グローバル株式市場の見通し

ご参考資料
グローバル株式市場の見通し
中国に焦点を当てた当社の見解
ビル・マルドナド
HSBCグローバル・アセット・マネジメント
グローバル株式CIO兼アジア・太平洋地域CIO
HSBC投信株式会社
2016年3月8日
世界の株式市場は2016年に入り、中国経済の減速懸念や原油市況の急落などを受けて大幅安となりました。投
資家センチメントはなお揺れ動いています。そこで、当社のグローバル株式CIO(最高投資責任者)兼アジア・太
平洋地域CIOのビル・マルドナドに、中国に焦点を当てつつ、世界経済、株式、為替市場の見通しについて聞き
ました。
Q 世界の株式市場は2016年に入り急落しましたが、そ
の背景には何があるのでしょうか?
年初に起きた世界同時株安の背景には、中国経済の先行き
懸念、原油価格の一段安、銀行セクターの健全性に対する
不安などから、世界的にリスク回避志向が高まったことが挙
げられます(図表1参照)。
中国では、予想より弱い景気指標の発表と人民元の対米ド
ルでの下落が重なったことから、経済の先行き不安が高まり
ました。大株主による保有株式の売却禁止措置(昨年夏の
株式市場急落時に導入)の解除も市場心理を悪化させまし
た。1月から導入されたサーキット・ブレーカー制度(相場が5
%下落した場合に取引を15分中断、7%に達した時点で終日
売買停止とする制度)は、株価急落を受けて、年初4日間で2
回発動されたものの、結局、同制度は中止となりました。そ
の後、当局は、大株主の保有株式売却を制限する新たな措
置を導入、さらに政府系ファンドによる株式買い支えなども
見られましたが、その効果は限定的でした。
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MSCI 米国
MSCI ヨーロッパ
MSCI 新興国
MSCI 中国
銀行株も売られており、その背景には原油安を背景とした
エネルギー関連融資への懸念、日欧のマイナス金利政策
による銀行収益への圧迫懸念があります。
Q 2016年年末に向けての株式市場の見通しについ
て聞かせて下さい
市場では、世界経済が長期にわたり低迷するのではない
かとの悲観論が見られますが、当社では、世界経済は低
い経済成長率、低いインフレ率が共存する「脆弱な均衡」
状態を続けると見ています。
低水準でまだら模様の経済成長率は、過去数年間の世界
経済の特徴であり、これはユーロ圏の債務危機、米国の
「財政の崖」問題、ウクライナや中東の政治情勢の緊迫化
などの予想外の出来事によりもたらされたものです。欧米
諸国における債務削減や設備投資抑制の動き、また新興
国、とりわけ中国の予想以上の景気減速も、逆風に加わり
ました。但し、世界経済はそれでも大混乱に陥る状況は免
れています。
図表1 MSCI指数の推移
(2014年12月31日~2016年2月29日)
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この数ヶ月間は原油市況の下落も投資家センチメントを大
きく動かしています。経済制裁の解除を受けたイランの原
油増産観測や米国の原油在庫の積み上がりなど供給過
剰感を示す新たな材料が原油相場を押し下げています。
また、米ドル高や先物市場における投機的な売り圧力も原
油市況の下落を助長させました。
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MSCI 日本
(年/月)
2014年末を100として指数化
出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成
当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。
2016年の世界経済は僅かながら改善することが見込まれ
ます。当社の基本シナリオは「脆弱な均衡」の継続です。
米国がリセッションに陥る可能性は非常に低く、欧州経済
は循環的回復に向かいつつあります。また、中国経済につ
いても、過度に悲観的になる必要はないと思われます。
Q 当面は引き続き中国が焦点になりそうですが、
中国経済に対する見通しは変わりましたか?
当社では、中国経済の中期見通しを基本的に変えてい
ません。現在の中国経済の弱さは長期化する可能性が
あり、新たな景気対策が必要と考えます。
中国の実質国内総生産(GDP)成長率は、2015年の6.9
%から2016年は6.5%、2017~2018年は6.0~6.5%へと
緩やかに減速すると予想しています。生産設備の縮小
や在庫の削減を進める中で、固定資産投資の伸びは引
き続き低調になることが見込まれます。しかし一方で、小
売売上高は増勢が強まる可能性があります。今後は個
人消費が成長の主たるけん引役となることが見込まれ
ます。中国経済は、従来の投資主導型から、より持続可
能な消費主導型へと移行する過程にあります。
今後数ヶ月間は、引き続き中国からの資金流出懸念は
残り、人民元は対米ドルで不安定な推移を続ける可能
性があります。中国経済の減速懸念や中国株式市場の
不安定な動き、米国の利上げ観測と米中の金利格差の
縮小なども人民元の対米ドル相場を押し下げる要因と
なります。
中央銀行は、市場の実勢に沿った人民元の変動を許容
する姿勢を示していますが、過度な下落に対しては通
貨防衛措置をとることも考えられます。当局は、引き
続き資金流出リスクを警戒し、資金フローの動向を厳
しく監視するものと見られます。
Q 中国株式市場の見通しについて教えてください。
現状では、リスクが期待リターンを上回っているので
しょうか?
政府は景気対策を重視しており、2016年も財政政策は
拡張型となることが見込まれます。金融政策については
大幅な緩和は想定していませんが、中国人民銀行(中
央銀行)は引き続き公開市場操作などを通じて金融シス
テムに資金を供給するものと見られます。
今後は、景気、企業収益、経済政策の動向、構造改革
の進捗が中国株式市場にとり鍵になると思われます。
特に政府の景気対策は、株式市場を強力に下支えする
ものと当社では見ています。
Q 中国人民元の動きが気になりますが、変動性
の高い状態が続くと思われますか?
中国には確かに投資機会が存在します。最近の大幅な
株価下落を受けて、中国株式は一段と割安感を増して
います。
今年に入り、人民元は対米ドルで大幅に下落しました。
主な背景としては、一つは米ドルの全面高、もう一つは
中央銀行が人民元の為替レートの基準値を対米ドルか
ら貿易加重指数に変更したことが挙げられます。人民元
は対米ドルでは大きく下落しましたが、貿易加重指数ベ
ースで見ると、比較的安定して推移しています(図表2参
照)。
図表2 貿易加重ベースの為替レート推移
(2010年1月31日~2016年1月31日)
個人消費は拡大を続けていますが、最近では、オンラ
イン取引の急拡大が示すように、ソーシャルメディア
や携帯端末の役割が飛躍的に高まり、消費者の財・サ
ービスの購入方法に変革をもたらしている点に当社は
注目しています。これはEコマース(電子商取引)関
連セクターの大きな投資機会を示唆するものです。
他のセクターでは、持続的な利益成長を可能にする健
全なビジネス戦略を持つハイテク株を有望視していま
す。
また選別は必要ながら、不動産開発会社も有望視して
います。特に1級都市(北京、深セン、上海、広州な
ど)、2級都市(省都、副省級市)に不動産を多く保
有する企業を選好しています。これら都市は不動産の
強い需要と供給不足を特徴としています。
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自動車メーカーも、最近の減税措置や政府の電気自動
車を中心とする新エネルギー車推進プログラムの恩恵
を受けることから、注目しています。
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2010
2011
オーストラリア
ユーロ圏
スイス
2012
2013
ブラジル
日本
英国
2014
2015
中国
韓国
米国
2010年平均を100として指数化
出所:国際決済銀行(BIS)のデータをもとにHSBC投信が作成
当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。
2016
(年)
多くの投資家は中国への投資に悲観的になりすぎてい
ます。当社では、中国株式市場には多大な機会があり
長期の分散投資により、ボラティリティを抑えつつリ
ターンを追求することが得策と考えます。
留意点
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