重症患者搬送

重症患者搬送
2015年10⽉20⽇
慈恵ICU勉強会
臨床⼯学部 池⽥ 潤平
当院ICUにおける、⼈⼯呼吸器装着患者搬送
⼈⼯呼吸器を使⽤した患者搬送
2010年度:75
2011年度:102
2012年度:107
2013年度:136
2014年度:160
180
160
140
120
100
搬送回数
80
60
40
20
0
2010
2011
2012
2013
2014
2010年より、ポータブル⼈⼯呼吸器による患者搬送を
記録し、現在その件数は2倍以上となっている。しかし、
システマチックなマニュアルは無い。
そこで!!
⼈員、装備が限られている不安定な状況下、
どのような事に気を付ければよいか。
本⽇の内容
重症患者搬送中の有害事象とリスク要因
有害事象での合併症
チェックリスト
脳障害患者搬送
CTの診断率、therapeutic yield
Design: prospective observational study
38床のフランス⼤学病院ICU
2009年5⽉1⽇〜2010年3⽉21⽇の間ICUに⼊
室し、⼈⼯呼吸器管理下のCT搬送を必要とした
184⼈(262例)を対象。
重症患者の院内搬送(IHT)リスク要素、IHT中の有害事象(AE)頻度を調査
IHT: intrahospital transport
AE: adverse events
Characteristics
262の院内搬送中、120(45.8%)が
AEと関連、68(26%)が患者に影響を
与えるAEと関連、44(16.8%)が患者
に深刻な影響を与える。
鎮静状態、⼈⼯呼吸器設定が>6cmH2O、補液負荷状態はリスク
Discussion
Adverse eventsは⼈⼯呼吸器関連肺炎、⼈⼯呼吸器装着
時間、ICU滞在期間に影響はなかった。
当院における⼈⼯呼吸器管理下の患者搬送
平均116件/年
実際17.4件/年の深刻なAEが発⽣しているのかも?
Design: Prospective multicenter cohort study
OUTCOMEREA研究グループに属するフランスのICU12施設
2000年4⽉〜2010年11⽉までのICUにおける⼈⼯呼吸器管理下の
患者6242⼈を対象とする
院内搬送患者と⾮院内搬送患者を⽐較
Discussion
・院内輸送は⼈⼯呼吸下重症患者における合併症のリスクを
増加させる。
・院内の輸送関連のリスクを最⼩限にするために具体的⼿順を
決める必要がある。
Design:prospec4velycollectedIHT
29-bedICUinLeidenUniversityMedicalCenter
IHTに関するチェックリストやガイドラインを検索し、プロスペ
クティブにインシデントを収集。そのインシデントを元に、
チェックリストを改定し、実現性と有⽤性を評価した。
5つのチェックリストが⾒つかり、pre・during・postの
3つのフェーズをカバーしたのは1つだった。
そのチェックリストを収集したインシデントを考慮し改定。
Feasibility and usability
搬送中のバイタルチェックには時間がかかるが、使⽤すること
により搬送における確認ミスがチェックできる。
また、チェックリストの項⽬は、患者管理システムのデータを
⽤いる事により、簡単に適応できる。
チェックリストを⽤いることにより、
ケアに連続性が⽣まれる。
Preチェックリスト記⼊に4・5分程
脳障害患者搬送
Design: prospective observational study
パルマ病院ICUに⼊室した670⼈のうち、神経損傷または疾患の
診断を受け、CT検査が必要となった160⼈を対象。
神経学的障害を持つ患者で、CT検査搬送の際発⽣した
合併症と、⽣理学的障害の発⽣率を調べた。
対象となった患者の診断
・外傷性脳損傷
・くも膜下出⾎
・脳内出⾎
・脳腫瘍切除術後
・急性脳卒中
・髄膜炎
・⽔頭症
・てんかん
鎮静剤
プロポフォール、ミダゾラム
鎮痛剤
フェンタニル、レミフェンタニル
筋弛緩薬
ベクロニウム、シスアトラクリウム
搬送時のICPモニタリングフローチャート
搬送中の頭蓋内⾼⾎圧症21例中、
搬送前より頭蓋内⾼⾎圧であっ
た9例を除いた12例は⼀過性の
ものであった。
また、搬送前より頭蓋内⾼⾎圧
であった9例は、8例で治療レベ
ルの増加がみられ、1例が外科的
介⼊を要した。
Outcome
2群間での搬送中の頭蓋内⾼⾎圧症、呼吸器、および⾎⾏動態の合併症に有意な差は無い。
スケジュールされた院内搬送がPAO2/ FIO2の有意な減少と、動脈⾎乳酸レベルの減少、
体温低下、PaCO2の増加に関連していた。
Discussion
・50例(17%)の院内搬送で、鎮静不⼗分にて介⼊の必要な
動脈圧の上昇が⾒られた。搬送前後など、薬剤投与量の変更は
頻繁に⾏われるため、注意が必要。
・患者搬送中の合併症に有意差がなかった。予定外の搬送に
対しての注意⼒上昇が、合併症の減少を促したのかも。
・ICPモニタリングが輸送中に使⽤できない場合は、 リスクと
検査の必要性について考える必要がある。
⼈⼯呼吸器管理下の搬送⼤半は
CT scan
はたしてリスクを冒して検査をすることで、治療に与える影響は?
Design: prospective, observational multicentre cohort study
・3つのフランスの⼤学病院ICU(14床、12床、16床のsurgical
ICU)
・2012年1⽉〜2013年11⽉のCTを必要とした359⼈を対象
診断、治療の収率およびICU患者のCTスキャンの安全性を
調べることを⽬的とした。
Methods
・診断率はCTスキャン前の医師による診断仮説と、
CTスキャン後の確定診断間の合意により評価した。
・Therapeutic yieldはCT後の治療変化で評価した。
・安全性はIHT間のAEの発⽣率により評価した。
CT scans and IHT characteristics
Outcome
CT前の仮説診断とCT後の診断
・⼀致したケース:40.7%(217)
・部分的に⼀致したケース:5.6%(30)
・⼀致しなかったケースが:53.7%(286)
Outcome
Therapeutic yield
CT後、全体(533)の54.4%で3⽇以内に治療的変化があり
ました。28.7%(153)で介⼊処置、25.7%(137)で医学
的な処置の変更。
AEの発生率
搬送中のAE発⽣率は22.3%で、そのうちの6.7%は⽣命を脅
かす事象だった。ICU⼊室後最初の48時間でのAEは61例で、
48時間以降58例より有意に頻回であった。(p =0.016)
Limitation
・CTスキャンは、症例の54.4%において治療的変化をもたら
しました。しかし、CTスキャンは、⽣命を脅かす状態(例え
ば肺塞栓症)を除外するために⾏われている可能性があり、
治療変化の付加価値が反映されていない可能性がある。
・スタッフに関する情報を検討していない。
・搬送時のAEは主治医によって収集されており、データの
取りこぼしも考えられる。
Discussion
CTスキャンは、重症患者の主要な診断ツールで, 半数以上の
症例診断の仮説を無効にし、治療の変更に繋がった。
しかし、ICUの外に患者を輸送することは、AEリスク増加の
危険性がある。
まとめ ・重症患者搬送では、多い頻度でAEが発⽣する。
・重症患者搬送により合併症リスクが⾼くなる。
・脳障害患者の院内搬送では、搬送後に起こりうる2次的障害にも
気をつける。
・CTは半数以上の症例診断の仮説を無効にし、治療の変更に
繋がった。
私⾒ ・当院ICUでは重症患者搬送時のAEについて挙げられて
いないため情報の共有が必要と感じた。
・AEは起きていないが、チェックリスト項⽬を参考とした
準備は必要。
・CTでは53.7%の仮説不⼀致が挙げられたが、40.7%は⼀致
しているためリスクとの折り合いが難しい。