2015年7月16日 グリーン・グリッド(The Green Grid)日本支部 新たに2社が「グリーン・グリッド グッドプラクティス」を受賞 データセンターのエネルギー効率改善に向け さくらインターネットは温度変化の緻密なデータ分析を、ビットアイルは斬新な高負荷ラックの集約化を実践 ICT 全般のエネルギー効率化に取り組む世界規模の組織、グリーン・グリッド(The Green Grid、本部:米国オ レゴン州ビーバートン)の日本支部では、データセンターのエネルギー効率の改善で顕著な取り組みや成果 を達成した企業・団体の取り組みを表彰する「グリーン・グリッド グッドプラクティス」の受賞企業として、さくらイ ンターネット株式会社と株式会社ビットアイルを選定しました。「グリーン・グリッド グッドプラクティス」受賞企業 は、昨年のTIS株式会社に続き、今回の発表で3社となりました。 「グリーン・グリッド グッドプラクティス」では、グリーン・グリッドが推奨するエネルギー効率化の指標である PUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)など、指標を用いたエネルギー効率化の改善活動を評価 し、受賞企業・団体を選定しています。特徴は、エネルギー効率指標の絶対値の優劣ではなく、計画性 や継続性、あるいは独創性などエネルギー効率の改善に向けた企業・団体の創意工夫に満ちた取り組 みを基準に評価する点にあります。 今回、さくらインターネット株式会社と株式会社ビットアイルからエントリーがあり、グリーン・グリッドグッド 日本支部で厳正な審査を行った結果、定量化、目標設定と計画性、継続性、そして社会貢献性の観 点から審査基準を満たしたことにより、両社による今回の事例を「グリーン・グリッドグッドプラクティス」 として選定しました。両社のプロジェクトと評価ポイントは次の通りです。 さくらインターネット株式会社 プロジェクト名:メンテナンスを活用したサーバルームの熱だまり問題の改善 プロジェクト内容: プロジェクト対象の東京データセンターでは、2006年の開設当初から継続してサーバルームのフロアの床下 とすべてのラックの温度を常にモニタリングしています。2013年頃から、床下の2箇所で気になる熱だまりが発 生し、その原因究明として過去の温度変化のログデータに着目しました。ログデータを分析した結果、熱だま り付近の空調機をメンテナンスのため停止した日に、その2箇所の熱だまり付近では、床下、ラックともに温度 が上昇するのではなく、反対に下がることを見出しました。熱だまり付近のラックを契約している顧客の承諾を 得て、空調機を試験的に停止し、経過を観察した後、最終的に問題がないと判断して、2台の空調機を継続 的に停止し、電力削減を実現しました。 評価のポイント: 過去の温度データの蓄積を定量的に分析し、運用の立場から温度データと課題事象との因果関係を丁寧に 観察し、原因を探り出しました。大きな追加投資をすることなく、問題を解消し、電力削減とサービスレベルを 両立させながら、最終的に顧客の信頼を獲得している点を高く評価しました。 株式会社ビットアイル プロジェクト名:高負荷ラック集約による空調機の運転台数削減 プロジェクト内容: プロジェクトの対象となった東京の第4データセンターは、2009年の開設当初から省エネを目指した運用を行 っていましたが、東日本大震災後、さらなる省電力化が求められ、かねて検討していた高負荷ラックの集約化 による空調機の運転効率の向上に着手しました。自作のエアフロー計測ボックスを使用して、該当サーバル ームにある400箇所にのぼるすべてのエアフロー吹き出し口の風量計測を行い、吹き出しの良好な箇所を高 負荷ラックエリアとして指定し、空調機の運転効率を目指しました。また、空調機の運停に際しては、従来、明 確な基準がなかったため、これを機に停止判断基準のフローを作成し、PDCAサイクルを回して運転台数の 管理するようにしました。これらの取り組みの結果、3年で106万kWhの省エネ効果を達成しました。 評価ポイント: 通常、ラック内のサーバの排熱を考慮して、サーバルーム内では高負荷ラックは集約せず、分散させて熱負 荷の平準化と空調機の負担を減らすことが一般的ですが、逆転の発想で、高負荷ラックの集約配置により、 空調機の運転台数を削減し、稼働する空調機の運転効率を向上させました。加えて、空調機の停止判断基 準のフローを作成するなど、基準の設定・標準化を行い、空調機を継続的に最適稼働させ、信頼性と効率性 を両立させた運用を実現しました。また、設備担当者の努力だけでなく、営業担当者、デリバリー運用担当者 との協力により、商用データセンターとして、一般的に困難とされている顧客ラックの配置調整を実施した点も 評価しました。 グリーン・グリッド日本支部では、通年で「グリーン・グリッド グッドプラクティス」を募集しており、応募状況に応 じて適時、審査を行い、「グッド プラクティス」として選定された場合、順次表彰介します。「グリーン・グリッド グ ッドプラクティス」の概要は別添の通りです。 グリーン・グリッドについて 2007年に設立されたグリーン・グリッドは、世界各地の会員企業によって構成される業界団体として、ICT 全 般のエネルギー効率化を推進しています。グリーン・グリッドは、データセンターから個人向けコンピューター まで、コンピューティングおよびコミュニケーションの全域へとエコシステムの範囲を拡張し、世界のIT産業に 対して、エネルギー効率の改善に必要な指標、ツール、ベストプラクティス、指標を提供していきます。グリー ン・グリッドは、特定企業の製品あるいはソリューションを推奨するのではなく、データセンターにおけるエネル ギー効率の改善に必要なベストプラクティス、指標および技術を業界全体の視点から提供することを目指して います。グリーン・グリッドに関する詳細については、www.thegreengrid.jp をご覧ください。 (別添) 「グリーン・グリッド グッドプラクティス」」の概要 名称: 「グリーン・グリッド グッドプラクティス」 内容: データセンターのエネルギー効率の改善で顕著な取り組みや成果を達成した企業・団 体を表彰し、グッド プラクティスとして広く啓発 対象: 日本国内データセンター 募集期間: 通年 主催: グリーン・グリッド 対象企業: 日本国内にデータセンターを設置し、自社で、もしくは事業展開として、応募時点で 6 ヵ月以上データセンターを実務運用している団体・企業 評価内容: PUE によるエネルギー効率の絶対値の優劣ではなく、エネルギー効率化に対する取り 組みや指標改善の継続性など、改善活動を主眼に評価 計測条件: 1) エネルギー効率改善の期間 エネルギー効率の改善活動を継続的に行い、応募時点で 6 ヵ月以上、その活動を実 施していること 2) エネルギー効率改善の定量化 グリーン・グリッドが推奨する評価基準(PUE)を活用し、改善前後で定量的な計測が行 われていること 評価基準: 下記 5 項目で評価 1) 定量化:データセンター施設で、PUE を活用したエネルギー効率促進プログラム に基づいて改善前・改善後の定量化が行われている 2) 目標設定と計画性:分析した内容に基づいて改善の対象を特定し、その対象毎に 目標を設定している。さらに目標達成のために改善計画の作成をしている 3) 継続性:改善活動を継続的に実施し、成果をあげていること。その際、改善効果を PUE を用いて相対的に評価している 4) 社会貢献性:エネルギー効率改善に向けて活動をグッドプラクティスとして業界に 向けて広く展開し、より多くのデータセンターでのエネルギー効率化の活動に協力 する意向を保持している 5) 独創性:エネルギー効率を考慮した上で、独創的な特色をもった活動を行ってい る(例:エネルギー効率の高い事業継続計画を実施している、など) 評価・表彰: 応募状況に応じて適時、審査を行い、「グッドプラクティス」に該当した場合、順次表彰・ 紹介。グリーン・グリッドが予定する各種イベント(例:四半期開催のメンバーワークショッ プや、年次開催のメンバー総会ならびにグリーン・グリッド・フォーラムなど)やホワイトペ ーパー等で積極的に紹介 お問合せ先: グリーン・グリッド事務局 (E メール: [email protected])
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