2015年1月中国マクロ経済動向分析_Word

マクロ経済動向分析 1 月
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
マクロ経済動向分析 1 月
投資、消費、貿易全てが「新常態」へ?
2014 年の中国 GDP は 7.4%増と、24 年ぶりの低水準だった。不動産市場の低迷や政府
による投資抑制策、反腐敗と関連した贅沢禁止の影響により、内需の拡大が不十分であっ
たことが主な要因である。政府は現状を「新常態」で、中国経済が高度成長から中高成長の
新たな時代に入ったと表現しているが、元安誘導による輸出促進や国内融資の増加など、
景気下支え策を続々と打ち出している。
中国政府は 2015 年の経済成長率目標を 7%前後に設定する方針で、目標成長率を抑えつ
つ構造改革を進めることになろう。また、過剰な生産能力の削減や過熱しやすい不動産市
場の投資抑制に引き続き力を入れると見られる。
目次
1.
GDP 目標割れ、構造転換遅れ鮮明 ............................................................................. 2
2.
2014 年の固定資産投資前年より大幅鈍化、政府目標も大きく下回る ........................ 4
3.
2014 年の消費者物価指数 2.0%上昇、5 年ぶりの低い伸び ......................................... 6
4.
「反腐敗闘争」は 2015 年も継続、消費も「新常態」へ .................................................... 8
5.
融資支援と元安による景気支え策、効果回復の期待へ ............................................... 9
6.
2014 年、堅調な輸出と輸入の伸び悩みで過去最大の貿易黒字に .............................. 11
7.
各国の金融緩和が続き株式商い活発化、一方信用取引ショックなどが重しとなる ....17
参考 Web ..........................................................................................................................19
参考新聞・資料.................................................................................................................19
1
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1. GDP 目標割れ、構造転換遅れ鮮明
2014 年の国内総生産(GDP)は、実質で前年比 7.4%増となり、2013 年の 7.7%増を下回っ
た(国家統計局 2015/01/20)。天安門事件後、1990 年の 3.8%増以来 24 年ぶりの低水準で、
アジア通貨危機の影響を受けた 1998 年以来 16 年ぶりに政府の目標値(7.5%増)も下回った
(読売新聞 2015/01/20)。2014 年の名目 GDP は 63 兆 6463 億元(約 1209 兆円)と、世界 2
位である。人民元に対して円安が進んだこともあり、現在の為替レートで換算すると 3 位
の日本の GDP(約 490 兆円)の 2 倍を大きく超える(日本経済新聞 2015/01/20)。
全体指標を見ると、
高成長を支えてきた固定資産投資は、
前年比 15.7%増と 13 年の 19.6%
増から大きく鈍化した。不動産開発投資の伸び率は前年より 9 ポイント以上も下がり、17
年ぶりの低い伸びになった。また、工業生産は前年比 8.3%増と 13 年の 9.7%増を下回り、
鉱工業生産の伸びも鈍化し、鉄鋼やコンクリートなどの生産が抑えられたため、90 年代末
以降で最低になった。消費動向を示す社会消費品小売総額も 12.0%増と 13 年の 13.1%増を
下回った。新車販売の伸び率も 6.9%にとどまった(朝日新聞 2015/01/21)。輸出も、新興国
向けなどが伸び悩み、6.1%増と 3 年連続で 1 桁の伸びに止まった(毎日新聞 2014/01/20)。
政府は、成長が減速した状態を「ニューノーマル(新常態)」と位置づけ、高度成長を追わな
い路線を明確にしている(産経新聞 2014/01/21)。そのため、2015 年の成長率目標は 7.0%前
後に引き下げて、過剰な生産能力の削減や過熱しやすい不動産市場の投資抑制に引き続き
力を入れると見られる(三井住友アセットマネジメント 2015/1/22)。
さらに、2014 年 12 月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は 50.1 と、11 月より 0.2
ポイント低下した(国家統計局 2015/01/01)。市場では、急激な景気減速を防ぐため、追加対
策が講じられる可能性が高いとの見方が根強い。製造業は比較的厳しい困難と圧力に直面
しているが、輸出需要の弱さや生産者価格の下落、中国経済においてサービス業の役割が
高まりつつあることがその要因として挙げられている(ロイター2015/01/01)。
2
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図表 1 製造業購買担当者景気指数(PMI)
52.0
51.7
51.5
51.0
51.0
51.1
50.8
51.0
50.5
50.5
50.2 50.3
51.1
50.4
50.8
50.3
50.1
50.0
49.5
49.0
(出所)国家統計局より作成
図表 2 工業付加価値生産伸び率(単位:%)
10.0
9.7
9.2
9.5
9.0
8.6
8.6
8.8
8.7
8.8
9.0
8.5
8.0
7.9
8.0
7.5
7.7
7.0
6.9
6.5
6.0
(出所)国家統計局より作成
3
7.2
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2. 2014 年の固定資産投資前年より大幅鈍化、政府目標も大きく下回る
2014 年 10-12 月期の固定資産投資(名目、都市部)は前年比 13.3%増と、7-9 月期(13.4%
増)から小幅減速した。景気下支え策を受けて水利・環境・公共施設などのインフラ関連が
高めの伸びを維持したほか、輸送が加速した。製造業はやや持ち直しが見られたが、相対
的に低めの伸びとなった(三菱東京 UFJ 銀行 2015/01/20)。その結果、2014 年通年の固定資
産投資は前年比 15.7%増と 13 年(19.6%増)から大きく鈍化し、政府が 2014 年通年の目標
としていた前年比 17.5%増も大きく下回った(国家統計局 2015/01/20)。
特に、中国経済のエンジンとされてきた不動産開発投資は 10.5%増で、一気に 9 ポイン
ト以上鈍化し、17 年ぶりの低水準だった(朝日新聞 2015/01/20)。不動産市場は 2015 年も
中国経済の主要なリスクになると見られ、2014 年の新規着工は前年比 10.7%減で、1-11 月
の 9%減から減少ペースが加速した。ただ、住宅市場も 2015 年に低迷が続くと見られるも
のの、12 月の販売面積は 1 億 8930 万平方メートルで 2014 年初来最高となり、販売データ
からは最悪期を脱した可能性を示唆している(ロイター2015/01/20)。
2014 年の中国への海外直接投資(実行ベース)は前年比 1.7%増の 1195 億 6000 万ドルと
なった(中国商務部 2015/01/15)。国内景気が減速し、中国経済の構造が変化する中、伸び幅
は前年の 5.3%から鈍化し、2 年ぶりの低水準となった(ロイター2015/01/16)。また、海外へ
の 直 接 投 資 額 は 14.1% 増 の 1029 億 ド ル と な り 、 過 去 最 高 を 更 新 し た ( 中 国 商 務 部
2015/01/15)。統計速報値でみるかぎり、直接投資の出入りはなお入超だが、中国商務部の
沈丹陽報道官は会見で、2014 年の中国の対外直接投資額が事実上、世界から中国向けの投
資額を上回ったとして、「中国は資本の純輸出国になった」と述べた。外国からの投資を
受け入れながら急成長してきた中国経済にとって、一つの節目と言えそうだ(朝日新聞
2015/01/22)。
4
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図表 4 固定資産投資伸び率(単位:%)
20.0
19.0
18.0
19.6
17.9
17.9
17.6
17.3 17.2 17.3
17.0
16.5
17.0
16.0
15.0
14.0
(出所)国家統計局より作成
5
16.1 15.9
15.8 15.7
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3. 2014 年の消費者物価指数 2.0%上昇、5 年ぶりの低い伸び
2014 年 12 月の社会消費品小売総額は、前年同月比 11.9%増と 11 月(11.7%増)の伸びを
上回った(国家統計局 2015/01/09)。2014 年通年の社会消費品小売総額は前年比 12%増の約
27 兆元に達し、市場規模が世界 2 位となる見込みだ(新華社 2015/01/17)。2014 年の第 1 四
半期から第 3 四半期までのデータから見ると、消費は中国の経済成長を促す最も大きな原
動力となった。これと同時に、消費構造は変わりつつあり、ネットショッピングの小売総
額が年率 50%の持続成長となると予測され、情報消費が力強く伸び続けている(新華社
2015/01/17)。また、インターネット販売業の急速な発展と共に、商品を顧客に送り届ける
宅配サービスが急拡大している(新華社 2015/01/03)。中国商業連合会が発表した「2015 年
中国商業に関する 10 大ホットテーマ」の中においても、消費市場の成長が穏やかになり、
人々の理性的な消費傾向が新常態になるが、電子商店街と実店舗の競争は激化し、流通業
の経営モデルチェンジが進められていくことが述べられている(新華社 2015/01/10)。
2014 年 12 月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比 1.5%上昇した(国家統計局
2015/01/09)。上昇率は前月の 1.4%からやや拡大したものの、5 年ぶりの低水準付近にとど
まり、政策緩和期待が引き続き高まりそうだ(ロイター2015/01/09)。2014 年通年の消費者
物価指数は、前年比 2.0%の上昇となり、マイナスだったリーマンショック後の 09 年以来、
5 年ぶりの低い伸びとなった。中国政府は、14 年の消費者物価の上昇を 3.5%以内に抑える
目標を掲げていたが、これを大幅に下回った(国家統計局 2015/01/09)。中国は不動産市場の
低迷などを背景に景気減速が続いており、CPI の低い伸びは消費の弱さを反映した可能性
がある(毎日新聞 2015/01/10)。景気の減速に原油安の影響も重なり、国内ではデフレを警戒
する声も出てきている(朝日新聞 2015/01/11)。
6
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図表 5 社会消費品小売総額伸び率(単位:%)
15
14.5
14
13.6
13.5
13
12.5 12.4
12.2
12.5
11.9
12
12.2
11.9
11.8 11.8
11.5
11.6 11.5 11.7
11.9
11
(出所)国家統計局より作成
図表 6 消費者物価指数(CPI)(単位:%)
3.5
3.0
2.5
2.0
2.0
2.5
2.4
2.5
2.3
2.3
2.0
1.8
1.6
1.5
1.0
(出所)国家統計局より作成
7
1.6
1.4
1.5
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4. 「反腐敗闘争」は 2015 年も継続、消費も「新常態」へ
中国共産党の「反腐敗」の取り組みを担う党中央規律検査委員会の全体会議が 1 月 12 日、
北京ではじまった。大幹部の摘発などで専門家の期待以上の「成果」を上げてきたが、指導
部は追及を継続している。幹部に近い文化人など、標的は広がりつつある(朝日新聞
2015/01/13)。また、国有企業の幹部に対する汚職調査も強化している。各省の次官級の扱
いを受けている国有企業 53 社の幹部がその標的である(ロイター2015/01/19)。このような
「反腐敗」運動により、2014 年に中央・地方政府の官僚 66 人が失脚した(日本経済新聞
2014/01/09)。2015 年に入っても、1 月 2 日に張昆生外務次官補が汚職の疑いで解任された
(ロイター2015/01/02)。また、1 月 15 日には中国軍で少将級以上幹部 16 人の腐敗が摘発さ
れ(日本経済新聞 2015/01/15)、1 月 16 日には情報機関である国家安全省の馬建次官を「重大
な規律違反と違法行為の疑い」で調査していると発表するなど、腐敗摘発が続いている(ロイ
ター2015/01/16)。地方の党組織や国有企業で自殺を含め、不自然な死を遂げた幹部らは 50
人以上に達するなど、中国指導部の「反腐敗闘争」は 2015 年も広く展開されている(時事通
信 2015/01/28)。
このような汚職対策の強化により、2014 年の中国の高級品支出は前年比 1%減の 1150 億
元(185 億 1000 万ドル)で、8 年ぶりの減少となるなど、中国の経済に大きな影響を与えて
いる(ロイター2015/01/22)。そのため、中国では贅沢なイメージを打ち消して提供するとい
う新しいビジネスが登場している。五つ星ホテルは「星」を返上し、ブランド品は「ロゴ
なし」が増えた。「上に政策あれば、下に対策あり」と言われる中国であるため、倹約令
の下でも民間はたくましく対策を練っている。習近平指導部も宿泊料金や交通費の実費に
上限を設けるなど倹約令の実効性を高めていくと見られる。質素なスタイルが公務員の新
常態として根付くまでには両者のせめぎ合いが続きそうだ(日本経済新聞 2015/01/08)。
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5. 融資支援と元安による景気支え策、効果回復の期待へ
2014 年 12 月末の通貨供給量(M2)は前年同月比で 12.2%増と、政府が 14 年の目標として
いた 13%増を下回った(人民銀行 2015/01/15)。緩和気味に金融政策を運営しているが、14
年 12 月の人民元建て融資の新規増加額は前の月よりも減るなど、資金需要は盛り上がりを
欠く(日本経済新聞 2015/01/15)。
2014 年末、中国人民銀行は減速する経済のてこ入れのために融資規制を緩和し、年末に
向け融資の拡大を各行に指示し、2014 年の融資総額目標も 10 兆元(1 兆 6200 億ドル)に引
き上げられた(ロイター2014/12/11)。しかし、12 月の新規人民元建て融資は 6973 億元と、
市場の予想を大きく下回った。企業が既存債務の返済に窮し、不良債権が急増したため、
銀行は融資に慎重になり、資金を必要とする企業が「シャドーバンキング(影の銀行)」から借
り入れたことが原因だ(ロイター2015/01/15)。そのため、人民銀行は 2015 年 1 月 16 日、
農業分野や小規模・零細企業といった資金不足の傾向にある部門の支援を狙った再貸出枠
を 500 億元(81 億ドル)増やすと発表した。これにより銀行の新規融資額が減少し、海外か
らの直接投資の伸びが鈍る中、景気の下支えを目指す(ロイター2015/01/16)。さらに 2 月 4
日、人民銀行は預金準備率を 0.5%下げる追加金融緩和にふみきった。預金準備率引き下げ
は 2 年 9 ヵ月ぶり。春節を控えて企業の資金需要に対応するものとされる(日本経済新聞
2015/02/ 05)
。
2014 年の人民元は、対ドルで 5 年ぶりに下落し、年間下落率は 2.42%とデータが取得で
きる 1995 年以降で最大だった。当局による人民元売り・ドル買い介入で通貨の先高観が後
退したのが要因であるが、中国の利下げに米国の利上げ観測が重なったことも人民元売り
につながった。成長減速が鮮明な中国にとって、通貨安は輸出競争力の下支えとなる(日本
経済新聞 2014/12/31)。また、上海外国為替市場の人民元相場は対ドルでさらに下落した。
人民元の先行きを軟調と見る地合いが強まり、対ドル基準値が前日より元高・ドル安水準
に設定されたにもかかわらず値を下げた(ロイター2015/01/28)。 人民銀行が 2%の範囲内で
「管理」する変動幅の下限に接近しており、中国が通貨安競争に参加する兆しとみられて
いる。しかし、経済の減速で物価上昇率が 1%台まで下がっており、今回連想される通貨安
競争は国際競争力の改善だけでなくデフレ回避という新たな面を持つ(日本経済新聞
2015/01/27)。
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図表 7 通貨供給量(M2)の伸び率(単位:%)
16
15
14
13
13.6
13.4
13.2 13.3
12.1
14.7
13.5
12.8 12.9 12.6
13.2
12
11
10
(出所)国家統計局より作成
10
12.3 12.2
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6. 2014 年、堅調な輸出と輸入の伸び悩みで過去最大の貿易黒字に
2014 年の貿易黒字は前年比約 48%増の 3,824 億ドルになり、過去最高に膨らんだ。これ
は輸出が前年より 6.1%増加、輸入が 0.4%増加にとどまったからだ(朝日新聞 2015/01/14)。
また 2014 年の貿易総額の伸び率は前年比 3.4%増加の 4 兆 3,030 億ドルで、貿易総額の伸
びは 3 年連続の 1 桁だった。これは 2013 年の 7.5%増加から大幅に鈍化し(海関総署
2015/01/13)、中国政府が掲げた 7.5%増の目標も下回っている。国内景気の減速が改めて示
された結果となり、対中輸出が多い欧州や産油・資源国の経済にも影を落としそうだ(読売
新聞 2015/01/14)。こうした実態に対して当局は慎重姿勢を崩しておらず、海関総署の鄭躍
声報道官は「2014 年の貿易統計を圧迫した悪材料が、一定期間残ることになる」と指摘し
た。具体的には世界全体での低調な景気回復、中国製造業分野での外国直接投資の減少、
国内生産のコスト増などについて言及した(ロイター2015/01/13)。
2014 年の輸出は前年比で 6.1%増加した(海関総署 2015/01/13)。5 年ぶりにドル高人民元
安の傾向になったことが追い風になり(朝日新聞 2015/01/14)、米国向けや東南アジアなど新
興国向けに支えられる形で比較的堅調だったが(日本経済新聞 2015/01/13)、2013 年比では
減速する結果となった。これについて海関総署の鄭躍声報道官は「低コストによる競争力
が失われつつある」と指摘する。主力となる製造業では、人件費などが上がっているため、
繊維などは主要国でシェアを落としつつあるという(海関総署 2015/01/13)。
対して 2014 年の輸入は 0.4%増加と 2013 年の 7.2%増加から急ブレーキがかかった(海関
総署 2015/01/13)。不動産市況の悪化に伴う景気減速による内需の弱さに加え、原油や鉄鉱
石などの価格下落が影響したと見られる(読売新聞 2015/01/14)。しかしその一方で、中国企
業は 2014 年後半に資源価格が下がったのを見て買いだめに走った可能性が高いとも言われ
る。在庫が増えていれば、2015 年は買い控えが進んで輸入がさらに減る可能性もある。中
国への輸出に期待する資源国には打撃となりかねない(朝日新聞 2015/01/14)。
地域別の貿易総額では、最大の貿易相手である欧州連合(EU)が 9.9%増加、米国が 6.6%
増加、東南アジア諸国連合(ASEAN)が 8.3%増加と伸びた。一方、鉱物資源などの貿易が多
い南アフリカは 7.6%減速、ブラジルは 4%減速した(海関総署 2015/01/13)。
2015 年の中国の貿易発展で直面する国内外の情勢は依然厳しく複雑で、貿易企業が直面
する困難は多い。国際需要を見ると、世界経済が現在も世界的金融危機後の調整期にあり、
回復の遅れに顕著な改善はみられず、外需の伸びに多くの不確定要素がある。また、国内
を見ても、国内経済は新常態に入り、下振れ圧力が依然存在している。国内の投資と経済
成長が鈍化すれば輸入が抑制される。しかし、中国は貿易の伝統的優位性を固め、技術、
ブランド、品質、サービスを中核とする貿易競争の新たな優位性の育成に努力しており、
2015 年の中国の貿易は適度な安定した伸びが維持するだろう。「一帯一路」(シルクロード
経済圏・21 世紀海上シルクロード)戦略構想の推進も加速している(中国通信 2015/01/23)。
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図表 8 輸出の伸び推移(単位:%)
20.0
10.0
5.0
4.7
14.5
15.0
10.6
7.0 7.2
4.3
11.6
9.4
9.7
4.7
0.9
0.0
7.0
-5.0
-10.0
-15.0
-18.1
-20.0
(出所)海関総署より作成
図表 9 輸入の伸び推移(単位:%)
20.0
15.0
10.0
5.0
10.1
8.3
7.0
5.5
10.0
0.8
0.0
-1.6
-1.6
-2.4
-2.4
-5.0
-6.7
-10.0
-15.0
4.6
-11.3
-20.0
(出所)海関総署より作成
12
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図表 10 輸出品目別統計
商品名称
1-12 月累計
単位
数量
同比(%)
金額(億ドル)
数量
金額(億ドル)
機械・電気設備製品
-
-
13109.0
-
3.7
ハイテク製品
-
-
6605.3
-
0.1
自動データ処理設備及び部品
万台
191836.0
1817.2
2.6
-0.2
服飾
-
-
1862.8
-
5.2
電話機
100 万台
142123.0
1172.6
9.7
20.7
紡績・織物及び製品
-
-
1121.4
-
4.9
農産品
-
-
713.4
-
6.3
鋼材
万トン
436.7
327.9
58.0
47.1
IC
億個
1535.2
608.7
7.6
-30.5
靴類
万トン
1074.0
538.3
1.5
11.8
家具及び部品
-
-
520.2
-
0.4
自動車部品
-
-
491.8
-
8.5
貴金属及び貴金属アクセサリー
トン
963.6
485.1
7.4
67.9
プラスチック製品
万トン
951.0
370.9
6.1
5.1
液晶パネル
億個
24.5
317.9 -25.0
-11.4
電灯・照明装置及び類似品
万トン
-
311.0
-
26.1
鞄
万トン
275.0
245.8
-0.5
-1.7
製油
万トン
2967.0
257.9
4.1
5.2
船舶
万隻
335.0
811.4 -27.3
-34.3
(出所)海関総署より作成
13
マクロ経済動向分析 1 月
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図表 11 輸入品目別統計
商品名称
1-12 月累計
単位
数量
同比(%)
金額(億ドル)
数量
金額(億ドル)
機械・電気設備製品
-
-
8543.4
-
1.7
ハイテク製品
-
-
5514.1
-
-1.2
原油
万トン
30838.0
2283.1
9.5
3.9
IC
億個
2856.6
2167.2
7.3
-5.9
農産品
-
-
1215.7
-
2.5
鉄鋼砂及び精鋼
万トン
309271.0
328.9
12.5
8.5
自動車(セット部品含む)
-
-
321.5
プラスチック原料
万トン
852.0
603.4
4.7
-0.2
液晶パネル
億個
29.8
437.8
-12.4
-11.7
未鍛造銅及び銅材
万トン
483.0
356.5
7.4
1.9
自動車部品
-
-
321.5
-
12.0
自動データ処理設備及び部品
万台
76508.0
305.4
24.0
-0.9
飛行機
万トン
10773.0
260.1 1353.8
24.4
製油
万トン
3000.0
234.3
-24.2
-26.8
ダイオード及び類似半導体部品
億個
52808.6
235.5
41.2
10.3
石炭及び褐炭
万トン
29122.0
222.5
-10.9
-23.5
銅鉱砂及び精鋼
万トン
1181.0
216.5
17.3
11.0
紡績・織物及び製品
-
-
203.8
-
-6.0
146.0
厚木及び鋸材
(出所)海関総署より作成
14
12.0
-18.3
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
マクロ経済動向分析 1 月
図表 12 主要国別輸出入
輸出最終目的国
単位:億ドル,%
当月
金額
輸入原産国
累計
金額
単位:億ドル,%
同比
当月
金額
累計
金額
同比
総額
2116.6
21153.6
5.7
総額
1571.9
17828.9
0.8
アメリカ
366.3
3960.8
7.5
韓国
170.9
1901.5
3.9
香港
415.4
3631.9
-5.5
アメリカ
159.7
1590.4
4.2
日本
125.1
1494.4
-0.5
台湾
148.7
1520.3
-2.8
韓国
92.2
1003.4
10.1
日本
149.6
1630.0
0.4
ベトナム
75.0
637.4
31.2
ドイツ
97.1
1050.4
11.5
ドイツ
68.1
727.1
8.0
75.1
977.5
-1.2
オランダ
59.5
649.3
7.7
南アフリカ
50.4
445.9
-7.8
イギリス
53.1
571.4
12.2
マレーシア
57.1
556.6
-7.5
インド
48.7
542.2
12.0
ロシア
36.7
416.1
4.9
シンガポール
55.5
489.1
6.7
タイ
36.9
343.8
-0.4
オーストラリ
ア
(出所)海関総署より作成
15
マクロ経済動向分析 1 月
図表 13 ドル円対人民元
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
相場推移
(2014/7/31-2015/1/29)
620
618
600
617
616
580
615
560
614
540
613
520
612
500
611
元/10000円(左軸)
元/100ドル(右軸)
(出所)中国外貨管理局より作成
図表 14 香港ドルユーロ対人民元
相場推移
(2014/7/31-2015/1/29)
8.4
79.8
8.2
79.6
8
79.4
7.8
79.2
7.6
79
7.4
78.8
7.2
7
78.6
6.8
78.4
元/ユーロ(左軸)
元/香港ドル(右軸)
(出所)中国外貨管理局より作成
16
マクロ経済動向分析 1 月
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
7. 各国の金融緩和が続き株式商い活発化、一方信用取引ショックなどが重しとなる
年明けの中国本土市場は年末の騰勢を引き継ぎ好調であった。昨年の上海総合指数は年
間 50%も上昇し、中国本土市場の株式ブームを感じさせた。新年連休を経て、取引再開の
1 月 5 日には約 5 年ぶりに終値を 3300 ポイントに乗せて、9 週連続の上昇を見せた。商い
も活況で、年明けから強い個人の投資意欲が感じられた。(内藤証券 2015/01/09)。第 2 週
の 12 日では、IPO(新規公開)により、新規公開株購入の資金確保に向けた株売却が優勢
となり、上海総合指数が大幅に下落した。その後、金融緩和政策への期待感から回復し、
商いも引き続き活況を見せた(内藤証券 2015/01/16)。第 3 週は、信用取引に対する引き締
めが悪材料となり、19 日に急反落。それでも、金融緩和への期待や欧州の量的緩和によっ
て持ち直したが、19 日の反落分まで取り戻せなく、乱高下を見せた(内藤証券 2015/01/23)。
第 4 週の週明けは、中国机上の業績と国有企業改革への期待から上海総合指数は堅調だっ
た。しかし、人民元安や信用取引ショックの再来が嫌気され反落した。商いも縮小傾向を
見せた(内藤証券 2015/01/30)。
年明けの香港市場は、好調な中国本土市場の追い風を受け堅調であった。中国政府の金
融緩和政策への期待によりハンセン指数は 2 万 3000 ポイント台後半をキープした。そのあ
と、欧州リスクや原油急落などの影響を受けて一進一退したが、取引では大商いが続いた(内
藤証券 2015/01/09)。第 2 週では、欧州の追加緩和への期待感が継続したが、原油安やスイ
スフラン対ユーロの上限撤退による混乱が生じるなど外部環境が不安要素となり、不安定
な値動きが続いた(内藤証券 2015/01/16)。第 3 週では、信用取引ショックにより、2 万 4000
ポイントに割り込んだが、20 日に中国の GDP 発表により持ち直した。中国の GDP 成長率
は政府の目標を下回る 7.4%に留まったが、中国経済の過度な減速懸念が和らぎ、地合い改
善に繋がった。また、各国の金融緩和が好材料視され、世界的に投資の動きが活発化、香
港市場でも高い売買代金を維持した(内藤証券 2015/01/23)。第 4 週のハンセン指数は 4 週
ぶりの反落を見せ、2 万 4000 ポイント台の後半でもうある展開となった。これは、米連邦
公開市場委員会(FOMC)前の様子見ムードが続いたと同時に、人民元安や中国経済への
先行き不透明感が懸念され悪材料となった。商いは先週に比べ減少したが、各国の金融緩
和が追い風となって、800 億 HK ドルを上回る日が続いた(内藤証券 2015/01/30)。
17
マクロ経済動向分析 1 月
図表 15 上海総合指数(終値)
(2014/12/31-2015/01/30)
3450
3400
3350
3300
3250
3200
3150
3100
3050
3000
2950
(出所)Searchina Finance より作成
図表 16 ハンセン総合指数(終値)
(2014/12/31-2015/01/30)
3450
3400
3350
3300
3250
3200
3150
3100
3050
3000
2950
(出所)Searchina Finance より作成
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慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
マクロ経済動向分析 1 月
参考 Web
・新華社
http://jp.xinhuanet.com/
・人民網
http://j.people.com.cn/
・中国海関総署
http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/
・中国外貨管理局
http://www.safe.gov.cn/
・中国国家統計局
http://www.stats.gov.cn/
・中国人民銀行
http://www.pbc.gov.cn/
・日本総合研究所
http://www.jri.co.jp/report/medium/publication/china/
・ロイター通信
http://jp.reuters.com/
参考新聞・資料
・朝日新聞
・産経新聞
・中国通信
・日本経済新聞
・毎日新聞
・三井住友アセットマネジメント
・みずほ銀行
・読売新聞
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慶應義塾大学
駒形哲哉研究会