why not 115 高い不動産取得税6 不動産取得税の納税者は、現実の

why not 115 高い不動産取得税6
不動産取得税の納税者は、現実の取引価格と登録価格が著し
くかけ離れている場合、地方税法第73条の21第1項但書の
「特別な事情」に該当し、「固定資産の課税台帳価格により難
い」ということができ、その結果、現実の取引価格によって不
動産取得税の課税標準額を定めることができるかという点につ
き、最高裁平成6年判決は、次のように判示しています。
「地方税法第73条の21第1項但書にいう『当該固定資産
の価格により難いとき』とは、当該不動産につき、固定資産税
の賦課期日後に増築、改築、損壊、地目の変換その他特別の事
情が生じ、その結果、右登録価格が当該不動産の適正な時価を
示しているものとみて、右登録価格を不動産取得税の課税標準
とすることが公平な税負担という観点からみて看過できない程
度に不合理と認められる事態に至った場合をいうものと解する
のが相当である。・・・・右但書にいう『特別な事情』には、
当該不動産自体に物理的変動があった場合はもちろん、・・地
価の著しい下落も含まれ得るものと解される」。
この判例の根拠とするところは、「公平な税負担」です。と
するならば、前記判決の言う賦課期日後に地価が著しく下落し
た場合だけではなく、現実の取引価格と登録価格が当初より著
しくかけ離れている場合も、登録価格に基づく課税は到底公平
なものとは言えないわけですから、現実の取引価格と台帳登録
価格が著しくかけ離れている場合、地方税法第73条の21第
1項但書の「特別な事情」に該当し、固定資産の価格により難
いということができると考えるべきです。
それでは、現実の取引価格と台帳登録価格が「著しくかけ離
れている場合」とは、どの程度の乖離のものを指すのでしょう
か。この点、平成4年9月10日付福岡高裁判決は、不動産取
得時に近接した価格である4267万円と登録価格である51
85万5312円とを比較し、900万円強の差があるので
(すなわち20%以上)、地方税法第73条の21第1項但書
の当該固定資産の価格により難い旨判示しています。
この高裁判決を参考にすれば、現実の取引価格と登録価格と
の間に何倍もの開きがあるような場合、当然に、「著しくかけ
離れている場合」に該当し、地方税法第73条の21第1項但
書の当該固定資産の価格により難いということになるでしょ
う。
問題は、不動産の現実の取引価格と台帳登録価格が著しくか
け離れている原因が賦課期日後に生じた特別の事情によるとき
に限るのか、それとも賦課期日の前後を問わず価格の格差が生
じてさえいればよいのかという点である。この点は次週お話し
致します。