社会性の発達に困難を抱える子どもの早期徴候と支援(1) ー1歳6か月児健診の「ままごと遊び」観察をもとにー 別府悦子 宮本正一 別府哲 新村津代子 山田典子 北川小有里 1 1 1 2 3 3 3 中部学院大学 岐阜大学 本巣市健康増進課 2 3 Ⅰ.問題 ・わが国の乳幼児健診は、障害の早期発見とその後の対応に大きな役割を果たしてきた。 ・しかし、自閉症スペクトラム障害(以下 ASD) などの社会性の発達の問題については、必ずしも感度が高くない(小枝、2008 など)。 ・そのため、発見や診断が遅れる、ASD などの社会性の発達に困難を抱える子どもの親子関係の不調さからくる問題・集団に参加した 時の不適応の問題が指摘されている。 ・こうした子どもへの早期支援が重要である。早期支援につながるアセスメント方法の有効性を実証的に検証し、乳幼児健診の場面等 で活用できる方法やシステムの開発が求められている。 ・神尾(2011 等)は、ASD などの社会性の発達に困難を抱える子どもの早期発見のためのアセスメントと N して、M−CHAT(Modified Checklist for Autism in Toddlers: 乳幼児期自閉症チェックリスト修正版) を乳幼児健診場面で活用、有効性を検証している。 ・岐阜県本巣市では、乳幼児健診場面でM−CHATを活用し、これをもとに表2のように、健診場面で 17k m おもちゃグッズを用いた「ままごと遊び」を保健師が問診時に実際に提示して、子どもの行動観察を行っ 43k ている。 m 市役 ● 所 ・そして、子どもの社会性の発達に保護者が関心を持ち、親子のかかわりの支援につながるよう、健診のシ 本庁 舎 ステムや内容を策定している。 ・今回、支援につながるアセスメントの有効性を検証することを目的に、健診データの分析を行う。 表 1 年齢 教室 胎児期 0か月 マタニ ティ教室 相談 訪問 2~3 6~7か 4か月 10か月 Ⅰ歳 か月 月 新生児 赤ちゃ 訪問 ん教室 7か月児教 室 妊婦相 談 1歳6カ月 2歳 3歳 ①他児への興味 ②呼名反応 ③要求の指さし ④興味の指さし ⑤模倣 ⑥指さし追従 ⑦興味あるものを持ってくる ⑧社会的参照 ⑨耳の聞こえ ⑩ことばの理解 1歳児教室 4か月 児健診 健診 表2 1歳6か月児健 診時の「ままごと遊 び」の反応 本巣市 母子保健事業体系図 (H23年度) 10か月 児健診 1歳6か 2歳児 3歳児 月児健診 健診 健診 保健師による乳幼児相談・家庭訪問 発達相談員による発達相談 すくすく教室 発達支援 本巣市の1歳6か月児健診における ままごと遊び 人形と玩具(ポットとコップ)を 子どもに提示し、保健師がまま ごと遊びをして見せ、表1の反 応を観察し評価を行う Ⅱ.目的 ・社会性の発達に困難を抱える子どもの早期徴候につながる発達の特徴や性差を明らかにする。 Ⅲ.方法 ・岐阜県本巣市の 1 歳6か月児健診を受診した平成 22 年 10 月∼平成 24 年 3 月生まれの 435 名の乳幼児健診カルテ(母子支援票)に 記載されている項目の通過状況を Excel に入力し、分析を行った。 Ⅳ.結果と考察 ・ままごと遊び観察で、表 2 のように反応を分類した結果、各項目の「芽生え」(不通過だが反応は見られる)および「不通過」の反応 を示さなかったのは 297 名であった。 ・これ以外の 138 名は 10 項目のうち、何らかの項目で「芽生え」「不通過」の反応が見られた(表4)。 ・10 項目の合計点を Wilcoxon の順位和検定によって、男女の差を分析したところ、表5のように男児が女児より、支援得点が高いこ とがわかった(P < 0.01)。 ᚓⅬ䛧䛶ධຊ 0Ⅼ 2Ⅼ 1Ⅼ ⾲ 咈 ᮏ ᕢ ᕷ 厮 ⪃ 厹 叀 厘 叟 叟 厶 叉 ሙ 㠃 厙 又 叏 ♫ ⓗ ⾜ ື 㡯 ┠ ⾲䠑 䛂䜎䜎䛤䛸ほᐹ䛃䛻䜘䜛ᨭᚓⅬ ⾲䠐 ほᐹ10㡯┠䛷䛂ⱆ⏕䛘䛃䛂㏻㐣䛃㡯┠ᩘ ᨭඣ(n=138)䛾⾜ື≉ᛶ 435-297= 138(ே:32%) 䛺䜣䜙䛛 䛾ᨭ䛜ᚲせ䛺Ꮚ䛹䜒 ㏻ᖖⓎ㐩䛾Ꮚ䛹䜒䛾ேᩘ • • • • ศᯒ䛧䛯Ꮚ䛹䜒䛾ேᩘ 9 ⩌ 1=⏨ 2=ዪ ᖹᆒᨭᚓⅬ 1.25 0.69 Wilcoxon䛾㡰᳨ᐃ 検定統計量U= 19609.5000000 期待値= 23500.0000000 分散= 1161531. 検定統計量Z= 3.609857 ᖹᆒ㡰 234.56 198.55 • 危険率: 0.0003064 • 検定結果: P < 0.01 • ⏨ඣ(n=235)䛿ዪඣ(N=200)䜘䜚ᨭᚓⅬ䛜㧗䛔䚹 10 11 ・さらに、全ての data が った子どもの分析を行ったところ、「芽生え」を1点、「不通過」を2点と得点化してもよいと判断された (図2)。そのため、この 138 名は、「ままごと遊び」観察において、支援が必要な子どもととらえた ・この 138 名のうち、10 項目の中で測定人数の多い6項目を使ってパターン分類の数量化3類を実施した(図2)。図3は、138 名の ままごと遊びにおける 10 項目の通過状況である。これによれば、②呼名反応、⑤模倣、⑥指さし追従、⑧社会的参照、⑩ことばの理解で、 支援得点が高いことがわかり、「ままごと遊び」観察において支援のために重要な項目になると示唆された。 ᅗ䠎 ᩘ㔞䠏㢮䛻䜘䜛䜎䜎䛤䛸ほᐹ㡯┠䛾ጇᙜᛶ 2ྡᛂ0 ㏻㐣 ⦪㍈(➨䠎㍈) r=0.64 5.00 ᭕㍈ ㏻㐣 䠑㡯┠ 5ᶍೌ0 4.00 3.00 8♫ⓗཧ↷0 2.00 10䛣䛸䜀䛾⌮ゎ0 ᶓ㍈(➨䠍㍈) r=0.72 -6.00 ᨭ㍈ 1.00 6ᣦ䛥䛧㏣ᚑ0 ㏻㐣䠑 㡯┠ 0.00 -5.00 -4.00 -3.00 -2.00 -1.00 0.00 1.00 -1.00 10䛣䛸䜀䛾⌮ゎ1 -2.00 ᅇ⟅⫥䛾䜹䝔䝂䝸䞊䛜䛚䛔 䛻㞟䜎䛳䛶䛔䜛䚹 䛂ⱆ⏕䛘䛃䜢䠍Ⅼ䚸䛂㏻㐣䛃䜢 䠎Ⅼ䛸ᚓⅬ䛧䛶䜒䜘䛔䛸ุ ᩿䛩䜛䚹 5ᶍೌ1 8♫ⓗཧ↷1 2ྡᛂ1 -3.00 6ᣦ䛥䛧㏣ᚑ1 -4.00 ⱆ⏕䛘 䠑㡯┠ 13 ᅗ䠏 ᨭඣ (n=138)䛾⾜ື≉ᛶ 10㡯┠䛷䛾ᵝᏊ(ྜィ䛜138䛻‶䛯䛺䛔䛾䛿ᮍ ᐃ䛾ேᩘ)14
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