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2016 年 3 月 10 日
国内 FinTech(フィンテック)市場に関する調査結果 2015
-FinTech 市場の急速な成長を後押しする、官民による支援体制の整備がカギ-
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内の FinTech(フィンテック)市場の調査を実施した。
1.調査期間:2015 年 7 月~2016 年 1 月
2.調査対象:国内の FinTech ベンチャー企業、金融機関、SIer
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<FinTech(Financial Technology)および FinTech(フィンテック)市場とは>
FinTech(フィンテック)とは金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語である。従来の金融機関
では提供できなかった領域において IT 技術を活用して提供する金融サービスを意味する。
本調査における FinTech は次のように分類し、「ソーシャルレンディング(融資)」「クラウドファンディング」「投
資・運用サービス(投資・運用、情報提供)」「ペイメント・決済」「ブロックチェーン(プラットフォーム、クリプトカレ
ンシー)」「企業会計(クラウド型会計ソフト、会計・経理クラウドサービス)」「家計簿・経費精算アプリ(家計簿・資
産管理、経費精算)」「金融機関向けセキュリティサービス」の 8 領域を対象とする。
国内 FinTech 市場規模は従来の金融機関が提供していない、革新的なサービスやその基礎技術を提供する
ベンチャー企業に焦点を当て、当該ベンチャー企業の売上高ベースで算出している。
【調査結果サマリー】
 2015 年度の国内 FinTech 市場規模は 33 億 9,400 万円 の見込
2015 年度の国内 FinTech(フィンテック)市場規模(FinTech 系ベンチャー企業売上高ベース)は、
33 億 9,400 万円の見込みである。3 メガバンクグループや大手 SIer によるベンチャー企業向けイベ
ントが多く開催され活況を呈したほか、ベンチャー企業と大手企業との協業事例等、市場は盛り上が
りを見せている。
 クラウド型会計ソフトとソーシャルレンディングが市場を牽引
2015 年度を領域別にみると、特に「クラウド型会計ソフト」と「ソーシャルレンディング(融資)」が市場を
牽引した。従来のインストール型の会計ソフト導入企業のうち、中小企業を中心にクラウド化が進むとみる。
また、ソーシャルレンディングは、2020 年の東京オリンピックに向けて不動産市場が盛り上がりをみせるこ
とを鑑みると、銀行融資が難しい不動産開発段階から携わることができるため、伸びが期待できる。
 ブロックチェーンの急速な拡大や、官民による支援体制の整備などを背景に、
2020 年度には 567 億 8,700 万円に急拡大すると予測
ブロックチェーン※を活用したシステムの導入が急速に進むことが期待されるほか、領域を超えたベン
チャー企業同士の連携が進むとみる。また支援体制も、大手金融機関や大手 SIer によるベンチャー企業
向けイベント開催のほか、銀行法の改正に伴う FinTech ベンチャー企業への更なる投資の拡大や活発な
協業、政府による施策などが整っていくと考える。こうしたことを背景に、2020 年度には 567 億 8,700 万円
に達すると予測する。
◆ 資料体裁
資料名:「FinTech 市場の実態と展望 2015-2016」
発刊日:2016 年 2 月 16 日
体 裁:A4 判 379 頁
定 価:150,000 円(税別)
 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
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2016 年 3 月 10 日
【 調査結果の概要 】
1. 市場概況
2015 年度の国内 FinTech(フィンテック)市場規模(FinTech 系ベンチャー企業売上高ベース)は、33
億 9,400 万円の見込みである。3 メガバンクグループや大手 SIer による FinTech ベンチャー企業向けイ
ベントが多く開催され活況を呈したほか、ベンチャー企業と大手企業との協業事例などもあり、市場は
盛り上がりを見せている。また、ベンチャー企業への投資については、金融機関のベンチャーキャピタ
ルなどを中心に行われており、数億円規模の調達に成功する FinTech ベンチャー企業が登場するなど、
投資資金が流れている傾向にある。
こうしたなか、管轄官庁側の支援体制も徐々に整いつつある。金融審議会による制度のあり方や決
済業務等の高度化に関するワーキング・グループにおいて、FinTech に関わるテーマが議論され、報告
書が公表された。同報告書では、金融持ち株会社による一般事業会社への出資制限の緩和などが盛
り込まれており、今後、銀行による FinTech ベンチャー企業へ更なる出資など、ベンチャー企業と金融機
関とのより深い関係構築が進む可能性が考えられる。こうした内容を含む銀行法の改正案が 2016 年の
通常国会に提出される予定である。
2. 注目すべき動向
2-1.「クラウド型会計ソフト」「ソーシャルレンディング」が市場の牽引役、
今後は「ブロックチェーン」が急拡大の可能性も
2015 年度を領域別にみると、本調査における 8 領域のうち、特に「クラウド型会計ソフト」と「ソーシャルレン
ディング(融資)」が市場を牽引した。まず「クラウド型会計ソフト」は、従来のインストール型の会計ソフト導
入企業のうち、中小企業を中心にクラウド化が徐々に進むとみる。
また、「ソーシャルレンディング」は、2020 年の東京オリンピックに向けて不動産市場が盛り上がりをみ
せることを鑑みると、銀行融資が難しい不動産開発段階から携わることができるため、伸びが期待でき
る。
2017 年度以降に市場を強力に牽引する領域としては「ブロックチェーン※」の成長がある。現在、日本
でも多くの実証実験が実施されており、また販売代理店網も徐々に構築が始まっている。まずは企業の
情報系を中心にブロックチェーンを活用したシステムの導入が進むとみており、2017 年度以降、「ブロッ
クチェーン」を活用したシステムの採用が、中小企業を中心に始まる可能性がある。なお、金融機関へ
の導入は、米国 R3 社が主導するブロックチェーンに関するコンソーシアムの動向などがあるため、普及
までにはある程度の時間を要するものと考える。
※ブロックチェーンとは利用者同士をつなぐ P2P(ピアツーピア)ネットワーク上のコンピュータを活用し、権利移転取引な
どを記録、認証するしくみ
2-2.ふるさと投資や株主コミュニティ制度など、地方銀行や地場証券の取組み
地方銀行や証券会社による取組みが始まっている。まず地方銀行は、地方創生を背景にクラウドファ
ンディングの活用が進んでいる。2014 年 5 月に改正金融商品取引法が成立したことで、2015 年 5 月か
ら株式投資型クラウドファンディングが解禁された。これに先立ち 2014 年 10 月末に「ふるさと投資」連絡
会議が設立され、2015 年 5 月には手引き等説明会も開催されるなど、全国地方銀行協会、および第二
地方銀行協会に加盟する地方銀行の多くが積極的に参加している。今後、株式交換などによる地方銀
行の統合が更に加速するとみられ、地方銀行による FinTech 分野への投資などが増える可能性がある。
また、地場の証券会社の取組みとして、「株主コミュニティ制度」がある。同制度は、2018 年 3 月に終
了となるグリーンシート銘柄制度の後継とされる制度で、証券会社が企業ごとに投資参加者グループ
(株主コミュニティ)を管理し、グループ内部でのみ売買できる仕組みである。株主コミュニティの運営会
員は、日本証券業協会より指定を受ける必要があり、現状の取扱い銘柄は社歴が長い地元の企業が多
い傾向にある。
グリーンシート銘柄制度とは、未上場株式の流通の場を設けることで、ベンチャー企業による株式発
行を通じた資金調達を容易にする目的から創設された。その流れを汲む、株主コミュニティ制度も、本
来は地元発ベンチャー企業が当該株式発行市場において資金調達を行い、流通において当該発行
株式に対し正当な値付けがされることが目的と考える。現在、体制面の整備や維持管理面などに課題
を抱えているものの、将来的には、地元発ベンチャー企業の創出など、新たなインフラになることが期待
される。
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2016 年 3 月 10 日
3. 将来予測
今後はブロックチェーンを活用したシステムの導入が急速に進むことが期待されるほか、領域を超えた
ベンチャー企業同士の連携が進むとみる。また支援体制も、大手金融機関や大手 SIer によるベンチャー
企業向けイベント開催のほか、銀行法の改正に伴う FinTech ベンチャー企業への更なる投資の拡大や活
発な協業、政府による施策などが整っていくと考える。
こうした官民一体となった支援体制を受け、国内 FinTech 市場規模(FinTech 系ベンチャー企業売上
高ベース)は 2018 年度には 222 億 8,600 万円(2015 年度~2018 年度の年平均成長率(CAGR)87.3%)、
2020 年度には 567 億 8,700 万円に達する(2015 年度~2020 年度の CAGR75.7%)と予測する。
現状ではある程度、領域ごとに区分けされているが、今後は領域ごとの協業が始まり、領域間での融
合が起こると考える。ベンチャー企業の多くは、現状の領域に留まることは考えておらず、領域間を跨っ
た事業を展開していく傾向にある。本調査では 8 領域に分けたが、今後、領域自体も主たるプレーヤー
も変化していくことが予想される。
また、金融機関や SIer などによる創業まもないベンチャー企業の育成が活発化することで、新たなベ
ンチャー企業が生まれ、市場を更に活性化させていくことが期待される。更なる市場活性化に向け、こう
した創業まもないベンチャー企業を育成していく環境をより一層充実させていく必要があると考える。
さらに、法改正など新たな要因により参入領域が増えていく可能性がある。こうした中で、領域間、領
域内でのベンチャー企業間の競争が活発化し新たなサービスの誕生、市場の活性化による新たな参
入企業の登場など、好循環が生まれることが期待される。
(百万円)
図 1. FinTech 系ベンチャー企業の国内市場規模推移予測
矢野経済研究所推計
注 1.
注 2.
FinTech 系ベンチャー企業売上高ベース
2015 年度は見込値、2016 年度以降は予測値
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