これだ

2015 Individual Officiating Techniques <IOT>
◇ JBAレフェリー・シンポジウム議事録より
◇ FIBA Americas Referee 資料
https://fibaamericasreferee.files.wordpress.com/2015/07/2015-individual-officiating-techniques_iot.pdf
◇ Mr.Carl Jungebrand(FIBA Head of Refereeing)
■はじめに
世界のレフリーングは毎日、毎年変わり続けている。
スペインでの会議でもあったが、次のリオでのオリンピックではまた大きく新しくなる。そういっ
た新たな技術や環境に対応・吸収できるレフリーはどんどん成長する。新しいものを取り入れない
レフリーは結果的に新しいものを取り入れたレフリーが上にいくので現状維持の状態か、もしくは
下がってしまう。
ネクスト・ジェネレーション(次世代)は常に今の自分達の世代よりも良いものを持っているの
が現実である。私たちの中の数人は、「自分が辞めてしまうと組織が壊れてしまう。動かなくなって
しまう」と思っているが、現実はそうではない。私自身の経験としても、35年間、ユーロリーグ
やFIBAなどレフリーをしてきたが、ユーロリーグで自分がレフリーをやめたすぐあとにまた別のレ
フリーがベストレフリーと賞されてきた。そういうものである。自分が辞めたとしても、また別の
誰かをしっかりと組織は見つけて、試合は継続されるし、何もなかったかのように進んでいく。
レフリーとはゲームを提供する側の人間である。サービス業である。もしコーチやプレイヤーが
いなかったら、当然レフリーもいらない。そういう組織ためにあるサービスを提供する側である。
FIBAは今大きく変化をしていこうとしている。組織内、組織外、ともに変化をしていこうとして
いる。レフリーもビジネスを意識していくことが必要だという方向になっている。前審判長のコト
レバ氏が残してくれたものは非常に貴重な財産だ。ただ、時代と共に大きく変わり始めているもの
に対応し、システムを変えていくことが必要となってきた。
その中のひとつの考えが、「レフリーングはグローバル化が必要」ということである。どこに行っ
ても、同じように機能し、同じものがサービスとして提供されることが求められているからだ。た
とえば、マクドナルドを例にすると、世界のどこにいっても同じサービスを提供されることが求め
られる。バスケットも同様で、コーチやプレイヤーが海外に行ったとしても、同じようなサービス
がレフリーから提供されることが求められている。
グローバル・プロダクトを目指す、そこには一つの定義や技術があり、それを各レフリーが実行
していくことが大切である。それは各個人が賛成するか反対するかという話ではなく、一つのシス
テムとして施行していくことがサービスの提供につながる。
■ Standard quality(global connection)
これを中心として、どこの国、どこに行ってもこのメインコンセプトを中心にレフリーが技術を
共有できる、そういった環境を作るためにFIBAは変化をしていくことになった。
<例:映像から考える>
41.6秒の2点差の展開。今の時代に展開されているバスケットボールはルールからはすで
に脱皮し、重要なのは今のバスケットボールがどうプレイされるかを知っていることだ。
例えば、26.3秒で止まったこの状況で、ディフェンス側、オフェンス側は何を考えるかを
常に解析し把握できていることが求められる。この展開でいえば、ディフェンスはファウルをテ
イクする、ファウルをしてくる可能性があることを把握していることだ。
一つ目のファウルにメスが入らなかった、これはバスケットを理解していない、ここでファウ
ルが来る可能性があるということを把握できていないということだ。二つ目のファウルは明らか
であるため、ここではしっかりとメスが入っている。この後のフリースローが2本決まり、4点
差となった。
では、この段階では何を把握していなくてはいけないか。さっきとは環境がかわり、オフェン
スは何を考えるか、ディフェンスは何を考えるか。3ポイントの可能性だ。つまり、そのシナリ
オに合わせたポジションや判定、これはルールだけに沿ったものではなく、アジャストが必要だ。
ドライブは何度もペイントにむかっているが結果的に3ポイントを打つことを目的にオフェンス
は組み立ててきている。つまりクルーは3ポイントにアジャストしたポジショニングやアジャス
トが必要になってくるということだ。
そして3ポイントが放られ、ショットが成功。ここでこの映像から気づくことは何か?時計が
動いてしまっているということだ。
昔とは違って、今のレフリーングではボールがリングを通過した時の時間を把握しておく技術
は当たり前の時代である。タイムアウトが取られたことも助けて、時計を修正し、7.6秒に戻
す。これはコミッショナーの仕事ではなく、コート上のレフリーの責任だ。
そして、7.6秒、1点差で白のスローインからの展開、ここで何を把握するか。ディフェン
スは何をするのか、オフェンスは何をするのか。ディフェンスはファウルをテイクする場面だ。
では、ファウルの後、FTとなり、2点差で2投目、この時点では次のFTが入ったら何が展開さ
れるのか、外れたらどんな展開が可能性としてあるのかを把握していなくてはいけない。実際に
ケースがおきてからではすでに手遅れだ。アクティブにケースに合わせた次のシナリオを把握す
ること、「プロアクティビティ」が必要だ。
ショットが決まり3点差、タイムアウトが残っていない状況なため、それに合わせた展開がす
でにレフリーは把握しそれに合わせてレフリーする準備ができていなくてはいけない状況だ。
「Only play in town(Money call)」つまりこの状況では3点をとにかく狙ってくること、それ
を把握できていなくてはいけない。とにかく前に早くボールを進めて3点を狙ってくる。ではデ
ィフェンスはどうか?
ショット・モーションに入る前にファウルをテイクしにくるはずだ。
じゃあ映像を見て何に気づくか。センターは状況を把握して、フロントでプレイを待ち、万が
一のケースに備えたポジションをとれているか?どうしてそうなるか。それはセンターはバック
コートにボールがあるこの状態で、トレイルに任せるべきプレイをいつまでも見ているからだ。
結果、これだけディフェンスがファウルをテイクしても誰からもメスは入らず、結果、ショット
に対するファウルに関してもメスが入ることはなかった。いったいこれは誰の責任で誰が鳴らす
べきだったのか。これはトレイルでも、リードでも、センターでもない、誰かが必ずならさなく
てはいけないプレイだ。これは誰かの責任ではなく、私達3人の全体責任だ。つまり、話は戻る
が、ルール(正しいルールを知っているのは当然である。)の時代ではなく、今はバスケットをど
れだけ知っているかということが求められる時代だ。
■ There is one game, three referees, but still only one officiating team
3人で協力して初めてシステムは結果をだしてくる。これは一人や個人がどう考えるかだけでは
なく、3人が同じことを考え、同じように目的を目指すことが必要だ。
3人制をFIBAが取り入れるようになってから、15年ほどが経つと思うが、基本を改めて見直し
てみる。
■ Terminology
ターミノロジー(専門用語、共通用語)、これを理解し活用することはレフリーにとっては非常に
重要なことだ。コート上で説明するという時間は多くはない、このターミノロジーを活用すること。
◇ Tools for decision making・Individual techniques・Clock and Foul management
◇ Obvious play
明らかなケース、必ず正しくとらえなくてはいけない基本のプレイ。その行われているゲーム
のレベルによってオヴィアスプレイは変わるが、トップレベルではトップレベルのオヴィアスプ
レイ、これはルーキーであっても、ベテランであってもミスは許されないケース。
◇ Primary coverage
プライマリ、これはそれぞれのレフリーがしっかりとカバーできるエリアをさす。まずはこの
プライマリを把握することが重要である。
◇ Secondary coverage
これはプライマリをカバーできることを前提に、その次にあるカバーできるエリアをさす。
◇ Expand coverage
2か所を同時にカバーすることをさす。
◇ Giving help
プライマリ外で起きた、明らかすぎるファウルを判定すること。ただ、これはあくまでプライ
マリがまず最初のチャンスをもらい、そのうえでプライマリから判定がなかったが、どうしても
吹かなくてはいけないプレイをさす。ただ、見えたから吹くというのは emotional call、システマ
チックなコールではない。
◇ Regular call
基本的な判定、ノーマルな判定。プライマリ外へのヘルプなどではなく通常のコール。
◇ Referee defense
これはレフリーの中では当たり前の、大昔から変わらない大事な技術だ。特にトップレベルで
はプレイヤーも早く、ディフェンスを把握しておくことは必須の技術である。同時にボールの位
置を視野の中にいれておくことも必要である。
◇ Open angle
プライマリやセカンダリで見るべきケースに対してしっかりと景色が見えていること。大事な
のは、とらえるべきアクションが見えているときにはその場所やアングルを手放さないというこ
とである。
◇ RSBQ
リズム・スピード・バランス・クイックネス。以前のアドバンテージ、ディスアドバンテージ
という説明を避けていく。アドバンテージの考え方は複雑で説明が難しい。アドバンテージの考
え方と似ているが、それと変わって、その接触がRSBQに影響したかどうかとシンプルに理解し
判定していく。早い展開でプレイは移り変わっていくものを判定するうえで、RSBQを判定して
いく。
◇ EOP・EOG
各ピリオドの終わりとゲームの終わり、ここはレフリーングが変わる瞬間。影響を大きく持つ。
◇ Emotional call
見たものをただ反射で吹いていくだけの判定である。
◇ Analytical decision making
プレイのひとつひとつのフェイズを把握し、理解したうえで、結果判定すること。
◇ Raise standard of quick quality decision
コート上で判定を下す上で、通常会社などで行われるような情報収集をして、会議をして、情
報を検証して、その検証結果を改めて確認して決断を下すというような時間はない。
つまり、Quick(時間をかけずに)Quality(質のある)decision(判断)を下すことがもとめ
られる。ではQualityとは何をさすか。
・Fast 迅速で
・Correct 正しく
・Simple シンプルに
・Understandable わかりやすいもの
◇ Natural decision
あまり深く考えずに決断や判断を下すこと。
◇ Flipism
フリッピズムとはランダムにものごとを決めること。コイントスのように今日は表、明日は裏
といったランダムな判断を試合中に下すことをやめることが重要である。どうしてこのような判
定がくだされるのか、それは判断を下す方法を知らないからだ。また、ルールの変更やメカの変
更があった時に、それらにアジャストするために、人はストレスを感じる。そのようなときに今
までとは違うことをしていく中で、ランダムな判定につながったりもする。ではどうするか。
人間の脳は反復する動作や情報を蓄積していくことで、考えることなく判断を下すことを覚え
ていく。新しい情報などは脳がプロセスすることから始まるが、何度も反復することでその事象
に対しての判断は自然なものになるため、わざわざ考えることはせずに判断をくだせるようにな
る。メカにしても、新しい動きや考え方は最初は意識して対応するが、ずっとそれを反復してい
くことで、考えることなく、自然にリードに走ったり、トレイルのポジションについたりするよ
うになる。
◇ Voice
これを使うこと、これは一度コートに上がったら必ず必要な要素だ。これは、ゲームをコント
ロールする、マネージする上での重要なパッケージの中の一つでもある。
コート上でコーチやプレイヤーと会話する場面があると思う。その時に、声がはっきり聞こえ
ない、自信なく喋っている、そんな印象では相手には伝わらない。
Clear and sharp, but not aggressive、はっきりとシャープに伝えながら、ただし、相手を威嚇す
るようなコミュニケーションは避けることが重要である。
◇ Know what you are talking about, do not explain too much
会話の中で自分が何を相手に伝えているのか、何を話しているのかを把握していること。これ
は長々と説明することとは違う。相手の意図に対してシンプルなYESorNO、もしくはシンプ
ルな答えが必要だ。長々と説明するようなときはだいたいは自分が何を話しているか分からない
時が多い。
◇ Practice key words and how to use them
これらのことを重要な要素として活用するには練習することだ。どんな言葉を使って、何を、
どんな時に伝えるのか、これは練習すればできるようになる。国際試合なら英語での練習も必要
だ。また、世界で一番使われる最もパワフルな言葉は何か。それは感謝の気持ちを伝える言葉だ。
「Thank you. Please. Would you please do this and that … 」これらは相手に何かをさせるとき
に重要な言葉だと理解すること。
◇コート上でのレフリーとしての見え方で大事な3つの要素は
・Strong
強い姿勢
・Decisive
決断力
・Approachable
接しやすい雰囲気
見た目の上でアスレチックであり、歩く姿なども含めて、ゲームにフィットしていなくてはい
けない。プレイヤーがアスレチックなのに対して、レフリーがアスレチックに見えないことはゲ
ームにフィットしていないということである。
■ Decision making took
◇ Start of the play - Middle of the play - End of the play
判定をするということは一つのプロセス、パッケージだ。ただ、接触が見えたから吹くのでは
ない。プレイのスタートはどう始まるのか、プレイの中間ではそれがどう展開しているのか、
では最後にそれらの情報をふまえてイリーガルと判断するのかどうか。
これは一つの映画のように、部分部分だけをみて結果を予測するのではなく、どうはじまって
どう展開されて、映画の終わりはどうなるか、フィルム全体を見て判断することだ。
◇ Active mind-set
レフリーとはアクティブに現象やコートを見て、しっかりとレーダーをはっておくことが大切
である。
◇ Self talking
そのためには常に自分自身と会話をし続けること。
◇ Look for reason to call
どうしてイリーガルなのか、判定するときに何がイリーガルなのかを把握すること。
■メカニクス
◇ Distance
プレイに対して的確な距離を保つことが重要だ、プレイに近すぎることは判断ミスにつながる
近すぎるとすべてのプレイが非常に早く動いているように見える、結果的にリアクションでの判
定が増えてしまう。
◇ Stationary
Stationary とDistance
この二つはすべてのプレイを判断するうえで今後必要としていく。
判定を下す瞬間、Stationary(走ったり、足が動いている状態ではなく止まって安定している状
態)であることが重要だ。
Stationaryなときに集中力と判断力は増す。当然、その前に正しい場所にポジションしている
ことは前提である。
このDistanceとStationaryは映像を解析するうえで必ずチェックする項目となる。判定を下
すべきプレイが始まった時にStationaryで的確なDistanceが保たれているかを映像を使って確
認していくことが重要だ。
◇ Stay with the play until it finishes
Mentally and physically, stay with the play
例えばショットが起こった時に無意識にポジションを離れたり、後ろに下がっていくことがあ
る。これはメンタル的にもフィジカル的にもプレイを手放している証拠だ。これは習慣で、その
習慣を直していくこと、しっかりと最後までプレイにステイすること。
オープンルックがあるとき、動かないこと。ムービング(Moving)という言葉ではなく、今
はアジャスト(Adjust)と言うようにしている。これは今までのようにとにかく動いてレフリー
しているようにアクティブに見せることではない。アジャストするということは、目の前にある
オープンルックを継続して確保するための微調整だ。
◇ Move with a purpose
次に、動くときにはその目的、何をみるか理由をもって動く。そして動いた場所にいくことで
レフリーすることができるプレイがあること
◇ Initial position is correct, less move, different from being static
正しい位置でアングルをキープした後、今度はプレイヤーが動けば当然ポジションをアジャス
トすることが必要になるケースもある。これは最初に正しいオープンルックを得て、プレイヤー
が動いたにも関わらずまったく動かないということとは違う。
◇45度:edge of the play
体の向きを45度に保つことでプレイやレフリーするべきケースにアングルを持ち、より良い
視野でレフリーできることを徹底していく
■ Referee defense
レフリーディフェンス、オフェンスを見るのではなく、ディフェンスを見ること。顔にはっきり
と当たっている、これはしっかりと最後までプレイを見届ければ必ず判定できるオヴィアスなケー
スである。
◇ Referee defense, referee from distance, see the whole picture
ファウル、では体のどこがあたってファウルなのか、それを明確に把握して判定すること
◇ Ball side
ボールのあるサイド。これはストロングやウィークサイドとは関係なく、ボールがあるサイド
のことをさす
◇ Opposite side
テーブルと逆のサイド。ボールサイドやストロング、ウィークサイドとは関係なく、テーブル
と逆のことをさす
◇ Strong side
リード・トレイルがいるサイド
◇ Weak side
センターのいるサイド
◇ Close down
ローテーションの前のリードの動き
◇ Switch
ファウルを吹いたあとのレフリーのポジション移動
◇ 1-2-3play
トレイル、リード、センターが一つのプレイの中でパートごとに判定するケース
◇ Two referees on the ball-side
ボールサイドにできる限り、リードとトレイル(ストロングサイド)がくるようにローテーシ
ョンすることが基本。センター側にボールがあるときにリードがローテーションしないことは、
センター一人にボールを任せることになり、アングルとしては、やはりリードとトレイルがいる
サイドでボールをカバーすることがより多くのアングルでアクションをカバーできるという原則
のもとに考えている。つまり、ボールがセンター側に移動したら、リードはローテーションをお
こし、ボールサイドはストロングサイドと確立することが重要になる。
◇ Transition from T to L
目標のポジションまでまっすぐに走る、カーブや遠回りしないこと。
できるだけ早くベースラインに入り、プレイが来ることを待つことでどうプレイが展開するかを
解析する。トランジションでの最初の一歩で大きく変わる、これは練習することが必要。
◇ Outside-Outside angle
基本的なアングルはアウトサイド・イン、つまりプレイが始まった時にはアウトサイドからの
アングルではじまり、プレイが終わるときにもアウトサイドからのアングルがキープされている
ことが理想。
アウトサイドで始まったのに、インサイドで終ってしまうとアングル自体が非常に狭くなり、
正しい判定につながらない。
◇ Working on the baseline
バスケットボードの裏側には絶対にポジションしないこと。常に45度のアングルをキープし
たい、これができるだけ精度の高い判定につながる。
◇ Cross step
例えばローポストからバスケットにアタックするプレイで、今までリードは内側に入ろうとす
ることをしていたが、逆にステップすることでより良いアングルがうまれることがわかった。
◇3POのダイナミクス(3人の動き)
・ボールがミドルレーン内にあるとき、リードはクローズダウン(Reason for a rotate)
・ボールがセンター側に移動、リードは逆サイドへ移動する。
・リードはローテーションしながらペイントをスキャンする。
・ボールが移動すればリードは基本、ローテーションする。
・リードは走らない、リードランナーしている間はレフリーしているとはいえない。
・トレイルからリードへ、5秒以内には確実にベースラインに入ること。
・ディスタンスを意識して、キープすること
◇リードの動き
ボールはセンター側にパスされたタイミングを見てリードはローテーションする。ただ、次の
瞬間に起こったことは、ボールはスキップされ逆サイドにパスされた。リードはどうするか。
もし、リードがローテーションを起こしていて、ボールに振られた場合、バスケットボードを越
えていなければステップバックしてもと居たサイドに戻る。ただし、これはリードが走らないと
いうメカの前提で可能だ。リードが走る習慣があるとステップバックすることは難しいし、走っ
ている間はレフリーしているとはいえない。
ボールがセンターサイドに移り、「ポーズ」した場合、リードはシャープに歩いてローテーション
を完成させる。ステップバックする時には、センター側にボールが移って即座にショットが起き
たり、ドライブが起きた時にはローテーションせずに戻る。
◇センターの動き
FTラインの延長線上、上下はフリースローサークルをイメージしウォーキング・エリアとする、
基本は延長線上から必要に応じて45度の角度を取る。ウィークサイドは常にセンターのプライ
マリである。ミッドライン(リングとリングを結んだライン)でコートを分け、ウィークサイド
はすべてセンターがプレイを見る。ミドルレーンはデュアル・カバレージとなる。これはトップ
からドライブがストロングサイドにいけばトレイル、ウィークサイドにいけばセンターが担当す
るということ。
◇U1のジャンプボール時のポジション
U1はテーブル前、ミッドコートライン付近にポジションする。これはジャンプボールをカバ
ーするためで、あまりにミッドコートラインから離れているとみることが難しいからだ。
◇スウィッチなど
・Foul on the opposite side by Lead
バックコートでファウルを吹いた場合、またはオフェンス・ファウルを吹いた場合、この場合
はロングスウィッチしない。
・Foul on the table side by Center
同様のケースでテーブルサイドのセンターがバックコートでファウル、もしくはオフェンスフ
ァウルを吹いた場合、ニュートレイルはそのままスローインを担当し、吹いたセンターはオポジ
ットサイドに移動、ニューリードはテーブルサイドのリードに入る。
・Foul on the table side by Lead
吹いたリードはオポジッとのセンターに、センターはニュートレイルとなりスローインを担当、
ニューリードはそのままスライドして、テーブルサイドのリードへ。
・Foul on the opposite side by center
吹いたセンターはニューリードとしてオポジットサイドのリード、トレイルはスライドしてテ
ーブル側のセンター、リードはトレイルとなりオポジットサイドからスローインを担当する。
・Double whistle by center & Trail
誰がテーブルレポートをするかは、オポジットサイドにいるオフィシャルがテーブルレポート
する。それによってスウィッチすることなくスムーズに進めることができる。
・Trail mirroes the time-in signal from Lead
ベースラインでスローインする場面では、トレイルは時計をスタートするためのタイムインを
ミラーする。
・Lead(active referee) outside(basket-ball-referee)
フロントコート、ベースラインからのスローインでレフリーはプレイヤーの外側からボールを
渡す。
・when throw-in in the corner, then Lead inside
フロントコート、ベースライン、コーナーからのスローインの時のみ、内側からボールを渡す。
■NBAとFIBA
今はもうNBAもFIBAもユーロもすべて同じレフリーングを目指す方向だ。ルールはNBA
は独自のものがあるが、レフリーの技術や映像などは多くのものを活用できる。センターはフリー
スローラインの延長線上、下にいったりはしない。基本は延長線上。ボールはセンターサイドに移
動、リードはローテーション、ペイントをスキャンする。ローテーションするときにはクローズダ
ウンすることでローテーションをスムーズにする、そして移動しなくてはいけない距離も短くなる
準備でもある。
余談だが、ユーロリーグでは5年くらいまえになると思うが、レフリーのミーティングにコーチ
を入れ代わり立ち代わり参加させて、コーチからの技術を共有することをしている。そこでピック
アンドロールが話題になったことが昔あったが、その頃は本当の意味でピックアンドロールがなん
なのかをレフリーは理解していなかった。ただ、毎年そうしたことを行うことで、レフリーにもコ
ーチングの知識が備わり、誰が、どのチームがどんなピックアンドロールをするのか、スカウティ
ングや知識として得ることができている。これはゲームを理解するということで重要なことだ。
■コーチからFIBAカール氏への質問
◇質問:何がファウルだと判定される決定的な要素になるのか。
アクションなのか、それともそのアクションに対するリアクションを見ての影響なのか。
というのは、同じアクション、例えばアームバーを相手に当てるケースなどで、100k
gのセンターに対してと、80kgのポイントガードに対してではどうなのか。
コーチの視点でいうと、大きなプレイヤーほど身体が強いので、ファウルと見えるコン
タクトでも吹かれないように感じる。シーズン中に質問するとだいたいの答えが「影響が
あったから」と答えが戻ってくるが・・・だからといってフロップを教えるようなことは
しないが、本当のところはどうなのか。プレイヤーにコーチする意味でも教えてほしい。
◇回答:カール氏
常に判定の基準はアクションだ。ただ、よくあるのはレフリーがアクションを見落とし
て、そのリアクションだけを見て判定することはよくあるが、基本的にはアクションを判
定するべきだ。またフロップに関しては一切認める方向はない。チームがテクニカルなど
を吹かれてもいいのであれば、それはチームの選択だが。フロップはプラスにはならない。
(映像がないと分からないが)
アームバーに関しては、これはポストのプレイで、オフェンスがリングに背中を向けて
いる、その背中にアームバーをあてることは認めている。これはポジションをメインテイ
ン(維持)するために認められているものであって、ディスロッジするための場合はファ
ウルになる。
ハンドチェックに関して言えば、今のアームバーのケース以外は認めていない。両手な
どは自動的にファウルだ。
25年間、コーチやプレイヤーに「どうして手を使うのか」と質問すると必ず、「別に手
を使わなくてもいいが、レフリーが吹かないから使ったほうが得」というような答えがく
る。ということは、レフリーとしては吹くしかない。では、ペリメーター付近でのハンド
チェックはどうか。
一つのスポットに向けてオフェンス、ディフェンス、どちらが先にその位置を占めるか
でファウルを判断する。ただ、最近はオフェンスが動いた瞬間に手を一瞬おいて、そのオ
フェンスの動きを一瞬遅らせて、ディフェンスが位置をとるために手を使うケースがある。
これはファウルだ。
韓国のチームや日本のチームで見かけたことがあると記憶しているが、フロップと判断
できるもの。
例えば、コンタクト自体はボディに対してのコンタクトなのに、なぜか頭を後方にのけ
ぞるようにする、これはフロップと判断される可能性が高い動きだ。これはやめさせるべ
きだ。ただ、同時にファウルとフロップが起こるようなときでも決断はくださなくてはい
けない。ファウルであればファウル、フロップであればフロップ。判断を下す。
そして例えば50/50、フロップかファウルかどちらとも取れる、そんな時はファウ
ルを吹く。ディフェンス側がフロップして、ファウルに見せかけようとしてもディフェン
ス・ファウルが吹かれれば、フロップをやめるしかない。継続してフロップするようであ
ればまたファウルを吹くしかない。フロップは絶対に得しない、ただそれを強く伝えてい
る。その方向性のひとつとして、フロップに対してテクニカル・ファウルを宣していく方
向だ。コーチ陣の声ですら同じことをフロップについては言っている。スペインでは徹底
的に吹いた。その結果、最近あったワールドカップでのフランス戦、一度もフロップはな
かった。これは吹き切ったことによる結果だ。
◇質問:スクリーン時のファイトオーバー
スクリーンをかわすためにファイトオーバーするときの教え方で、まずはスクリーンを
使うユーザーに身体で入りスペースを作ってファイトオーバーしろと教えている。ただ、
この場面でよくファウルを吹かれてしまうが、どう理解してどう教えていくといいか。
◇回答:カール氏
まずは私(ディフェンス)が何を考えるべきかは、スクリーンのわきにファイトオーバ
ーするスペースがあるかどうか、そのうえでファウルにならないかどうかとなる。スクリ
ーンのユーザーがスクリーナーの真横をとおってスペースを作らないようにするのがオフ
ェンス側の考え方だ。つまり、そこが判断の材料のひとつとなる。ファイトオーバーの時
点でオフェンス、ディフェンス、どちらがそのスクリーナー横のスペースを先に通過しよ
うとしているかが判断の要素のひとつになる。
こういったコーチとの会話は非常に重要だ。これはコーチのために勉強になるだけでな
く、レフリーにとっても勉強になる。
■最後に
重要なのはクラスルームで学んだことをコートの上でみんなでやっていくことです。
これから大事にされていくことは、ルールなどを熟知していることを前提に、
「Move from the book to the game(ルールブックに書かれていることだけではなく、ゲー
ムが何を望んでいるかを理解すること)」です。
また、フィジカル・コンディションとストロング・コート・プレゼンツ、これらはFIBAがこ
れから伝えていく「トータル・コントロール」のパッケージの中の要素です。これはジレンマでは
あるが、あなた達(レフリー)がゲームをコントロールするんです。プレイヤーやコーチではなく、
レフリーがゲームをコントロールします。ただし、スターはコーチやプレイヤーです。そこがジレ
ンマではありますが、レフリーが何か指示を出したときには、そのプレイヤーやコーチはそれに従
わなくてはいけません。よくあるケースで、試合が終わった後にレフリーが「今日のプレイヤーは
ひどく暴れた、ラフなプレイばかりだった」など話題になることがありましたが、私がそれを聞い
た時には必ず「どうしてそれをコート上で対処しなかったんですか。プレイヤーがラフなプレイを
しただけではなく、それを野放しにしていたのはレフリーでもあるんですよ」と伝えます。つまり、
提供する側としてはコーチ、プレイヤー、レフェリー3者が協力してゲームを進めていくものなん
です。彼らがいなくては商品にはなりません。そしてお互いに尊重しあうことが重要です。