はじめに本書は元自動車会社の技術者ら数人で試作した超小型電気自動車（マギー１と命名）を題材に電気自動車の作り方を述べたものである。本来、電気自動車の作り方としては汎用的な設計製作方法を網羅するべきであるが、そのためには多くの紙面が必要になり、またそれぞれの専門家に分担をお願いしなければならない。そこで本書では、マギー１を題材にその具体的な作り方を紹介する。一般に製品開発は商品企画からスタートし適用法規などを確認しながらデザイン企画、技術構想、構想図作成、設計図面作成、試作を経て生産へ到達する。本書は、それぞれのプロセスを順を追って説明するが、「電気自動車の設計と製作」に焦点を絞ることとし、それ以外のプロセスは簡単に概要のみを記述する。商品企画デザイン企画技術構想構想図情報収集適用法規確認設計試作生産本書の構成は、第１章に商品企画から構想図までを簡単に記述し、第２章以降に設計から試作までを詳細に記述する。マギー１は大掛かりな工作機械は使わず手作りで完成させたものである。電気自動車はガソリン車と異なり、構造が簡単で部品点数も少なくて済むためその気になれば誰でも作ることができる。大学の研究室等で研究用の電気自動車を作る時に本書が参考になれば幸いである。一般的な製作技術はなるべく Appendix にまとめたので必要に応じて参照されたい。なお、ここで試作したマイクロ EV は 2006 年から 2009 年にかけて取り組んだものであり、ここに記載する法規制や技術内容は当時のものである。本書は設計の部分を高瀬章氏（元富士重工業㈱）、電気の部分を時崎久氏（元三洋電機㈱）、ボディ製作の部分を宗村正弘氏（元富士重工業㈱、現㈱シンクトゥギャザー社長）の協力をいただいた。また、電気の基礎の部分は群馬大学白石研究室の協力をいただいた。また、本書の出版に当たっては、株式会社ゼットエムピーの谷口恒社長および今西暢子氏のご援助にあずかり心から感謝の意を表する。複製禁止株式会社ゼットエムピー 3 ©Shuji Matsumura