新生ストラテジーノート 第 220 号

新生ストラテジーノート 第 220 号
2016 年 3 月 8 日
調査部長 江川 由紀雄
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(03) 6880-6035
住宅金融支援機構の「MBS 配分プログラム」をどう考えるか
米国 GSE のスワッププログラムとは異なる新制度―毎月の「配分枠」という扱い
住宅金融支援機構は、2 月 29 日に「フラット 35 取扱実績に応じた MBS 配分プログラム」の実
施について公表 1した。これは、予めこのプログラムへの参加に関する住宅金融支援行機構との
契約を締結した【フラット 35】取扱金融機関に、毎月発行される MBS を一定額、優先的に購入で
きる権利を与えるものであり、2016 年 4 月に発行条件を決定する MBS から運用が開始される予
定となっている。具体的には、2016 年 4 月から 9 月までの期間については、プログラム参加金融
機関の 2015 年 9 月初日から 2016 年 2 月末日までの【フラット 35】(買取型)に基づく取扱実績
に応じて、毎月の MBS の優先配分枠が決まる。算定期間(6 か月間)取扱金額の実績が 12 億円
以上 30 億円未満であれば 2 億円、30 億円以上 60 億円未満であれば 5 億円、60 億円以上
90 億円未満であれば 10 億円、90 億円以上 120 億円未満であれば 15 億円、120 億円以上
であれば 20 億円の MBS の配分枠を得ることができる。つまり、【フラット 35】(買取型)の取扱実
績が多ければ多い程、多くの MBS の配分枠を得ることができる。
この「配分枠」は、MBS を購入する義務を課すものではなく、毎月の利用はプログラム参加金融
機関の任意となる。全額の利用を希望してもいいし、一部の利用を希望することもできるし、利用
を見送ることも任意である。全額の利用を希望しない場合でも、翌月への繰り越しは一切できない。
枠を利用したいプログラム参加機関は、利用希望額をその月の条件決定対象となる MBS の事務
主幹事会社に条件決定予定日の 2 営業日前までに申し出る。(なお、事務主幹事会社以外の主
幹事会社に申し出る必要が生じる場合―希望者が事務主幹事から MBS を購入できない理由が
ある場合―があり得る。)希望の申し出は、条件決定前のいわば「成り行き」での買い注文に等し
いことには留意が必要である。配分枠の対象になるのは、「各月の MBS 発行額の 10%程度」が
上限となり、配分希望額がこれを超過する場合は、按分となる。按分計算において、1 億円未満
の端数は切り捨てとなるが、1 億円に満たない金額は 1 億円へ切り上げられる。プログラム参加
機関も、本プログラムとは別途、通常の MBS の購入は可能である。
住宅金融支援機構の証券化支援事業に基づく買取型住宅ローンの取扱実績が多ければ多い
程、より多くの MBS を購入できる機会が得られるという点で、米国の Fannie Mae および
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住宅金融支援機構 「『フラット 35 取扱実績に応じた MBS 配分プログラム』の実施について(お
知らせ)」 2016 年 2 月 29 日
http://www.jhf.go.jp/investor/shisan_tanpo/haibun_program.html
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新生ストラテジーノート
新生証券株式会社 調査部
Freddie Mac の “swap program” を彷彿とさせる側面がある。しかし、こうした米国 GSE の
“swap program” は、参加金融機関が GSE に譲渡した住宅ローン債権の見返りとして、金銭で
はなく、MBS が交付されるものである。つまり、参加金融機関の観点からは、住宅ローン債権を供
出して、ほぼ同額の(住宅ローン債権よりはやや利回りの低い)MBS を取得できるという、まさに
「交換」プログラムである。住宅ローン債権よりは利回りの低い MBS に交換してしまう意義としては、
住宅ローン債権と違い、MBS は高い市場流動性を備えているため、容易に市場で売却が可能で
あることなどが挙げられる。
いっぽうで、住宅金融支援機構が導入予定の「フラット 35 取扱実績に応じた MBS 配分プログラ
ム」は、住宅ローンの住宅金融支援機構への譲渡と、MBS への投資は、まったく別個の取引とし
て行われ、時期もずれている。(たとえば、「N 年 3 月初日から N 年 8 月末日まで」の【フラット 35】
買取型取扱実績の金額が、「N 年 10 月から N+1 年 3 月」までの MBS の配分枠の根拠となる。)
米国 GSE の “swap program” とは似て非なる(あるいは、単に異なる)ものである。
「フラット 35 取扱実績に応じた MBS 配分プログラム」は利用できるか
「フラット 35 取扱実績に応じた MBS 配分プログラム」は、2 月末に公表されているが、おそらく
は、少なくとも数か月間にわたり、住宅金融支援機構内部での検討および関係先との調整が進め
られた結果、導入が決まったものだと推測される。おそらくは、これが考案されたタイミングでは、
日本銀行がマイナス金利付き政策を決定したこと(2016 年 1 月 29 日)や、長期金利の指標的な
存在である 10 年国債流通利回りがマイナス圏に沈んでしまったこと(2016 年 2 月上旬頃より常
態化)は予期していなかったはずである。
金融機関の「余資運用」の対象として考えた場合に、円建てでプラスのコストを払って(たとえば、
原資が預金であれば、預金者に利息を払い、預金保険機構に保険料を払って)調達している円資
金の運用先として、逆鞘(つまり、赤字)を確定させてしまうようなマイナス利回りやゼロ近辺の利
回りでの国債、政府保証債、地方債等での運用は容易に選択できるものではなくなっている。いっ
ぽうで、国債金融機関にとって、プラスの収益を確保できるような円建ての債券タイプの運用手段
が限られてきている。こうした中で、住宅金融支援機構 MBS は、裏付けとなる住宅ローンの返済
速度が変化するリスクを投資家が負担していることもあり、発行市場・流通市場の双方で、こうし
たリスクが加味された価格形成が行われている結果、絶対値としては史上最低水準近辺となって
いるとはいえ、プラスの利回りが得られるものとなっている。新発の住宅金融支援機構 MBS を運
用対象としている金融機関は言うまでもなく、それを検討している金融機関にとっても、「フラット
35 取扱実績に応じた MBS 配分プログラム」への参加は、十分に検討に値するのではないか。参
加しても MBS の購入義務は生じないので、運用の選択肢を確保しておくだけだと考えることがで
きる。
(調査部長 江川 由紀雄)
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新生証券株式会社 調査部
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名称
:新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.)
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号
所在地
:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号
日本橋室町野村ビル
Tel : 03-6880-6000(代表)
加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
資本金
:87.5 億円
主な事業 :金融商品取引業
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