教授)らを中心に、産業保健や健保組合の関係者に普及が図られてきた。
もっとも、「健康経営」の名の下に各企業で行なわれている取り組みは多岐にわたっている(表 2)。これらは
大企業の例だが、中堅・中小企業でも、社長が朝礼で健康管理の重要性を繰り返し訓示する、社員一人ひとりが
自分の健康づくり目標を決めて胸の名札で明示する、社内コミュニケーションを活発にしメンタル不調者の発生
防止に一役買う――などの独自の取り組みが行われている。
中小企業は、マンパワーや資金の面で、健康経営の取り組みにハンディを負っている。費用対効果が短期間で
表1●健康経営に取り組まず、
表2●健康経営の主な取り組み例
社員が健康を害した場合の
影響
①会社による「健康宣言」
①休職や退職などに伴う生産性の
③定期健康診断の受診率アップ
低下
②ほかの社員の士気低下とさらなる
退職
③「ブラック企業」というイメージ
による採用難
④企業イメージの悪化に伴う顧客
離れ
⑤休業補償など追加コストの増大
※日経トップリーダー 2015 年 7 月号「特集
社員が倒れる 会社が潰れる『健康経営』
で ホワイト企業 へ」17 ページよりࠈ
②従業員の健康促進のための組織づくり
④がん検診など法定健診以外の実施
⑤喫煙防止対策
⑥適正な飲酒のための教育
⑦運動の機会の提供と運動習慣形成の支援
⑧予防や早期発見を中心に据えたメンタルヘルス対策
⑨体によい食事の提供と食習慣づくりの支援
⑩歯の健康づくり
⑪労働災害防止対策
⑫長時間労働対策とそれによる過労死の防止
⑬高齢社員の増加に伴う職場の安全対策
⑭がんなどの病気を抱えた社員の就労支援、ほか
は表れにくいこともあり、大企業に比べて取り組みはまだまだだ。しかし、社員が 1 人倒れた場合の影響は、大
企業よりも深刻。一方で、経営トップの影響力を組織全体に浸透させやすい利点もある。社長が毎日全社員の顔
色を観察し、
気になる社員に声をかけるのも疾病の予防や早期発見につながる。これら 身の丈に合った健康経営
なら、中小企業でも十分取り組める。
中小企業向けに政策パッケージ
「2015 年度は中小企業向けの健康経営の推進施策に力を入れていく」――。このセミナーで登壇した経済産業
省の担当者は、いずれもこう強調した(仙台会場:商務情報政策局・ヘルスケア産業課係長 高田真利絵氏、東京・
福岡会場:同課係長 丸山勇紀氏、神戸会場:近畿経済産業局地域経済部バイオ・医療機器技術振興課ヘルスケア
産業係長 福永洋氏)
。
2013 年に安倍晋三内閣は、「日本再興戦略」で「健康寿命延伸」を打ち出した。2014 年の改訂の際には、「健
康経営」という言葉も登場、経産省と厚生労働省を中心に、政府は健康経営の普及を後押ししている。
全ての医療保険者に、レセプトや健診などのデータ分析とそれに基づく加入者の健康維持・増進のための事業、
「データヘルス計画」の作成を求めたのもその一つ。健康保険組合では、既にデータヘルス計画に基づく保健事業
が始まり、協会けんぽも、全都道府県の支部が計画の作成を完了。2015年度からそれに基づく保健事業がス
タートしている。
今年 3 月の「健康経営銘柄」の選定もその一環だ。株式市場での評価向上を健康経営推進のインセンティブに
しようと、経産省と東京証券取引所が共同で実施。社員の健康づくりの取り組みと業績を両立させている上場企
業を 22 社選んで公表、数多くの新聞やテレビで報道され、健康経営に対する社会の関心を高めた。
ただし、日本に健康経営を普及させるためには、中小企業での取り組み推進が不可欠。そこで政府は、今年 6
月に公表した「骨太方針」などで、中小企業の健康経営の取り組みを後押しする方針を打ち出した。
そのための政策パッケージを担うのは、主役である中小企
業に加え、協会けんぽと商工会議所などの中小企業団体。協
会けんぽは、先に触れたデータヘルス計画で、中小企業向け
の保健事業に力を入れる。また例えば東京商工会議所は、中
小企業への指導・助言を行う「健康経営アドバイザー制度」
の検討に着手。国も政策金利の優遇などで、中小企業の健康
経営を支援しようとしている。
では、健康経営に取り組みやすい状況が生まれつつある中、
中堅・中小企業は具体的にどうすればいいのか。そのヒント
を得るために、本セミナーで登壇した企業経営者および実務
担当者の講演内容を紹介していこう。
東京会場で講演する経済産業省ヘルスケア産業課係
長の丸山勇紀氏
神戸会場で講演する経済産業省 近畿経済産業局 地域経済部バイオ・医療機器技
術振興課 ヘルスケア産業係長の福永 洋氏
仙台会場で講演する経済産業省 商務情報
政策局 ヘルスケア産業課 係長の高田真
利絵氏
9月15日(金)午後
基調講演「健康社員
員・健康
康企業を
を目指し
して」
ロート製薬 副社長兼CHO(チーフヘルスオフィサー)
ジュネジャ・レカ・ラジュ 氏
ヘルスケ
ケア産業
業の創出
出∼健康
康経営
営と地方
方創生の視点∼
∼」
政府動向「次世代ヘ
近畿経済産業局 地域経済部 バイオ・医療機器技術振興課ヘルスケア産業係長
福永 洋 氏
先進事例「サンスター
ーの健
健康経営
営への取
取り組み
み」
一般財団法人 サンスター財団 専務理事
宮嵜 潤 氏
「自分の健康について深
く理解する場を創ってい
く」
「
『健康道場』での実践
を通じて真の健康が分
かってくる」
(ロート製薬副社長兼CHOのジュネジャ・レカ・ラジュ氏)
(サンスター財団専務理事の宮嵜潤氏)
神戸会場の基調講演者、ロート製薬副社長のジュネ
ジャ・レカ・ラジュ氏は、昨年からCHO(チーフヘ
ルスオフィサー)の肩書も併せ持つようになった。製
薬メーカーの同社は、今後は再生医療やアグリビジネ
スにも力を入れ、国が掲げる健康寿命延伸への貢献を
目指す戦略を立てている。ジュネジャ氏はこうした事
業面はもとより、
「健康社員化」の責任者でもある。
ロート製薬は、社員を健康にしたいという願いから、
食事やリラクゼーションを提供する福利厚生施設「ス
マートキャンプ」の開設や、全社員参加の「100 日間
健康づくりプロジェクト」の実施などに取り組んでき
た。こうした活動を通じて、ロートの社員には、数多
くの健康への「気づき」の場が提供されている。そし
て同社は、今年 3 月の健康経営銘柄に選ばれた。
しかし、ジュネジャ氏は「気づきは大事だが、自分
の体と心に耳を傾け目をそらさずに見つめて、自分の
健康について深く理解することが最も大切。今後、徹
底的な自己理解の場を創設していく」と話す。
具体的には①健康診断の進化(深化)
、②オフィス
の健康化、③女性の健康へのアプローチ、④海外への
健康の提供の 4 つに取り組む。ジュネジャ氏は、「健
康企業として、社会により良い商品・サービスを提供
する出発点は自分自身が健康になることだ」と話し、
簡単な事を継続することから始めて欲しいという。
神戸会場の先進事例の講演者はサンスター財団専務
理事の宮嵜潤氏。サンスターの主力商品は歯磨き剤や
歯ブラシなどの口腔ケア製品。
「オーラルケア(また
はお口の健康)から全身の健康を目指す」をスローガ
ンに、歯周病予防の GUM シリーズや糖尿病患者向け
チョコレート、青汁などの健康食品「健康道場」シリ
ーズも販売している。
この商品名の元となったのが、1985 年開設の「サ
ンスター心身健康道場」
。1995 年にサンスター健康
保険組合が 5 億円近い資金を投じて新築オープンし、
今日まで健康経営の拠点となっている。
「生活習慣の改善による自然治癒力向上と心・身体
の健康づくり」の体得と実践を目標に、食事・身体・
心の 3 つの面からアプローチ。具体的には、玄米食や
菜食を中心に提供する、顎や背骨、四肢などの矯正と
鍛錬を行う、それにリラクゼーションなどを通じて呼
吸や心を整える――の 3 つだ。道場の食事は朝、晩の
青汁を含め 1 日1200カロリー。肉や卵、魚介類を
使わないメニューとなっている。
これまでの利用者は累計で 6000 人を超える。健康
診断でメタボリックシンドロームと判定された社員の
生活習慣改善にも活用しており、ここ数年毎年 50 ∼
60 人が道場の門を叩いている。宮嵜氏は、「この道場
はいわば コラボヘルス だ」と話す。土地は会社、
建物は健保がそれぞれ所有。入門は出勤扱いとなり更
に、費用は健保が負担する。従業員も含め、関係者の
協力によって支えられている。
サンスターは、2013 年に事業所内を全面禁煙にす
るなど、さらなる健康づくりに力を入れている。
7
5
アクサ生命保険株式会社
〒108-8020 東京都港区白金 1-17-3
http://www.axa.co.jp/
TEL 03-6737-7777(代表)