2016年前半も景気足踏みが持続

TBR ECONOMIC OUTLOOK
2016・2017年度日本経済見通し(2016 年 3 月改訂)
2016 年前半も景気足踏みが持続、その後も緩やかな成長に
2016年3月10日
東 レ 経 営 研 究 所
● 実質GDP成長率予測: 2015 年度 0.7%、2016 年度 0.9%、2017 年度▲0.3%
(前回 2016 年 2 月時点の予測: 2015 年度 0.7%、2016 年度 0.9%、2017 年度▲0.3%)
2015 年 10~12 月期 GDP(2 次速報)の公表(3 月 8 日)を織り込んで、東レ経営
研究所は日本経済見通しの改訂を行った。
2015 年 10~12 月期の実質 GDP(2 次速報)は前期比▲0.3%(同年率▲1.1%)と
なり、先月発表の 1 次速報(前期比▲0.4%、同年率▲1.4%)から上方修正された。た
だ、これは民間在庫投資の上振れが主因で、在庫調整の進捗の遅れを示しており、内容
は良くない。同期の日本経済が設備投資以外の内需が総崩れとなったほか、輸出も減少
に転じ、牽引役が不在の姿であったことが改めて確認された。
年初以降の世界的な金融市場混乱で、昨年までの円安・株高基調が途切れ、世界経済
の先行き不安が高まっている状況も考慮すれば、日本経済は先行きも景気足踏みが長期
化し、浮揚力の乏しい脆弱な回復にとどまるという前回の景気シナリオに変更はない。
年度ベースの実質 GDP 成長率は、2015 年度 0.7%、2016 年度 0.9%、2017 年度
▲0.3%と予測する(いずれも前回予測から据え置き)
。
● 景気足踏みが長期化、先行きも浮揚力は高まらず、脆弱な回復にとどまる
2016 年 1~3 月期の成長率は前期比 0.2%、4~6 月期は同 0.1%と、小幅なプラス成
長になると予想している。この 1~3 月期の成長率はうるう年に伴う日数増の効果を含
んだ数字であり、実態は 2 期連続のマイナス成長と考えるべきであろう。
日本経済が期待しうる今後の景気押し上げ要因は、①企業収益堅調を背景とした設備
投資の増加、②雇用・所得環境の改善に支えられた個人消費の堅調、③米欧主導による
世界経済の緩やかな回復を背景とした輸出の増加、の 3 点である。しかし、年初来の円
高・株安進行と世界経済減速懸念の高まりの影響で、企業収益の減少、設備投資の慎重
化、賃上げ率の鈍化、消費マインドの減退、輸出の低迷などの下押し圧力が強まってい
るため、上記 3 点の景気押し上げはいずれも微弱なものにとどまる見通しである。
● 2016 年度も増税前駆け込みと景気対策頼み、2017 年度はマイナス成長
2016 年度後半に消費増税
(2017 年 4 月)前の駆け込み需要が顕在化することと、
2015
年度補正予算による景気対策が実施されることで、2016 年度は成長率の数字こそ 0.9%
と前年より若干高まるが、地力の回復力は鈍いままとなろう。
2017 年度は、駆け込み需要の反動減と増税による実質可処分所得減少の影響により、
▲0.3%と 3 年ぶりのマイナス成長が予想される。
原油安と円高による輸入物価下振れの影響で、消費者物価(生鮮食品除く)上昇率は、
2016 年度 0.1%、2017 年度 0.7%(消費税要因を除く)と、日銀の物価目標(2%)に
遠く及ばない見通しだ。
● 海外発の景気下振れリスクに要警戒
先行きの景気が上記予測より下振れするリスクとして、①米国の利上げに伴う金融市
場混乱、②中国など新興国の成長力低下等による世界経済の下振れ、③米国経済が減速
して世界の成長の牽引役が不在になるリスク、等に引き続き注意を要する。
また、今後の金融市場・世界経済動向次第では、2017 年度の消費増税が再延期さ
れる可能性があることも念頭に置く必要がある(その場合、実質成長率予測は 2016 年
度 0.6%、2017 年度 0.6%となる)
。
株式会社 東レ経営研究所
Toray Corporate Business Research, Inc.
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町 2-5-2 須田町佐志田ビル 3 階 TEL:03-3526-2901 FAX:03-3526-2938 URL:http://www.tbr.co.jp/
2016・2017年度日本経済見通し 総括表
(2015年10~12月期GDP2次速報反映後)
(前年度比、%)
【 前 回 予 測 】
(2016年2月17日)
2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度
(実 績)
実質GDP
2.0
(実 績)
(予 測)
△ 1.0
0.7
(予 測)
0.9
(予 測)
2015年度
2016年度
2017年度
(予 測)
(予 測)
(予 測)
△ 0.3
0.7
0.9
△ 0.3
個人消費
2.3
△ 2.9
△ 0.4
0.8
△ 1.3
△ 0.3
0.9
△ 1.6
民間住宅投資
8.8
△ 11.7
2.3
3.5
△ 4.6
2.4
2.5
△ 4.2
民間企業設備投資
3.0
0.1
2.1
2.5
1.0
2.0
2.2
1.1
民間在庫品増減〈寄与度〉
△ 0.3
0.6
0.3
△ 0.3
0.1
0.2
△ 0.1
0.1
政府消費
1.6
0.1
1.4
1.3
1.0
1.3
1.1
0.9
公共投資
10.3
△ 2.6
△ 1.9
△ 2.0
0.8
△ 1.5
△ 2.5
0.8
財貨・サービスの輸出
4.4
7.8
0.3
1.9
1.7
0.3
1.3
1.5
財貨・サービスの輸入
6.7
3.3
△ 0.3
1.8
1.0
△ 0.2
1.4
0.2
2.5
△ 1.6
0.6
0.8
△ 0.5
0.6
0.9
△ 0.5
1.7
△ 1.5
0.4
0.6
△ 0.7
0.4
0.8
△ 0.7
内需寄与度
民間内需寄与度
公的内需寄与度
外需寄与度
名目GDP
GDPデフレーター
鉱工業生産
新設住宅着工戸数 (万戸)
国内企業物価(2010年=100)
消費者物価 [生鮮食品除く総合]
0.8
△ 0.1
0.2
0.2
0.2
0.2
0.1
0.2
△ 0.5
0.6
0.1
0.1
0.2
0.1
0.0
0.2
1.7
1.5
2.2
1.5
0.6
2.2
1.5
0.6
△ 0.3
2.5
1.5
0.6
0.9
1.5
0.6
0.9
3.2
△ 0.4
△ 1.1
0.8
0.0
△ 0.6
2.6
△ 0.1
98.7
88.0
90.3
93.1
85.3
90.3
92.9
85.5
1.9
2.8
△ 3.3
△ 2.3
2.8
△ 3.3
△ 1.9
2.6
0.8
2.8
0.0
0.1
1.7
0.0
0.2
1.8
( 0.8)
( 0.8)
( 0.0)
( 0.1)
( 0.7)
( 0.0)
( 0.2)
( 0.8)
完全失業率 (%)
3.9
3.6
3.3
3.2
3.2
3.3
3.2
3.2
名目雇用者報酬
0.8
1.9
1.3
1.6
1.2
1.3
1.6
1.2
(消費税要因を除く)
経常収支 (兆円)
1.5
7.9
19.6
21.4
19.9
19.6
21.4
19.9
貿易収支 (兆円)
△ 11.0
△ 6.6
1.5
3.3
1.7
1.5
3.3
1.7
円レート (円/ドル)
100.0
109.8
120.0
114.0
112.0
120.0
114.0
112.0
原油価格 (通関、ドル/バレル)
109.6
90.4
49.7
40.5
45.0
49.6
40.5
45.0
1.5
2.4
2.4
2.2
2.4
2.4
2.2
2.4
△ 0.2
0.9
1.7
1.6
1.6
1.7
1.6
1.6
7.7
7.4
6.9
6.6
6.3
6.9
6.6
6.3
米国実質GDP成長率 (暦年)
ユーロ圏実質GDP成長率 (暦年)
中国実質GDP成長率 (暦年)
(注) 2017年4月に消費税率引き上げ(8%→10%)が実施されることを想定。
2
年度ベースの実質GDP成長率と需要項目別寄与度
3.5
(前年度比、%)
2.0
3.0
予測
個人消費
2.5
設備投資
2.0
0.9
1.5
0.7
1.0
住宅投資
0.9
在庫投資
公需
0.5
外需
0.0
実質GDP
-0.5
-1.0
-0.3
-1.5
-2.0
-2.5
-1.0
12
13
14
15
16
17
(年度)
(注) 数字は実質GDP成長率。
出所 : 内閣府経済社会総合研究所 「四半期別GDP速報」、2015・2016・2017年度は当社予測
3.0
(前期比、%)
四半期別実質GDP成長率と項目別寄与度(前期比)
1.3
個人消費
予測
2.0
1.1
0.5
1.0
設備投資
1.1
0.3
0.2
0.1
0.4 0.3
住宅投資
0.3
0.0 0.2
在庫投資
0.0
公需
-1.0
-0.3
-0.6
外需
-0.4
実質GDP
-2.0
-1.5
-2.0
-3.0
-4.0
18/1Q
4Q
3Q
2Q
17/1Q
4Q
3Q
2Q
16/1Q
4Q
3Q
2Q
15/1Q
4Q
3Q
2Q
14/1Q
-5.0
(暦年・四半期)
(注) 数字は実質GDP成長率。2017年4月に消費税率引き上げ(8%→10%)が実施されることを想定。
出所 : 内閣府経済社会総合研究所 「四半期別GDP速報」、2016年第1四半期(1~3月期)以降は当社予測
お問い合わせ先
東レ経営研究所 産業経済調査部門
チーフエコノミスト 増田 貴司
TEL :03-3526-2925
E-mail :[email protected]
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