5.1 負帰還の原理 G 正相増幅器 vi v1 + A ± Hv2 H 減衰器 図5.1 帰還回路 v2 v2=Avi vi=v1±Hv2 (5.1) v2=A(v1±Hv2) =Av1±AHv2 (1 + AH)v2=Av1 v2 A (5.2) G= v = 1+AH 1 ○式(5.2)の分母の符号が正(図5.1では負号) ⇒ 負帰還 ×式(5.2)の分母の符号が負(図5.1では正号) ⇒ 正帰還 正帰還でAH≧1のとき, 回路が不安定となり発振するため, 増幅器にはあまり使用 されない。ただし, 発振回路では正帰還を積極的に利用する 負帰還の場合, AH≫1とすると A 1 G≒ AH = H となり, 負帰還回路全体の利得は, 負帰還回路を構成している 増幅器Aの利得には無関係に, 減衰器Hの減衰量で決まる。 増幅器Aの利得 ⇒ 非線形性を有しており, 環境の変化(温度変化 電源電圧変動, 経年変化等)により特性が変動 減衰器Hの減衰量⇒受動素子だけで構成でき, 環境の変化に対し (帰還率H) て安定であり, その周波数特性等が理想的 負帰還回路 (全体の特性を改善) = 増幅器 ○利得は非常に大 ×特性が不完全 + 減衰器 ○特性が理想的 G 逆相増幅器 v1 + vi -A v2 + Hv2 H 減衰器 図5.2 逆相増幅器による負帰還 v2=-Avi vi=v1+Hv2 (5.1) v2=-A(v1+Hv2) =-Av1-AHv2 (1+AH)v2=-Av1 v2 -A (5.2) G= v = 1+AH 1 図5.2のように逆相増幅器を使用した場合は, 負帰還回路全体 も逆相増幅器となる。 逆相増幅器 ⇒ エミッタ基本増幅回路など [2種類の負帰還増幅回路] G 正相増幅器 v1 + vi A v2 逆相増幅器 v1 + vi -A v2 + - Hv2 G H 減衰器 Hv2 H 減衰器 v2 A (> 0) G= v = 1+AH 1 v2 -A (< 0) G= v = 1+AH 1 正相増幅器による構成 (正相負帰還増幅器) 逆相増幅器による構成 (逆相負帰還増幅器) 5.2 負帰還の効果 [負帰還の欠点] ○ 全体の増幅度は 1/(1+AH) に低下する。 (帰還量F=1+AH ) [負帰還の利点] (a) 増幅度の安定性が増す(利得変動の減少)。 (b) 増幅器の出力段で発生する非線形ひずみ(雑音)が低減 される。 (c) 周波数の帯域幅を広くできる。 (d) 入出力インピーダンスを変えることができる。 5.2.1 利得変動の減少 [素子感度の定義] (利得の安定度を表す尺度) 回路を構成している任意の素子xがx+⊿xに変化したとき, 利得GがG+⊿Gに変わったとすると ⊿G x G ∂G G Sx = lim ⊿x = ・ G ∂x ⊿x → 0 x [x=Aの場合の負帰還増幅回路の素子感度] A Aが変化した場合のGの素子感度はx=A, G= として 1+AH A ∂G 1 G ・ = Sx = G ∂A 1+AH ⊿xが微小であるとすると ⊿G G SxG ≒ ⊿x , x ⊿G ⊿x G ≒Sx G x ⊿G 1 ⊿A ⊿A G G ≒SA A = 1+AH A ⊿A (負帰還なしの場合 A ) 1 Aの変化率の 倍にGの変化率は低減される。 1+AH [x=Hの場合の負帰還増幅回路の素子感度] A Hが変化した場合のGの素子感度はx=H, G= 1+AH として SHG H ∂G -AH = ・ = G ∂H 1+AH AH≫1とすると SHG =-1 したがって ⊿G ⊿H ⊿H G G ≒SH H =- H Hの変化はそのまま直接回路全体の利得の変化となる。 [ループ利得AH] 正相増幅器 vi AHvi A Avi H 減衰器 ループ利得AH 増幅器Aの入力から減衰器Hの出力までの負帰還回路を一巡 する利得 AH をループ利得という。 利得:A, 帰還率:H, 帰還量:F=1+AH , AH :ループ利得 5.2.2 非線形ひずみの低減 正相増幅器 ~ vn v1 G 正相増幅器 v1 + vi G v2=G v1+ vn (G=Aとする) 図5.4 負帰還なし v2=Gv1+ vn 信号に対する利得は等しいとする A - Hv2 H 減衰器 図5.5 負帰還あり v2=Avi+ vn vi=v1-Hv2 v2=A(v1-Hv2)+ vn (1+AH) v2=Av1+ vn A 1 1 v2= 1+AH v1+ 1+AH vn=G v1+ 1+AH vn 信号成分 雑音成分 ~ vn v2 [ひずみ率Kの定義] K=雑音成分(ひずみ)/信号成分 [負帰還あり] vn 1 1+AH K f= = G(1+AH) Gv1 [負帰還なし] vn 1 vn K= Gv = G v1 1 vn v1 1 1+AH 倍に低減 負帰還をかけることにより,雑音(ひずみ)vnは1/(1+AH)に低減される。 ただし,入力段で発生する雑音は負帰還によって低減できない。 5.2.3 周波数特性(帯域幅)の改善 増幅回路の高域しゃ断周波数を fch とすると, 増幅器の高域に おける利得Ahは (テキストP.91参照) A0 Ah = 1+j f fch となる。ただし, A0 は中域での増幅器の利得でA=A0である。 高域での負帰還回路の利得をとGhすれば式(5.2)より A0 A0 f 1+j 1+A0H A0 Ah f ch Gh = = = = 1+AhH f 1+A0H+jf/fch A0 1+ H 1+j f (1+A H) f ch 0 1+j G0 fch = A0 f 1+j ただし、f’ch = fch(1+A0H), G0 = 1+ A H f’ch 0 負帰還回路の高域しゃ断周波数 f’ch は(1+A0H)倍に高くなる。 同様に低域しゃ断周波数を fcl とすると, 増幅器の低域における 利得Alは (テキストP.93参照) A0 Al = 1-j fcl f 低域での負帰還回路の利得をとGlすれば A0 A0 f cl 1-j 1+A0H A0 Al f Gl = = = = 1+AlH fcl 1+A0H-jfcl/f A0 1-j f(1+A H) 1+ H fcl 0 1-j G0 f = A0 1-j f’cl ただし、f’cl = fcl/(1+A0H), G0 = 1+ A H f 0 負帰還回路の低域しゃ断周波数 f’cl は1/(1+A0H)倍に低くなる。 A0 A0 √2 負帰還なし B A0 G0 = 1+ A H 0 G0 G0 √2 負帰還あり B’ f’cl fcl fch f’cl = fcl/(1+A0H) f’ch f’ch = fch(1+A0H) 注) GB積は一定である。
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