佐志のモジ織り ~奇跡的に復元された葛布。現代の創作織りに光彩を放つ~ 分 野 産業 地 域 唐津 ◎地図・写真・統計資料など 唐津市佐志にモジ織りと言われた素朴な織物技術が昭和40年代の終わりご ろまで伝承されていた。カンネカズラと呼ばれる葛(くず)の繊維を経糸(た ていと)緯糸(よこいと)に使う粗めの布で、多くは蒸し器であった蒸籠(せ いろう)の「シキノ」(敷布)になっていた。以前は漁労用の網として使われ ていた。 宮崎さんから復元実習を受ける松尾さん (唐津市教育委員会より) 葛布としては静岡・掛川周辺の製品が知られているが、経糸に絹、綿、麻な どを使っており、古代のままの技術で織られるモジ織りは極めて貴重な技法と して、染織関係者の注目を集めた。昭和40年に刊行された『佐志の葛布』 (野間吉夫著)によると、当時、佐志にはモジ織りが出来る女性が4、5人い たが若い人でも60代後半で、高齢化が進んでいた。その後、シキフの需要も 復元されたモジ織り (唐津市教育委員会より) 激減し、40年代半ばには継承者は2人だけとなり、さらに2人が亡くなった ことから、古代の息吹を伝える佐志のモジ織り技術は途絶えてしまった。 この後、モジ織りは奇跡的な形で現代に復活する。染織の勉強を始めていた 松尾鏡子さん(唐津市熊の原)がモジ織りに強い関心を持ち、佐志でモジ織り を覚え伊万里に移り住んでいた当時80代の末長スマさんから工程を学んでい た。また、佐志出身で菜畑在住の宮崎マセさん(当時93歳)がおぼろげに織 り方を記憶していることが分かり、唐津市教育委員会が技術復元実習の場を用 意、試行の中で松尾さんへの継承につながった。この時使われた地機(じば た)は、唐津市の歴史民俗資料館に保存されている。 ◎引用・参考文献(出典) 技術をつないだ松尾さんは、モジ織りを専門としているわけではない。さま ◆『末盧國 第3巻』148、 ざまな素材を選び、多様な染め、織りを駆使して独創性あふれる作品を作り出 149号 原口泱泰著 ◆『絲と色 松尾鏡子 している。継承したモジ織りの技術は、自然染料で染められた絹糸に葛糸が織 織物選』 松尾鏡子著 ◆『西日本 織物の民俗誌』 後藤為義著 ◆『佐志の葛布』野間吉夫著 よみがえっている。 ◆『日本の伝統織物』 富山弘基・大野力著 光沢が特色のモジ織りの糸づくり工程は松尾鏡子著『絲と色 松尾鏡子織物 ◆洋々閣HP―女将のご挨拶 第28号 り込まれるなど、気品あふれた現代作品として 選』や『末盧國』149号掲載の「モジ織りについて 2」などに詳しく紹介さ れているが、時間と根気を必要とする手仕事だ。 唐津市近代図書館へ お問い合わせください。 ■電話:0955-72-3467 ■ホームページ: http://tosyokan.karatsucity.jp/hp/cnts_lib/index.ht ml ◇唐津の魅力継承事業◇
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