チェックテストを

特定非営利活動法人 日本シーティング・コンサルタント協会
(車)いす上での「身体拘束ゼロ」を目指して
チェックテスト
ご自分の苦手な分野を知るために、まずはあなたの、車いす・いす上での
身体拘束に関わる介護力をチェックしてみましょう!
次の3つの支援方法は、
「適切」ですか?「不適切」ですか? ご回答ください。(解答は次ページ)
設問 1
またずり落ち
ちゃったわ
よっこいしょ
っと
80代男性、要介護4。多発性脳梗塞で両手足に麻痺がある方。
普通型車いすに15分程度座っているとずり落ちてくるが、
安全ベルト(抑制帯)は施設の方針で使用しないため、職員
はずり落ちないようにその都度身体を引き上げてあげている。
この介護は「適切」ですか? それとも「不適切」ですか?
設問 2
横になりたいわ
テレビでも見
ながらもう少
し座っていま
しょうね
寝たきりにな
らないように
座らせておか
なくちゃ
80代女性、要介護5。脳血管障害による認知症の方。
普通型車いすに1時間程度座ると「ベッドに戻してください」
と訴えるが、寝たきり防止のため、気分が変わるよう声かけ
しながらそのまま座ってもらっている。
この介護は「適切」ですか? それとも「不適切」ですか?
設問 3
倒れないように
クッションを詰
めましょうね
60代男性、要介護4。パーキンソン病で円背(背中や腰が曲
がっていること)が著明な方。座り始めて15分もしないうち
に、右前方に倒れてくるため、倒れないように右側にクッシ
ョンを詰めたりしながら対応しているが、危険なため、車い
すにテーブルを取り付けて転落も防止している。
この介護は「適切」ですか? それとも「不適切」ですか?
正解は次のページへ
解答
解答 1
不適切
なぜずり落
ちるのか考
えたことも
なかったわ
解答 2
不適切
この方は「ベッドに戻してください」と訴えていますが、ここでは、なぜそのように
訴えるのか多職種協働のチームでアセスメントしないまま、寝たきり防止のためだか
らと座らせ続けています。そもそも座面がスリングシートでできた普通型車いすは、
短時間の移動用に作られたもので、長時間座るための道具ではありません。
皆さんは、キャンプ用などの折りたたみのいすに座っていてお尻や腰が痛くなった経
験はありませんか? スリングシートの車いすは身体をしっかり支えられないので、
キャンプ用の折りたたみいすと同様、身体を全く動かせない状態で15分も座っている
とお尻や腰が痛くなります。認知症の方の発言は、「認知症のせいだから」と片づけ
られてしまうことがありますが、認知症が原因でなく、身体的な苦痛から出た発言か
もしれません。また、お尻や腰が痛い状態のまま座らせ続けることは一種の身体的虐
待とも言えるでしょう。寝たきり防止のために座っていただくのであれば、痛みを感
じず長時間快適に座れる、その人の身体や使い方に合った車いすやいすに座っていた
だくようにしたいですね。
この問題を間違えた方は、身体拘束の考え方を学ぶセクション1、スリングシートの
車いすについて学ぶセクション3−2を勉強してみましょう!
不適切
この方が倒れてきてしまう原因として、円背という身体の状況と車いすがあっていな
いことが考えられます。倒れてくるからクッションを詰めるという対症療法ではなく
、なぜ倒れてしまうのか、身体の状況や車いすの状況から多職種協働のチームで解明
することが大切です。それをもとに、円背でも倒れずに座れるように車いすやクッシ
ョンを調整することが必要です。
また、身体が倒れているということは、体重がお尻の全体でなく一部にかかっている
状態ですから、褥瘡(床ずれ)を起こしやすくなっています。また、車いすにテーブ
ルを取り付けるということは「身体拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行
為」の一つにあたります。
この問題を間違えた方は、身体拘束の考え方を学ぶセクション1、ずっこけ座りとズ
レが、身体機能や座位能力と車いすが合っていないために起こる状況について学ぶセ
クション3−6を勉強してみましょう!
キャンプ用のい
すで座らせてるの
と同じなのね…
解答 3
クッションの
せいで褥瘡を
作っていたな
んて
座面がスリングシートでできている普通型車いすは身体をしっかり支えてくれないの
で、「ずっこけ座り」や身体の「ズレ」を引き起こし、車いすから身体がずり落ちて
しまいます。麻痺のない人なら自分で身体を引き上げて、座りなおすことができます
が、両側に麻痺のあるこの方は自分で身体を引き上げることができないため、時間が
経つにつれ、どんどんずり落ちてしまいます。安全ベルト(抑制帯)を使用していな
いので、「身体拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為」には当てはまら
ないかもしれませんが、座るとすぐにずり落ちてしまう状況は、介護が大変なだけで
なく、本人に大変な苦痛を強いており、尊厳を支える介護の観点からみるとこの方に
とって適切とはいえません。「なぜずり落ちるか」の原因を考えないまま、ずり落ち
るからそのつど引き上げるという介護は対症療法にすぎません。なぜずり落ちるのか
の原因を多職種協働のチームで解明し、それを解決する介護をチームで提供すること
が大切です。
この問題を間違えた方は、身体拘束廃止の考え方を学ぶセクション1、「ずっこけ座
り」や「ズレ」のメカニズムについて学ぶセクション2、スリングシートの車いすに
ついて学ぶセクション3−2を勉強してみましょう!
じょくそう
全3問のチェックテスト、あなたは何問正解でしたか?
1問でも間違ってしまった方は、このeラーニングで、車いす・いす上での身体拘束について体系
的に学んでいただきたいと思います。
身体拘束をせず、快適に座っていただくことは、利用者のQOLを向上させるばかりか、介護職に
とっても、ずり落ちてしまう利用者を何度も引き上げるなどの介護負担が減ることにつながります。
もちろんすべて正解だった方も、車いす・いす上での身体拘束や座位保持・シーティングについて
このeラーニングでより深く学んでいただきたいと思います。