日本のソフトパワー

<経済用語解説>
ちょっと教えて!
現代のキーワード
日本のソフトパワー
海外で絶大な影響力を持つ日本のポップカルチャー
「Japan Expo」は 20 万人以上を集客
ソフトパワーとは、その国の文化、芸術、国民的気質などが世界で共感を呼ぶ力を指し
ます。日本のソフトパワーと言えば、歌舞伎や能、浮世絵といった伝統文化や日本車に代
表されるような良質で丁寧なものづくりが連想されましたが、現在では、ポップカルチャ
ーに置き換わっています。毎年パリで開かれる、日本文化の総合的な博覧会「Japan Expo」
は欧州を中心に 20 万以上の観客を集めています。
日本のソフトパワーの代表例として、初音ミクが挙げられます。女声の歌声を合成する
ことができるコンピュータ音源のソフトウェアに、初音ミクという 16 歳の女の子のキャラ
クターを付与した結果、世界で爆発的な人気となり、これまで 3 万 6 千曲以上の初音ミク
の歌声の楽曲が作成され、11 万点以上の初音ミクの動画がアップされています。
ただし、日本のポップカルチャーを支えるコンテンツ産業自体の市場は伸び悩んでいま
す。マンガ、アニメ、ゲームの市場規模は 1~2 兆円程度に過ぎず、高い成長率を記録して
いるわけでもありません。そもそもコンテンツはコピーされやすく、無断でコピーされた
ものからは著作権料がとれません。コピー使用を厳重に取り締まれば、今後は普及が進ま
ないといったジレンマがあります。
一方、日本のソフトパワーは海外の若者を中心に日本への羨望を高めています。日本文
化への親近感から、海外から日本への若年旅行者を増やすだけでなく、海外で日本の製品
やサービスの販売を促進するなどの効果を持っています。日本のソフトパワーは、日本の
国民や政府が考えている以上に、大きなものとなっているのです。
東レ経営研究所「ちょっと教えて!
現代のキーワード」