聖橋 - 千代田区

土木系
no.3-01
聖橋
キーエレメント:聖橋、ニコライ堂、湯島聖堂 など
□ 概要
JR御茶ノ水駅東側の神田川上にかかる聖橋は、1927年に山田守によって設
計された。名前の由来は、千代田区北部外周に立地しているニコライ堂と文京区
湯島にある湯島聖堂の二つの聖堂を結ぶことから、公募により命名された。河川
河岸緑化・河川計画・歴史的景観
31
管理区域であるため立ち入りは出来ないが、橋上からは、神田川沿いに千代田区
が長年かけて緑化してきた緑地を望むことができる。また橋上からは、総武線、
中央線、丸の内線の各電車が神田川の上を交差する風景とともに、戦後すぐに出
来た土木構造物が立体的に複合して景観を形成していることが視覚的に理解でき
る。
聖橋自体は、神田川両岸が形成する渓谷状地形に対応しているだけでなく、大き
なアーチをつくり水上交通をした際の眺めを念頭に設計されている。現在では、
水上交通は行われていないため建設当時同様の景観を眺めることは出来ないが、
橋脚より下がった位置にあるJR中央線お茶の水駅ホームから近似した景観を想
起することができる。
1
2
3
4
★ check point
0. 御茶ノ水橋から聖橋を望む。右岸にJR御茶ノ水駅のホーム、左岸に丸ノ内線御茶ノ水駅の地上出口。
1. 聖橋上の文京区との区界。ニコライ堂を望む。
2. 聖橋上に配されたガードレール。石造の聖橋の近似色で計画されている。
3. 聖橋の足下から、総武線、中央線、丸の内線が立体的に交わる状況を望む。
4. 聖橋のたもと。千代田区松住町からの見上げ。
0★
★3
★1 ★4
★2
32
建築系
no.3-02
御茶ノ水駅・駅舎建築群
キーエレメント:地上出口、半屋外空間など
□ 概要
御茶ノ水には、大学が多く立地しているためか、JR御茶ノ水駅だけでなく、地下
鉄の丸ノ内線や千代田線の駅も設計されている。
神田川護岸北側、文京区側に見える地下鉄丸ノ内線の御茶ノ水駅地上部分(19
54年)は、ル・コルビジュエの事務所を経た土橋長俊によるモダニズム(インター
高低差利用・借景的景観
ナショナルスタイル)風の設計となっている。この様式が選ばれた理由は、建設
費の上限から、簡素な意匠が求められたためだと言われている。しかし、結果的
にお茶の水橋南側に設置されたJR御茶ノ水駅のホームから見ると神田川の護岸
に千代田区によって植林された樹木の緑色の風景にアクセントが加えられたよう
な設計となった。
千代田線御茶ノ水駅の地上出入り口は、地下部の商店を内包している空間と地上
面の間に半屋外的な広場空間を設け、高低差を利用し立体的な景観を楽しめるよ
う設計されている。
33
1
2
3
4
★ check point
0. 御茶ノ水橋から文京区側に設計された丸ノ内線御茶ノ水駅地上で入口を望む。
1. 文京区側からJR御茶ノ水駅西口で入口を望む。
2. 御茶ノ水橋からJR御茶ノ水駅ホームを望む。
3. 千代田線御茶ノ水駅とニコライ堂の間に設けられたポケットパーク。
4. 千代田線御茶ノ水駅の出入り口に隣接する商店に接した半屋外空間を地上から見下ろした景観。
★2
★0
★1
4★
★3
34
土木系
no.3-03
男坂と女坂
キーエレメント:ペーブメント、植栽ポット など
□ 概要
駿河台一丁目七番地、とちの木通り沿い、アテネ・フランセの南の並びに西から
女坂、男坂の順に100 m ほど離れて併存する。 駿河台(旧・本郷台地)から
猿楽町の平地にくだる境界部で双方を結ぶ石造階段状の坂。震 災復興土地区画整
理事業として1924年に両坂に階段が建設された。
震災復興事業・住民参加
35
男坂は直線的で急勾配。また、旧来の寺社仏閣にも見られる石段となっている。
両側の学校校舎ビルのボリュームやその間に渡された渡り廊下とも相まって、土
木的スケールの印象を与える。
それに比して、女坂は周辺に建設された集合住宅やオフィスビルを縫うように蛇
行している。とくに、東側に配された中層集合住宅(コート女坂)は、階段の中
腹からでも各階に直接出入りできるような設計の配慮が成されており、その入口
には個々人のオーナーの植えた植栽が日常の生活を織りなす景観を作っている。
1
3
2
4
★ check point
0. 女坂中腹にある踊り場から中層集合住宅 ( コート女坂 ) を望む。
1. 直線的な男坂を下から見上げる。
2. 男坂を上から見下ろす。
3. 女坂を下から見上げる。
4. 蛇行する女坂を坂上から見下ろす。
0★★4
★3
★2
★1
36
建築系
no.3-04
日本大学とポケットパーク
キーエレメント:ポケットパーク、公開空地 など
□ 概要
明大通り沿いから、お茶の水仲通りを経て本郷通りに至るまでの雁木坂から東西
延長道の両側には、磯崎新設計によるカザルスホールから日本大学歯科病院、日
本大学の各校舎などが建ち並び大学街を形成している。
大学街・コミュニティスペース
37
もともと駿河台にある大規模施設の多くは江戸時代期の大名や旗本屋敷の敷地跡
に建っている。そのため細分化されないままの大規模な敷地割が残っており、大
規模な建築に外部のコミュニティ空間(ポケットパーク)を設ける余裕がもたら
された。とくに、1959年に同大学教員の宮川英二により設計された日本大学
理工学部5号館と1972年にその同街区に小林美夫により設計された同学部9
号館の間に配されたコミュニティ空間として作られた中庭に代表される。また、
近年改装された三井住友海上駿河台新館の裏手にあたる部分の公開空地を無駄な
く使うために一体的に繋げるような方策も試みられている。ただし、2017年
には区画の南半分(理工学部棟、図書館棟)は、機能を集約した大ボリュームの
高層タワーに建て替えられる予定。
1
2
★ check point
0. 日本大学理工学部5号館と9号館の間
に設けられたポケットパーク。シンボ
ルのように建てられた地下実験室の排
気塔。
1. 池田坂中腹に建つ日本大学歯学部を望
む景観。
2. 日本大学理工学部五号館及び九号館裏
に設けられた三井住友海上駿河台新館
3
の公開空地。壁面緑化された通り道に
なっている。
3. オーガニックハウス中庭。大学街にお
ける連続的な緑化実験が行われている。
4. 三井住友海上駿河台新館の公開空地。
3
1★
3★
★0
★2
★4
38
法制度系
no.3-05
三井住友海上ビル公開空地
キーエレメント:植栽、公開空地 など
□ 概要
分散した保険会社の本社機能を集約するため高層化されたビル(日建設計(19
84年))。巨大な建築ボリュームに対し、周辺環境との調和を図るべく総合設計
制度を利用して公開空地と多くの植栽が配置されている。褐色の自然石張り外装
公開空地・街区横断緑化計画
39
のビルエントランスはボリューム感軽減のため大きく穴があけられ、中央の広場
には清水九兵衛の屋外彫刻が配置された。現在は、千代田線の出口とビルの中庭
が連続するようガラス張りになっており館内に入ることのない千代田線利用者に
も現代彫刻が楽しむことが出来るようになっている。
これら効果は敷地南側に沿った「駿河台道灌道」の桜並木(駿河台武家屋敷に江
戸年間以来植えられていたものを、地元住民の要望により1988年この道沿い
に移植したもの)とも連続性が維持されるよう植栽計画で連続的なイメージを作
り繋いでいる。この一角を近隣の太田姫稲荷神社と一体にして古来の駿河台地域
の植生を集約した小さな森として作ろうとした結果である。
1
3
2
4
★ check point
0. 三井住友海上ビル足下にある本郷通り
沿いの並木道。
1. 三井住友海上ビル公開空地にあるスロ
ープ。
2. 太田姫稲荷神社前のペーブメントと植栽計
画。
3. 三井住友海上ビル中庭にある清水九兵
衛の屋外彫刻。
4. 三井住友海上ビル公開空地に設置され
5
た千代田線新御茶ノ水駅地上出口。
5. 三井住友海上ビル裏手の植栽計画。
★5 ★0
3★ ★1
2★
★4
40
商業系
no.3-06
神田神保町古本街
キーエレメント:書棚、喫茶店 など
□ 概要
旧称・小川町を中心とする地域が1913年の大火で焼失。岩波書店創始者が焼
け跡に古書店を開き、近隣の大学の学生増加と共に古書街が形成された。関東大
震災後、復興事業として東西中央に大正通り(現・靖国通り)の舗装整備が行われ、
この地の地主であった旗本・神保長治の名前をとって神保町となった。
震災復興計画・商店街
41
街の構成は、日光により本が傷むのを防ぐため奇数番地(靖国通りより南を奇数、
北を偶数という地番当て)南側に、北を開口部にして並置され骨格を築いている。
ただし、道にまで滲み出す書棚の光景が独特の町並景観を形成している。書籍を
購入したお客が読書をするための飲食店や喫茶店も多いことが特徴である。
1
2
3
4
★ check point
0. 半屋外空間に置かれた書棚。
1. 半屋外空間に置かれた書棚。
2. 半屋外空間に置かれた書棚。
3. 古書店の並ぶ景観。
4. 靖国通りに面した書店街の景観。
1★ ★0
2★
★4
★3
42
歴史系
no.4-01
靖国神社周景計画
キーエレメント:鳥居、並木道、築地塀など
□ 概要
靖国神社は、1869年に戦没軍人を祀る神社として創建された。現在は、千代
田区景観まちづくり重要物件にも指定されている。靖国神社の境内横には都道3
02号線(通称靖国通り)が通っており、周囲のビル群が比較的低層に抑えられ
巨大宗教施設・歴史的環境
43
ていることもあって、視野の開けた景観が形成されている。名所として知られる
桜やイチョウは創建時に植樹されたもので、戦後は復員兵によっても植樹が行わ
れた。そのために、現在の靖国神社は緑豊かな地域となっており、北の丸公園や
千鳥ヶ淵といった皇居周辺の緑豊かな環境が、靖国神社周辺をより一層落ち着い
た雰囲気にしている。毎年7月に開かれる「みたままつり」は、お盆にちなみ
1947年から始まったもので、境内には多くの提灯が掲げられ、数々の夜店が
軒を連ねる。お祭り期間中は夜店を楽しむ若者の姿が目立ち、普段の落ち着いた
雰囲気が華やかになる。
1
2
3
4
★ check point
0. 神社側から見る、靖国神社参道鳥居。
1. 沿道並木越しから望む鳥居。
2. 参道口外から垣間見える鳥居。
3. 沿道石垣造。
4. 裏側路地の万年塀。
5. 築地塀に切り替わりスケール感と
雰囲気も変化する。 5
4★
0★
★3
★2
★1
★5
44
建築系
no.4-02
イタリア文化会館
キーエレメント:ファサード、色彩、造園計画など
□ 概要
赤い外壁をもつイタリア文化会館は、イタリア人建築家ガエ・アウレンティが設
計して、2005年に竣工した。この建物は竣工当時、外壁の色彩が皇居周辺の
景観を損ねるものだとして議論を呼んだ。ガエ・アウレンティ自身は、外壁のデ
外国建築家建築・色彩環境
45
ザインに格子のパターンと日本を象徴する朱漆の赤をとりいれて表現したと主張
する一方、周辺住民はこの赤い壁面が契機となって、緑や無彩色の落ち着いた色
彩から派手なものへと周辺景観の色彩が変化してしまうのではないかと危惧して
いた。外壁の色を塗り替えるということで一応の決着がついたようだが、201
5年現在も外壁は竣工当時のままを保持している。建築物と周辺景観をめぐる色
彩についての議論は、都市の守るべきものに対する価値観の差異を浮き彫りにす
る点で、非常に興味深い視点を我々に提供してくれるだろう。
★ check point
0. 皇居内駐車場から堀越しに見る会館。
1. 堀沿いに整備された沿道の歩道と車道。
ヒューマンスケールに配慮された細かい
デザインがなされている。
2. 文化会館から東側集合住宅に抜ける歩道。
手すりやペイブメント、敷地歩道同士の接続
に至るまで相互意識して一体に整備されている。
1
3. 正面車道からイタリア文化会館へのアプローチ
イタリア製の大型植木鉢によってヨーロッパ式
幾何学庭園の雰囲気を再現。
また、通過歩行動線としても機能している。
2
3
★1
3★ ★2
★0
46
歴史系
no.4-03
東郷公園と九段小学校
キーエレメント:公共空間、高低差、歴史建築意匠など
□ 概要
関東大震災後の1926年に竣工した九段小学校は、鉄筋コンクリート造で建設
されたいわゆる復興小学校のひとつである。外観デザインには、パラボラ アーチ
型の窓や建物端にある塔のデザインなど、ドイツ表現主義の影響を受けた意匠が
公共教育施設・歴史的環境
47
施されている。震災後の都市復興事業は、災害時の避難場所として小学校を使え
るように都市計画のなかに位置づけ、公園などを併設した。九段小学校に隣接す
る東郷元帥記念公園はその試みのひとつである。公園の開園は1929年で、開
園当初は上六公園と呼ばれていた。北側には東郷平八郎邸があったが、東郷元帥
没後に敷地が寄付され公園となり、1938年に東郷元帥記念公園と改称された。
公園内に東郷邸の名残を伝えるものは多くないものの、子供用の遊具などが設置
され、この区画は都心のビル街の中に緑豊かな景観をもたらしている。
1
2
★ check point
0. 東郷公園側から九段小学校を見る。
1. 東郷公園の高低差に沿った公園脇の階段。
2. 同、スロープ脇の切り通し。
法面にカニのレリーフが施されている。
3. 公園近くの古くからの民家階段。 3
3★
★1
0★ ★2
★1
3★ ★2
★0
48
都市系
no.4-04
巨大化する建築群
キーエレメント:首都高、パレスサイドビル、PS−1ビルなど
□ 概要
竹橋区間で首都高速が濠をまたぎ皇居の一部を貫通することにより(1967年)
高い視点が獲得されたことに伴い、旧リーダーズダイジェスト社屋(A・レーモ
ンド)を改築した毎日新聞本社(パレスサイドビル、日建設計・林昌二(1966年))
など、首都高のスケールに合わせ、その路面を超えた大ボリュームの建築群が皇
土木構造物・巨大建築物
49
居北側に建設された。
首都高速上を走る車からの視点は映画「惑星ソラリス」(A・タルコフスキー監督:
ソビエト (1972年 ))でも未来都市の意匠と見立てて引用されたが、その視点
を意識したように、首都高路面より上部分に突出する屋上施設に眼を惹く意匠を
施したものも見られる。
また、この竹橋地区から数年を経て、1km離れた濠に面した丸ノ内地区にも1
00mの東京海上ビル(前川国男(1974年))が建つこととなった。
★ check point
0. 平川濠。
近代美術館側からパレスサイドビルを
望む。
1. 環濠をまたいで首都高5号線が北の丸
敷地内石垣に貫入する。
2. 首都高を経て毎日新聞社屋を見る。
3. PS−1ビル。屋上に設置された塔屋
が巨大な人の顔のように見えるポスト
1
モダン建築。 2
5
3
3★
★1
★2
★0
50
商業系
no.5-01
秋葉原駅電気街前広場
キーエレメント:アキバ文化、看板、自然発生景観、オタク文化など
□ 概要
「趣都の誕生」森川嘉一郎(2003)にもあるが、整然とした都市計画に則らず、
戦後の国鉄ガード下の闇市の流れを汲み、商業店舗に集う来客からのボトムアッ
プの要請により街の構成が決定されてきた。駅と高架下にもすき間無く商業空間
があり、駅からの来客動線に素直に従った看板と広告ディスプレイ表示が路面か
駅前広場・商業看板
ら商業ビル上方までを埋めて伸び、内容は電気製品立国日本を代表する国産ハー
ドウェア製品店舗と商品名が大半だった。それらは訴求力を増すため赤、黄色を
中心とした色彩とプラモデル風プロダクト的スケールを拡大したファサード意匠
で占められた。「アキバ」として有名地となり商業価値を高めると共に駅北西側の
駐輪場・ローラースケート場の高度利用が要請され、UDX ビル(2006年)を
中心とした再開発が実行された。期を同じく、取り扱い商品もハードからソフト
ウェア・コンテンツ産業や接客業へと転換され、かつての小規模な電機店舗と、
中規模の接客オタク物品産業、大規模会議室、ビジネス空間が混在する状態にある。
51
小スケールの連続した独自景観のなかに整然さが混在する過渡的状態にある。
1
2
3
4
★ check point
0.JR 秋葉原駅南西側、ラジオ会館正面空間。
車道まで広場空間的に利用される。
1. 秋葉原 UDX と北西側駅前広場。
2. 総武線ガード下商店内部の商品の並び。
3. 総武線高架下まで商店がはめ込まれている。
4. ビル壁面のプロダクト的デザインと平面絵。
5. 勧誘の店員の衣装も、看板として機能している
秋葉原独自の進化をした光景。
5
★5
★1
3★ 2★
★4
★0
52
環境系
no.5-02
秋葉原神田川親水空間
キーエレメント:運河・河川、中低層オフィス、解放空間など
□ 概要
かつては商品輸送に使われた神田川沿いは、中層事務所ビルが川面ギリギリまで
せり出し、川を渡る橋も遮音フェンスで川と切り離され、利用されているとは言
い難い状況だった。現在、近傍の商業エリア化と IT(ソフトウェア)産業の誘致
小規模環境計画・水辺環境
53
により、スモール・ホームオフィス等が多く誘致され、昼間をここで過ごす人口
のため、ウッドデッキの親水カフェや、喫煙スペースなど憩いの空間として再活
用されている。川面より上方に開けた景観が点在しつつある。
神田方面・浅草橋方面とも近くトイレ等公共施設には訪問者を意識して工夫され
たデザイン(瓦屋根など)のものも見られる。
1
2
3
4
★ check point
0. 神田川佐久間町昭和通りから、東北新幹線
山手線の JR 高架橋を見る。
1. 神田川沿いのはしけと喫煙所。
2. 水辺に降りられる親水広場。
3. ウッドデッキのあるファミリーレストラン。
4. ビジネス街には必須、お狸様で有名な柳森神社。
5. 和風の意匠を引用した小公共施設(トイレ)。
5
3★ ★2
★1 ★0
★4
5★
54
土木系
no.5-03
万世橋と昌平橋
キーエレメント:運河・河川、土木橋梁、歴史的建築など
□ 概要
万世橋は1930年の創建当時のままだが、同年に架けられた昌平橋は1983
年に再建され当時の姿に復元されたもの。近傍の橋方面に開かれた JR 万世橋ビル
公開空地には江戸期当時の浮世絵を大きく採り上げた案内も設けられ、万世橋の
歴史的欄干とともに歴史を重層的に知ることが出来るよう配慮された整備がされ
歴史建築・水辺環境
ている。
二つの橋の上方を総武線の陸橋と渡河橋が斜めに横切り、橋による複合景観が形
成されている。
2つの橋の間にかつて存在した交通会館跡地は、レンガ造のアーチそのままに JR
の商業施設マーチエキュート神田万世橋(みかんぐみ2013年 ) として再生され、
高架下の補強など最低限の現代化以外は、設備部分もまとめて外部化され、出来
るだけ1900年代初頭の創建当時の姿をとどめるよう配慮されている。
隣接する万世橋ビルとともに同系のレンガ色で統一が図られている。
55
1
4
2
5
★ check point
0. 万世橋より中央・総武線高架を望む。
奧には聖橋とセンチュリータワーが見える。
1. 中央・総武線の陸橋。
2. エキュートと JR 万世橋ビルの色彩統一。
3. 万世橋の歴史的欄干。
4. 万世橋ビルの歴史案内板。
5. 神田川沿いエキュートの親水店舗。
3
5★
★1
2★ ★0
3★
★4
56
宗教・歴史系
no.5-04
神田明神 キーエレメント:寺院、歴史、町並み調和など
□ 概要
南からの参道鳥居からに直行する形で東側の旧昌平小学校から登る参道があり、
男坂、女坂とされている。
急な勾配で直線の男坂の南には緩い勾配の女坂があり、こちらは近年の整備のた
寺社仏閣建築・歴史環境
57
め幅は狭く、民間の住宅・建築と一体化する整備がされている。
古来ハレ・ケガレの場である神社へは男女別の動線利用をしていたとも思われる。
神田明神事務棟は近代の RC 造建築でありながら寺社仏閣の朱の塗装がなされて
いる。
西側に隣接する駐車場屋上は緑化され、ウッドデッキの屋上庭園に、北西隣接地
の遠藤家住宅史跡も木造とも(文化財)違和感なく景観上の連続が計られている。
1
2
3
4
★ check point
0. 神田明神から外に向かって参道の店並・鳥居。
1. 神田明神裏、RC 造に和風の塗装。
2. 駐車場の屋上緑化。
3. 遠藤家住宅史跡公園と連続して保存されている。
4. 女坂の民家との一体化景観。
5. 町並みから一直線に明神へ登る男坂。
5
3★
★1
2★
★0 ★5
★4
58
都
市
再
開
発
系
no.5-05
ワテラスタワーと高層化
キーエレメント:公開空地、近隣配慮、タワーなど
□ 概要
お茶の水駅から淡路町二丁目にかけて下り坂となる一角は、中層オフィスビルば
かりであったが、現在全区画で再開発が進み、ワテラスタワーの他にも線路沿い
の旧日立本社跡地には御茶ノ水ソラシティなる超高層が建築中であり、一気に区
区
画
規
模
再
開
発
計
画
・
緑
化
環
境
59
画全体が超高層化する。
ワテラスタワービルの大ボリュームの周辺は取り囲むように緑化され、南側では
傾斜した敷地を生かし、ヒューマンスケールのスロープと階段を組み合わせてポ
ケットパークとエントランスの広場を繋いでいる。一方、タワーのボリュームは
植栽の背景となり圧迫感を減じている。敷地南・西側の角地とも接続され、敷地
内空地に無理なく歩行者を引き込んでいる。配置されたオブジェも乳白色など、
無彩色であり、人工物の違和感を減らす景観配慮がみられる。
1
2
3
4
★ check point
0. ワテラス地区南西側角地交差点から敷地を望む。
ワテラスとは WATER(水)TERRA(地球)
から作られた造語、緑の潤いを意識したという。
1. ワテラスタワー南側階段から広場を望む。
2. ワテラスタワーエントランス広場のオブジェ。
3. ワテラスタワー南西側角空地処理とオブジェ。
4. ワテラスタワー南側緑化部分歩道。
5. お茶の水ソラシティと中央線間の道路。
5
★5
3★★1
0★ ★4★2
60
60