老健施設の未来を 変えていこう

巻 頭 言
老健施設の未来を
変えていこう
全老健常務理事、介護老人保健施設千手苑理事長
岡部 功
総務省統計局によると、日本の総人口に占める
65 歳以上の人口の割合(高齢化率)は25.9%と
なり、人口、割合ともに過去最高となった。今後
も高齢化率は増加していくが、高齢者人口は、市
町村レベルでは地方を中心にすでに減少が始まっ
ている。当施設も地方にあり、周囲の町とともに
人口減少が激しく、高齢者人口も減少している。
介護人材の不足と空きベッドの増加で入所定員を
減らす施設も出てきている。我々にとって重要な
のは高齢化率ではなく高齢者人口で、地域におけ
る環境をよく見極めた上で、常に経営を考えてい
く必要がある。
今回の改定で介護報酬はマイナス2.27%と引き
下げられたが、在宅強化型や在宅復帰・在宅療養
支援機能加算型にもなれない約70%の会員施設
はそれ以上の大幅なマイナスとなる。私は 6 年前、
自らの理事長報酬を15%下げたが、この 4 月か
らさらに20%カットした。
急性期病院との連携はもとより、地域医療連携
懇和会に委員として、また、医療・介護シームレ
スケア研究会に世話人として出席するなど、地域
で老健施設としての役割をアピールしていくこと
が大切である。また、地元の自治会との協力も重
要で、私は昨年 4 月から 1 年間自治会長を引き受
け、地域包括ケアシステムについても地域住民に
説明した。県・市などの行政や医師会の研修会、
委員会等の役員や委員として参加し、これまで以
上にさまざまな機関と連携をとっていくことの重
要性を実感した。
厚生労働省は地域包括ケアシステムの構築を推
進するために、介護報酬改定に関する今後の課題
として、質の高い介護サービスの安定的な供給と
介護人材の確保、医療と介護の連携・機能分担、
報酬体系の見直し、簡素化などの検討を行うとと
もに、平成30 年の診療報酬との同時改定も見据
えた対応を考えている。
具体的には、介護サービスの質の向上の評価手
法の確立を図り、利用者の状態を維持・改善する
取り組みを促すための評価のあり方について検討
する。すなわち、転倒、褥瘡、誤嚥などのリスク
が対象となる可能性がある。また、ケアプランや
ケアマネジメントの質的改善、中重度や認知症の
高齢者への対応について、引き続き調査・研究を
進める。
施設のリハビリについては、利用者の生活機能
の維持改善に資するよう、必要な見直しを検討す
る。介護保険施設の利用者への医療提供のあり方
について、診療報酬との同時改定を念頭に、医療
保険との関係に留意しながら必要な見直しを検討
する。その他、介護事業経営実態調査については、
調査方法などを検討する。介護職員の処遇改善の
状況について適切に把握するなどがあげられてい
る。
従って、全老健でもこれまでのデータをもとに
さらに調査・研究を行っていく必要がある。
高齢者のリハビリは、
「身体機能」に偏ったリ
ハビリから、
「活動」や「参加」などの生活機能
全般を向上させるためのバランスのとれたリハビ
リの実施に目が向けられるようになった。
老健施設にとって、リハビリはブランドのひと
つである。医師、看護師、リハビリ職、介護職、
管理栄養士、薬剤師等の多職種がいる世界に類を
見ない医療と介護の機能を併せもつ高齢者施設と
して、今後もこのブランドを国内外に発信してい
くことが重要である。老健施設は国内で約4,000
か所となったが、各地域で状況が大きく異なるた
め、置かれた状況の違いを踏まえた上で、自分の
施設の未来を変えていく必要がある。
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