Portrait of a man inside the "27 February" Saharawi refugee camp near Tindouf, Algeria. 24 June 2010. 資料:UN Photo/Martine Perret |国連|戦後最悪の難民危機に直面する中で「世界人道デー」を記念 【国連 IPS=タリフ・ディーン】 国連は、今年の「世界人道デー」 (8月19日)にあわせて、ニューヨーク・神戸等で開催 される関連行事と並んで、世界各地の紛争や災害を生き延びた人々の「感動的な」ストー リーを、ソーシャルメディアを通じて拡散していくオンラインキャンペーン「ヒューマニ ティ:あなたを動かすチカラ(#ShareHumanity)を立ち上げた。 このキャンペーンは、著名人を含むフェイス ブック、ツイッター、インスタグラムのユー ザーに、投稿スペースを寄付してもらい、世 界が直面している深刻な人道状況とともに、 そこに生きる人々のたくましさと希望を広 く伝えていくことを目的としている。 国連のステファン・デュジャリック報道官は、 「私たちは、国連が創設されて以来、最も人 Stephane Dujarric 資料:UN Photo 道支援を必要とする歴史的瞬間 に生きています。 」と指摘したう えで、 「私は(報道官として)日 常的に、人道支援を必要とする 人々について、数を挙げて話をせ ざるを得ないのですが、1万人、 5万人という数字は実に感覚を 麻痺させてしまいます。 」と嘆い た。 Stephen O’Brien 資料:youtube 国連の統計によると、人道支援を 必要とする人々の数は極めて憂慮すべきレベルに達している。今日トルコ、イラク、レバ ノンに在住するシリア難民の数は4000万人を超えている。一方、この中には故郷の戦 乱を逃れて海路欧州への密航を試み、その途上で命を落としている毎週数百人に及ぶ難民 の数は含まれていない。 さらに厄介なのは、少なくともさらに760万人もの人々がシリア国内で難民となってお り、全員が人道支援を必要としていることである。シリアでは内戦が勃発して今年で5年 目となるが、これまでに22万人を超える市民が軍事衝突に巻き込まれて命を失っている。 国連のスティーブ・オブライエン緊急援助調整官(人道問題担当事務次長)は、 「世界では 避難を余儀なくされた人々の数が6000万人近くに達しており、私たちは深刻な危機に 直面しています。」 「私たちは、お互いを大切にする責任をもっと培い、地球市民という共 通の思いを実現していかなくてはなりません。」と指摘したうえで、世界各地のソーシャル ネットワークのユーザーに対して「声無き人々の代弁者となって欲しい。 」と訴えた。 8月上旬、オブライエン事務次長は、ドナーからの援助が行きわたらない資金不足の人道 状況に対応するため、国連中央緊急対応基金(CERF)から7000万ドルの資金を放出す る決定を行った。 シリア、アフガニスタン、イエメン以外でも、スーダン、南スーダン、アフリカの角(ソ マリア・ジブチ・エチオピア) 、チャド、中央アフリカ共和国、ミャンマー、バングラデシ ュといった国々で人道危機が進行している。 INFORM - the Index for Risk Management 資料:EU オックスファムのノア・ゴットシャルク人道対応上級政策アドバイザーは IPS の取材に対 して、 「数十年前に創設された国際人道支援システムは、これまでに無数の人々の命を救っ てきました。しかし、国際社会が、シリア内戦のような長期化する危機が世界各地で進行 している状況に対応を迫られているなかで、自然災害が規模と頻度の双方においてますま す増加する傾向にあります。こうした事態に、従来の人道支援システムは十分対応しきれ ておらず予算不足も深刻な状況にあります。 」と語った。 ゴットシャルク氏は、 「一部のドナー国は人道支援に対する資金拠出に寛大であり、私たち はこの不可欠な支援を高く評価していますが、一方で現在の財政規模では高まり続ける人 道支援のニーズに十分追いついていないのが現実です。」と指摘したうえで、「国連と現在 の人道支援システムは、現地で人道支援活動に携わるリーダーや人々のキャパシティビル ディング、さらにはコミュニティーによる減災活動を支援するプロジェクトに資金拠出を することにより、より効率的で現地のニーズに的確に対応できる体制へと改善する必要が あります。 」語った。 一方、国連は、今回新たに立ち上げたオンラインキャンペーン「ヒューマニティ:あなた を動かすチカラ(#ShareHumanity)を通じて、来年5月にトルコのイスタンブールで開 催を予定している史上初の「世界人道サミット」の開催に向けて国際社会の機運を高めて いきたいと考えている。 国連人道問題調整事務所 (OCHA)によると、8月19日 に始まった今年の「世界人道デ ー」キャンペーンは、援助コミュ ニティーが、自然災害、紛争、病 気に冒された数百万人の人々を 救済する能力をはるかに上回る 人道支援ニーズが存在する今日 の世界の現実を反映したもので ある。 Palestinian refugees in makeshift shelter in Lebanon. 資料:Mutuwalli Abou Nasser/IPS ゴットシャルク氏は IPS の取材に対して、 「世界人道デーは、世界各地で、想像を超える困 難な環境にある人々の命を救うために日々献身的に取り組んでいる勇気ある男女に敬意を 払う重要な機会です。」「危機的な状況が発生した際、しばしば真っ先に行動を起こすのが 現地の人道支援活動家です。しかしこうした男女の貢献が国際社会に認められることは稀 ですし、最も深刻な点は、彼らがリーダーシップを発揮して危機に対処できるような支援 がなされていない現実です。 」と語った。 オックスファムは、人道支援活動に対する資金財源をより安定的かつ堅固なものとするた めに、国連加盟国に対して人道的対応のための拠出金を義務付けるよう強く働きかけてい る。 「より多くの人道支援資金が実際の活動が行われている現場 に直接流れるようにすべきです。また、ドナーが支援活動の インパクトを追跡評価でき、対象のコミュニティーが援助の 流れを把握し地域のリーダーに説明責任を要求できるよう、 資金支援の中身について透明性を高めていくべきです。 」とゴ ットシャルク氏は指摘した。 ゴットシャルク氏はまた、 「今日世界では、数百万人もの人々 が人道支援システムに依存しており、その存続は、人道支援 へのニーズの高まりに反して活動資金が減少する厳しい状況 のなかで慈愛の精神からこのシステムをなんとか機能させよ Noah Gottschalk 資料:Oxfam International うと献身的に奮闘している人々によって支えられています。」 「改革が実現すれば、人道支援システムをより効率化し、 こうした人道支援要員が厳しい状況におかれている人々の 命を救い、その苦しみを和らげる活動をより後押しするこ とができるでしょう。 」と語った。 ジュネーブに本部を置く世界保健機構(WHO)によると、 現在進行している軍事紛争によって多くの医療従事者が命 を落としてという。 WHO は、2014年だけでも、32か国において372 人の医療従事者を狙った襲撃事件が勃発し603人が死亡、 958人が負傷しており、今年になっても同様の事件が報 告されている、と発表している。 Margaret Chan 資料:Wikimedia Commons 「WHO は危機に際して人々の生命を救い苦しみを和らげる活動に従事しています。医療従 事者や医療施設に対する攻撃は言語道断の国際人権法違反です。 」とマーガレット・チャン WHO 事務局長は「世界人道デー」を記念して発表した声明の中で語った。 チャン事務局長はまた、 「医療従事者はあらゆる患者や負傷者を分け隔てなく治療する義務 があります。すべての紛争当事者はこうした医療従事者の義務を尊重しなければなりませ ん。 」と語った。(08.18.2015) IPS Japan
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