平成 26 年度 武田塾事業報告(案) 1.理念・運営方針 児童養護施設武田塾は、保護者の適切な養育を受けられない子どもを、公的 責任で保護・養育するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うとす る社会的養護の理念に基づき支援を行いました。具体的には (1) 家庭的養護と個別化 (2) 発達の保障と自立支援 (3) 回復をめざした支援 (4) 家族との連携・協働 を目指した支援を基本とし、事業計画及び家庭養護推進計画に基づいて、児童 への支援の充実に向けて取組みました。 2.児童の状況 (1)入所・在籍状況( )は 25 年度 平成26年度の在籍児童延べ人数(毎月初日在籍数の年間合計)は 555 名 (584 名)、毎月初めの平均在籍数では 46.3 名(48.7 名) と減尐しました。 入所児童数 11 名(8 名)に対し、退所児童数は 12 名(12 名)で、年度末の在 籍児童数は 42 名となっています。 地域小規模施設へ本体施設より 2 名移行を検討しましたが、年度途中での 転校等の理由で見送られ、男女別、部屋の空き状況等で定員数を満たすまで には至りませんでした。また、退所については、高校卒業就労2名の他、家 族関係を調整し引取りとなった4名、里親への措置変更 2 名で、年度末 13 名 の空き状況が生じました。 (2)一時保護児童の状況 平成26年度においては実人数で 22 人、延べ人数では 991 人の子どもの 一時保護を受託しました。(25 年度実人数 29 名、延べ人数 467 人) 前年度より一時保護の実人数は減りましたが、保護者の入所同意の状況で保 護日数が大幅に増えました。 3.援助目標と結果 (1) 支援の充実 ①生活支援 前年度に引き続き、1階幼児、2階男子、3階女子とフロアに分かれ、 できる限り尐人数規模の生活環境で、個別に自立支援計画に基づく支援 を行いました。 ア) 1階幼児フロア(グループケア)においては、6名からスタートし年度末 1 に9名であった。小1、2年児2名については、愛着の形成や発達面 の課題から、より個別化した援助が必要と判断、柔軟な対応をとるこ ととし、幼児フロアでの生活を継続した。 イ) 2階男子フロアにおいては、尐人数の生活環境の実現を図るため、高 校生グループケアと併行して、中学生、及び小学生の生活エリアを区別 した。このことにより、年尐児ものびのびとした生活を送ることができ ました。 ウ) 3階女子フロアにおいては、全員が女性支援者であることから子ども 達との日常的な会話を十分に持ち、そこから出てくる課題に取り組みま した。また、目標を定めた高校、短大への入学を実現した子どもがあり、 他の子どものモデルとなっています。 ② 学習支援 低学力を補い、学習習慣を身につけることを目的として、26年度も以下の 支援を行いました。 ア) 学習塾の通塾について スクール IE 国分校において、毎週火曜日と木曜日の週2回、学習意 欲のある中学1~3年生の6名が進学に向けて、数学と英語を中心に 取組んだ。 イ) 施設内公文式教室について、 毎週火曜日と金曜日の週2回、年尐児から小学6年生までを対象に、 13 が算数、国語、英語の3科目を中心に基礎から学びました。 ウ) 大阪教育大学学習支援ボランティアについて 大阪教育大学学習支援ボランティアは、1回生から4回生までの学 生 36 名が、本体施設 33 名、地域小規模児童養護施設 3 名に分かれ、 小学生から中学生を対象にマンツーマンで月曜日から金曜日の間で週 1回、午後6時~9時までの間で最低1時間を目処に、担当職員と連 携しながら、個々の学力にあった学習支援に取組みました。 ③治療的支援 平成 26 年度は臨床心理士3名及び臨床心理学系大学1名の心理療法士 が計 12 名の子どもの心理療法を実施した。対象の年齢は幼稚園から高校 生まで幅広く分布しているが、小学生が特に多い。 子どもは養育環境から愛着形成が困難で、大人への信頼感を持ちにく く、大人に守られ、理解してもらうという安心感を持ちにくい傾向がみ られます。心理療法士は週1回 50 分という限られた枠組みの中ではある が、子どもたちが経験した心の痛みに共感し、理解することに努め、ま た、生活支援を行う職員との連携により、子どもたちの心の中に大人へ 2 の信頼する気持ちが回復するよう取り組みました。 ④家族支援 家族支援専門員を中心に、子ども家庭センター等と連携し家庭引き取 りとなった子どもは4名、家族関係を調整し家族との安定した交流を図 っています。 里親支援専門員を中心に、家庭復帰が困難な子どもを2名里親委託し、 週末里親を4名の子どもが活用しました。専門員は、子ども家庭センタ ー、里親会と連携し新規里親の開拓などを進めました。 ⑤行事、余暇 今年度は、子どもたちの希望より夏のバーベキュー、花火やクリスマス 会を塾全体の行事として取り組みました。前年度に引き続き各フロアやホ ーム毎の特色を生かした行事を行いました。 毎年恒例となっている柏原市ロータリークラブの招待行事や民生児童 委員会が主催するブドウ狩り、民間篤志家のご好意による朽木村キャンプ 等の様々な招待行事の他、職員と児童の企画による行事を実施しました。 民間ボランティアや学生ボランティアが小学生グループのフットサル のチームを指導し、府内児童養護施設の大会で準優勝し滋賀県で行われた 近畿大会に出場し、フットサルが生活の中で楽しみや目標になってきてい ます。 4.施設の小規模化・家庭的養護の推進 (1) 地域小規模児童養護施設 奈良県三郷町において2か所の地域小規模児童養護施設(グループホーム) を運営しています。 ① 三郷ホーム 中学生、高校生の計4名(男子2名、女子2名)が生活。中学生は地元の 中学校、高校生3名は県立高校等に通学したが、2名が卒業し就職しました。 住み込み制による職員の負担が大きく、職員体制を見直す必要性があり平成 27年度より交代制勤務に替えます。 ① 勢野北ホーム 女子6名(中学生3名、高校生3名)が生活。ゆったりした環境で落ち 着いた生活をおくることで、子どものそれぞれの課題がより明確になりま した。子どもへの支援には職員体制や立地条件等から、本体職員とのホー ム会議や三郷ホームとの三者でのホーム間会議を毎月行い情報共有等に努 めましたが、より職員間の連携の工夫が求められます。 3 (2) 小規模グループケア 1階フロアの幼児居室については、22 年度よりグループケアユニットとし て運営、24 年度よりグループケアユニットとして運営を開始した2階フロア の1区画は、25 年度より高校生男子の生活エリアとしました。 併せて、小学生及び中学生の生活エリアを区別し、お互いが入り込まない空 間を確保することにより、特に小学生においては、年長児からの軋轢を受けず に伸び伸びと生活できることとなりました。 平成 25 年度は、施設内で検討グループを起ち上げ、既に運営している小規 模グループケア、地域小規模児童養護施設を含めた今後の中・長期にわたる計 画をまとめました。この計画に基づき、ファミリーホームの実施に向け候補地 や物件の検討を始めています。 5.健康管理 常勤の看護師による、治療や予防・健康管理に取り組み、平成 26 年度の受 診状況は、総計で 926 件であった。前年度の 777 件に比し、149 件増加してお り、とくに歯科の 77 件、小児科の 44 件増えています。 家庭での生活習慣が確立されていない子どもは、口腔衛生が悪いことが多く、 歯科通院では虫歯治療だけでなくデンタルケアをして、健康の自己管理の一環 としています。 幼児など抵抗力の弱い子どもは、季節の変わり目に体調を崩し、インフルエ ンザ等の予防接種をしていても罹患することが多く、最近は、アレルギーの子 どもが増えており、季節の変わり目にアレルギー性の結膜炎・鼻炎などの受診 も増えています。 入所時には、母子手帳がなかったり予防接種の履歴が不明であったり、乳幼 児健診を受けていない子どもが多いため、予防接種を受けさせたり眼科受診を 入れています。 6.権利擁護 権利擁護の取組みは、意見箱の設置、自治会活動の活性化等で進めてきた が、平成 26 年度は、前年度に続き第三者委員の定期的(毎月 1 回)な訪問を 得て、意見箱に投函された意見の報告、また、改善点を把握するべく委員によ る子ども及び職員への面談を行いました。面談の場所を工夫し、委員が子ども たちと一緒に夕食をとるなどして、子どもたちも徐々に打ち解けながら率直な 意見が話される場となっています。(計9回、子ども 10 名、職員 15 名) また、第三者委員による職員向け人権研修や、人権の自己チェックを実施 しました。 4 平成 24 年度から 3 年に1回以上の受審を義務付けられた福祉サービス第三 者評価を、平成24年度に続き2回目の受審をした。受審に当たり、全職員に よる自己評価を実施しました。 7.地域交流と連携 青山台自治会の老人会の皆さん方には登下校時に見守りをしていただいて おり、武田塾の子どもたちの安全に大きな貢献をいただいています。 地域の事業所の社員の方たちによる清掃活動や労働組合の方々からの隔月 の誕生日プレゼント、理美容業を営む方によるカットボランティアなど、いろ いろな形でのサポートをいただいています。 さらに、平成 25 年度から始まった、倭太鼓演奏グループの練習に地域交流 ホールを定期的に提供することで、子どもたちが鑑賞する機会を得るとともに、 希望する子どもへの指導も受けることとなりましたし、また、アマチュア将棋 の有段者の協力で、定期的に将棋教室を開催しました。 また、当法人高井田苑とともに柏原市民間社会福祉施設連絡会として、社会 貢献事業にも取り組ました。 8.研修・会議 研修は、法人・施設内研修で対人援助の理解や SV や新人研修を行い、外部 では府、大社協、児童施設部会、地域関係機関等が主催する研修(年間 66 回) に参加しました。 これらの研修の成果を受講者だけでなく、施設職員全体で共有するため、 伝達研修の実施等の取り組みが必要です。 9.実習生関係( )内は 25 年度 平成 26 年度は 32 校(19 校)より 72 名(60 名)の実習生を受け入れました。 年間を通じて受け入れているが、7、8・9月の夏休み期間、及び2月か ら3月にかけての春休み期間の実習が多い。 男女比では、男子 7 名、女子 65 名。ほとんどが保育士資格希望者です。 学校種別では4年生大学が 12 校、短期大学が 14 校、専門学校が6校です。 5
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