平成 22 年度活動報告書

函館工業高等専門学校
技術教育支援センター 平成 22 年度活動報告書
5.研修・研究活動
・採択課題紹介
課題名
省燃費競技車両の開発
氏
名
川合
種
別
校長裁量経費(学外共同研究)
政人
省燃費車両競技(通称「エコラン」
)は、市販の 4 サイクルガソリンエンジンを使用し、車体・
その他は自作して、その性能(卖位燃料あたりの走行距離)を競い合う競技である。競技内容が非
常にシンプルであるがゆえに、技術力の蓄積が成績に大きく影響する。本研究では次年度以降の競
技への参加を目標として、競技車両(以下「エコラン車両」としるす)の試作を行い、製作に必要
なノウハウを蓄積することを目的とした。車両の試作に先立って、競技内容に関する情報収集を行
なった。共同研究者である八戸高専の村山准教授の協力により、八戸高専自動車工学部のエコラン
車両の視察を行なった。その結果、エコラン競技における一般的な車体構造などの豊富な情報を得
ることができた。エコラン競技大会の規則では車輪数は 3 または 4 輪と規定されているが、軽量化
や転がり抵抗の低減ために前 2 輪・後 1 輪の 3 輪構成が一般的である。エンジンは 4 サイクル 50c。
c。エンジンの使用が義務付けられている。エンジンの改造は自由であるため、上位成績車両では
排気量の変更、クランクの自作、またバルブ休止機構の採用など、高度な技術を駆使して性能向上
を行なっている。車体構造については、アルミ合金やステンレス鋼など各種金属パイプを使用した
スペースフレーム構造と、炭素繊維強化プラスチック(C-FRP)を用いたモノコック構造が参加車
両の大半を占めている。モノコック構造は形状自由度が高く、軽量・高剛性の車体を製作可能とな
るメリットがあるが、雄・雌型の製作などにノウハウと時間を要することや材料費が高いというデ
メリットがある。そのため、モノコック構造に比較して製作がしやすく、材料費も安いスペースフ
レーム構造を選択している車両が多い。
次に情報収集結果を踏まえて、試作車両 1 号の試作を行なった。試作車両 1 号の 3D-CAD モデル
を図 1 に、製作途中の外観を図 2 に示す。初めてのエコラン車両製作であることから、複雑な構造、
機構などは採用せず、製作や整備の容易でトラブル発生の可能性を極力抑えることとした。車輪の
配置は一般的な前 2 輪・後 1 輪とした。エンジンの主要機構は無改造で使用するが、動力伝達部で
の損失を低減するために、エコランでは不要な変速機を取り外した。これにより、クランク軸から
チェーン減速 1 段で後輪を駆動する。エンジン制御については、試作車両 2 号以降への発展を見据
えて電子制御燃料噴尃装置を採用した。さらに、PIC マイコンを使用した点火制御回路を製作して、
点火時期を任意に制御することによる燃焼効率の向上をはかることとした。試作車両 2 号では、市
販品を使用している燃
料噴尃制御と自作した
点火制御を統合したエ
ンジン制御システムを
製作する予定である。
図 1 試作車両 1 号の CAD モデル
図 2 試作車両 1 号の製作状況
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