講義 第2回 第1章:「 おもてなしの原点 」

「 ホスピタリティ論 」
担当 : 松尾 信子
講義
第2回
2015.9.29(火)
第1章:
「 おもてなしの原点 」
メニュー
1. 講義
13:00 ~ 14:00
2. 演習
14:00 ~ 14:30
イントロダクション
個人レベルにおいて
1.
①
変わらないもの :
②
変わるもの
:
わが国には世界最古のホスピタリティ企業が存在していた
①
老舗企業がもっとも大切にしてきたのは、おもてなしの精神

老舗とは 100 年以上も続く企業のことをいう。

日本には、100 年以上続く企業が2万2千社も存在している。
500 年以上は 39 社。1000 年以上は 7 社。
中国では、150 年以上は 5 社
欧米では、200 年以上はドイツが 837 社、オランダは 222 社、フランスは 196 社

日本の代表的企業である、トヨタ、パナソニック、ホンダなどでもまだ約 80 年の歴
史しかない。

最近、日本では、年間、1 万社以上が倒産しているのに、1300 年も続いている企業が
存在していることは注目に値する。

この 1300 年という長い間には、自然災害、戦乱、社会不安など、さまざまな困難が
発生している。
1
世界最古の企業の 1 つである法師(旅館・石川県小松市)の 46 代当主・法師善五郎

氏に、なぜ、1300 年も続いているのかと質問したら、「おもてなしの精神や文化を守
り、それをお客さまに伝えてきたからだ」と言われた。
普通、旅館の「おもてなし」というと、立派な部屋を準備して、飾り物を飾り、美味

しい料理を提供し、礼儀正しく接することが「おもてなし」だと考えられるかもしれ
ないが、法師の当主は、
「おもてなしの精神を受け継ぎ、それをお客さまに提供するこ
と」こそが「おもてなし」なのだと断言された。

そして、お客さまや社会に喜んでもらうために、社員が一致団結して、おもてなしの
精神を反映した料理やサービスを提供してきたことによる。そしてお客さまのクレー
ムや提案に耳を傾け、日々改革を行って、お客さまに満足してもらう努力をしてきた
という。
2.
茶道から日本のホスピタリティ文化を学ぶ
①
茶道の基本はおもてなしの心にある

お茶を点てたり、お花を生けるために必要な知識や技術だけを身につけても、それだ
けでは「おもてなし」にはならないのです。

心の底からお客さまに喜んでいただくために、日頃から何十年も練習をして、心を込
めてお客さまにおもてなしをする、というのが茶道や華道の基本的な精神です。

茶道や華道においては、知識やマナーだけでお客さまをもてなすのではなく、心を込
めてお客さまに喜んでもらうという「気持ち」や「心」がなければ、おもてなしの真
髄は学べないのです。
2
②
「一期一会」のために日々の鍛錬が不可決である

「一期一会」という言葉の意味を知っていますか。

最近はあまり見かけませんが、以前は、蕎麦屋や日本料理店などに行くと、
「一期一会」
という掛軸がかかっていました。この意味は「今日の出会いが最初にして最期である
から、その出会いのために、お客さまに最善を尽くさなければならない」という意味
です。

「人との出会いを大切にする」という精神を表した言葉です。

この言葉は、茶道の精神から生まれたものであって、お客さまにおもてなしするため
には、長い年月の修行によって、心を込めてお客さまをおもてなしするという意味が
込められているのです。

千利休の「一輪の朝顔」の話はとても有名ですが、この意味がわかりますか?
利休
は秀吉に喜びや感動を与えるために、全身全霊を傾け、おもてなしをしたという一つ
の事例です。
3.
①
日本料理(和食)には、おもてなしの心が反映されている
日本料理(和食)がユネスコ無形文化遺産に登録(2013 年 11 月)

お料理は基本的に、お客さまや家族に食べてもらいたいから料理を作るのです。です
から、おいしい料理を作るに当たって、料理人はお客さまに喜んで食べていただくた
めに、「おもてなし」の気持ちを反映させなければなりません。

料理人は、料理がおいしいだけではなく、四季折々の新鮮な素材を使って料理し、栄
養バランスを考え、見た目を良くするためにきれいな器に盛り合わせをして、お客さ
まに喜んでもらいたいのです。
3

日本料理は年中行事と密接な関係があって、季節感にあふれ、旬の素材を活かすとい
う心くばりがなされています。
②
日本人は料理を目、頭、心でも食べる

料理は口や腹だけで食べるのではありません。

日本人は料理を目で食べると言われていますが、目だけではなく、頭や心でも食べる
のです。

一般的には、
「口」で食べて、
「お腹」が満腹になって満足するのでしょうが、見た「目」
がよく、食欲がわいて、素材や調味料を「頭」を使って工夫し、
「心」を込めてお客さ
まに料理を提供しているのです。

作り手にとって、目や頭や心も必要ですし、食べる人もその作り手の心くばりに感謝
をして食べているのです。

作り手は食べる人が喜んでいる姿を見て、自分も喜ぶというのがホスピタリティ(お
もてなし)の基本的な考え方です。

どんなビジネスにおいても、スタッフは、口、腹、目、頭、心を使うべきです。
【演習】テキストを使用しますので、必ず持参してください。
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