訴訟に関心を持たれる青学生らと教職員の皆さんへ

訴訟に関心をもたれる青学生らと教職員の皆さんへ(1)
20150601
※事件番号
平成 27 年(ワ)第 9806 号
青山学院大学地球社会共生学部設置無効確認等請求訴訟
1.法律の議論と社会常識
○裁判所に提出される文書は難しくて良くわからないかもしれません。官僚が書く文書も
「霞が関文学」などと言われて、およそ国民が分からない言い回しをしていると批判さ
れました。
○しかし、裁判所も行政官庁も、主権者である国民に支えられている国家機関ですから、
国民の理解や信頼なくして存立しません。「法理論をこねくり回して、余りにも国民常識
とかけ離れた結論を出している」ということになれば、信頼を失ってしまいます。法律
も判決も、その基盤は国民常識にあります。そう考えると少しは安心できると思います。
○さて、被告の「答弁書」では、
「部分社会論」とか「大学の自治」等の議論が出てきまし
た。これはどういうことかと思われたかもしれませんが、大学に関わる訴訟ではいつも
出てくる議論です。これについては、少し時間を頂いて青学の事案に即して議論を展開
します。お待ちください。
2.訴訟を通じて分かること
(1)大学の説明責任と、大学運営の透明性の確保
1)訴訟で初めて、地球社会共生学部設置の経緯や理由についての「説明責任」が果たさ
れ、
「透明性の確保」が図られます。すなわち、地球社会共生学部については、その経緯
が不透明で、説明責任も果たされていないというのが現状です。
○青山学院大学の教職員でも、地球社会共生学部がどのような経過で設置されたのかを、
正確に知っている人は多くありません。また、地球社会共生学部に対するどのような
反対意見があり、それに対して仙波学長がどのような根拠で反対意見を押し切って設
置に至ったのかも、知らない人が多いのです。
○訴訟は、その経過を人々の前に明らかにします。
2)訴状では原告の主張と事実が述べられています。これに対して、被告から「答弁書」
で被告の主張と事実認識が述べられています。
○被告の「答弁書」で、
「学長は成程そういう考え方だったのか」ということが初めて分
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かったという人もいると思います。学長から直接説明を受ける機会がなく、教授会や
学部長会、大学協議会などでどのような議論がされているか、教職員も学生もほとん
ど知りません。会議は公開ではなく、議事録も大学HPにUPされるわけではありま
せん。
○例えば、地球社会共生学部に関して、4 学部長から常任監事に監査の要望書が提出され
ていたこと、それに対する経過的な回答があったことも、多くの人は知りません。地
球社会共生学部の設置について、学内で異論が出ている状況の下で、それを監査する
ことはまさに監事の職務です。
【参考:監事の職務】
「学部・学科の新増設や教育・研究における重点分野の決定、学生・生徒の募集計画等の教学
的な面についても対象とすることが求められる」
(「学校法人制度の改善方策について」平成 15
年 10 月 10 日大学設置・学校法人審議会の審議結果のとりまとめ:9p)
【参考:裁判の公開】
○裁判は公開で行われ、裁判で提出された資料は誰でも見ることができます。
①裁判は、公開で行われます。裁判は誰でも傍聴できます。
※日本国憲法【裁判の公開】
第 82 条
2
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した
場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関す
る犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常に
これを公開しなければならない。
②裁判記録は、誰でも見ることができます。当事者・利害関係者はコピーもできます。
※民事訴訟法 (訴訟記録の閲覧等)
第 91 条
何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。
2 公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については、当事者及び利害関係を疎明した第
三者に限り、前項の規定による請求をすることができる。
3 当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、訴訟記録の謄写、その
正本、謄本若しくは抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付を請求することが
できる。
4 前項の規定は、訴訟記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により
一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これら
の物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官
は、その複製を許さなければならない。
5 訴訟記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があ
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るときは、することができない。
(2)適切な大学運営の確保
1)裁判では地球社会共生学部に係る学則改正が違法であり無効かどうか、すなわち「違
法かどうか」について審理します。
2)しかし、大学運営は、違法でなければ何をしても良いということではありません。大
学運営は、適切に行われなければなりません。そこには、
「適切かどうか、不当かどうか」
というもう一つの基準があります。
○例えば、行政不服審査法では、行政庁の公権力の行使が「違法かどうか」だけでなく、
「不当かどうか」についても審査します。
○裁判で明らかになる仙波学長の大学運営についての認識や実績が「適切かどうか、不
当かどうか」は、大学関係者が判断する事柄です。
○例えば、
「答弁書」でも触れられているように、地球社会共生学部を承認した「社会情
報学部の条件」、「経済学部の意見」、「文学部の意見」に対して、仙波学長がどのよう
な対処をするのかは、大学運営が適切かどうかという課題に属する事柄だと言えます。
【参考:行政不服審査法】
(目的)
第1条
この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国
民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による
国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
(3)青山学院大学と仙波学長(仙波執行部)とを分け、大学の利益を第一に考える。
○青山学院大学と学長は、一体ではありません。学長の利益を考えるのではなく、青山学
院大学の利益を第一に考えなければなりません。
※「答弁書」で述べられていることは、実は未来永劫に青山学院大学の見解というわけ
ではありません。地球社会共生学部の設置を推進した仙波学長の見解です。そして、
9 名もの弁護士も、実質的には仙波学長の代理人として発言しているのです。
※これは、日本国政府と内閣が同じではなく、内閣が変われば日本国政府の政策も方針
も変わることと似ています。学長が変われば、青山学院大学も生まれ変わることがで
きます。
○大学の意思決定は機動的に行えるようにすることは大切ですが、同時にその意思決定が
専断的にならないようにすることが必要です。仙波学長が「学長と教授会との関係」を
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どのように考えているのか、また、
「教学の長である学長が経営責任を負っている理事会
に対してどのような態度で臨んでいるのか」
、これらを「答弁書」からうかがい知ること
ができます。これらは学長たる人にとって大変重要な事柄です
○大切なことは、青山学院大学が適切に運営されていくことです。大学を取り巻く状況が
厳しければ厳しいほど、適切に運営できる学長が必要です。青山学院大学にも、大学の
卒業式や入学式で他の大学の学長や総長に匹敵する内容のあるメッセージが語れる学長
が欲しいものです。そう思いませんか。
3.訴訟における請求の趣旨
(1)この訴訟では、二つの請求をしています。
①一つは、青山学院大学学則の地球社会共生学部に係る規定が無効であることを確認す
る「無効確認請求訴訟」です。
その被告は青山学院大学(代表者仙波憲一学長)ですが、被告側は「答弁書」で青
山学院大学ではなく法人格を有する学校法人青山学院(代表者安藤孝四郎理事長)と
するべきだと言っているように思えます。
②もう一つは、金 1,500,000 円及びこれに対する 2015 年 3 月 26 日から支払い済まで年
5%の割合による金員を支払えという「損害賠償請求訴訟」です。
これは、民法基づく不法行為責任を追及しているものですから被告は仙波学長個人
ですが、被告側は「答弁書」で「否認ないし争う」としているので、誰が被告として
適当だと言っているのか現時点では分かりません。
(2)「請求の趣旨」には、原告がどのような判決を求めているかが書かれています。
①原告は、次の判決を求めています。
1
原告と被告青山学院大学との間で、別紙記載の 2015 年 3 月 26 日付青山学院大学学
則の地球社会共生学部に係る規定が無効であることを確認する。
2
被告仙波憲一は原告に対し、金 1,500,000 円及びこれに対する 2015 年 3 月 26 日か
ら支払い済まで年 5%の割合による金員を支払え。
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訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに第 2 項につき仮執行の宣言を求める。
②これに対して、被告は、次の判決を求めています。
1.請求の趣旨第 1 項に対する訴えを却下する。
2.同第 2 項に対する請求を棄却する
3
訴訟費用は原告の負担とする
との判決を求める
(了)
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