6.26.2015 担当:Yoshimi FUJINO ソーシャルワーク入門(10) ソーシャルワークの理念③ Ⅰ.前回のレスポンス・ペーパーから 〔人権・尊厳について〕 *今日の授業で、人権や尊厳をやって、給料などの面からしか見ることのできない人がいることが、差別や人権侵害 を生み、障がい者などの自由を損ねているのではないかと思った。私は自分ができることを少しずつでもして、差別 のない、みんなが笑顔でいられる社会になっていったら良いと思う。 *「人権」とは?と考えると、やはり先生が言うように、 「その人がその人らしく生きる権利」だと思いました。し かし、 「その人らしさ」と考えた時、 「自分らしさ」とは何かとも思いました。友人の行動等を見て、 「あいつらしい な」と思うことがありますが、この場合は、私が作り上げた「その人らしさ」であると思うので、一概に「あいつら しい」と決めてしまうのは気をつけるべきだとも思いました。 *(前略) 「子どものために」 「障がいを持つ人のために」 「お年寄りのために」が、その人らしさを失うものではい けないと感じました。 *障害者差別であった「福祉の世話にならないといけない価値のない子」という言葉が病院で言われていたことに驚 いた。福祉を軽んじてる発言だし、だいたいにしてその人に価値があるとかないとか決められる筋合いもないし、決 められたくもない。 *「障がいがある人が受けたことのある差別」のスライドを見たとき、少し衝撃を受けました。普段、障がいのある 人と関わらない人なのか、過去に何があったのか、悪いイメージを何かで持ってしまったのか、背景はわかりません が、 「そのような人に障がいを理解してもらうには、どうしたらいいのだろう?」と思いました。もしかすると、差 別発言をした自覚もないのでは?と思いました。 →自覚がない人、また、悪意がない人も多いと思います。 *施設の虐待についてのニュースで、利用者とその本人の保護者がインタビューされていた。利用者自身は叩かれて 怖かったと答えていた。ということは、事件が明るみに出る前から、苦しみの様なものを保護者の人に訴えていたと 思う。けれども、そのような言動を信じられにくいというのが現状なのだと感じた。 *その人らしい生き方を支援する、その活動方針自体は良いが、 「これが自分らしい生き方だ」といって反社会的な 行動をはじめる人もいるかもしれない。どの範囲で「らしい」を支援するのか?他の人の基本的人権を侵さない範囲? →重要な論点です。フランスで起きた「シャーリー・エブド襲撃事件」や、近年日本でも問題になっている「ヘイト スピーチ」の問題では、 「言論・表現の自由」は果たしてどこまで自由なのか、人を傷つけ、尊厳を踏みにじるよう な言論が「言論の自由」で保障されるものなのかといった点が議論になっています。 *地域福祉の推進について、住み慣れた地域での暮らしとなると、震災などで被災した人たちが避難所で生活してい ることは尊厳が侵害されているのかと疑問に思いました。 *中絶、脳死、臓器移植などが「生命の尊厳」の問題としてあげられるのはなんとなくわかりますが、人工授精は自 然に妊娠することが難しい人たちにとっての助けになると思います。どのような点が「生命の尊厳」の問題にあたる のでしょうか? *尊厳を保つというのは難しいことだと思います。障害のある人や子どもなど、社会的に弱い立場にいる人なら、更 にそうだと思います。そういった人たちにも「保護する」という考えで接するのは間違いなのでしょうか。 〔組織について〕 *養護学校の看護師が全員やめてしまったというニュースがあったが、障害者施設での虐待のニュースと関連づけて、 誰が悪いと責めるのではなく、体制や組織づくりをしっかりやるということが本当に大切なことなんだと感じた。 *就職活動をする際、ここは職員が働きやすい良い職場だとか、少し悪い職場だとかいうのは分かってくるものなの ですか? p. 1 6.26.2015 担当:Yoshimi FUJINO *私の祖母は2つの施設に通っています。ひとつの施設は、職員さんはみんな明るく、優しく、そして私たち家族に もすごく良く接していただいて、連絡ノートもしっかりと書いていただいています。もうひとつの施設は職員さんの 顔が暗く、私たち家族と目を合わせようとせず、連絡の不十分で、オムツ交換などの仕事の雑さが気になります。施 設全体の雰囲気が影響しているのかなとすごく実感しています。自分がこれから福祉の職を目指すにあたり、組織と いうものが大切であるという考えをしっかり持っていきたいと思います。 〔その他〕 *ソーシャルワークとして弱っている人を支援するためには「助けて」という言葉を待っているのではなく(助けて って言えないということも含めて) 、こちらが能動的にアクションを起こして、その人がその人らしくなれるエンパ ワメントとストレングスの視点が重要になるのだなと改めて感じた。 *社会福祉士の使命として、おとしよりや障がいを持っている人達のケアを行うことだけでなく、差別をなくすこと などの活動も行っていくべきだと思った。 *(前回紹介した母親が自分の娘を殺してしまった事件に関連して)生活保護の漏給などについて調べていたことも あり、行政の姿勢に失望しました。調べたものの中には市の職員に「もう生保は受けるな」と言われた、というもの や、強制的に受給を止められたというものがあり、困っている人のための制度を行政側が意図的に利用者に結び付け ないという事実があることを理解できませんでした。今回の記事の事件も、家賃の滞納の背景を調べることも、相談 に来た母親にくわしく話を聞くということもしなかった行政の態度に疑問を感じました。どうすれば母親と娘さんを 救うことができたのでしょうか…。 *障がい者の「がい」という漢字を政府は「害」と使っていますが、政府はどういう見解で「害」を用いているので しょうか? *社会福祉事業にたずさわる人は、その性質上とてもつかれたりストレスがたまると思います。そういった人たちも 利用者として相談できる場所はありますか?自分が福祉事業に関わっていると、中々相談しに行きにくいのではと思 います。そういう人たちのメンタルケアをする取り組みでもいいのですが…。 *(前略)私にはそんなに社福の世界が悪いものに思えなかったし、今の社会に必要と感じました。だから、実際に 今、社会で何が起きているか、福祉は悪いように言われるのかがすごく気になりました。今の世の中で、現場の人と 技術者や研究者を上手く結びつけたり、橋渡しをする職業や動きはありますか?障害者が自身で決めることができな い状況は、周りの人に上手く意思を伝えることが難しいことにあると思います。でも、それも技術の進歩でどうにか できるのかもしれないとの期待もあります。ここら辺は、倫理や尊厳もからむと思いますが。 *若年性認知症の話もありましたが、私は最近物忘れがひどいので、とても心配になりました。大丈夫でしょうか…。 *先生はかなり若いと思うのですが、教員をする前にどのくらい施設で働いていたのですか? →「かなり若い…!」「かなり若い…!」「かなり若い…!」(心の中でエコー) *私は児童福祉司を目指しているのですが、主に保護者と関わる機会が多いと思っています。その時、子どもを産ん だことも、育てたこともない自分が利用者さんの気持ちを理解し、支援していくことができるのかと不安になります。 いろいろな社会経験を積むことも大事だと思います。先生は現場経験があるとおっしゃっていましたが、仕事に就い た当初はどのような感じでしたか? →仕事に就いた当初は、 (今以上に)生意気だったと思います。 大学院生の時に、高齢者と障がいがある人の支援を行う NPO 法人の活動にかかわるようになり、適当にやってい た時期もありましたが(こら) 、のめりこんだ時期もありました。のめりこんだ時期は、同僚(仲間)や関係機関と の支援が、チームとして上手く機能することができて、利用者の生活の質の向上に役に立てていると手ごたえを感じ ていたし、一緒に仕事をすることがとても楽しかったです。利用者とチームのメンバーから多くのことを学んだし、 彼らに育ててもらったと思っているし、その時期の経験がわたしの原点と言えると思っています。 p. 2 6.26.2015 担当:Yoshimi FUJINO Ⅳ.ソーシャルワークの理念④ ノーマライゼーション ノーマライゼーションとは:障害者、高齢者、児童など生活していく上で他社の支援を必要としている人 を含むすべての人は、人格を尊重され、教育や就労、文化や娯楽等の権利・機会を享受し、地域社会で生 活できることが「ノーマルな社会」であるという考え方 ノーマライゼーションの源流 1952 年ごろ デンマーク 「巨大施設に隔離されている子どもたちを地域に帰す運動」より始まる 1959 年法の成立 「障害者の生活状況をできるだけ普通にする」という原理 ・バンク-ミケルセン 「障害をもつ人々が障害をもたない人と同じ生活ができることがノーマルな生活である」 ・ニィリエ ・1972 年~ アメリカへ ノーマライゼーションの原理 1 1 日のノーマルなリズム 2 1 週間のノーマルなリズム 3 1 年間のノーマルなリズム 4 ライフサイクルにおけるノーマルなリズム 5 ノーマルな個人の尊厳と自己決定権 6 その文化におけるノーマルな性的関係 7 その社会におけるノーマルな経済水準とそれを得る関係 8 その地域におけるノーマルな環境携帯と水準 ノーマライゼーションと法律 ・1970(昭和 45)年 障害者基本法 ・1981(昭和 56)年 国際障害者年 スローガン: 「完全参加と平等」 ・1983(昭和 58)年~1992(平成 4)年 「国連・障害者の 10 年」 障害者の社会参加についての計画・施策の実行 ・1993(平成 5)年 障害者基本法改正 「完全参加と平等」を明文化 ・1995(平成 7)年 精神保健福祉法 ・2013(平成 25)年 障害者差別解消法 ノーマライゼーションと諸制度 ・1994(平成 6)年 「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」 (ハートビル法) ・2000(平成 12)年 「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した異動の円滑化の促進に関する法律」 (交通バリアフリー法) ・2006(平成 18)年 バリアフリー新法 バリアフリーとユニバーサル・デザイン 教育の場でのノーマライゼーション:インテグレーション、メインストリーミング p. 3 6.26.2015 担当:Yoshimi FUJINO Ⅲ.ソーシャルワークの理念⑤ 自立支援 *北米における自立生活運動 1972 年、カリフォルニア州バークレーにおいて、障害者が運営し、障害者にサービスを提供する”自立生活セ ンター(CIL:The Center for Independent Living)”が設立されたことに始まる重度障害を持った大学生たち が地域社会で生活し続けるための活動を、障害者自身によって始められた運動 *北米における自立生活運動では、障害者自身による「自立」が目指された。 ・1973 年 リハビリテーション法 ・1990 年 障害をもつアメリカ国民法 *北米の自立生活運動は、北欧から入ってきたノーマライゼーションの概念に影響を与えた。 日本の障がいがある人たちも大きな影響を受けている → 日本での自立生活運動 *自立生活運動の特徴 ① ② ③ *日本の法律にみる「自立」 ・生活保護法(1950)第 1 条 ・障害者基本法(1993)第 1 条 ・介護保険法(1997)第 1 条 ・社会福祉法(2000)第 3 条 ・障害者自立支援法(2005)第 1 条 *歴史的な視点でみた日本における法制度的な流れは? *「自立」とは: 「自立(Independent) 」と「自律(Autonomy) 」 *自立支援における選択、自己決定:自己決定には制限がある? 自己決定は幻想? *自己決定の過程: 希望を明らかにする 選択し、自己決定する 自己決定を支援する技術 自己決定を制限するという支援 *自己決定に支援が必要な利用者に対する支援をどうするか? 認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者、未成年等は自己決定に支援が必要 ⇒ *自立支援と生活の質(QOL) p. 4
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