-1- 式 辞 厳しかった冬も三寒四温を繰り返しながら

式
辞
厳しかった冬も三寒四温を繰り返しながら、風光る季節の到来を感じます。
この佳き日に、保護者・ご家族の皆様に御列席をいただき、本校を卒業された福岡県教育委員
会教育委員の奥田竜子様をはじめ多くの御来賓に御臨席を賜り、第67回卒業証書授与式を挙行
できますことは、大きな喜びであり光栄に存じます。
卒業式に当たり、PTA、同窓会の皆様、そして地域の皆様方に、先ずもって深く感謝とお礼
を申し上げます。これまでの物心両面にわたる御支援・御協力なしに、今日の晴れやかな日を迎
えることはできませんでした。数々の温かい力添えをいただき、誠にありがとうございました。
また、お子様とともに、時に喜び、悩み、時に厳しく、時に優しく、成長を見守り続けてくだ
さいました保護者の皆様の御労苦に対し、敬意を表しますとともに心からお祝いを申し上げます。
本日の卒業生諸君の門出を皆で一緒に喜び、祝福・激励していただければ幸甚に存じます。
399名の卒業生諸君、卒業おめでとう。諸君は今ここに栄えある修猷館高等学校の卒業生と
して、卒業証書を手に大きく羽ばたこうとしてます。
この卒業証書は、「質朴剛健」「自由闊達」「不羈独立」の校風の下、「世のため人のため」に
尽くす人材を育成する修猷館教育に対して、努力精進し確かな成長を遂げた「証」であります。
諸君がこの修猷館で過ごした3年間は、人格を形成し、自己を確立する上で極めて貴重な時間
でした。修猷館の歴史と伝統、自分を取り巻く人たちに影響を受けながら、自分に相応しい生き
方の「軸」を模索する、そして「自立」に向けての道程そのものであったと思います。
今から3年前の入学式で、諸君に私が贈ったメッセージは、『自分が得意な分野しか力を出さ
ない薄く軽いエリートではなく、多くの先輩がそうであったように、あらゆることに挑戦し、困
難や試練に遭遇してもひるまず、立ち向かっていく逞しい精神や、挫折から立ち直る力、失敗
から学ぶ力を身につけて欲しい。こうした力を獲得する経験は、人としての「強さ」「優しさ」
「賢さ」を育み、周りを「明るく」「温かく」「元気」にする力を育てる。そういう魅力を持っ
た修猷生を目指してもらいたい。これから3年間、この空間と時間を共有する仲間を大切に、
学問を尊び、心身を鍛え、感性を磨くなど、修猷館で青春を精一杯謳歌することが諸君に課せら
れた当面の使命である。前向きな高校生活を送って欲しい。』であった。
以来3年間、私は諸君の成長を見てきました。
異なった魅力を持つ仲間に囲まれ、何でも経験できるチャンスが転がっている修猷館。
知的探求の喜びがあった授業、自分の生き方が広がった講演会、価値ある学びと思い出がで
きた研修旅行、一丸となって「修猷」を体現した運動会と文化祭、生きる力と人間形成の土台に
なった部活動や生徒会活動など、様々なことが諸君の身体を通り抜けていった。
校内には、いつも若者らしい喜怒哀楽があった。人間の匂いに満ち満ちていた。
中学校とのギャップに唖然としたこと、思うようにならず悩み苦しんだこと、辛酸をなめた
負けや失敗、懸命に努力したこと、苦労が吹き飛ぶ達成感を味わったこと、深く考えた時間、全
てを忘れボーと流れた時間。どの経験も、どんな過ごし方をしても、決して無駄ではなかったは
ずだ。数々の修羅場と自他を慈しむ経験は貴重だった。
何かを為し遂げるには余りにも短く、怒濤のように過ぎた3年間だったと思う。しかし、諸君
は反骨精神が湧く度に、全力を尽くす度に、経験を重ねる度に人間としての器がどんどん大きく
なっていった。また、自立に不可欠な生活をマネジメントする力は格段に向上した。
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特に、この1年間は修猷館創立230周年に立ち会い、自分のことだけではなく、修猷を担う
リーダーの自覚と気概を持って文に武に励み、素晴らしい成果を残し、数々の行事を見事に成し
遂げて修猷館の伝統を力強く前に進める責務を果たしてくれました。
本気になればなるほど、それは自分に戻ってくること、他の誰でもない自分の青春を今、生き
ていると感じたこと、かけがえのない友の存在など、ここで過ごしたこと、ここで獲得したもの
は、一生の宝となるに違いない。
さて、諸君を待ち受けるグローバルな社会は、絶えず人類の叡智を必要とする状況にあります。
広く世界を見れば、宗教と民族と政治が複雑に絡み合った国際紛争は絶えることがなく、資源
や食料、環境問題、金融や貿易、貧困や経済格差の問題など地球的規模で人類が協調して解決す
べき課題が山積し、科学技術の競争は激しさを増しています。また、国内においても、多くが国
際社会の影響を受けており、世界に例を見ない少子高齢化の進行と人口減少は、経済や社会保障、
債務負担、地域社会の維持など様々な問題を誘発して、事態は益々深刻になっています。
21世紀は、科学技術の進展や経済成長がもたらす物質的な豊かさを、精神的な豊かさや生活
の質の充実、成熟社会の実現へと繋げていくこと、地球市民としての意識を持ち、国内はもちろ
ん、国境を越えて繋がる人々とも対話・交渉・協働しながら、相互にとって最適な解を導き出し
ていくことが望まれています。
今、先進国の労働市場は、ロボットや人工知能の実用化が進む一方で、人間にしかできない創
造的な仕事への需要を高めています。それは、自ら課題やニーズを発見し、解決の手段を探る情
報収集能力や、知識と経験を知恵やアイデア、深い思考に結びつける力であり、異質な他者とも
上手にコミュニケーションがとれ、協働して新しい価値を生み出せる人材です。
こうして考えると、これからの社会で特に求められる資質は、「独創性を持った個人が、世界
に通用する教養を身につけ、多様な人材と協働して課題を解決する力」であると言えます。その
ベースは知性と経験、倫理観や誠実さ、様々に働くバランス感覚、そして何と言っても人間的
な魅力だと私は感じます。これらは修猷館で培ってきた資質の中核でもあります。
諸君は心豊かで骨太の頼もしい個性的な青年に成長しましたが、今から数年後に、修猷館での
生活を思い出して、あの時代が一番幸せだったと心底に思うならば、修猷館の教育は失敗であっ
たと言わねばなりません。人生は進歩です。若い時代は準備の時であり、最上のものは過去にあ
るのではなく未来にあります。どうか謙虚に誠実に理想を持ち続け、「践修厥猷」の精神で向上
の路を進んで欲しい。どの猷を進んでも社会と人を豊かにする使命は奥深く、容易ではないと思
いますが、社会で揉まれるうちに、やがて修猷館教育の本当の価値が分かると信じています。
最後に、「心は常に楽しむべし苦しむべからず。身は労すべしやすめ過ごすべからず。」。
今から300年前に黒田藩の学者、貝原益軒が著した「養生訓」の一つです。身体は休ませす
ぎてはいけないが、心を苦しめてはいけない。心に余力があればどんな困難にも立ち向かえる。
楽しむことができれば物凄いパフォーマンスを発揮できる。
人生は長丁場です。いつも大らかで健康であって欲しい。
諸君の洋々たる前途を祝し、幸多かれと念じつつ、本日の式辞といたします。
平成27年3月1日
福岡県立修猷館高等学校
第30代館長
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奥 山
訓 近