日本市場の先行指標はなにか?

9 月月報レジュメ
▼日本市場の先行指標はなにか?
相場を考える上で、とても大事なのは、総合株価指数より早く動くものはなにかをはっき
りさせて、いつもチェックするということです。
総合株価指数が下がっており、安値更新をしていても、それがすでに反発を始めていれば、
弱気になる必要はありません。逆に、総合株価指数が高値更新をしていても、それがすで
に下降トレンドに入っていたら、そろそろ撤退を考えなければいけません。
米国市場においては、ダウ輸送株指数(1083)
米国市場においては、ダウ輸送株指数(1083)の先行性が市場において認知されています。
(1083)の先行性が市場において認知されています。
従って、当レポート(日報・週報など)でつねにダウ輸送株指数の動向を執拗に解説して
従って、当レポート(日報・週報など)でつねにダウ輸送株指数の動向を執拗に解説して
いるわけです。では、日本市場において、こうした絶対的な先行指標があるでしょうか?
▼東証 REIT 指数の先行性。
わたしが見るところでは、日報でも解説してきましたが、東証 REIT 指数(1006)
指数(1006)が日本市場
(1006)が日本市場
における重要な先行指標ではないか、と思っています。
(東証 REIT 指数と TOPIX の比較 週足)
この東証 REIT 指数の先行性ですが、残念ながら、ダウ輸送株のような理論的裏づけがはっ
指数の先行性ですが、残念ながら、ダウ輸送株のような理論的裏づけがはっ
きりしません。
ただ、チャートを見ますと、かなり明確な先行性が確認できるのです。
ただ、チャートを見ますと、かなり明確な先行性が確認できるのです。
▼東証 REIT 指数と TOPIX との時間差。
上図を見て一目瞭然ですが、東証 REIT 指数と TOPIX には、2013
には、2013 年の場合、天井形成でも、
ボトム完了でも、週足で見る限りは 2 ヶ月弱のタイムラグがありました。
2014 年は、上昇トレンドがほぼ継続的に続いていたこともあり、あまり大きな違いはあり
ません。
2015 年になりますと、こんどは、東証 REIT 指数が天井を打ってから、TOPIX
指数が天井を打ってから、TOPIX が天井を打つ
まで 7 ヶ月の長い時間差があったことがわかります。
2013 年の場合は、米国連銀の量的緩和策が終わるという織り込みが始まったタイミングで
年の場合は、米国連銀の量的緩和策が終わるという織り込みが始まったタイミングで
す。
しかし、今度はサブプライムショック以来の金融政策が、利上げへと完全に転換するとい
う意味あいですから、量的緩和策が終わるなどといったようなレベルの話ではありません。
その「意味や重大さの違い」が、2
その「意味や重大さの違い」が、2 ヶ月差と、7
ヶ月差と、7 ヶ月差という違いを生んでいるわけです。
いずれにしろ、東証 REIT 指数は、こうしたトレンド(本当の意味でトレンドとは、週足で
示されます。日足ではありません。
)上は、理屈はともかく事実として、総合株価指数に対
してかなりの先行性があると判断してよいのではないでしょうか。
してかなりの先行性があると判断してよいのではないでしょうか。
▼それでは、東証 REIT 指数が底入れ完了するのに、ここから 7 ヶ月かかるのか?
そこで問題となるのは、それでは東証 REIT 指数が底入れ完了するのに、今回は 7 ヶ月かか
るのか、ということですが、それはないでしょう。
なぜなら、今回の調整は、金融政策の転換というファンダメンタルズ上の重大な変化であ
るとともに、なんといっても一般投資信託(ミューチュアルファンド)やヘッジファンド
の運用上の損益通算(あるいは期末)である、10
の運用上の損益通算(あるいは期末)である、10-
10-11 月前に起こっているという事情があ
るためです。
この損益通算の期限までに、ポジションはニュートラルになるはずですから、長くても、
この損益通算の期限までに、ポジションはニュートラルになるはずですから、長くても、
目先 2 ヶ月ということになります。
これは、米国連銀の利上げが、10
これは、米国連銀の利上げが、10 月でも、12
月でも、12 月でも同じでしょう。
そうではなく、12
そうではなく、12 月もできず、来年に先送りなどという番狂わせが起これば、このシナリ
オは崩れてしまい、長期的な株式相場の時間調整が続くことになってしまいますが、連銀
が繰り返し、年内利上げを主張しているわけですから、このリスクはほとんど無いとみて
いいでしょう。
▼日足では、東証 REIT 指数は短期的な底入れ完了をしている。
この東証 REIT 指数は
指数は、日足ベースでは短期的な底入れを完了していることから(
、日足ベースでは短期的な底入れを完了していることから(8
短期的な底入れを完了していることから(8 月 28
日前後の戻り高値更新、なおかつ 25 日足突破の 2 要件をクリア。
)
、週足ベースでも底入れ
確認ができるのは、前段で解説したことを考慮すれば、
確認ができるのは、前段で解説したことを考慮すれば、時間の問題でしょう。
前段で解説したことを考慮すれば、時間の問題でしょう。
(東証 REIT 指数 日足)
▼日本の個別銘柄で、調整完了のシグナルは出ているのか?
個別銘柄を考えるときには、この東証 REIT 指数と同じように、日足ベースにおける短期底
入れを完了させているものをなにより重視しましょう。
では、こうした個別銘柄のなにを見れば、全体的な底入れをしたとチェックできるのか、
考えてみましょう。
まず、全体の相場が底入れしたかどうかを、個別銘柄の動きから推測するところから始め
ましょう。
一般的な東京市場のベンチマークで言えば、代表的なものは、キッコーマン 2801 と小松製
作 6301 でわかります。
▼ファンドの損益通算では、上がったものも、下がったものも売られる。
相場に最も影響を与えるファンドというものは、1 年の運用成績を確定させる損益通算期限
があります。
10-
10-11 月末に集中していることから、夏場から現物は利益確定し、ショートはカバーして
終わります。
ここで重要なのは、個別銘柄の場合、年間を通じて上がった銘柄は利益確定をし、下がっ
ここで重要なのは、個別銘柄の場合、年間を通じて上がった銘柄は利益確定をし、下がっ
てパフォーマンスの悪かったものに関しては、益出し分の節税対策用に、ことさら実現損
を出してしまうという傾向が強いのです。
従って、ポジション調整が終わったと見なすことができるのは、とくに後者の、下がった
銘柄がさらに一段安するという現象が終焉したという点です。
代表的な銘柄を見てみましょう。
たとえば、前者の年間を通じて利益が上がっていた銘柄です。
たとえば、キッコーマン 2801 がこれに該当します。
(キッコーマン 週足)
このキッコーマンの週足チャートを見ますと、今年の最高値は
このキッコーマンの週足チャートを見ますと、今年の最高値は 8 月 21 日の週でした。そこ
から、利益確定がかさんで 9 月 11 日の週に一番底をつけています。
この銘柄は、いわゆるディフェンシブ系の銘柄です。今年もっとも堅調な上昇トレンドを
見せたカテゴリーに属します。
逆に、今度は年間を通じて、パフォーマンスが上がらず、たいていの人が含み損となって
いった銘柄の代表格です。
それは小松製作所 6301 です。
(小松製作所 週足)
この銘柄は、年初から鳴かず飛ばずの状態でした。中国の景気後退懸念が(実際には、小
松にとってそれほど大きな収益比率は無いのですが)影響したと言われています。
松にとってそれほど大きな収益比率は無いのですが)影響したと言われています。
この銘柄は、6
この銘柄は、6 月からどんどん下値を切り下げてしまい、直近まで安値更新をしています。
この代表的なベンチマークはいずれも、利益確定で下落したものと、実現損を敢えて出す
ということから下落したものの、典型的なパターンです。
逆に言えば、これらの株価が落ち着き、底入れ完了をしてくれば、ファンドの損益通算に
からむ需給悪は終焉した、という判断ができることになります。
▼指数によって、底入れパターンがまったく異なっている現状。
9 月 29 日の相場では、日経平均など総合株価指数が、なんと夏場以降の最安値
なんと夏場以降の最安値更新となり
んと夏場以降の最安値更新となり、
更新となり、
まさに一番底をつけに行くことになってしまいました
まさに一番底をつけに行くことになってしまいました。
くことになってしまいました。
つまり、これまでの安値(9
つまり、これまでの安値(9 月 8 日のボトムと思われた安値)が、底値ではなかったという
ことになります。
ところが、東証二部など新興三市場は、まったくこのパターンと違い、逆三尊形成の途上
です。新興三市場のようなもっとも財務状況が脆弱な銘柄の多い指数が、下放れていない
ということは、まったく市場にファンダメンタルズ上の危機感は無い、ということです。
(東証二部指数
(東証二部指数 日足)
次に、日経平均や TOPIX など総合株価指数は、目下
など総合株価指数は、目下 1 番底の模索過程に下放れてしまった
わけですが、ちょっと日足を見てみましょう。
わけですが、ちょっと日足を見てみましょう。
(日経平均の上昇ウェッジ・パターンと、RSI
(日経平均の上昇ウェッジ・パターンと、RSI の逆行現象)
そのチャート形状は、上値と下値の幅がだんだん縮小しながら、安値更新をしています。
これを、その後に起こるチャートの異変兆候を示すことから「上昇ウェッジ」といいます。
まだ煮詰まりとなっていないので、すぐにも反転するとはこの形状からは言えませんが、
このパターンの後に来る変化とは、自然に考えても反発しかありません。
しかも(主要な銘柄についてもそうですが
、RSI はかなり鮮明な逆行現象(コンバージェ
しかも(主要な銘柄についてもそうですが)
主要な銘柄についてもそうですが)
はかなり鮮明な逆行現象(コンバージェ
ンス)を形成しつつありますから、早晩相場が反転することを、これも示唆していること
になります。
一方、一目均衡表では、ちょうど抵抗帯が「ねじれ」を想定しており、早晩、
「転換」を予
告しています。いわゆる、一目均衡の「変化日」です。
もちろんこの「転換」とは、反発することを意味するだけではなく、逆に「下落加速」と
いうケースもあるわけで、注意しておかなければなりません。
(一目均衡表の日経平均)
▼基本的には、金融市場はリスクを意識していない。~単なる期末、ファンドの損益通算
期限を控えた、ポジション整理の延長。
期限を控えた、ポジション整理の延長。
基本的には、ファンドなどの期末要因、あるいは損益通算(10
基本的には、ファンドなどの期末要因、あるいは損益通算(10-
10-11 月末)を控えた、ポジ
ション整理がまだ進んでいるということだけでしょう。
主力大型がとくに下げており、新興市場指数が底割れしていないというのは、外人の保有
比率が多い主力大型がその標的になっていることを如実に示しています。
実際、海外市場においては、金(1031)
実際、海外市場においては、金(1031)のようなリスク商品はむしろ下げており、
(1031)のようなリスク商品はむしろ下げており、米
のようなリスク商品はむしろ下げており、米 10 年国
債利回り(1091)
債利回り(1091)のような
(1091)のような金利も
のような金利も、あるいはグローバルマネーの収縮・拡散の体温計である
金利も、あるいはグローバルマネーの収縮・拡散の体温計である
ユーロドル(1061)
ユーロドル(1061)の
(1061)のような為替も特段大きな異変を起こしていません。
ような為替も特段大きな異変を起こしていません。
また、日本においても国債がむしろ軟調気味ですから、リスクを感じていないか、あるい
はやはり株と同じく期末やファンドの損益通算期限を控えたポジション整理かどちらかで
しかないでしょう。
つまり、日米市場で株だけが極端に下げているという事実です。
東京においては、中間期末ですから、買い手はまったく不在(機関投資家動けず)
。
従い、投機筋にとっては、相場を売り崩すのには絶好のチャンスだった
従い、投機筋にとっては、相場を売り崩すのには絶好のチャンスだったということです。
ったということです。
▼売りの口実~チャイナリスク
そもそも、中国の景気後退懸念ということばかり、市場関係者は口にしますが、実際にど
そもそも、中国の景気後退懸念ということばかり、市場関係者は口にしますが、実際にど
うかといえば、短期的には中国の経済の動きというものは、改善しているという事実を、
誰も指摘しません。
たとえば、豪州からの貿易統計(主要国は言うまでもなく中国です)は、4
たとえば、豪州からの貿易統計(主要国は言うまでもなく中国です)は、4 月以降、完全に
増勢に転じています。
(豪州輸出統計)
(出典:tradeingeconomics.jp
(出典:tradeingeconomics.jp)
tradeingeconomics.jp)
さらに、日中間の海上運賃指数も、昨年 9 月以降明らかに反発しているわけです。
豪ドル・ドル(1062)
豪ドル・ドル(1062)も、日米株式相場の波乱の中、まったくといっていいほど動揺したり
(1062)も、日米株式相場の波乱の中、まったくといっていいほど動揺したり
急変したりしていません。
急変したりしていません。
確かに中国経済は、今後も低成長時代へのソフトランディングを強いられていく長い道の
りの過程にあるでしょう。しかし、過去の日本のデフレ 20 年間を見てもわかるように、景
気循環というものは、その中でなんども日経平均が倍になり、半値になりを繰り返したの
と同じことが、中国でも今後発生してくるということです。
少なくとも短期的には、景気の底入れに入っていることは、データが示しているといって
いいでしょう。
(日中航路運賃)
(出典:日本海事センター)
また、この日中間の海上運賃を見ても、すでに昨年 9 月以降、明らかに増勢に転じている
月以降、明らかに増勢に転じている
わけです。
どう外部要因を見ても、日米株式市場がこれほど売られる理由というものは、皆無だとい
っていいでしょう。
(長期的に中国が低成長時代に入っていくということなど、いまさらな
(長期的に中国が低成長時代に入っていくということなど、いまさらな
んの悪材料にもなりません。
)
従って、直近第一中央汽船の会社更生法適用破産という材料も、ある意味、中国景気の悪
従って、直近第一中央汽船の会社更生法適用破産という材料も、ある意味、中国景気の悪
化という織り込みということに関していえば、最終局面に出がちな象徴的「事件」という
化という織り込みということに関していえば、最終局面に出がちな象徴的「事件」という
ことになるかもしれません。こういう「事件」が出てきたこと自体が、中国景気の循環的
ことになるかもしれません。こういう「事件」が出てきたこと自体が、中国景気の循環的
な悪化局面を、すでに織り込んだ後であることを示唆していると考えます。
な悪化局面を、すでに織り込んだ後であることを示唆していると考えます。
▼10 月相場のポイント。
10 月相場を考えますと、米国企業業績発表が上旬から始まります。
月相場を考えますと、米国企業業績発表が上旬から始まります。現在、その前に下がっ
現在、その前に下がっ
た米国市場は、業績発表過程でアク抜けするでしょう。
ちょうど月末には FOMC、日銀二度目の金融政策会合が控えています。後は政策期待だけ、
FOMC、日銀二度目の金融政策会合が控えています。後は政策期待だけ、
ということになります。
政策が発動されても、されなくても、基本的には相場の反転は近いと考えてよいでしょう。
それは、ファンドの売り方が 10-
10-11 月の損益通算期限を控えて、必ずショートカバーをし
て、ポジションをニュートラルの戻さなければならないという事情があるためです。
て、ポジションをニュートラルの戻さなければならないという事情があるためです。
政策発動は、それをどのくらい助長するか、拍車をかけるかという付加要因に過ぎません。
むしろ一番の問題は、連銀が
むしろ一番の問題は、連銀が 10 月利上げをするかどうかです。
利上げをすれば、これまで述べてきたように、そこで
利上げをすれば、これまで述べてきたように、そこで相場の調整局面は終焉です。
そこで相場の調整局面は終焉です。
ところが、またもや先送りで 12 月ということになりますと、8
月ということになりますと、8 月以来の上げたり下げたり
の往来相場が、主要な総合株価指数としてはずっと続くということになります。
つまり、外人などの売り需要が少ない材料株や新興市場銘柄など、個別銘柄でむしろパフ
ォーマンスを挙げられるチャンスだということでもあります。
ォーマンスを挙げられるチャンスだということでもあります。
▼個別銘柄選択で重要なこと。
どのような相場環境であっても、一番重要なことは、下がる局面で上がっているという銘
柄を選択する、ということです。
今回のように、7 年にわたって続けられた米国の金融政策が大きく転換するタイミングです。
その最終局面で、もっとも需給関係の悪化する秋に底入れをしようとしているわけです。
この売り圧力が一番大きな時期に、逆に上がってきている銘柄をなによりポートフォリオ
を再構築する上では重視しなければなりません。
なぜなら、この局面において、それらは売り手が存在しない、ということを意味している
なぜなら、この局面において、それらは売り手が存在しない、ということを意味している
からです。
割り切り方としては、信用倍率が 1 倍以下のものを優先させるべきでしょうが、なにより
日足で見て、8
日足で見て、8 月 25 日前後の安値以降の戻り高値を更新していること、25
日前後の安値以降の戻り高値を更新していること、25 日足を上回って
いることの、2
いることの、2 要件を満たしていれば、東証 REIT 指数と同じく、先行的に日足の短期底入
れを完了したと見なすことができるわけですから、ここが閉塞状態にある相場の突破口に
なっていることになります。
こうした観点で、
“黄金シリーズ”では、「赤備え銘柄リスト」を日々更新し、解説してい
るわけですが、赤備えに限らず、各位が注目している銘柄に関して、上記の要件を十分に
るわけですが、赤備えに限らず、各位が注目している銘柄に関して、上記の要件を十分に
満たしている銘柄かどうか確認されることをお勧めします。
あくまで、強いものにつくというのが、相場の道理です。強いか、弱いかは簡単です。要
あくまで、強いものにつくというのが、相場の道理です。強いか、弱いかは簡単です。要
するに、売り手がいないということ一つで判断がつくのです。
以上