マッチィ先生と生徒2人の

役員人事に関するお知らせ
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
23
高速オペアンプの使い方
作:松井邦彦
暑かった夏も終わり、さわやかな秋を迎えた今日この頃です。夏の終
最近セミナー活動が増えてきて、いろんな所へ出かけています。その
わりというと、どこもそうでしょうが、夏服のバーゲン・セールが花盛
土地土地でユニークなものを買うのが楽しみです。よく折畳み傘が壊
りです。季節はずれとは言え、破格の値段に負けてしまい、ついズボ
れるので、丈夫な傘を買って帰りました。骨が24本もある傘です。
「珍
ン(古いですね)を買いこんでしまいました。裾上げのとき「股下何
しいだろ」と自慢すると、
「重くて片手ではもてない・・・」と評判が今一
cmですか?」と聞かれたので「**cm」と答えると、できあがったズ
です。台風が来ても折れないという代物だったのに・・。確かに台風が
ボンはまるで「殿中でござる」のように長くなってしまいました。おか
来ても折れないかもしれないが、飛ばされてしまい逆に危ないか
げでシークレット・ブーツをはかないとズボンが地面に着いてしまい
も・・・・。晴れの日にさすことにしました。
ます。見栄を張るもんじゃないですね。
先日機会があり、中国(上海)に行きました。海の色が茶色なのには驚
先日は寝間着が安かったのでMサイズを買って帰ったところ、
「もっと
きました(揚子江から流れ出す土の色だそうです)。それ以上に驚いた
買ってくれば良かったのに」と妻。
「Lしか残ってないよ」と言うと「Lで
のはマンションの数です。どこまで行っても途切れません。道路も6
もいいわよ。洗うと縮まるから」と言うので、2着ほど買って帰りまし
車線とか広いのですが、それでも混雑して渋滞状態です。人の数が多
た。でも半袖なので3着も着替えるうちに冬になってしまいそうです。
いのが原因のようですが、まず私の腕では運転できないなと思いまし
老眼になって久しく、セレクション原稿のための実験をしていたとき
た。自動車事故も日常茶飯事のようで、本当かウソかはわかりません
です。半田付けしたいのですが半田が付きません。おかしいなと思っ
が、
「20元で示談」が相場だそうです。私なら運転する度に200元は
ていたら、実は手に持っていたのは半田ではなくスズ・メッキ線でし
必要!?
た。これでは笑い話です。近眼が強いので、どうしても半田付けのよ
国土が広いのですが、山が見あたりません。広大な平野が続きます。
うな近場作業では、めがねを外さないと見えません。年には勝てませ
山は車で2時間行くとあるそうです。上には上があると目から鱗です。
んなぁ。
今回の経験は海外渡航の経験が少ない私にとっては非常に有意義でし
た。中国人の暖かいおもてなしに謝謝・謝謝!!
1.
電圧帰還型と電流帰還型の違い
入力抵抗は大きい
R2
ドリー:マッチィ先生、高速オペアンプについて教えてください。
R1
マッチィ先生:汎用オペアンプや高精度オペアンプのように、DC∼
低周波で使用されるオペアンプは特に断らない限り、帰還回路
は電圧帰還型になっています。ところが最近の高速オペアンプ
出力
−
+
Vout = A・VIN
A
=
VIN
入力抵抗は大きい
RIN =
R2
図1(a)
に従来のオペアンプ・電圧帰還型オペアンプの動作原理
R1
−
を示します。
1
A(ω)
1
(AD8001では約50Ω)
gm
出力
RIN
VouT = A・VIN
+
電圧帰還型オペアンプの入力インピーダンスは非常に大きいの
1
R2
A = 1+
R1
入力
VIN
A≒
A=
(1+R2/R1)
/{1+
(R2/R1)
A
(ω)
}‥‥‥‥‥‥‥(1)
(b) 電流帰還型の場合
1
TZ(ω)
1+
R2
R1
RIN + R2
通常、R2》 1 +
R2
R1
RINなので、
入力抵抗は大きい
この回路のゲインAは、
で表されます。ただし、A(ω)は開ループ・ゲインです。
R2
R1
入力抵抗は小さい
特性の劣化が小さい、という大きなメリットがあるためです。
ック)は電圧の形で行われます。
1+
(a) 電圧帰還型の場合
理由は、電流帰還型オペアンプにはゲインを大きくしても周波数
で、オペアンプに流れ込む電流は非常に小さく、帰還(フィードバ
1+
A(ω)は開ループ・ゲイン
では、ほとんどと言ってよいほど電流帰還型オペアンプが使用
されるようになりましたね。
1
R2
R1
1+
入力
R2
1 + R1
1+
1
1+
R2
TZ(ω)
Tz(ω)はトランス・インピーダンス
図1 電圧帰還型と電流帰還型オペアンプの動作
2
ADM SELECTION No.24
ADM SELECTION No.24
3
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
23
高速オペアンプの使い方
オペアンプの周波数を決める−3dB周波数f3dBは(1)式では1+
(R2/R1)A(ω)
=1になる周波数なので、当然、閉ループ・ゲイン・
V+
1+
(R2/R1)が大きいほどf3dBは小さくなってしまいます。
Q3
これが高周波領域における電圧帰還型オペアンプの欠点とされて
きました。
Q5
I IN
+
+入力
アラン:電流帰還型オペアンプでは違うのですか?
出力バッファ
+入力 +
Q1
X1
RIN
出力
−入力 −
ンプです。
V–
IIN
TZ:Q 5、Q 6 のコレクター
(b)
RT Package
見た回路は従来と変わりがありませんが、−入力側の入力抵抗が非
N Package
A=
(1+R2/R1)/{1+R2/Tz(ω)} ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2)
ましょうか。表1に代表的な電流帰還型オペアンプAD8001の仕
ループ・ゲインに相当します。
様を示します。
周波では約900kΩ(600kHz時)ありますが、1GHzでは1kΩ以下
すなわち、電流帰還型オペアンプの周波数特性は閉ループ・ゲイン
と小さくなっています。
(2)式をもう一度見てください。R2とTzがゲインに影響するので、
ただし、実際は図のようにRINが影響するので、ゲインが大きくなる
仮にR2=600Ωとすると、AD8001の開ループ・ゲインは低周波
と周波数帯域は多少狭くなりますが、電圧帰還型オペアンプほどに
では900kΩ/600Ω=1500(64dB)になります。
は顕著ではありません。
MHz
G = +2, < 0.1 dB Peaking, RF = 768 Ω
G =+1, < 0.1 dB Peaking, RF = 1 kΩ
300
380
MHz
575
795
MHz
MHz
MHz
G = +2, RF = 768 Ω
G = +2, VO = 2 V Step
120
145
MHz
Slew Rate
800
1000
V/μs
G = −1, VO = 2 V Step
G = −1, VO = 2 V Step
960
1200
V/μs
Settling Time to 0.1%
10
ns
Rise and Fall Time
G = +2, VO = 2 V Step, RF = 649 Ω
1.4
ns
Total Harmonic Distortion
fC = 5 MHz, VO = 2 V p-p
G = +2, RL = 100 Ω
−65
dBc
Input Voltage Noise
f = 10 kHz
2.0
nV/√Hz
Input Current Noise
f = 10 kHz, +In
2.0
pA/√Hz
−In
18
NOISE/HARMONIC PERFORMANCE
Differential Gain Error
pA/√Hz
0.01
0.025
Differential Phase Error
NTSC, G = +2, RL = 150 Ω
NTSC, G = +2, RL = 150 Ω
0.025
0.04
Third Order Intercept
f = 10 MHz
33
dBm
1 dB Gain Compression
f = 10 MHz
14
dBm
SFDR
f = 5 MHz
−66
dB
2.0
5.5
2.0
9.0
10
5.0
TZ ー Ω
+Input Bias Current
10k
Open-Loop Transresistance
%
Degree
3.0
TMIN−TMAX
VO = ±2.5 V
TMIN−TMAX
mV
μV/℃
25
±μA
35
±μA
6.0
±μA
10
250
mV
900
±μA
kΩ
175
kΩ
1k
INPUT CHARACTERISTICS
Input Resistance
100
Input Capacitance
+Input
10
−Input
50
Ω
+Input
1.5
pF
3.2
±V
Input Common-Mode Voltage Range
いっぽう、
−入力側はQ1およびQ2のエミッタに接続されているので、
RINに流れる入力電流(Q1とQ2に流れる電流の差)IINはトランジ
715
TMIN−TMAX
①+入力側は数十k∼数MΩの高入力抵抗
マッチィ先生:あとで説明しますが、数十Ω程度です。
MHz
575
−Input Bias Current
100k
のほうが理解しやすいと思います。
ドリー:RINの大きさはどのくらいですか?
440
Offset Drift
それでは電流帰還型オペアンプの内部構成を見てみましょうか。そ
でしかありません。この抵抗は図(b)ではRINで示されます。
350
TMIN−TMAX
まであれば十分という用途が多いでしょう
(ビデオなど)
。
②−入力側は数十Ω程度の低入力抵抗
MHz
G = +2, < 0.1 dB Peaking, RF = 681 Ω
G =+1, < 0.1 dB Peaking, RF = 845 Ω
Input Offset Voltage
1M
MHz∼数GHzに及ぶものもありますが、実際の用途では数十MHz
となっています。これは図(b)の入力バッファに相当します。
MHz
880
DC PERFORMANCE
最近の電流帰還型オペアンプの周波数特性(−3dB周波数)は数百
ンジスタQ1およびQ2のベースに接続されています。そのため、
440
650
110
図3がAD8001のトランス・インピーダンスの周波数特性です。低
周波数なので、f3dBはR2の設定によることが分かります。
す。図(a)から分かるように、電流帰還型オペアンプの+入力はトラ
350
125
型オペアンプの開ループ・ゲインに相当するのですね。
トランス・インピーダンス)と呼ばれ、電圧帰還型オペアンプの開
図2に電流帰還型オペアンプの内部等価回路とモデル図を示しま
G = +2, < 0.1 dB Peaking, RF = 750 Ω
G =+1, < 1 dB Peaking, RF = 1 kΩ
85
RT Package
ドリー:電流帰還型オペアンプのトランス・インピーダンスが電圧帰還
マッチィ先生:そのとおりです。それではAD8001を例にとって説明し
に依存しないということです。
Unit
100
R Package
で表されます。Tz(ω)は開ループ・トランス・インピーダンス(以下
(2)式から、−3dB周波数帯域f3dBは 1+R2/Tz(ω) =1になる
Max
G = +2, RF = 750 Ω
G = +2, RF = 681 Ω
重要なのです。
この回路のゲインAは、
Typ
Bandwidth for 0.1 dB Flatness
図2 電流帰還型オペアンプの構成
常に低くなるのが特徴です。帰還を電流モードで行うには、これが
R Package
のインピーダンス
(a)
図1(b)に電流帰還型オペアンプの動作原理を示します。外観から
−3 dB Small Signal Bandwidth, N Package
トランス・インピーダンス
電流ミラー
回路
Min
DYNAMIC PERFORMANCE
電流変換部
Q6
Conditions
出力
CT
IIN
Q4
Model
×1
RT
Q2
マッチィ先生:はい、帰還が電流の形で行われるのが電流帰還型オペア
AD8001A
×1
I IN
−
−入力
表1 AD8001の仕様
入力バッファ
電流ミラー
回路
10
100k
1M
10M
100M
FREQUENCY ー Hz
1G
Common-Mode Rejection Ratio
Offset Voltage
−Input Current
+Input Current
図3 AD8001のトランス・インピーダンス特性
MΩ
VCM = ±2.5 V
VCM = ±2.5 V, TMIN−TMAX
VCM = ±2.5 V, TMIN−TMAX
50
54
dB
0.3
1.0
μA/V
0.2
0.7
μA/V
OUTPUT CHARACTERISTICS
Output Voltage Swing
RL = 150 Ω
2.7
3.1
±V
Output Current
RL = 37.5 Ω
50
70
mA
85
110
mA
Short Circuit Current
スタQ3とQ5およびQ4とQ6に流れる電流ミラー回路によって、同
じ大きさの電流IINに変換されてQ5とQ6のコレクタに流れます。
Operating Range
±3.0
±6.0
Quiescent Current
TMIN−TMAX
ピーダンスによって電圧に変換され、出力バッファを通して出力さ
Power Supply Rejection Ratio
れます。
+VS = +4 V to +6 V, −VS = −5 V
−VS = − 4 V to −6 V, +VS = +5 V
−Input Current
TMIN−TMAX
0.5
2.5
μA/V
このコレクタのインピーダンス(RTおよびCT)をトランス・インピー
+Input Current
TMIN−TMAX
0.1
0.5
μA/V
ADM SELECTION No.24
5.0
60
75
50
56
5.5
V
そして、トランジスタQ5とQ6に流れた電流IINはコレクタのイン
ダンスと呼んでいます。
4
POWER SUPPLY
mA
dB
dB
Specifications subject to change without notice.
ADM SELECTION No.24
5
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23
高速オペアンプの使い方
オペアンプの周波数を決める−3dB周波数f3dBは(1)式では1+
(R2/R1)A(ω)
=1になる周波数なので、当然、閉ループ・ゲイン・
V+
1+
(R2/R1)が大きいほどf3dBは小さくなってしまいます。
Q3
これが高周波領域における電圧帰還型オペアンプの欠点とされて
きました。
Q5
I IN
+
+入力
アラン:電流帰還型オペアンプでは違うのですか?
出力バッファ
+入力 +
Q1
X1
RIN
出力
−入力 −
ンプです。
V–
IIN
TZ:Q 5、Q 6 のコレクター
(b)
RT Package
見た回路は従来と変わりがありませんが、−入力側の入力抵抗が非
N Package
A=
(1+R2/R1)/{1+R2/Tz(ω)} ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2)
ましょうか。表1に代表的な電流帰還型オペアンプAD8001の仕
ループ・ゲインに相当します。
様を示します。
周波では約900kΩ(600kHz時)ありますが、1GHzでは1kΩ以下
すなわち、電流帰還型オペアンプの周波数特性は閉ループ・ゲイン
と小さくなっています。
(2)式をもう一度見てください。R2とTzがゲインに影響するので、
ただし、実際は図のようにRINが影響するので、ゲインが大きくなる
仮にR2=600Ωとすると、AD8001の開ループ・ゲインは低周波
と周波数帯域は多少狭くなりますが、電圧帰還型オペアンプほどに
では900kΩ/600Ω=1500(64dB)になります。
は顕著ではありません。
MHz
G = +2, < 0.1 dB Peaking, RF = 768 Ω
G =+1, < 0.1 dB Peaking, RF = 1 kΩ
300
380
MHz
575
795
MHz
MHz
MHz
G = +2, RF = 768 Ω
G = +2, VO = 2 V Step
120
145
MHz
Slew Rate
800
1000
V/μs
G = −1, VO = 2 V Step
G = −1, VO = 2 V Step
960
1200
V/μs
Settling Time to 0.1%
10
ns
Rise and Fall Time
G = +2, VO = 2 V Step, RF = 649 Ω
1.4
ns
Total Harmonic Distortion
fC = 5 MHz, VO = 2 V p-p
G = +2, RL = 100 Ω
−65
dBc
Input Voltage Noise
f = 10 kHz
2.0
nV/√Hz
Input Current Noise
f = 10 kHz, +In
2.0
pA/√Hz
−In
18
NOISE/HARMONIC PERFORMANCE
Differential Gain Error
pA/√Hz
0.01
0.025
Differential Phase Error
NTSC, G = +2, RL = 150 Ω
NTSC, G = +2, RL = 150 Ω
0.025
0.04
Third Order Intercept
f = 10 MHz
33
dBm
1 dB Gain Compression
f = 10 MHz
14
dBm
SFDR
f = 5 MHz
−66
dB
2.0
5.5
2.0
9.0
10
5.0
TZ ー Ω
+Input Bias Current
10k
Open-Loop Transresistance
%
Degree
3.0
TMIN−TMAX
VO = ±2.5 V
TMIN−TMAX
mV
μV/℃
25
±μA
35
±μA
6.0
±μA
10
250
mV
900
±μA
kΩ
175
kΩ
1k
INPUT CHARACTERISTICS
Input Resistance
100
Input Capacitance
+Input
10
−Input
50
Ω
+Input
1.5
pF
3.2
±V
Input Common-Mode Voltage Range
いっぽう、
−入力側はQ1およびQ2のエミッタに接続されているので、
RINに流れる入力電流(Q1とQ2に流れる電流の差)IINはトランジ
715
TMIN−TMAX
①+入力側は数十k∼数MΩの高入力抵抗
マッチィ先生:あとで説明しますが、数十Ω程度です。
MHz
575
−Input Bias Current
100k
のほうが理解しやすいと思います。
ドリー:RINの大きさはどのくらいですか?
440
Offset Drift
それでは電流帰還型オペアンプの内部構成を見てみましょうか。そ
でしかありません。この抵抗は図(b)ではRINで示されます。
350
TMIN−TMAX
まであれば十分という用途が多いでしょう
(ビデオなど)
。
②−入力側は数十Ω程度の低入力抵抗
MHz
G = +2, < 0.1 dB Peaking, RF = 681 Ω
G =+1, < 0.1 dB Peaking, RF = 845 Ω
Input Offset Voltage
1M
MHz∼数GHzに及ぶものもありますが、実際の用途では数十MHz
となっています。これは図(b)の入力バッファに相当します。
MHz
880
DC PERFORMANCE
最近の電流帰還型オペアンプの周波数特性(−3dB周波数)は数百
ンジスタQ1およびQ2のベースに接続されています。そのため、
440
650
110
図3がAD8001のトランス・インピーダンスの周波数特性です。低
周波数なので、f3dBはR2の設定によることが分かります。
す。図(a)から分かるように、電流帰還型オペアンプの+入力はトラ
350
125
型オペアンプの開ループ・ゲインに相当するのですね。
トランス・インピーダンス)と呼ばれ、電圧帰還型オペアンプの開
図2に電流帰還型オペアンプの内部等価回路とモデル図を示しま
G = +2, < 0.1 dB Peaking, RF = 750 Ω
G =+1, < 1 dB Peaking, RF = 1 kΩ
85
RT Package
ドリー:電流帰還型オペアンプのトランス・インピーダンスが電圧帰還
マッチィ先生:そのとおりです。それではAD8001を例にとって説明し
に依存しないということです。
Unit
100
R Package
で表されます。Tz(ω)は開ループ・トランス・インピーダンス(以下
(2)式から、−3dB周波数帯域f3dBは 1+R2/Tz(ω) =1になる
Max
G = +2, RF = 750 Ω
G = +2, RF = 681 Ω
重要なのです。
この回路のゲインAは、
Typ
Bandwidth for 0.1 dB Flatness
図2 電流帰還型オペアンプの構成
常に低くなるのが特徴です。帰還を電流モードで行うには、これが
R Package
のインピーダンス
(a)
図1(b)に電流帰還型オペアンプの動作原理を示します。外観から
−3 dB Small Signal Bandwidth, N Package
トランス・インピーダンス
電流ミラー
回路
Min
DYNAMIC PERFORMANCE
電流変換部
Q6
Conditions
出力
CT
IIN
Q4
Model
×1
RT
Q2
マッチィ先生:はい、帰還が電流の形で行われるのが電流帰還型オペア
AD8001A
×1
I IN
−
−入力
表1 AD8001の仕様
入力バッファ
電流ミラー
回路
10
100k
1M
10M
100M
FREQUENCY ー Hz
1G
Common-Mode Rejection Ratio
Offset Voltage
−Input Current
+Input Current
図3 AD8001のトランス・インピーダンス特性
MΩ
VCM = ±2.5 V
VCM = ±2.5 V, TMIN−TMAX
VCM = ±2.5 V, TMIN−TMAX
50
54
dB
0.3
1.0
μA/V
0.2
0.7
μA/V
OUTPUT CHARACTERISTICS
Output Voltage Swing
RL = 150 Ω
2.7
3.1
±V
Output Current
RL = 37.5 Ω
50
70
mA
85
110
mA
Short Circuit Current
スタQ3とQ5およびQ4とQ6に流れる電流ミラー回路によって、同
じ大きさの電流IINに変換されてQ5とQ6のコレクタに流れます。
Operating Range
±3.0
±6.0
Quiescent Current
TMIN−TMAX
ピーダンスによって電圧に変換され、出力バッファを通して出力さ
Power Supply Rejection Ratio
れます。
+VS = +4 V to +6 V, −VS = −5 V
−VS = − 4 V to −6 V, +VS = +5 V
−Input Current
TMIN−TMAX
0.5
2.5
μA/V
このコレクタのインピーダンス(RTおよびCT)をトランス・インピー
+Input Current
TMIN−TMAX
0.1
0.5
μA/V
ADM SELECTION No.24
5.0
60
75
50
56
5.5
V
そして、トランジスタQ5とQ6に流れた電流IINはコレクタのイン
ダンスと呼んでいます。
4
POWER SUPPLY
mA
dB
dB
Specifications subject to change without notice.
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5
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高速オペアンプの使い方
2.
非反転アンプ回路が基本
そこでR2の代わりにフェライト・ビーズFBを使用します(図7(b)
)
。
4. 電流帰還型オペアンプのDC精度を改善する方法
R2
FBは低周波では内部抵抗はほとんどゼロですが、高周波では大き
くなります。詳細はADM社ホームページ(マッチィ先生のミニ・セミ
820Ω
マッチィ先生:通常の電圧帰還型オペアンプでは、図1に示したように
入力
VIN
帰還抵抗R2の値は比較的自由に選ぶことができましたが、電流帰
R1
ドリー:マッチィ先生、R2を大きくするとDC精度が悪化しませんか?
−
出力
VouT
+
還型オペアンプでは帰還抵抗R2の値が周波数特性を決めるので注
アラン、
ドリー:どういうことですか?
マッチィ先生:電流帰還型オペアンプ(電圧帰還型も同じですが)を使っ
図4はAD8001の周波数特性ですが、帰還抵抗R2=820Ωと1k
ゲインが大きくなると
R1は小さくなってしまう
Ωでは820Ωのほうがずっと周波数帯域が延びています。これは
(2)式からも明らかです。帰還抵抗R2の値をさらに小さくすると、
もっと帯域を延ばすことができますが、周波数特性上にピークを生
図5 電流帰還型オペアンプではR2の値が先に決まるので、
ゲインが大きいときはR1が小さくなってしまう
じ、発振しやすくなります。
マッチィ先生:みんなはLPFを作るときはR-RタイプのLPFを作ります
てDC精度も欲しいという場合はけっこう大変ですが、ここでは一例
ね。R-Rタイプは素子感度が低いので、大変良好な特性のLPFを作
を紹介しておきます。
ることができます。でもR-Rタイプでは出力電圧がどうしても1/2
たとえば、図7でR2=1kΩとして使用するオペアンプの入力バイア
になってしまいます。せっかく大きな信号も小さくなってしまい、オ
ス電流を仮に10μAとすると、このR2で1kΩ・10μA=10mVの
ペアンプのオフセット電圧の影響をもろに受けてしまいます。
オフセット電圧が追加されてしまいます。したがって、DC精度が必要
ドリー:R2の最適値は?
たとえば、入力電圧6Vのときに2Vを出力する回路を考えてみまし
な場合はR2を大きくはできません。しかしR2 をゼロにしてしまう
マッチィ先生:最適な抵抗値はデータ・シートに記載されているのが普
たとえばAD8001では、+入力のバイアス電流は3(6MAX)μA
通です。
なのに対して、−入力では5(25MAX)μAと大きくなっています。
電流帰還型オペアンプは図からもわかるように、−入力側の入力抵
以上のことを考慮すると、電流帰還型オペアンプは非反転回路のほ
抗は低く、+入力側の入力抵抗は高くなっています。
うが使いやすいことがわかります。
AD8001では−入力側の入力抵抗は50Ωと低いのに、+入力側は
もちろん、反転アンプでも使うことはできます。しかし、ゲインを大
10MΩと高くなっています。それに応じて、入力バイアス電流
きくするためには図のように、R1の値が小さくなってしまい、その
も、−入力と+入力ではその大きさが違います。−入力のバイアス
ため前段への負担が大きくなってしまいます(図5参照)
。
ょう。通常は図8のように、R-RタイプのLPFと1/1.5のATTを入れ
と発振してしまいます。
て2V出力に調整します。オペアンプの出力は50Ωですから、50Ω
終端時に1V出力が得られることになります。しかし、DC精度はオペ
入力
アンプの性能で決まってしまいます。
+
出力
そこで、ちょっと頭を切り換えてLPFに0-Rタイプを使用してみまし
−
ょう。0-RタイプのLPFはR-Rタイプのように出力電圧が1/2になる
ようなことはありません。その結果図のように、オペアンプ出力は
6Vがそのまま現れることになります。
R2
電流が大きいのが普通です。
アラン:出力は1Vですが・・・。
3.
帰還コンデンサを付けると発振する
9
VS = ±5V
RFB = ±820Ω
6
GAIN ー dB
それとLPFの作り方には注意してください。
ドリー:はい。
意が必要です。
3
ナー)を参考にしてください。
マッチィ先生:そのとおりです。ドリーさん、DC精度も必要ですか?
マッチィ先生:そうですね。そこでオペアンプの出力でATTしましょう。
入力
図のように150Ωと75Ωがそうです。150Ωと75Ωの並列抵抗
+
は50Ωです。
出力
アラン:電流帰還型オペアンプで注意することはありますか?
−
こ の出力 を 50Ω で ター ミ ネー ション すると、6V・{75
マッチィ先生:電圧帰還型オペアンプでは図6のように、帰還抵抗R2と
G = +2
R L = 100
並列にコンデンサCFを付けることがあります。S/N改善のための
FB
帯域制限や、発振防止のための常套手段になっている進み位相補償
0
このように出力側でATTすることで、オペアンプのオフセット電圧
を施す場合です。ところが、電流帰還型オペアンプではこの手が使
V S = ±5V
R FB = ±1kΩ
−3
もATTされるので、DC特性が大きく改善されます。
図7 DC精度を上げるにはR2にフェライト・ビーズを使用する
えません。
ドリー:0-RタイプのLPFはどうやって作るのですか?
というのは、帰還コンデンサCFを付けると帰還抵抗R2との合成イ
−6
ンピーダンスが小さくなり、みかけの周波数帯域が延びてしまうか
−9
電流帰還型オペアンプの場合の帯域制限は、帰還抵抗を大きくする
100M
FREQUENCY – Hz
1G
(a)RFが大きいとき
0
R F = 698Ω
−0.1
−
R
また、入力信号自体のS/N改善が必要なら、+入力側にRCローパ
RF =
649Ω
1
ことで行います。
ス・フィルタ回路を入れるようにしてください。
0.1
OUTPUT ー dB
R2
らです。
−12
10M
−
( 1.5 (
入力
(6V)
ATT
+
出力
(2V)
(IV)
R
もし、使用する高速オペアンプの周波数帯域が製作するアンプの周
(R–RタイプのLPF)
波数帯域に比べて余裕があれば、最適な帰還抵抗値より少し大きめ
RF = 750Ω
FB
−0.3
−0.5
50
–
(2V)
にしておくと、安定性が増加するので安心です。
−0.2
−0.4
50/
(150+75 50)}=1Vとなって1V出力が得られます。
G = +2
R L = 100
V IN = 50mV
CF
電流帰還型オペアンプでは
CFを付けると発振してしまう
−0.6
R1
(6V)
R2
−0.7
−0.8
−
+
−0.9
1M
10M
FREQUENCY ー Hz
入力
出力
100M
入力
−
−
+
(6V)
R
(O–RタイプのLPF)
50Ω
←
150
–
(6V)
出力
(IV)
75
LCフィルタが必要でなければ簡単な
RCフィルタでもよい
(b)RFが小さいとき
図4 AD8001の周波数特性
6
ADM SELECTION No.24
図6 電流帰還型オペアンプでは帰還コンデンサを付けると
発振してしまう
図8 O-RタイプのLPFを使ってDC精度を上げる
ADM SELECTION No.24
7
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
23
高速オペアンプの使い方
2.
非反転アンプ回路が基本
そこでR2の代わりにフェライト・ビーズFBを使用します(図7(b)
)
。
4. 電流帰還型オペアンプのDC精度を改善する方法
R2
FBは低周波では内部抵抗はほとんどゼロですが、高周波では大き
くなります。詳細はADM社ホームページ(マッチィ先生のミニ・セミ
820Ω
マッチィ先生:通常の電圧帰還型オペアンプでは、図1に示したように
入力
VIN
帰還抵抗R2の値は比較的自由に選ぶことができましたが、電流帰
R1
ドリー:マッチィ先生、R2を大きくするとDC精度が悪化しませんか?
−
出力
VouT
+
還型オペアンプでは帰還抵抗R2の値が周波数特性を決めるので注
アラン、
ドリー:どういうことですか?
マッチィ先生:電流帰還型オペアンプ(電圧帰還型も同じですが)を使っ
図4はAD8001の周波数特性ですが、帰還抵抗R2=820Ωと1k
ゲインが大きくなると
R1は小さくなってしまう
Ωでは820Ωのほうがずっと周波数帯域が延びています。これは
(2)式からも明らかです。帰還抵抗R2の値をさらに小さくすると、
もっと帯域を延ばすことができますが、周波数特性上にピークを生
図5 電流帰還型オペアンプではR2の値が先に決まるので、
ゲインが大きいときはR1が小さくなってしまう
じ、発振しやすくなります。
マッチィ先生:みんなはLPFを作るときはR-RタイプのLPFを作ります
てDC精度も欲しいという場合はけっこう大変ですが、ここでは一例
ね。R-Rタイプは素子感度が低いので、大変良好な特性のLPFを作
を紹介しておきます。
ることができます。でもR-Rタイプでは出力電圧がどうしても1/2
たとえば、図7でR2=1kΩとして使用するオペアンプの入力バイア
になってしまいます。せっかく大きな信号も小さくなってしまい、オ
ス電流を仮に10μAとすると、このR2で1kΩ・10μA=10mVの
ペアンプのオフセット電圧の影響をもろに受けてしまいます。
オフセット電圧が追加されてしまいます。したがって、DC精度が必要
ドリー:R2の最適値は?
たとえば、入力電圧6Vのときに2Vを出力する回路を考えてみまし
な場合はR2を大きくはできません。しかしR2 をゼロにしてしまう
マッチィ先生:最適な抵抗値はデータ・シートに記載されているのが普
たとえばAD8001では、+入力のバイアス電流は3(6MAX)μA
通です。
なのに対して、−入力では5(25MAX)μAと大きくなっています。
電流帰還型オペアンプは図からもわかるように、−入力側の入力抵
以上のことを考慮すると、電流帰還型オペアンプは非反転回路のほ
抗は低く、+入力側の入力抵抗は高くなっています。
うが使いやすいことがわかります。
AD8001では−入力側の入力抵抗は50Ωと低いのに、+入力側は
もちろん、反転アンプでも使うことはできます。しかし、ゲインを大
10MΩと高くなっています。それに応じて、入力バイアス電流
きくするためには図のように、R1の値が小さくなってしまい、その
も、−入力と+入力ではその大きさが違います。−入力のバイアス
ため前段への負担が大きくなってしまいます(図5参照)
。
ょう。通常は図8のように、R-RタイプのLPFと1/1.5のATTを入れ
と発振してしまいます。
て2V出力に調整します。オペアンプの出力は50Ωですから、50Ω
終端時に1V出力が得られることになります。しかし、DC精度はオペ
入力
アンプの性能で決まってしまいます。
+
出力
そこで、ちょっと頭を切り換えてLPFに0-Rタイプを使用してみまし
−
ょう。0-RタイプのLPFはR-Rタイプのように出力電圧が1/2になる
ようなことはありません。その結果図のように、オペアンプ出力は
6Vがそのまま現れることになります。
R2
電流が大きいのが普通です。
アラン:出力は1Vですが・・・。
3.
帰還コンデンサを付けると発振する
9
VS = ±5V
RFB = ±820Ω
6
GAIN ー dB
それとLPFの作り方には注意してください。
ドリー:はい。
意が必要です。
3
ナー)を参考にしてください。
マッチィ先生:そのとおりです。ドリーさん、DC精度も必要ですか?
マッチィ先生:そうですね。そこでオペアンプの出力でATTしましょう。
入力
図のように150Ωと75Ωがそうです。150Ωと75Ωの並列抵抗
+
は50Ωです。
出力
アラン:電流帰還型オペアンプで注意することはありますか?
−
こ の出力 を 50Ω で ター ミ ネー ション すると、6V・{75
マッチィ先生:電圧帰還型オペアンプでは図6のように、帰還抵抗R2と
G = +2
R L = 100
並列にコンデンサCFを付けることがあります。S/N改善のための
FB
帯域制限や、発振防止のための常套手段になっている進み位相補償
0
このように出力側でATTすることで、オペアンプのオフセット電圧
を施す場合です。ところが、電流帰還型オペアンプではこの手が使
V S = ±5V
R FB = ±1kΩ
−3
もATTされるので、DC特性が大きく改善されます。
図7 DC精度を上げるにはR2にフェライト・ビーズを使用する
えません。
ドリー:0-RタイプのLPFはどうやって作るのですか?
というのは、帰還コンデンサCFを付けると帰還抵抗R2との合成イ
−6
ンピーダンスが小さくなり、みかけの周波数帯域が延びてしまうか
−9
電流帰還型オペアンプの場合の帯域制限は、帰還抵抗を大きくする
100M
FREQUENCY – Hz
1G
(a)RFが大きいとき
0
R F = 698Ω
−0.1
−
R
また、入力信号自体のS/N改善が必要なら、+入力側にRCローパ
RF =
649Ω
1
ことで行います。
ス・フィルタ回路を入れるようにしてください。
0.1
OUTPUT ー dB
R2
らです。
−12
10M
−
( 1.5 (
入力
(6V)
ATT
+
出力
(2V)
(IV)
R
もし、使用する高速オペアンプの周波数帯域が製作するアンプの周
(R–RタイプのLPF)
波数帯域に比べて余裕があれば、最適な帰還抵抗値より少し大きめ
RF = 750Ω
FB
−0.3
−0.5
50
–
(2V)
にしておくと、安定性が増加するので安心です。
−0.2
−0.4
50/
(150+75 50)}=1Vとなって1V出力が得られます。
G = +2
R L = 100
V IN = 50mV
CF
電流帰還型オペアンプでは
CFを付けると発振してしまう
−0.6
R1
(6V)
R2
−0.7
−0.8
−
+
−0.9
1M
10M
FREQUENCY ー Hz
入力
出力
100M
入力
−
−
+
(6V)
R
(O–RタイプのLPF)
50Ω
←
150
–
(6V)
出力
(IV)
75
LCフィルタが必要でなければ簡単な
RCフィルタでもよい
(b)RFが小さいとき
図4 AD8001の周波数特性
6
ADM SELECTION No.24
図6 電流帰還型オペアンプでは帰還コンデンサを付けると
発振してしまう
図8 O-RタイプのLPFを使ってDC精度を上げる
ADM SELECTION No.24
7
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
23
高速オペアンプの使い方
マッチィ先生:図9にLPFを示します。これは4次のバ
0.7654
1.8478
L1
L3
−
1,0824
入力
0.7654
C2
L1
1
L3
1
C4
R2
1,5772
(a)R-R型(出力が1/2になる)
C2
C4
第4回 固定小数点演算
0.3827
入力
1.0824
−
L1
R1
−
L3
出力
0.3827
1.5772
C2
fc=1MHzのとき、各定数に(1/2πfc)を掛ける
R2
/2πfc = 1.5307/6.28×106 = 0.2437μH
/2πfc = 0.2511μF
L3′
= 1.0824/2πfc = 0.1724μH
C4′
= 0.3827/2πfc = 0.06094μF
1
C4
(b)O-R型(出力は入力と同じ)
図9 R-R型とO-R型の違い
(4次バタワース特性LPFの場合、値は正規化されている)
=
L1′
1.5307
C2′
=
1.5772
●固定小数点と浮動小数点
そこで
R2=75Ωのとき、各定数にLは乗算、Cは除算を行う
皆さんすでにご存知のように、DSPを大きく分類すると、固定小数点演
こんどは指数4ビット仮数11ビット符号1ビット(合計16ビット)の浮動
L1″
= 0.2437μH×75Ω = 18.28μH →18μH
算用(Blackfinなど)のものと、浮動小数点演算用(Sharcなど)の2種
小数点で考えてみます。仮数が2未満1以上の数になるように浮動小数
類に分かれます。あまり気にした事もないでしょうが、普段皆さんが電
点化します。図3のIEEEの表記に習って、最上位の1は省略するケチ表
卓片手に行っている演算は、一般的には浮動小数点の演算です。ただ、
現を使うと、[仮数、指数]
C2″
=
マッチィ先生:図9にLPFを示します。これは4次バタワース特性の場
0.2511μF
/75Ω = 3349PF →3300PF
L3″
= 0.1724μH×75Ω = 12.93μH →13μH
合です。参考にR-Rタイプも載せています。
C4″
=
0.06094μF
/75Ω = 813PF →820PF
一昔前までは、図1のようなそろばんが使われていました。そろばんで
R-Rタイプと違うのはR1がゼロになったことと、もちろんLCの定
は、使うに人が計算しやすい位置に桁を固定して使います。電卓が浮動
数も違ってきます。表2にO-Rタイプの定数を示しておきます。
18μH
次数 n
L1
C2
L3
出力
L1
C4
L5
C6
1.4142 0.7071
3
1.5000 1.3333 0.5000
4
1.5307 1.5772 1.0824 0.3827
5
1.5451 1.6944 1.3820 0.8944 0.3090
6
1.5529 1.7593 1.5529 1.2016 0.7579 0.2588
7
1.5576 1.7988 1.6588 1.3972 1.0550 0.6560 0.2225
L3
C2
100kHz=>[0x435, 5] → (0x435+0x800)×25
0x800が省略された分
12=>[0x400,−8] → (0x400+0x800)×2−8
となります。
なんとなく違いが分かるのではないでしょうか?
75Ω
(0x435+0x800)×25×(0x400+0x800)×2−8=1.2MHz
R2
L7
2
小数点演算で、
そろばんが固定小数点演算とイメージしていただければ、
13μH(12μH+1μH)
入力
表2 O-RタイプのLPF定数表
0x61A8×0x0004×24=1.6MHz
ここでは極端な例でしたが、固定小数点では400kHz(33%)もの誤差
C4
が出たのに対して、浮動小数点では誤差はありませんでした。
3300PF
820PF
符号部1ビット
図10 4次バタワース特性 LPF回路
(O-R型fc=1MHz, R=75Ω)
s
図1 そろばんは固定小数点演算
図10が4次バタース特性の定数の求め方です。ここではカットオフ
メモリ上の
相対アドレス
計算をする場合、計算の精度と誤差がとても大きな問題になります。も
周波数fC=1MHz、R=75Ωの場合です。
ちろんディジタル信号処理でも例外ではありません。図2のようなディ
図11と図12に実際の特性を示します。これよりfC≒1.077MHz
ジタルフィルタでも、計算の精度で、その特性の限界が決まってしまい
と分かります。設計値と若干ずれているのは、LとCに5%精度を使
写真1 60Hz周波数
ます。誤差を具体的に考えるために、
たとえば100kHzの12倍は何
用したためです。
Hzか考えてみましょう。
を 計 算 す る 事 に な りま す。2 進 数 で 計 算 す る 場 合 、1 0 0 k H z =
ています。これは使用したLの直流抵抗のためです。表3が使用した
インダクタLの仕様です。直流抵抗が2∼3ΩMAXもあります。その
ため、R=75Ωで設計してしまうと、この程度のゲイン低下は避け
図11 4次バタワース特性
LPF
(O-R型, fc=1MHz)の特性(広域帯)
0x186A0Hz と表すことができます。まずはこれを固定小数点で計
算します。16ビットの固定小数点だと符号を除いて、15ビットが有効
桁です。そこで、100kHzが最も精度が出るように小数点を決めると、
られません。気になるようであればゲイン調整にて解決できます。
100kHz=>[0x61A8] → 0x61A8×22
また、今回は測定器の都合で75Ωで設計しましたが、300Ωとか
m
1
+3
+2
+1
+0
図3 IEEE規格準拠の単精度2進浮動小数点形式
このように計算の精度、誤差からいえば、浮動小数点が断然有利です。
同じ処理速度で固定小数点演算と浮動小数点演算とをハードウエアで
計算しようとすると、その回路規模に大きな差がでます。固定小数点演
算のハードウエアの方が、はるかにシンプルな回路で実現できます。す
なわち、DSPのコストや消費電力などからすると、固定小数点用のほ
うがはるかに優れています。そのため、いまだに固定小数点演算の
DSPは根強い人気があります。
2
12=>[0x0004] → 0x0004×2 (四捨五入)
600Ωでもかまいません(都合の良い値でOKです)
。
e
では、なぜすべて浮動小数点演算にしないのでしょうか? 一般的に、
100kHz×12=1.2MHz
図12の狭帯域特性を見てください。約0.15dBゲインが小さくなっ
仮数部(有効数字部)
23ビット
指数部
8ビット
LSB
1.5307
0
作:西村芳一(株式会社 エーオーアール)
出力
R2
LSB
MSB
1.8478
1,5307
出力
LSB
MSB
R1
LSB
MSB
−
MSB
1
入力
しかしながら浮動小数点にも計算精度や誤差の点からだけではなく、
そのほかにも捨てがたいものがあります。一般的に研究所で苦労して
アランさんもドリーさんも頑張ってください。
入力
アラン、
ドリー:はい、ありがとうございました。
T
T
T
T
T
作った複雑なアルゴリズムは、浮動小数点を使ってシミュレーションが
T
行われます。現場のエンジニアは商品化においてそれをDSPなどに組
x
表3 NL453232Tの仕様(TDK社)
インダクタンス
(μH)
Q
12
18
8
50min
(2.52MHz)
ADM SELECTION No.24
h1 x
h2 x
h3 x
h4 x
h5 x
h6
み込まなければなりません。その際の固定小数点演算に落とす作業は、
たいへんな時間、労力や高い技能が要求されます。商品化までの開発
自己共振周波数
直流抵抗
定格電流
(MHz)
(Ω)
(mA)
18min
2max
225max
15min
ho x
2.8max
190max
時間が問題になる昨今、多少DSPが高くても、浮動小数点のDSPを使
Σ
えばその手間が省け、大きなメリットとなります。それに、DSPのソフ
出力
図12 4次バタワース特性
LPF
(O-R型, fc=1MHz)の特性(狭域帯)
図2 トランスバーサルフィルタとしてのFIR
トウエアを開発する人材も、たとえディジタル信号処理にさほど詳しく
ない新人のエンジニアが担当しても、浮動小数点なら比較的うまくいく
場合が多いでしょう。
ADM SELECTION No.24
9