レジュメ

平成 27 年 7 月 19 日
部員各位
G 型大学×L 型大学
吉野 貴司(農 3)
目次
1.はじめに
2.議論の目的
3.G 型大学・L 型大学
4.賛成意見・反対意見
5.論題
6.参考文献
1.はじめに
1年生のみなさん。もう7月ではありますが、ご入学おめでとうございます!早速です
が、みなさんが大学に入学した理由はなんでしょうか。大学に行っていたほうが、世間体
が良い、就職に強そう、進学校に入ってしまったので仕方なく勉強した、などなど理由は
自由ですが、やはり大学に入学したからには避けられないことがあります。それこそまさ
に、
「学問」です。
しかし今、大学の在り方が変わろうとしています。現在、補助金削減や国立大学の独立
行政法人化など大学改革が進んでいますが、さらには大学が「学問」を修める場所ではな
く、職業訓練学校のように「実学」を勉強する場となる可能性があります。文部科学省の
有識者会議で提案された「L 型大学・G 型大学」という改革案です。提案内容が、旧帝国大
学と早慶といったいわゆる一流大学以外の大学は、アカデミックな教育をやめ、職業訓練
に専念すべきというものでした。
2.議論の目的
議論の目的として、今回の SPD を通じてみなさんの「学問」
、
「学ぶこと」の意義を考え
てほしいと思いました。
ところでみなさんの入学した明治大学は一流大学なのでしょうか。そもそも一流大学の
定義を考えねばならないのですが、今回の「L 型大学・G 型大学」の議論をするうえで明治
大学はグレーゾーンにあたると思います。当事者性が高い分、切実な問題ですが主観的な
議論にならないように気を付けてください。
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3.G 型大学・L 型大学
昨年 10 月 7 日、文部科学省の有識者会議での、株式会社経営共創基盤 CEO であり有
名コンサルタントの冨山和彦氏の改革案が話題となりました。それは「一部のトップ校を
除いて、ほとんどの大学は職業訓練校になるべき」というものでした。
「G 型大学」とは「グローバル型大学」の略であり、一方、
「L 型大学」とは「ローカル
型大学」の略です。前者は純粋な学問を修め、研究活動を行うことで教養を養い、高度な
総合職要員として世界中(グローバル)で働ける人材を育成するという意味です。後者の
「ローカル」とは、
「地元」という意味ですがここでのより正確な意味は、職業訓練学校的
な実学教育を通じて実社会(ローカル)で役立つ人材を輩出するという意味です。
特に議論を呼んだのが、職業訓練学校化の内容でした。具体的には、
「文学部はシェイク
スピア、文学概論ではなく、観光業で必要になる英語、地元の歴史、文化の名所説明力を
身につける」
「経済・経営学部は、市場マーケティング理論、戦略論ではなく、簿記・会計
ソフトの使い方を教える」
「法学部は憲法、刑法ではなく、道路交通法、大型第二種免許を
取得させる」
「工学部は機械力学、流体力学ではなく、TOYOTA で使われている最新鋭の
工作機械の使い方を学ぶ」といったものです。
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4.賛成意見・反対意見
1.学問と経済
賛成
日本はグローバルに戦うごく一部の人材と、地域密着型の仕事に従事する多数の人材に
二極分化すると予想されている。現にグローバル化が進み多数の企業が海外に進出してお
り、今後ともその増加が予想される。少数のエリート層と圧倒的に多数を占める労働者の
教育を分化することでそれぞれの生産性を上げなければ、日本経済全体の底上げは難しい。
そのため、一部の大学を除き、カリキュラムを職業訓練的なものに切り替えるべきである。
反対
日本経済の特徴として GDP の 9 割が内需であり、ほぼ国内だけで産業と雇用を成り立
たせている。また、労働人口で言えば「G 型大学」が輩出しようとする人材は現在、人口
のわずか 2%に満たない。グローバル化が叫ばれて 20 年ほど経過するがこの状況に大きな
変化はなく、今後ともこの状況が続くのではないか。以上の理由からこのような改革は少
なくとも不必要であり、他のデメリットを上回ることができない。
2.大学教育のありかた
賛成
現在の大学教育はあまりにもビジネスの現場から遠い。就職に結びつきやすいカリキュ
ラムにすることは学生にとってメリットがある。
教職員側としても、従来の抽象的な学問(論文や研究実験など)に比べ、具体的な数値
目標(資格合格者数など)により外部から客観的に評価されるため努力目標が明確となり、
競争が生じやすくなる。結果、教職員の質の向上が期待できるのではないか。
また、職業訓練的な教育は企業の内部教育のコストを削減することにつながり、企業活
動が活発化する。
反対
そもそも教育と経済を完全にリンクさせて考えることが間違い。学問は学問であり、本
来それはビジネスとは何の関連もないはずである。大学進学率が 50%を超える現代は、そ
れほど多くの人々が「学問」を修めることのできる幸せな環境である。職業訓練は「大学」
が行うことではなく、専門学校や企業の内部教育によって行われるべきである。
3.教育内容の格差
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賛成
教育内容に格差がうまれることは問題ではない。むしろ、こういった分離とそれによる
職業教育により企業と学生は Win-Win の関係になる。企業側は、従来のように「総合職募
集に玉石混交の学生が殺到する」といった採用コストや新卒採用者に対する企業内研修教
育コストを下げることができる。学生側にとっても、職業訓練的な学習は企業とのミスマ
ッチ回避や、特定分野に対し即戦力となる付加価値(具体的なスキル、資格)などを得ら
れるなどのメリットがある。
反対
教育内容の格差は問題である。大学卒業時に職種や仕事内容が固定化されてしまい、生
涯賃金に大きな差がうまれる。教育内容そのものとは多少ずれるが G 型大学と L 型大学間
で、これまでの高偏差値大学と低偏差値大学の差以上に入試問題や対策方法に大きな差が
うまれる。だとすれば高校入学時、あるいは中学入学時(中高一貫校受験など)に将来の
選択肢が限定されてしまう。つまり大学の教育内容の格差そのものより、中学高校の教育
格差が新たに誘発されることが問題である。これは、これまで以上に学歴社会・競争社会
をつくることであり、将来、子供たちに大きな負担となる。
4.将来的な格差
賛成
大学のカリキュラム分離は一種の階層の固定化につながるかもしれない。少数エリート
の G 型大学出身者のほうが比較優位的に生涯賃金は多いだろう。しかし、このままの日本
の教育ではグローバル化の時代に対応できていない。一億総中流どころか一億総泥船は回
避せねばならず、これは必要悪である。また、階層の固定化は、生活の安定や最低賃金が
ある程度保障されれば問題はないのではないか。問題は格差ではなく、最底辺の生活状況
がいかにあるか、である。そういった意味でも、教育改革によりグローバル化の競争社会
に打ち勝ち、下層階級であっても安定して生活できる経済状況をつくりあげる必要がある。
反対
大学のカリキュラム分離は一種の階層の固定化につながる。少数エリートの G 型大学出
身者のほうが比較優位的に生涯賃金は多いだろう。
「教育格差」の項で触れたとおり、実現
すれば学歴社会の傾向が強まる。すると教育費(ここでは塾、家庭教師などの外部教育)
も増加する。それではいつまでたっても G 型大学出身家庭(高収入)の子供は G 型大学へ
行き、L 型大学出身家庭(低収入)の子供は L 型大学へ行く。それこそまさに、頑張って
も報われない社会である。これでは、社会全体の生産性は逆に低下してしまうのではない
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か。
5.議題
「G 型大学・L 型大学」の改革に賛成か反対か。
(G・L どちらかのみ実施すべきという意見も可。)
その理由も述べる。
6.参考文献
・藤原正彦著(2006)
『この国のけじめ』文春文庫
・
「G 型大学×L 型大学」一部のトップ校以外は職業訓練校へ発言の波紋
(最終アクセス:2015 年 6 月 28 日)http://president.jp/articles/-/14035
・L 型大学と G 型大学、一流以外は職業訓練校に ── 日本の教育と産業構造の行方は?
(最終アクセス:2015 年 6 月 28 日)
http://thepage.jp/detail/20141107-00000003-wordleaf?pattern=1&utm_exp
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