薬局サーベイランスコメント

《薬局サーベイランスコメント》
『1 週間当たりのインフルエンザの推定患者数は第 9 週まで 3 週連続で減少しているも
のの、減少は緩やかであり、5 週連続して 100 万人を上回った状態が続いており、第
10 週(3 月 7 日~13 日)も本格的な流行が継続する可能性が高い』
2016 年 3 月 8 日
済生会中津病院感染管理室
安井 良則
薬
局
サ
ー
ベ
イ
ラ
ン
ス
(http://prescription.orca.med.or.jp/syndromic/kanjyasuikei/index.html)からの 2016 年
第 9 週(2 月 29 日~3 月 6 日)の 1 週間当たりのインフルエンザの推定患者数は
1,146,371 となり、3 週連続で前週の値(第 6 週 1,348,670、第 7 週 1,248,152、第 8
週 1,181,947)を下回りましたが、緩やかな減少が続いており、5 週連続で 100 万人を
上回っています(図 1)
。各都道府県別の第 9 週の人口 1 万人当たりの 1 週間の推定受
診者数をみると、愛媛県、岐阜県、奈良県、福井県、富山県、鳥取県、高知県、岡山県、
鹿児島県、広島県、愛知県の順となっていて、中部よりも西の地域での流行が目立ちま
す。また、まだ 19 県で推定患者数の増加が見られています。
3 月 7 日(月)の推定患者数は 261,125 と前週である第 9 週の月曜日の値(2 月 29
日:275,214)よりも減少していますがわずかであり、インフルエンザの患者数は引き
続き減少していくものの、第 10 週(3 月 7 日~13 日)も本格的な流行が継続する可能
性が高いです。
2015 年第 36 週から 2016 年第 9 週までの累積の推定患者数は 7,581,880
(7,582,000)
であり、年齢群別では 5~9 歳(21.6%)
、10~14 歳(13.1%)
、40~49 歳(12.9%)
、
30~39 歳(12.5%)、0~4 歳(11.0%)
、50~59 歳(7.6%)
、20~29 歳(6.8%)
、60
~69 歳(5.5%)
、15~19 歳(5.3%)
、70 歳以上(3.7%)の順となっています(図 2)。
第 9 週は多くの年齢群では前週よりも減少していますが、10~14 歳、15~19 歳、70
歳以上では増加が見られています。
国 立 感 染 症 研 究 所 感 染 症 疫 学 セ ン タ ー の 病 原 微 生 物 情 報
(https://nesid3g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data2j.pdf)によると、これまでのインフル
エンザ患者由来検体から検出されたインフルエンザウイルス(2,899 検体解析)は、
A/H1pdm 57.1%、B 型 30.4%、A/H3(A 香港)亜型 12.5%の順となっています(図 3)
。
また、直近の 5 週間(2016 年第 5 週~第 9 週;これまでに 883 検体検出報告)では、
A/H1pdm 61.3%、B 型 34.7%、A/H3(A 香港)亜型 4.1%の順となっていて、本格的な
流行となってからは A/H1pdm と B 型インフルエンザの混合流行が続いています。
2015/2016 シーズンのインフルエンザの患者数は 1 月に入って急増し、1 週間当たり
の国内の推定患者数は第 5 週以降第 9 週まで 5 週連続して 100 万人を超える状態が続
いています。2009/2010 シーズンから本薬局サーベイランスによるインフルエンザの患
者発生サーベイランスが開始されて以来今シーズン(2015/2016 シーズン)で 7 シーズ
ン目となりますが、本格的な流行状態がこれほど長期化しているシーズンは初めてとな
ります。前述した通り、第 10 週も本格的な流行が継続する可能性があります。今後と
もインフルエンザの患者数の推移には注意深い観察が必要です。
インフルエンザ推定患者数各シーズン別週別推移(各シーズン第36~第15週まで)
1,600,000
1,400,000
1,200,000
1,000,000
2009/2010
2010/2011
2011/2012
800,000
2012/2013
2013/2014
600,000
2014/2015
2015/2016
400,000
200,000
0
36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 1
2015年
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15
2016年
図 1.過去 5 シーズンと今シーズン(2015/2016 シーズン)の第 36~第 15 週までのイ
ンフルエンザ推定患者数の週別推移
インフルエンザ累積推定患者数年齢群別割合(2015年第36~2016年第9週)
281,541 , 3.7%
417,555 , 5.5%
833,487 , 11.0%
576,199 , 7.6%
0-4
5-9
10-14
15-19
1,635,863 , 21.6%
981,335 , 12.9%
20-29
30-39
40-49
50-59
945,494 , 12.5%
60-69
70-
994,410 , 13.1%
514,98
6,
6.8%
401,010 , 5.3%
図 2.インフルエンザ累積推定患者数年齢群別割合(2015 年第 36~2016 年第 9 週、
累積推定患者数= 7,582,000)
2015年第36週~2016年第9週インフルエンザウイルス検出割合
380, 13.1%
A(H1)pdm
466, 16.1%
A(H3)
B(系統不明)
1655, 57.1%
35,
1.2%
B(ビクトリア系統)
B(山形系統)
363, 12.5%
図 3.2015 年第 36~2016 年第 9 週インフルエンザウイルス検出割合(総検出数=2,899)