第 1 回レポート問題解答例 作成 平成 27 年 5 月 7 日 山田 博仁 1. (A) は、内部円筒に電圧 +V を与えた時の定常状態の問題であり、この時内部円筒には単位長さ当たり +λ の 電荷が蓄えられると仮定すると、外部円筒には当然単位長さ当たり −λ の電荷が蓄えられる。また、内外の円 筒間には単位長さ当たり電流密度 i の定常電流が流れるものと仮定する。 1) 静電場の問題なので、Maxwell 方程式の中の電場に関する Gauss の法則の式 div D e を用いる。この式 を、同軸円筒の中心軸を中心とする半径 r の単位長さの円柱について体積分すると、 div D dV V V e dV となる。左辺は Gauss の定理を用いると、円柱の表面に対する面積分に置き換えることができる。一方右 辺は、円柱内に存在する全電荷量であり、内部円筒に存在する単位長さ当たりの電荷量が +λ なら、 D n dS S V e dV となる。円筒の長さが半径に比較して十分に長いので、円筒の高さ方向の電場成 分は無視でき、左辺の面積分で円柱の底面での面積分はゼロとしてよい。従って、左辺の面積分は円柱の 側面のみで行えばよいので、 D n dS 2 rE r S Er (r ) となる。従って、半径 r の点での電場の強さは、 となる。 2 r まず、内部円筒の内側に電荷は存在しないので、r < a において電位は V で一定電場はゼロである。内外円 筒間には対称性により、円柱の半径方向の電場 Er のみ存在するが、半径 r の位置での強度を Er (r ) とする と、Er grad V より、Er (r ) a a ln r ba ln b と V (r ) となり、V Er dr dr b b r 2 r 2 2 a なる。従ってこれから、単位長さ当たりの電荷量 λ が求まり、 いて電場は、 Er (r ) 2 V となる。従って、a < r < b にお b ln a V 1 となる。因みに、外部円筒の外では電位はゼロで電場もゼロである。 2 r ln b r a 2) 内外円筒間に電圧 V を印加したとき、単位長さ当たり λ の電荷が蓄えられるので、単位長さ当たりの静電 容量 C は、 C V 2 1 2 2 となる。単位長さ当たりに蓄えられるエネルギーW は、 W CV V 。 b b 2 ln ln a a (B) は過渡現象について問うている問題。 3) まず、内外円筒間を流れる電流は、円筒の長さが半径に比較して十分に長いことと円対称性によって半径 方向のみとなり、半径 r の位置での t = 0 での初期電流密度を ir (r ) と書くとオームの法則より、 ir (r ) Er (r ) V 1 となる。従って半径 r の位置を流れる初期電流 I (r) は、 r br a 2V I r (r ) 2 r ir (r ) となり、半径 r の位置には当然依存しない。ここで、内外円筒間の電気抵抗 R b ln a ln がR ln b a と求まる。 2 t = 0 でスイッチを開くと、電流が流れることによって、内外円筒に蓄えられていた電荷は減少して行き、 内外円筒間の電位差もそれに伴い低下していく。電荷の時間的減少は即ち電流によるものなので、 d I r の関係が成り立つ。従って、内外円筒間の電位差の時間的変化を v(t) と書くと左記の関係より、 dt dv(t ) d 2 dv(t ) 2v(t ) となり、 v(t ) となる。これより、v(t) の初期値は V であるか b b dt dt dt ln ln a a ら、 v(t ) Ve t で与えられる。従って電荷量および電流の時間変化 λ(t) および Ir(t) は各々、 t 2v(t ) 2 t 2 v(t ) 2 (t ) Ve 、 I r (t ) Ve となる。 b b b b ln ln ln ln a a a a 2 4) 時刻 t において、媒質中で発生する単位長さ当たりのジュール熱は、 RI r (t ) で与えられるので、t = 0 か ら t = ∞ の間に発生する全熱量 Q は、 0 0 Q RI r (t ) 2 dt b 2 2 2 2 a 4 V 2 e t dt 2 V 2 e t V 2 となる。 b 2 b 2 2 0 ln b ln ln a a a ln 5) 問 2) において求めた、内外円筒間に電圧 V を印加したときに蓄えられる静電エネルギーW が、スイッチ を開くことによって放電され、全てジュール熱 Q となるので、両者の値は等しい。
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