薬剤部 訪 問 浜松医科大学医学部附属病院 薬物療法専門薬剤師がスタッフを支援 どんな業務も担当できる組織に育成 浜松医科大学医学部附属病院の薬剤部には、専門薬剤師や認定薬剤師の資格 を取得しているスタッフが多数いる。さらに国立大学病院の中でトップレベルの 学位取得率を誇っている。半面、組織はジェネラリスト集団を目指し、専門薬 剤師らの支援の下、誰もがどんな業務も担当できるようにスキルを磨いている。 同院は、静岡県西部二次医療圏 （浜松市、湖西市、新居町）の中核病 院の1つで、1995年に承認を受けて 以 来、 特 定 機 能 病 院として地 域の 人々に良質な医療を提供してきた。 薬物療法専門薬剤師が若手を支援 副薬剤部長の内藤隆文氏は、日本 でも数少ない、日本医療薬学会の薬 物療法専門薬剤師、同指導薬剤師で 浜松医科大学医学部附属病院 副薬剤部長 内藤 隆文 氏 静岡県立大学卒、同大学院修士課程修了。大分 医大病院を経て、浜松医科大学医学部附属病院 薬剤部。2011 年より現職。博士（薬学）。 ある。薬物療法専門薬剤師認定制度 浜松医科大学医学部附属病院 副薬剤部長 堀 雄史 は、学問的背景を持った上で、より 氏 高い臨床能力を備えた薬剤師のため 富山医科薬科大学卒、同大学院博士前期・後期 課程修了。同大附属病院、浜松医科大学医学部 附属病院薬剤部、同がん教育研究センターを経 て 2012 年より現職。博士（臨床薬学）。 に、2012年に日本医療薬学会が創 設した。「薬物療法において幅広い 領域で高い水準の知識・技術と臨床 能力を備え、薬物療法に関する医療 従事者のコンサルテーションにも適 本格的に稼働させ、2名当直体制を 切に応じることができる信頼される薬 全スタッフが病棟薬剤業務に当たる 整備した。現在、総勢40人で、全員 剤師」 と定義されている。さらに上位 浜松医科大学医学部附属病院薬剤 が処方提案など病棟薬剤業務に当 資格の同指導薬剤師には、指導的役 部は、2013年度に病棟薬剤業務を たっている （図1、2）。 割や研究推進能力の発揮が求められ スタッフ・ステーションの一角で打ち合わせ をする小児科の石垣英俊医師（写真左）、 安藤愛看護師と等浩太郎薬剤師。 613 床 ■ 職員数 1028 人 DPC/PDPS 2003 年 4 月 浜松市東区半田山 1-20-1 http://www.hama-med.ac.jp/hos_index.html ■ ■ 10 Excellent Hospital 病床数 ている。薬物療法専門薬剤師、同指 図1｜入院患者一覧からチーム患者登録する画面 導薬剤師とも認定者はそれぞれ全国 に9人しかいない。 電子カルテと 連動する 内藤氏は、「薬物療法のリーダーと して、病棟もそれ以外の仕事も満遍 なくこなしてきたことで、結果的に取 得に必要な症例が増えました。取得 後は、薬物治療を率先して行うという より、薬剤業務全般を見られる薬剤 師として他のスタッフを支援すること が主になっています」 と語る。 内藤氏は、個々の患者に適した投 与設計を行うために、血中濃度を測 定する薬物モニタリング（TDM）など も指導している。薬の体内動態に関 薬剤部のスタッフが薬剤業務に関する情報を入力する入院患者を、 電子カルテのデータから選択し て登録する。 わる業務は、薬剤師がアピールでき る部分で、医師とのディスカッション にも役立つ。また、臨床研究を行う 図2｜処方提案、 疑義照会を記録する画面 上でも大切なスキルになる。 処方提案 などを スタッフ間で 共有・蓄積 誰もが外来化学療法センターを担当 もう一人の副薬剤部長、堀雄史氏 は、日本病院薬剤師会のがん専門薬 剤師。堀氏は医薬品安全管理室長、 無菌製剤サテライト室長の他、IVH （高カロリー輸液）や抗がん剤など注 射薬のミキシングなど、がん薬物治 療の統括も行っている。 2013年 度 に 外 来 化 学 療 法 セン ターで抗がん剤ミキシングを開始し た当初は、専門薬剤師である堀氏が 選択式と自由記入（入力）を併用しているため、手軽さと詳細さを両立している。 業務の大半に関わっていたが、今で らは効率的に業務と学業や研究をこ は、若手のスタッフが中心となり同セ ンターでの業務を担っている。午前 先輩が業務と研究の両立法を伝授 なす方法について、若い薬剤師たち 中に薬剤師2人で、薬剤のミキシング 同院の薬剤部のスタッフは、専門 に経験を生かした助言をしている。 とその監査を行い、待ち時間を利用 薬剤師・認定薬剤師の資格取得に積 「専門・認定薬剤師は、臨床薬剤師 して患者指導も行っている。 極的だ。さらに、学位取得率では国 としてリーダー的な役割を担えます。 内藤氏と堀氏は、 「その人がいない 立大学病院の中でトップレベルを維 また、学位を持っていると医師など と業務が回らないという体制にはした 持している。採用後5～6年経つと多 他の職種からも一目置かれ、疑義照 くない。 専門薬剤師をリーダーに、 くのスタッフが専門・認定薬剤師の資 会もスムーズになった気がします」 と 次々に下の人を育てて、誰もがどん 格と学位を取得しているそうだ。 両氏。同院の薬剤部スタッフのキャリ な業務でも担当できる薬剤部であり 内藤氏と堀氏は、働きながら薬学 アアップは、同院の薬物療法の質の たい」 と語る。 博士号を取得した経験がある。両氏 向上に寄与しているようだ。 Excellent Hospital 11
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