「神の見えざる手」による年度末相場 - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

藤戸レポート
「神の見えざる手」による年度末相場
2016 年 3 月 7 日
悲喜こもごもの3月年度末
(グラフ 1)
2 回の売りチャンスがあった
2015 年以降の日経平均
3 月は、「株価意識」が高まるシーズンだ。日本企業は決算年度末を控え、
金融法人、事業法人を問わず株価や為替相場に極めてナーバスになる。
いわんや、年金を始めとした運用成績で優劣を競っている基金やアセット・
マネージメントにとっては、胃が痛くなるシーズンの到来だ。平年でもそうだ
が、特に大変動を経験した今年度の場合は、神経が擦り切れる思いをして
いることだろう。日本株運用における今年度の勝負は、昨年 5~6 月の高値
局面でどう対処したかで、ほとんど決定している。「日経平均 25,000 円」と
か、中には「38,915 円」との誇大妄想的な兜町筋の掛け声に幻惑されて、高
値で買い出動していれば致命的だ。いくら潤沢なイン・フロー(新規資金の
流入)がある年金基金でも、5~6 月の高値掴みを癒す手立ては少ない。夏
以降の下落局面の買いで傷口を浅くすることは可能だったが、日経平均の
水準が一段と高まらない限り、パフォーマンスの向上は難しいだろう。逆に、
5~6 月に売り向かっていれば、「チャイナ・ショック」にも、潤沢なキャッシュ・
ポジションで立ち向かうことができたはずだ。例年のことだが、「今年は Sell
In May(5 月に売れ)ではない」といった高値で買わせる妄説が出回る。バ
イ・サイド(運用担当者)からセル・サイド(証券会社)に転じて約 16 年になる
が、いまだに「高値で買わせることが仕事」と思っている向きには馴染めな
い。セル・サイドは、顧客の高値掴みに関しては「記憶喪失」か「健忘症」にか
かることが多い。しかし、顧客にすれば、パフォーマンス明細の評価損膨張
を忘れられるはずがない。そして、3 月年度末を迎えているわけだ(グラフ 1)。
(円)
日経平均(2015/1~)の推移
22,000
20952
(6/24)
21,000
20012
(12/1)
20,000
19,000
日経平均
18,000
17,000
16901
(9/29)
16,000
15,000
14865
(2/12)
(出所)BloombergのデータよりMUMSS作成
14,000
2015/1
2015/2
2015/4
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
2015/6
2015/7
2015/9 2015/11 2016/1
2016/2
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
昨年11月相場への対処が二度
目の勝負所
今年度の相場で二度目の勝負所は、昨年 11 月の怪しげなリバウンドで
どう対処したかだ。幾度も指摘したように、特定の外資系証券による「これ見
よがしの買い」は、明らかにヘッジファンドによる仕掛けであった。おそらく
は、エマージング・マーケットでのヤラレを、日本株で奪回しようとした強引
な動きだった。推定約 5,000 億円の資金を、一度に投入できるファンドは限
られる。しかも、米系大手の日中手口をわざと際立たせるなど、海千山千の
動きの極地だった。ところが、日中手口で一手買いだったその米系の建玉
残高が、一向に増えていないというマジックも御紹介した。手口が開示され
る日本マーケットの特性を熟知した高等な仕掛けだった。結果的には、12
月になって外国人が株式先物で 2 兆 481 億円の大量売りを見せて、11 月
の戻り相場は瞬時に終焉した(表 1)。そして、現在もその後遺症を引き摺っ
ている。つまり、11 月の怪しげな上昇に売り向かったか否かが、二度目の勝
負所だった。最悪なのは、昨年 5~6 月に買い、11 月のアヤ戻りで再び買
い出動した場合だ。この二つの時期のメディアの株式報道をぜひチェックし
ていただきたい。陥穽はいたる所に存在している。
(表 1)
外国人投資家の先物売りで
終焉した 11 月相場
外国人投資家の売買動向 (億円)
年月日
2015/10/9
2015/10/16
2015/10/23
2015/10/30
2015/11/6
2015/11/13
2015/11/20
2015/11/27
2015/12/4
2015/12/11
2015/12/18
2015/12/25
2016/12/30
2016/1/8
2016/1/15
2016/1/22
2016/1/29
2016/2/5
2016/2/12
2016/2/19
2016/2/26
N225
先物
現物
2,103
-267
1,882
912
1,319
3,004
2,447
7
780
82
-330
-216
14
-4,471
-2,109
-1,902
-2,073
-6,112
-5,735
-4,053
-4,082
-1,664
-1,211
409
799
748
2,176
980
492
-599
-2,820
-621
-761
-190
-3,709
-1,648
1,821
-1,022
690
3,878
-3,172
594
TOPIX
先物
812
-82
78
988
-177
2,348
2,369
-670
-2,447
-8,248
-1,140
-1,591
168
-1,824
-3,076
-2,579
523
4,424
1,139
-274
-61
N225
先物
(ミニ)
1,712
-280
557
57
778
-61
571
-201
-1,342
-588
519
-256
375
48
-402
424
-48
-41
-185
281
383
TOPIX
先物
(ミニ)
8
1
-0
4
-3
13
32
-2
4
-12
-4
-26
4
-32
-12
-14
0
3
-9
12
1
JPX400
先物
210
23
263
126
66
-25
13
-56
-8
-129
-161
-251
-76
25
-1
-78
-41
-61
-140
-87
-37
先物計
1,078
-1,550
1,307
1,974
1,412
4,452
3,964
-437
-4,392
-11,797
-1,407
-2,885
280
-5,493
-5,139
-427
-588
5,016
4,683
-3,241
881
現物先物
合計
3,181
-1,817
3,189
2,886
2,730
7,456
6,412
-430
-3,612
-11,714
-1,737
-3,101
294
-9,964
-7,248
-2,329
-2,662
-1,097
-1,052
-7,294
-3,201
(出所)東証、大証のデータをもとに MUMSS 作成
「リスク・アセット6割」・・・
GPIFの憂鬱
日本株投資に積極的だった投資主体ほど、今年度は苦労している。そ
の最たるものは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)である。GPIF
によれば、昨年10~12月期の期間収益額は4兆7,302億円・収益率+3.56%
に回復した。昨年7~9月期の▲7兆8,899億円・▲5.59%からは大幅な回復
である。四半期末の株価・為替水準を比較すると、
① 9月末・・・日経平均17,388円・TOPIX1,411.1。ドル/円相場1ドル=
119.8円、ユーロ/円相場1ユーロ=133.9円。
② 12月末・・・日経平均19,033円・TOPIX1,547.3。ドル/円相場1ドル=
120.2円、ユーロ/円相場1ユーロ=130.6円。
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
2
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
だった。株価の上昇が、10~12 月期のパフォーマンス回復に直結してい
る。この 12 月期末のアセット・アロケーションは、①国内債券 37.76%、②外
国債券 13.5%、③国内株式 23.35%、④外国株式 22.82%、⑤短期資産
2.57%である。外貨建て資産の割合は 36.32%に達しており、国内株の下落
も痛いが、為替相場の円高傾向が大きく影響することになろう。12 月末の
資産運用額が 139 兆 8,249 億円の巨大ファンドとなれば、事実上大規模な
ヘッジは不可能である。つまり、この 3 月年度末に株安・円高傾向が続け
ば、再び昨年 7~9 月期を上回るような評価損計上となるリスクが高まること
になる。モダン・ポートフォリオ・セオリーでは、アセット・アロケーション効果
が約 9 割を占めており、銘柄効果や売買のタイミング効果は僅少である。
つまり、国内株式 23%、外貨建て資産 4 割弱、リスク・アセット 6 割のポート
フォリオが、株安・円高の影響を直接的に受けることになる(グラフ 2)。
(グラフ 2)
昨年 7-9 月期を上回る損失が
予想される GPIF(1-3 月期)
年金資金(GPIF)における運用資産の変動と期間収益額
115
110
国内債券
105
100
95
2015年3月末価格を
100として指数化
外国債券
90
3月月中平均
85
TOPIX:1,554p
日経平均:19,198円
80
75
70
国内株式
外国株式
2015年
3月末
12月末
9月末
6月末
2016年
3月末
47,302
26,489
2月末試算値
GPIFの四半期
期間収益額
(億円)
78,899
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月
(出所)GPIF、AstraManager のデータをもとに MUMSS 作成
選挙年の年度末株安は許容で
きない
98,065
11月
12月
1月
2月
3月
4月
今年度のような荒れ相場となれば運用者は苦労するが、問題なのは 3 月
年度末決算のディスクローズが例年 6 月にあることだ。御存知の通り、今年
は 7 月に参院選挙が予定されている。つまり、円高・株安傾向が続けば、
選挙直前に昨年 7~9 月期を上回る評価損額が、メディアで横行すること
になる。しかも、今回の選挙から、選挙権は 18 歳以上に付与されることが
決定している。若い有権者が最も関心が高いのは、直接自分達の給付に
影響する年金のパフォーマンスであることは論を待たない。昨年 7~9 月期
の GPIF 決算でも、メディアが大騒ぎしたのは御存知の通りだ。そもそも、自
分が加入している公的年金が、「リスク・アセット 6 割」ということを知っている
国民は、どれほどいるのだろうか?今年が選挙年(場合によれば衆参同時
選挙も)であるだけに、例年以上に株価意識が高まるのは間違いない。特
に、首相官邸は、株価や円相場に敏感な反応を示してきたが、3 月年度末
の株安・円高は、選挙対策上も許容しかねるものと思われる。GPIF の売買
は、東証投資主体者別売買動向の「信託銀行」に表れる。2 月第 3 週
5,000 億円、第 4 週 3,848 億円買い越しと、剛腕がウナり始めた(表 2)。
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
3
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
(表 2)
大規模買い越しに動く
信託銀行
●投資部門別株式売買状況
区
分
年月
12年
13年
14年
15年
9月
月
10月
間
11月
動
12月
向
1月
2月
1月1週
1月2週
週 1月3週
間 1月4週
動 2月1週
向 2月2週
2月3週
2月4週
2月4週
売買シェア
年
間
(億円)
法人
外国人
(海外
投資家)
28,264
151,196
8,527
-2,510
-25,772
4,630
6,777
330
-10,556
-19,983
-4,471
-2,109
-1,902
-2,073
-6,112
-5,735
-4,053
-4,082
金融機関
生損保 都・地銀 信託銀
-6,978 -1,182 -10,193
-10,751 -2,830 -39,664
-5,038 -1,290 27,848
-5,841 -3,094 20,075
-102
-238
7,682
-486
-428
3,001
-944
-280 -4,506
-392
-726
7,427
233
-78
6,076
-11
-566
9,501
170
80
346
61
108
1,201
-37
-144
1,822
39
-122
2,708
-107
-178
252
20
-223
401
113
-276
5,000
-37
110
3,848
70.9%
0.1%
0.2%
個人
事法
投信
信用
現金
3,804
6,297
11,018
29,632
7,707
923
1,130
8,744
1,140
2,910
608
379
239
-86
312
1,024
1,385
189
460
4,267
-2,105
2,429
2,525
-557
-874
2,741
967
1,980
272
177
580
-62
545
-285
546
1,174
5,774 -24,886
29,774 -117,282
13,189 -49,512
16,748 -66,744
677
3,507
-574
-8,504
1,035 -10,186
2,093
-3,506
826
7,148
-209
3,645
1,876
3,939
68
2,499
-834
1,112
-284
-401
885
1,057
-397
2,283
-405
431
-292
-126
4.5%
1.6%
2.4% 13.2%
5.7%
(出所)東証のデータをもとに、MUMSS作成
ヤラレ銘柄ほどよく上がる
国内機関投資家は、3/11 のメジャーSQ(特別清算指数算定日)を過ぎる
と、ほぼ冬眠状態に入る。決算数値を固めるために、余程の想定外の損失
が発生しない限り、株式の売却はまず控える。つまり、売り需要が極端に乏
しくなるのだ。逆に、各ファンドの台所事情によっては、「押し目買い」という
名目で、ヤラレ銘柄にウィンドウ・ドレッシングが入るケースが少なくない。し
たがって、3 月特有の動きとしては、昨年来のパフォーマンス劣化業種・銘
柄ほど上がり易くなる。例えば、直近までは、円高傾向や海外の不安定さを
嫌気して、内需・ディフェンシブ株優位の展開が多かった。代表的な輸出関
連業種である自動車、電機、精密、機械等は嫌われ、中国の減速・原油安
が尾を引いて鉱業、石油、商社、非鉄金属、鉄鋼、海運、建機・油圧機器
等も、右斜め 45 度の下落チャートが多かった。究極的には、日銀の「マイ
ナス金利」で嫌気された金融株も含めて、「3 月は不人気銘柄ほど上がり易
くなる」傾向が強まろう。3/2 の東証 33 業種では、①鉄鋼 6.0%、②保険
5.7%、③海運 5.6%、④電機 5.3%、⑤機械 5.0%、⑥輸送用機器 4.6%、⑦卸
売(商社)4.5%、⑧非鉄金属 4.3%、⑨金属製品 4.2%、⑩その他金融 3.9%、
⑪銀行 3.9%、⑫精密 3.9%だった。極めて理不尽ではあるが、これが年度末
特有のセオリーだ。ノーマルな物色に戻るのは、新年度入り以降となろう(グ
ラフ 3)。
浮上する「緊急経済対策」
いくら年度末相場とはいえ、問答無用で買い上がるのは、やはり限界が
ある。当然ながらサポート材料が欲しい所だ。こうした投資家の希望に応え
て、待望の「緊急経済対策」が浮上している。3/2の読売新聞によれば、「政
府、緊急経済対策検討へ」と題し、「政府は世界経済の減速を受け、国内
景気を下支えする緊急経済対策の検討に入った。2016年度予算案の成立
後、今月下旬にも具体案の調整に着手する」としている。また、安倍総理も、
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
4
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
(グラフ 3)
昨年来の下落率上位業種が
3/2 の上昇率上位に
東証33業種の上昇率上位(3/2)
鉄鋼
6.0
保険
5.7
海運
5.6
電機
5.3
機械
5.0
輸送用
4.6
卸売
4.5
非鉄金属
4.3
金属製品
4.2
他金融
3.9
銀行
3.9
精密
3.9
証券
3.0
(出所)BloombergのデータよりMUMSS作成
3.9
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
6.5
(%)
「5 月の伊勢志摩サミットでは世界経済が最大のテーマとなる。明確なメッセ
ージを発出したい」と述べている。既に、日銀の金融政策単独では、株価や
為替への影響は限界的であると指摘した。これ以上の大胆な非伝統的政
策は、副作用や将来的な弊害が極大化してしまう。したがって、財政の出動
による需要創出策が急務と主張してきたが、どうやら実現しそうなのだ。G20
(20 ヵ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)は予想通り具体策を欠いたが、
唯一評価すべきは、「市場の安定のために金融政策、財政政策、構造改革
といったあらゆる政策手段を用いる」とする共同声明を採択したことだ。これ
は、安倍総理にとっては、「緊急経済対策は G20 の理念に基づいたもの
だ」との御墨付きを得たことになる。しかも、伊勢志摩サミットのホスト国とし
ても、「世界に向かって堂々と発信」となれば、真水(新たな財政支出)5 兆
円規模は最低ラインとなろう。
染井吉野の花見頃まで
以下の会社等による株券(優先出資証券、外国株預託証
券及び外国株信託受益証券を含む。)、新株予約権証券
又は新株予約権付社債券の募集若しくは売出し又は特定
投資家向け取得勧誘若しくは特定投資家向け売付け勧誘
等に関し、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社が
主幹事会社(金融商品取引業等に関する内閣府令第 147
条第 3 号に規定する主幹事会社をいう。)となり、当該募集
若しくは売出しに係る有価証券届出書、発行登録追補書類
若しくは有価証券通知書の提出日又は特定投資家向け取
得勧誘若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る特定
証券情報の提供若しくは公表が行われた日から 1 年間経
過しておりません。:SUMCO
金融政策と財政出動による景気対策が揃えば、停滞感を強めた日本の
景気に明るい見通しが持てる。いわんや株価は年度末のリバウンドを強め
ることになろう。直近では、日経平均の 16,300 円オーバーで外国人の執拗
な売りが出ていたけれども、「緊急経済対策」が浮上したこともあって、一気
に 25 日移動平均線をブレークしてきた。ショート勢もやや狼狽気味で買い
戻しに転じ、下方修正を契機に叩き売ってきたアルプス電気や SUMCO 等
の電 子部品 株も 、鋭 角的な戻 りを演 じてい る ( グラフ 4) 。日経新 聞や
QUICK、TV 東京、ラジオ日経等でも言及しているが、4 月第 2 週前後まで
に日経平均が 18,000 円に迫ることは可能と考えている。予想 PER では
15.6 倍レベルであり、経済対策の青写真が具現化すれば、十分可能なタ
ーゲットである。当レポートは週 1 回だが、相場の変容は速い。各メディア
での私のコメントも参考にしていただければ幸いである。妖艶な河津桜は既
に満開だが、清楚な染井吉野の花見頃までは、年度末・年始相場が楽しめ
ると考えている。
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
5
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
(グラフ 4)
急落した電子部品株が
リバウンド
(円)
国内電子部品株の株価推移
(円)
4,500
2,200
4205(11/24)
4,000
2,000
アルプス(左)
以下の会社等による株券(優先出資証券、外国株預託証
券及び外国株信託受益証券を含む。)、新株予約権証券
又は新株予約権付社債券の募集若しくは売出し又は特定
投資家向け取得勧誘若しくは特定投資家向け売付け勧誘
等に関し、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社が
主幹事会社(金融商品取引業等に関する内閣府令第 147
条第 3 号に規定する主幹事会社をいう。)となり、当該募集
若しくは売出しに係る有価証券届出書、発行登録追補書類
若しくは有価証券通知書の提出日又は特定投資家向け取
得勧誘若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る特定
証券情報の提供若しくは公表が行われた日から 1 年間経
過しておりません。:SUMCO
3,500
1,800
3,000
1,600
1410(11/24)
2,500
1,400
2,000
1,200
1,500
1647(2/12)
C
1,000
500
800
600
611(2/12)
(出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成
0
2015/9
再びスーパー・マリオは市場
の信任を得るのか
1,000
SUMCO(右)
400
2015/10
2015/11
2015/12
2016/1
2016/2
3 月相場を考える上で、重要なイベントは、3/10ECB(欧州中銀)理事
会、3/14~15 日銀政策決定会合、15~16FOMC(米公開市場委員会)と
いう日・米・欧 3 極中銀の会合だ。まず ECB 理事会だが、1 月にドラギ総裁
が強く示唆したこともあって追加緩和策が濃厚である。特に、ユーロ圏の
CPI(消費者物価・前年比・2 月)が▲0.2%と再びデフレ状況に陥ったことも
あって、何らかの政策が出ることになろう(グラフ 5)。問題は、量的緩和策の
強化(現行は毎月 600 億ユーロの債券購入)なのか、一段のマイナス金利
(グラフ 5)
ユーロ圏の CPI(前年比・2 月)が
▲0.2%と再びデフレ状況に
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6
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
の採用なのかといった内容である。12 月の理事会では、①2017 年 3 月ま
での債券購入プログラムの延長、②買い入れ対象に新たに地方債を含む、
③中銀預金金利を 0.1%引き下げて▲0.3%、のポリシー・ミックスが発表され
た。しかし、市場が期待した債券購入額の増枠はなく、中銀預金金利の引
き下げも小幅で、マーケットはネガティブな反応を見せた。独 DAX 指数
は、会合前の 11/30 高値 11,430 から急落し、今年 2/11 安値 8,699 まで
▲23.9%のダウン・トレンドのトリガーとなった(グラフ 6)。もちろん、原油価格
の急落やグローバルの景況感悪化といった要因が背景にあったわけだが、
ECB の追加緩和策が「期待外れ」と評価されたことも大きかった。「できるこ
とは何でもやる。私を信じて欲しい」と言い続け、マーケットの信任を得てい
たドラギ総裁にとっては、初めての蹉跌であった。12 月会合では、ブンデス
バンク(独連銀)のバイトマン総裁以下 5 票の反対票があっただけに、今回
の追加緩和策でも市場が期待するような大胆な内容には届かない可能性
もある。ポイントは、毎月の債券購入額の増枠があるか否かとなろう。ブンデ
スバンクの主張が賛同を集めるようであれば、再び失望のリスクもある。
(グラフ 6)
12 月の ECB 理事会以降
急落となった DAX
(P)
独DAX指数の推移
12,000
11430
(11/30)
11,500
ECB理事会
(12/3)
11,000
10,500
10,000
9,500
独DAX指数
9,000
8699(2/11)
8,500
(出所)BloombergのデータよりMUMSS作成
8,000
2015/9
「マイナス金利」政策の巨大
な副作用
2015/9
2015/10
2015/11
2015/12
2016/1
2016/2
続いて、14~15 の日銀政策決定会合だが、「マイナス金利」政策を採用
した直後でもあり、今回は「緩和効果を見守る」ことになろう。一部では、「マ
イナス金利」の拡大との論調もあるが、今回明瞭になったのは、金融株の急
落という耐え難い副作用である。TOPIX 銀行株指数は、1/28 の引けは
178.9 だったが、「マイナス金利」政策の発動から急落に転じ、2/12 安値
127.0 まで▲29.0%の暴落となった。同期間の日経平均の下落率は▲12.7%
であり、いかに銀行株の下げがキツかったかが理解できよう(グラフ 7)。
TOPIX 銀行株指数の昨年高値は 6/1 の 246.1 である。つまり、昨年高値
から今年 2 月安値で半値近い暴落なのだ。日銀の「マイナス金利」政策発
動と同時に、銀行株に売り向かったのはヘッジファンドである。彼らにしてみ
れば、母国で既に起こった銀行株急落の再現を狙ったのだ。銀行の本来
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7
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
(グラフ 7)
日銀のマイナス金利政策で
銀行株指数が急落
日経平均と東証銀行株指数
150
日銀
マイナス金利
政策発表
(1/29)
140
130
120
110
100
東証銀行株指数
90
日経平均
80
*2016/1/28=100で指数化
70
(出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成
60
2015/4
2015/5
2015/6
2015/7
2015/9 2015/10 2015/11 2015/12 2016/2
業務は、「短期で調達=長期で貸出」である。この長短金利のスプレッド
が、貸出業務の利益の源泉だ。ところが、10 年国債金利でさえマイナスとな
れば、利鞘は潰れてしまう。つまり、本業では極めて儲け難くなる。したがっ
て、貸出業務以外の投資銀行業務やトレーディング業務に収益源を求める
ことになる。いち早く ECB が「マイナス金利」を採用した欧州の銀行は懸命
に努力したが、そう簡単に投資銀行業務やトレーディングがうまく行くはず
がない。結果として、欧州銀行の収益は急悪化し、ドイツ銀行の 2015 年通
期決算は▲68 億ユーロとリーマン・ショック以来の赤字決算に陥った。程度
の差こそあれ、仏・伊・スイス等の大手行も、軒並み不振決算となった。この
ファンダメンタルズの悪化があれば、当然株安となる。ドイツ銀行の昨年高
値は 33.4 ユーロ、今年 2/9 安値 13.0 ユーロで▲61%の下落だ。他も大同
小異で、欧州銀行株は軒並み安となった。この厳しい実体験があれば、魑
魅魍魎が日本で銀行株売りを狙うのも当然である(グラフ 8)。
「マイナス金利」がデフレを
蘇生させる矛盾
銀行株は内外の機関投資家だけではなく、幅広く個人投資家が保有し
ている。たとえば、みずほ FG は 26.7%が個人投資家の保有である(昨年 9
月末時点)。個人投資家にしてみれば、昨年高値比で半値近くの下落とな
れば、ウンザリを通り越して心身を消耗しているものと思われる。株高となれ
ば、含み益や実現益でマンションや自動車、高額な奢侈品を買う動機付け
となる。しかし、半値となれば、「逆資産効果」で家計は節約モードに向か
う。外食産業の既存店売上高を見ると、この 2 月に「餃子の王将」を展開す
る王将フードサービスが、1 年 9 ヵ月ぶりのプラスに転じた。「丸亀製麺」のト
リドールも好調が続いており、デフレ期に活躍した業態が再び脚光を浴び
ているのだ。逆に、ファミレスの中では顧客単価が高いロイヤル・ホストは昨
年から停滞が続いている。つまり、デフレ脱却を企図した「マイナス金利」
が、逆にデフレを蘇生させる矛盾が顕在化しているのだ。
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8
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
(グラフ 8)
マイナス金利の悪影響
ドイツ銀株が 6 割超下落
ドイツ銀行の株価推移
(ユーロ)
40.0
33.4
(4/14)
35.0
ECB理事会
マイナス金利拡大
▲0.2%⇒▲0.3%
(12/3)
30.0
25.0
ドイツ銀行
▲61%
20.0
15.0
13.0
(2/9)
10.0
(出所)BloombergのデータよりMUMSS作成
5.0
2015/1
2015/2
2015/4
2015/6
2015/7
2015/9 2015/10 2015/12 2016/2
FRBの緩和持続姿勢が最高の
贈り物
15~16 の FOMC では、「慎重な様子見姿勢」が持続されるものと思われ
る。米景気の底堅さを指摘しながらも、世界の鈍化が米成長率やインフレに
与える影響を見守るスタンスとなろう。2 月の ISM(供給管理協会)製造業景
況指数は 49.5 となり、景況判断の分岐点となる 50 は下回ったものの、生
産指数や新規受注指数に改善が見られた。一方、同非製造業景況指数は
53.4 と予想を若干上回ったが、雇用指数が 49.7 と 2014 年 2 月以来の 50
割れとなったり、新規受注指数も 55.5 と鈍化が続いた。つまり、リセッション
が懸念されるほど悪くはないが、極めて緩慢な回復と見るのが妥当だろう。
言葉を換えれば、FRB(連邦準備制度理事会)が再び利上げに色気を見せ
るほど強くはない状況と言えよう。米国株が底堅くなったのは、FRB が年初
のタカ派(利上げに積極的)的色彩を薄め、ハト派的姿勢に転じてからであ
る。2/11 のイエレン議長の議会証言を分水嶺として、綺麗なリバウンドだ。
特に、叩き売られていたモメンタム株の反発力が強まっている。2/10~3/3
の期間で、ナスダック 100 指数の銘柄別パフォーマンスを見ると、ワースト
パフォーマーにランクされていたテスラ・モーターズが、+36.2%で第 1 位に
なっているのが象徴的だ(ブルームバーグ・データ)(グラフ 9)。やはり、FRB
の緩和持続姿勢が、ウォールストリートへの最高の贈り物である。3 月
FOMC は、慎重な言い回しに終始し、将来的な利上げの可能性に言及す
るのが関の山と思われる。
「グローバル・リスク・アセ
ット」の復元
こうした日・米・欧3極中銀の政策会合を考えると、ドラスティックな展開は
期待し難いが、株価のリバウンド歩調に水を差すことはないものと考えられ
る。日本では3月年度末相場だが、グローバルには1~2月の急落に対する
ショート・カバー相場の様相が強まっている。株価だけではなく、原油を始
めとしたコモディティ、エマージング諸国の通貨等、広汎なアセットでポジシ
ョンの巻き戻しが起こっているのだ。3/3には、ブラジル・ボベスパ株価指数
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
9
2016 年 3 月 7 日
ストラテジー
マーケット分析
(グラフ 9)
年初来の「ワースト組」が
米国でも大幅反発
ナスダック100の上昇率上位(2/10~3/3)
テスラ・モーターズ
36.2
バイオマリン・ファーマ
33.6
ノルウェー・クルーズ
29.0
エヌビディア
28.3
プライスライン・グループ
26.1
オートデスク
25.3
バイアコム
24.3
ディッシュ・ネットワーク
24.1
百度[バイドゥ]
23.3
スカイワークス・ソリュー
15.0
「神の見えざる手」
(グラフ10)
売込まれたブラジル株が
大幅反発
(出所)BloombergのデータよりMUMSS作成
22.5
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
(%)
が1日で+5.1%の急騰を見せた。中でも、鉄鉱石世界1位のヴァーレの株価
(ADR)は、1/26安値2.13ドルが3/4高値4.87ドルまで大化けしている(もちろ
んレベルは低いが)(グラフ10)。日本株だけの単独リバウンドでは限界がある
が、グローバルのリスク・アセットの復元が背景にあれば、春相場を楽しめる
ものと思われる。
今までの政策対応の主役は日銀だったが、今後は安倍政権が前面に出
るものと思われる。いずれ、読売新聞の報道を、より具現化した「緊急経済
対策」の青写真が敷衍することになろう。選挙年の 3 月年度末は、「神の見
えざる手」が大いに活躍するものと思われる。
(ドル)
ブラジル株価指数とヴァーレ株の推移
(p)
60,000
14.0
50023
(3/4)
12.0
50,000
10.0
ボベスパ指数(左)
40,000
8.0
43228
(1/20)
30,000
4.87
(3/4)
6.0
C
4.0
ヴァーレ(右)
20,000
藤戸 則弘
投資情報部長
2.13
(1/26)
(出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成
10,000
2015/6
2.0
0.0
2015/7
2015/8
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
10
2015/10
2015/11
2015/12
2016/2
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