2016年3月質問と答弁

平成 28 年第 1 回 定例会一般質問(太田議員)
(健康福祉部、子ども・女性局、教育委員会)
確定稿
平成 28 年 3 月 9 日
Ⅰ.子どもと若者の貧困対策について(教育長、子ども女性局長)
発言のお許しをいただいたので通告に従い、三つのテーマについて質問しま
す。
最初に子どもと若者の貧困対策の取り組みについてお尋ねします。
所得格差が広がっています。経済のグローバル化と格差を許容する政策のも
とで、世帯間の所得格差は広がりを見せています。特に将来を育む子育て世代
とその子どもたちの所得格差が広がることは日本の将来に暗い影を落とします。
先日、共同通信が「子育て貧困世帯 20 年で倍増」という記事を配信していま
した。山形大学の戸室健作准教授が調査結果をまとめ今月 1 日に公表したもの
です。生活保護費以下の収入で暮らす 18 歳未満の子どものいる子育て世帯の割
合が 13.8%、1992 年から 20 年間で倍増した、というものです。特に沖縄県は
37.5%と子育て世代の四割弱にも上っています。記事では戸室准教授は「全国で
子どもの貧困が深刻化している」と警鐘を鳴らしています。
様々なデータが格差の拡大を証明しています。例えばOECD=経済協力開
発機構が去年、2015 年に発表したデータによりますと、年齢別の相対的貧困率
は、18 歳未満の子どもで国際比較するとデンマークが 2.7%、ドイツが 7.4%、
フランスが 11.4%で、日本は 15.7%に上っています。先ほどの共同通信の配信
記事同様、10%台の半ばに達しているということがうかがい知れます。よく子
どもの 6 人に 1 人が貧困、と言われますが、その論拠となるデータです。
これからの社会を担う世代である、子ども・若者の支えとなる政策をもっと
手厚くしなくていいのか。OECDの 2007 年のデータでは、子ども・若者の支
援となる児童・家庭給付と公財政教育支出、つまり政府や自治体の子ども子育
ての事業費や教育に充てる事業費は、対GNP比率で 6%に満たないという惨状
です。これはOECD諸国最低の水準になります。
子ども・若者の貧困について、昨今新聞報道でも企画記事が組まれ、多くの
方が気に留めるようになったと思います。しかし、一応モノが行き渡っている
ように見える現在の社会で、貧困・経済的困窮のサインを見つけ辛くなってい
るのは事実です。冒頭の調査以外にも先日、大阪市が幼稚園や保育園、市立小
中学校のおよそ 6 万人分のアンケートを今年実施することを公表しました。自
治体の調査としては全国最大規模ということです。大阪市は経済的困窮世帯の
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平成 28 年 3 月 9 日
割合が比較的高いという課題はありますが、自治体が対策を立てる以上、まず
データと実態を把握する必要があると考えます。
子ども・若者の貧困や少子化問題への対策については、まずは労働雇用政策
の再構築で安定した雇用を増やし、物価の上昇に見合った賃金の上昇、労働規
制の強化で子ども・若者の世帯における暮らしの底上げが必要です。そして予
算の大幅な組み替えを行い、教育まで含めた子ども・若者に対しての社会保障
の充実を進めなければ、現在日本が直面している様々な課題の解決につながら
ないと思います。まず取り組まねばならない政策として、高等教育に至るまで
の公教育の無償化や家庭の負担軽減、子育て給付金、経済的に厳しい世帯への
支援が必要です。この分野では、例えば来年度当初予算案で県内へのUターン
を条件に返済を免除する給付型奨学金の制度を創設するなど、本県でも取り組
みを続けています。
そうしたなかで、最初にお尋ねしたいのは子どもの貧困という観点で、学校
だけでなく家庭や地域も含めてその解決を目指すスクールソーシャルワーカー
の活用です。スクールソーシャルワーカーは、福祉の観点から、いじめや不登
校、児童虐待などの課題に対し、学校、児童相談所、警察などと連携しながら
解決策を探る社会福祉士や精神保健福祉士などの専門家です。いじめや不登校、
児童虐待への対応ということですが、その背景には家庭の経済事情や疎外など
もうかがわれるケースがあります。個々の子どもたちが直面する様々な困難を
家庭と地域に入って解決策を探るうちに貧困の問題が見えてくることもあると
いうことです。このスクールソーシャルワーカーについて、8 年前から配置して
いる長野県では新年度に 18 名にまで増やし、よりきめ細やかな対応が出来るよ
うにするということです。岐阜県も一昨年度から配置しており、新年度には 11
名、岐阜市では 2 名で対応をしてゆくとしています。ちなみに昨年末に文部科
学大臣の諮問機関である中央教育審議会が提出した答申では、スクールソーシ
ャルワーカーを学校に必要な職として法令に明記することを検討するとのこと
です。また、文部科学省では、全ての中学校区への配置を目指すということで
す。スクールソーシャルワーカーの導入で現在多忙な状況が指摘されている教
員にとっても負担の軽減につながり、
「チーム学校」として、それぞれの役割に
力を入れながらきめ細やかな対応で子どもたちを支えてゆくことも期待されて
います。
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平成 28 年 3 月 9 日
一方、来年度以降の方針ということで質問したいのは貧困の連鎖を断つため
の学習支援事業です。民主党政権のときに事業として始まり、今年度から全国
の市町村でも取り組まれるようになった生活困窮者自立支援事業のなかの市町
村の自主事業に位置付けられています。私は一昨年の一般質問で取り上げまし
たし、去年の 12 月には私たちの会派の伊藤英生議員も取り上げましたが、来年
度当初予算案の事業で拡充もされており、今後の方針を質す意味で再度お尋ね
します。
学習支援事業については岐阜市が先行的に取り組んでいて市内の団体や個人
が、放課後や週末に就学援助や生活保護など経済的に厳しい世帯の子どもたち
を中心にきめ細やかな学習指導をしています。岐阜市が補助金を出して講師の
謝礼に充てています。地域的に偏在があり、岐阜市でも南部には学習支援にあ
たる所がないのが現状です。県では、来年度こうしたケースへの対応というこ
とで学習支援に通うための交通費の補助を行うことを盛り込まれています。ま
たこれは今年度、県の子ども家庭課がモデル的に取り組んでいる事業ですが、
羽島市内でひとり親家庭の子どもを対象とした週末の学習指導教室が開催され
ています。この他に、来年度当初予算事業として、中学生や高校生を対象とし
て教員を志望する大学生や教員OBによる学習支援、
「地域未来塾」も行われま
す。
このように岐阜県、あるいは県内自治体でも様々な部局が真摯な取り組みを
進めている事業ですが、まだ試行段階の部分もあり、いくつか課題も見受けら
れます。一つは市町村の自主事業ということで、県内でも取り組んでいるとこ
ろが少ないこと。学習支援のニーズはあると思われますが潜在的なものを把握
するのは難しく、学校を通じて家庭への周知が一層求められます。また岐阜市
内でも地域的な偏在がありますが、自主事業として取り組んでいない市町村に
ついては自治体の境界を越えた子どもの行き来があってよいのではないかと思
います。来年度事業で先に挙げた交通費助成はまさにこの対策ではありますが、
現実に他自治体から岐阜市内への学習支援に行きたいとのニーズもあることを
考えると、県が仲立ちをしながら広域的な調整をしてゆく必要があると思いま
す。
また、この分野を担当する部局が県のなかでも多岐にわたっていることも指
摘しなければなりません。そもそも生活困窮者自立支援事業自体、省庁で言え
ば雇用、福祉、教育、医療など省庁の垣根を超えた取り組みとして求められて
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平成 28 年第 1 回 定例会一般質問(太田議員)
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平成 28 年 3 月 9 日
きたものです。学習支援ひとつとってみても教育委員会、地域福祉国保課、子
ども家庭課に分かれています。どこかが主管課を務め、県庁内にチームを設け
ながら岐阜市はじめとした市町村と連携してゆくという行政の垣根を超えた取
り組みが必要です。
そこでお尋ねします。
まず教育長にお尋ねします。
1)子どもの貧困とスクールソーシャルワーカーの活用について、
スクールソーシャルワーカーのこれまでの実績と将来的な配置・活用の
見通しについていかがお考えですか。
次に子ども女性局長にお尋ねします。
2)学習支援事業について、
県内でもまだ一部でしか取り組まれていない学習支援事業に関して、実
施市町村の取り組みを拡げてゆくために、県はどのようなサポートをお考
えですか。また現状でも学習支援活動は様々な部局間にまたがっている事
業ですが、県庁内の連携をどのようにしていくお考えですか。
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平成 28 年 3 月 9 日
Ⅱ.放課後等デイサービスについて(健康福祉部長)
続いて、放課後等デイサービスについてお尋ねします。
障がいのある子どもたちを支えるための取り組みは、岐阜県においても重要
なテーマとなってきました。重症心身障がいの子どもたちの一時預かりや、昨
年夏にオープンした希望ヶ丘子ども医療福祉センターにおける発達障がい児支
援の充実など、ここ数年、県の取り組みとしても支援体制の強化が進められて
きました。
障がいのある子どもたちで、放課後や夏休みなど長期の学校の休みに、利用
できる施設が少なかったり、学童保育になじみにくかったりと、過ごし方に悩
むケースがあります。放課後等デイサービスは平成 24 年の児童福祉法の改正で、
障がいのある児童・生徒を対象にして始まったものです。
事業主体としては営利企業も参入できるようにして、さまざまな特徴のある
サービスが受けられることから選択の幅自体は広がっていると言えます。東京
など大都市部では、学習塾型の事業所や音楽など創作活動を通して能力を伸ば
すことも目指す事業所、将来の就職を念頭においた指導をする事業所など、様々
なサービスを提供する事業所もあるということです。
事業所自体の開設も制度開始後三年余りで急激に伸びています。岐阜県でも、
障害福祉課に尋ねたところ、放課後等デイサービスを実施しているのは今年年
初のデータで 113 か所。このうち 56 か所が営利企業の運営ということです。
こうしたなか、厚生労働省は昨年、ガイドラインをつくりました。全国的に
事業所数と利用者数が急増するなか、支援事業の質の問題が懸念されるとの背
景からです。障がい児を支えるという志や「子ども」
「障がい」についての観念
が不十分なまま、営利目的で事業に参入しているケースが全国では指摘される
こともあるということです。一方で、事業所を開設するにあたっての資格要件
がある指導員を確保出来るか、また指導員に対する給与・処遇・労働環境を保
障出来るだけの報酬が長期的に確保出来るのか、といった課題もあります。民
間の力を活かした支援事業ではありますが、所管する行政の関わりは重要であ
ると思います。
そこで健康福祉部長にお尋ねします。
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平成 28 年第 1 回 定例会一般質問(太田議員)
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平成 28 年 3 月 9 日
1)制度開始後、放課後等デイサービスは営利企業の参入なども含めて事業
者が急増してきましたが、安心して利用できるための療育や支援などの質
を保つために、県としてどのように取り組むお考えですか。
2)また、事業者にとって放課後等デイサービスは障害福祉サービス等報酬
の単価によって経営が左右されると思いますが、事業者に将来的にも安定
した運営見通しを持ってもらうために県としてどう対応されますか。
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平成 28 年第 1 回 定例会一般質問(太田議員)
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Ⅲ.地域包括ケアシステムについて(健康福祉部長)
三つめに、診療報酬改定のなかでの地域包括ケアシステムについてお尋ねし
ます。このテーマでは前回、去年 12 月の定例会でも一部触れましたが、高齢化
する地域社会のなかで非常に重要な仕組みづくりであるので、診療報酬改定も
なされたことから再度お尋ねします。
平成 28 年度診療報酬改定では、
「2025 年=平成 37 年に向けて、地域包括ケア
システムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築を図る」、「地域包括
ケアシステムの推進と医療機能の機能分野・強化、連携に関する充実等に取り
組む」ということが掲げられ、医療の場を病院から在宅にシフトする路線が本
格的に進んでいます。訪問看護や回復期のリハビリテーションなどの点数がよ
り加算され、この方向への誘導がとられています。
地域包括ケアシステムについては、特に、今後認知症高齢者の増加が見込ま
れることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも必要とされ、保
険者である市町村や都道府県が地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に
応じて作り上げてゆくことが必要とされています。
「地域包括ケアシステム」と
インターネットで検索しますと、そのイメージ図がヒットしますが、これらは
実に多様で、まさに地域ごとに様々な形態があることが想定されます。
地域包括ケアシステムをいかに構築するか、多様なシステムを地域の実情に
あわせていかに作り上げるか。それぞれの市町村の課題ではありますが、県と
してこの牽引と広域的な調整が求められてきます。例えば広島県では「広島県
地域包括ケア推進センター」を平成 24 年に設置し、地域ごとのシステムづくり
の類型=基本的な手法やプロセスを示したり、システムづくりのロードマップ
づくりの支援を行ったりしています。
一方、診療報酬改定のなかでは、地域包括ケア病棟への転換も進める誘導が
盛り込まれています。地域包括ケア病棟は日常生活でのリハビリテーションと
地域包括ケアを行う病棟で、急性期からの受け入れや、在宅・生活復帰の支援、
緊急時の受け入れなど、とりわけ高齢者の在宅医療を支援するということでは
使い勝手のよい制度になっています。診療報酬改定での配慮もあり、医療資源
の少ない山間地や過疎地などではこの病棟を選択するところが増えてくると思
われます。昨年度から取り組まれている病床機能報告制度、そして地域医療構
想のなかでも急性期病床から回復期への切り替えが促されるなかで、地域包括
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平成 28 年第 1 回 定例会一般質問(太田議員)
(健康福祉部、子ども・女性局、教育委員会)
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平成 28 年 3 月 9 日
ケア病棟のニーズは高まることと思います。去年、厚生環境常任委員会で県立
下呂温泉病院を視察した際、山森理事長からは地域のニーズと経営の安定化か
らもおよそ 200 の病床のうち、半数を地域包括ケア病床に転換したいとの希望
が聞かれました。こうした医療施設の方向転換について、県の方針をどう示す
かも問われます。
そこで健康福祉部長にお尋ねします。
1)平成 28 年度診療報酬改定では、第一に地域包括ケアシステムの推進が掲
げられましたが、県としてこれを広域的に支援・牽引する役割をどのよう
にお考えですか。
2)また診療報酬改定では入院医療の分化とも関わることですが、地域包括
ケア病棟の整備も挙げられています。どの程度の地域包括ケア病棟を整備
するか、その方針やこれからの取り組みについて、いかがお考えでしょう
か。
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