資料-1 第2回 漁村活性化のあり方検討会 【協議資料】 第1回検討会の主な意見と、今回ご議論いただきたい論点は次のとおりです。 1.各委員からの取組報告 ○瀧山委員(寿都町における取り組み) 「攻めの寿都町の水産業(即効性のある取組と地道な取組の継続)」と題し、寿都町の水 産業の現状と磯焼け対策、体験交流事業を通じた地域活性化について紹介頂いた。 寿都町の漁業は、資源変動が大きく生産が不安定であり、養殖生産の安定や漁業所得の 向上が課題である。漁業収入の増加及び資源の安定を図るため、体験交流事業や磯焼け対 策、資源管理対策、養殖施設整備 等を実施している。年間2千人以上が寿都町に体験漁業 に訪れる。 できるところから取組を始め、小さな取組の発展を地道に育てていく。短期間で成果を 実感できる即効性のある取組と地道な取組の継続が重要。 ○大江委員(海士町における取り組み) 「ないものはない~離島からの挑戦(最後尾~最先端へ)」と題し、海士町がリーダーシ ップをとり、町全体で取り組む活性化とその効果について紹介頂いた。 財政悪化や人口減少による地域存続の危機に対して、町も漁協も合併を行わず、町職員、 地域住民が危機感を共有 し、一体となって活性化に取り組んだ。若者・よそ者・馬鹿者が 島おこしの起爆剤 である。公設民営 の考え方で、必要な施設や資機材等のハードを町が整 備し、やる気のあるよそ者・若者が運営・事業化する。異質なものを取り入れ、多様性を 持つことで変化し、成長する。 地域活性化の源は「交流」にある。交流を通じて相互に人間力を高め合い、海士町の応 援団を島内外に作る。島から社会を変えるモデルを作る。これからも官民一体、地域一体 となって挑戦を続けていく。 ○永富委員(三重県鳥羽磯部漁業協同組合における取り組み) 直営食堂「四季の海鮮 魚々味」の取組や地域の漁業資源の問題などについてご紹介頂い た。 組合員の大半は家族漁業であり、夫婦船が多い。温暖化や環境変化で海藻が減少し、アワ ビ等の 資源が減少 している。資源がないと漁業は存続しない ので、資源回復に重点をおい ている。 平成 21 年に漁協直営食堂「四季の海鮮 魚々味」を開店。うまいものをうまいとき食べ てもらい、魚食を普及したいという思いでやっており、食堂に関しては儲けを重視してい ない。魚食普及や漁村文化の継承など、儲けの出にくい活動を続けるのも漁村の役割。 地域が衰退した理由は何かを考え、対策を実行 することが必要。当地域は、市場の買参 権の開放により、旅館等がセリに参加するようになり、魚価が向上 した。仲買業者から反 対は強かったが、漁業と観光で地域が生き抜くための改革であった。 1 ○浪井委員(大分県漁業協同組合下入津支部、佐伯市蒲江地区における取り組み) 漁協女性部の活動として、各種研修会、イベントでの加工品販売、調理教室等についてご 紹介頂いた。 地元青年部が「浜祭り」や「花火大会」等のイベントを企画運営し、若い人の活動が活性 化の原動力 と感じている。また、地元小学校が開発した“ブリまん”が商品化され、現在、 道の駅で販売されている。こうした 漁業や漁協だけではない地域を巻き込んだ活動が、漁 村の活性化につながる 。 「いいものを作れば売れる」時代ではない。生産だけでなく、消費者、観光客の目線に 立った販売の工夫が必要 。また、女性特有の団結力や情報収集能力を生かし、自分たち自 身も楽しみながら、周りの人にも楽しんでもらえる取組を継続していくことも重要 。 ○三木委員(研究からの報告) 漁村の実態や各地の取組事例を踏まえ、活性化に取り組むポイントについてお話し頂いた。 活性化された漁村とは、人が集まり話し合いが行える漁村、漁村にいることが幸福と思 えること 。幸福と思えるためには、所得、家族、仕事があること、地域内の関係(漁業者 間・漁協・住民間) 、外部者との交流など要素はさまざまな。 漁業者数の減少は進むが、各漁村に確かなリーダー・サブリーダーが存在し、地域内外 の交流を促せば漁村としての展開の可能性がある。地区外との社会的な交流関係(ソーシ ャルキャピタル)を高めること が重要。活性化のステップとして、人材育成、アイディア 出し、小仕事の創出 、集える場の創出 。集いの場の創出としては、既存施設(ハード)の 利用 が考えられると共に、ワークショップなどいかにソフトを充実させるかが課題 。 2 2.論点 ①漁村の将来と地域の維持について (長野座長)30 年後の将来は、地元がどのようになっていると考えるか。 (永富委員)10 年ならそんなに衰えないと思うが、20 年、30 年だと漁協の組合員は 1/3 に なっているのでは 。おそらく 船曳漁業者とノリ養殖漁業者しか残らない のではないか と考える。 (瀧山委員)数値的な予測では、人口減少が深刻 。漁業者が減って今の体制で漁業活動を 維持できなくなるので、漁業の協業化を進める必要がある。また、地元企業と漁協の タイアップなど地元同士の協力体制の構築 を目指すことも重要。例えば地元の 建設業 に体力があるうちに漁業とタイアップするなど 。 (大江委員)ありのままの漁村の魅力をどう守り伝えていくか、集落を維持し、消滅漁村 を作らないための取組を、実際に集落に住んでいる人の他に集落外の人も一緒になっ て検討をする。そのために、ノウハウを持った人を集落に派遣するための事業があれ ばいい と考える。 外部から担い手を調達する際にも、ただ人を集めるのでなく、集落を維持するために は、調達した担い手が所得をきちんと得られるか等、定着に必要なことを一つ一つ考 えていくことが重要。 (浪井委員)恐らく過疎化している。地元に帰る教育 を進める。外に出て地元の良さに気 付いた若者が、地元に戻って漁業や文化を受け継いでくれるといい。若者が収入を得 る仕事を増やす べき。 (論点-漁村の将来と地域の維持について)・・・資料2-p2~3 ※漁村の過疎高齢化は今後も進行する。漁業後継者の対策も必要である。 ※漁業者が減り、現在の漁業活動を維持できなくなる地域も想定されるた め、協業化や他産業(建設、観光、流通等)との連携など、将来的な漁業者 の減少を見据えて地域の漁業をどう維持していくか検討しなければなら ない。 ※漁村活性化のノウハウを持った人材の集落派遣制度を充実させるべき。 ※学校教育において、子どもたちが漁業や漁村の暮らしを学ぶ機会を増やす とともに、外に出て地元の良さに気付いた若者が戻れる環境を整備すべ き。 3 ②行政の役割について (長野座長)漁村活性化について、漁協と行政ではどちらが主体となった方が良いと考え るか。経験から感想を教えてほしい。また、行政に求められる役割は何か。 (永富委員)漁協だけでは地域の総意とはならない。漁協の発案・アイディアを 行政がま とめ役となって地域の合意を得る必要 。また、女性の参画も重要 。 (浪井委員)現場を熟知しているのは漁協だが、資金やノウハウ等の面で行政の協力・支 援がなければ現実的には難しい 。 (瀧山委員)体験交流事業は、最初は町が主導で始めたが、数年して民間企業が出資し、 農家・酪農家・漁家による民泊で体験学習をテーマに事業を拡大した。初期は行政主 導であっても、取組が発展すれば民間が主体となり、行政は地元がやりたいことをや れる環境を整えるサポート役 となる方がいい。 (三木委員)行政としては 市町村が一緒に取り組むことが良い と感じた。市町村は最も住 民に身近な行政であり、漁村活性化について取組や主体(活動者)のコーディネート 役が求められる のでは。役場のマンパワーで、 取り組み状況に差が出ている と感じる。 (大江委員)役場職員に加え、国の事業予算や活性化にノウハウのあるアドバイザー役 と して、地域おこし協力隊 を 20 名採用して各集落に総務省の費用により配置している。 役場職員や協力隊は、住民・漁業者と同じ目線でかつ外の情報をうまく集めて使う役 割 を担っている。 (論点-行政の役割について)・・・資料2-p4~7 ※市町村が漁村活性化の取組を漁業者や住民と一緒にやれる体制づくりが 重要である。そのためには話し合いの場づくりやワークショップなどソフ トの取組を充実させることが必要である。また、取組主体はあくまで漁業 者・住民、民間等であり、行政はコーディネート役またはサポート役とな るべき。 ※市町村職員の知見や意識向上を支援するとともに、漁村活性化にノウハウ のある外部支援者(総務省の地域おこし協力隊等)の存在も重要であり、 国はこうした支援制度を充実させるべき。また、支援制度の情報提供を積 極的に行うべき。 ※市町村内の水産部局だけではなく、関係部局も参加すべき。 ※市町村の広域合併により学校が閉校になる等の住民サービスが低下して おり、都市部とは異なるサービスの提供が必要である。 4 ③活性化に向けた取組 (1)交流・I ターンによる活性化について (水産庁)漁村では、よそ者や若者が地元に受け入れられずとけこみにくいといった場合 が多いが、海士町において、それらの人々を地元が受け入れるに至った経緯を教えて ほしい。 (大江委員)受け入れたよそ者や若者が結果を出し、それを住民が認めた。町では、結果 を出させるための支援として、やる気のある者への支援を惜しまなかった。やる気さ えあればできる環境を、町長がリーダーシップをとり町が作った。具体的には、漁船 も養殖施設も町が整備し、新規就業者の初期投資を抑えた。個人に対する支援では不 公平が生じることもあるが、結果としてはやる気を出すことに繋がった。 (水産庁)Iターンが多く、Uターンが少ないことについてはどのようにお考えか。 (大江委員)仕事がないため島を出る若者が多いのは事実。現在海士町では、いったん島 を出ても、仕事をつくりに島に帰ってくる学校教育を実施している。 (2)漁業所得の向上について (永富委員)漁業者の所得低下が課題 。漁業での収入が 250 万円程度では若者は漁村に住 まない。所得を上げる方策が必要 である。 (大江委員)岩ガキ養殖の新規参入者の所得は手取りで 200 万円程度。所得よりも、島に 住んで何をしたいと考えるかが大切 。都会の一流大学を出て、一流企業で多収入を得 ている人が何故海士町にやってくるかというと、それは、島に生きる価値を共有でき る仲間を持ちたい からではないか。 (瀧山委員)寿都においても、漁業所得の低さから出稼ぎに 出ていた時代があった。現在 は 体験交流事業が漁業以外の収入源 となるとともに、体験交流事業に参加することで 昔は排他的であった漁業者が、外部の人を受け入れ、自ら積極的に指導をするように なった。体験交流事業への漁業者の意識は大きく変わった。 (浪井委員)廃校となった小学校の校舎を活用 して、高齢者向けの地魚を使った料理の配 食ができないかと考えている。地域の女性が働ける場を提供 したい。女性は色々な仕 事を抱えており大変ではあるが 収入(小遣い)が稼げることが重要 。 5 (3)限界集落の過疎化対策について (事務局)既往調査で寿都の政泊地区は、限界後期型と消滅寸前であったが今はどのよう な状況になっているか? (滝山委員)今は漁業者が居なくなってしまい、密漁の巣になってしまっていることが懸 念される。なお、この漁港は釣りのメッカであり、外部から人を呼ぶために釣り堀と しての利用も検討している。 (長野座長)施設の再利活用が柔軟にできる制度が整備されれば良い。 (論点-活性化に向けた取組について)・・・資料2-p7~11 (1)交流・I ターン者の受け入れによる活性化ついて ※やる気のあるIターン者等よそ者を育てる施策や地域の雰囲気が重要 である。また、子供たちが地元に戻るきっかけとしての学校教育や、漁 村に人を呼ぶきっかけをつくることも重要であり、積極的な情報発信が 求められる。 (2)漁業所得について ※漁業で生計を立てていくため、漁業所得の向上は重要。一方で、所得等 金銭面とは異なる価値観も漁村活性化には必要である。地域に対する愛 着や仕事のやりがい、生きがい、地域や人の結びつきなど、多様な価値 観で漁村に暮らしたい人がいる。 ※漁業所得以外の収入を得ることで、漁業者の意識改革にもつながる。特 に、交流事業など外との交流はその効果が大きい。また、女性部の活動 についても、取組を継続するためには、対価(収入)を得ることが重要 である。 (3)限界集落の過疎化対策について ※限界集落については周辺地域が漁業権や資源管理等を一体的に行わな ければ、集落の消滅だけでなく、漁業者が居なくなり漁場や資源の荒廃 につながる恐れ。 ※将来的な人口減少を見据えて集落消滅後の既存施設の活用について検 討しておくことが必要。また、施設の再利活用を進めるための支援制度 が必要である。 6 ④漁村活性化の指標について (長野座長)人口や所得等で表せない活性化の指標について、どのようなものが考えらえ るか。 (瀧山委員)地域のやる気 が評価する指標が考えられないか。 (大江委員)漁村では漁業だけでなく農業も行っている世帯が多い。半漁半農など漁業外 所得も含めて、漁家所得の確保を目指す指標 とすべき。また、日本全体で人口が減少 していくなかで、漁村の人口を維持していくことは困難。若者の移住を促すことで、 人口は変わらずとも人口ピラミッドのバランスがよくなる 。そのバランスを指標とで きないか。 (永富委員)多面的機能をしっかり評価すべき 。また、生活ができない・不便だから漁村 から人がいなくなってしまう ので、漁業以外で収入を得て所得の安定化を図る必要が ある。 (浪井委員)働く場所が少ない 。働く場所・収入を得る機会 を評価できないか。 (論点-漁村活性化の指標について)・・・資料2-p13~19 ※所得や人口といった数値ではかれる指標も重要だが、地域の元気ややる気 を表す指標、漁村で暮らすことの幸福度といったものも、活性化の指標に ならないか。 ※半農半漁や兼業など漁業以外の所得も含めた漁家所得を増やす指標、多様 な就労機会の確保を表す指標、国内外の来訪者が安全に安心して、快適に 過ごすことができるかどうか、そのための環境整備ができているかを表す 指標を検討すべき。 7 ⑤活性化の取組範囲について (長野座長)活性化の拠点となる寿都漁港などの大きな漁港・集落と、その周辺の小さな 漁港・集落との関係はどのように捉えているのか。 (瀧山委員)小さな漁港・集落に対しても支援を心掛けている。小さな漁港だからできる ことがある のではと考える。また、少人数の集落においても 何人か若者がいれば活動 の可能性がある。もともとコンブの良い漁場であったりする。やむを得ない場合には 統合も視野 にいれる。 (大江委員)海士町では 町内に 14 ある集落全体を一つの集落として捉えている。定期的に 話し合いの場を設け、地元の意見を行政が吸い上げると共に、住民同士が活発に意見 を交わして盛り上がる場としている。 14 ある集落のうち、特に人口の少ない小規模集落については、他の集落が積極的に関 わり見回り等を行っている。すべての集落が同じレベルとはならないが、漁港や集落 間の連携が可能な範囲で活性化に取り組むべき 。 (参考―活性化の取組範囲について)・・・資料2-p21~23 ○漁村活性化の範囲は、個々の漁港背後集落など小規模漁村単位では解決 できず、漁業活動や漁港機能の補完関係、住民の生活圏を踏まえた一定 のまとまりある範囲で漁村の活性化を考えていく必要がある。 ○市町村や漁協も合併等で区域が大小さまざまであるため、一概に市町村 単位あるいは漁協単位ではなく、地域ごとに連携範囲を検討すべき。 ○ハードは基本的に行政単位だが、ソフト(流通・販売等)は、行政区域 に関わらず連携範囲を検討すべき。一方で、近隣漁協等で連携すること が難しい地域もあることを考慮すべき。 8
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