15. 佐志のモジ織り~奇跡的に復元された葛布。

佐志のモジ織り
~奇跡的に復元された葛布。現代の創作織りに光彩を放つ~
分 野
産業
地 域
唐津
◎地図・写真・統計資料など
唐津市佐志にモジ織りと言われた素朴な織物技術が昭和40年代の終わりご
ろまで伝承されていた。カンネカズラと呼ばれる葛(くず)の繊維を経糸(た
ていと)緯糸(よこいと)に使う粗めの布で、多くは蒸し器であった蒸籠(せ
いろう)の「シキノ」(敷布)になっていた。以前は漁労用の網として使われ
ていた。
宮崎さんから復元実習を受ける松尾さん
(唐津市教育委員会より)
葛布としては静岡・掛川周辺の製品が知られているが、経糸に絹、綿、麻な
どを使っており、古代のままの技術で織られるモジ織りは極めて貴重な技法と
して、染織関係者の注目を集めた。昭和40年に刊行された『佐志の葛布』
(野間吉夫著)によると、当時、佐志にはモジ織りが出来る女性が4、5人い
たが若い人でも60代後半で、高齢化が進んでいた。その後、シキフの需要も
復元されたモジ織り
(唐津市教育委員会より)
激減し、40年代半ばには継承者は2人だけとなり、さらに2人が亡くなった
ことから、古代の息吹を伝える佐志のモジ織り技術は途絶えてしまった。
この後、モジ織りは奇跡的な形で現代に復活する。染織の勉強を始めていた
松尾鏡子さん(唐津市熊の原)がモジ織りに強い関心を持ち、佐志でモジ織り
を覚え伊万里に移り住んでいた当時80代の末長スマさんから工程を学んでい
た。また、佐志出身で菜畑在住の宮崎マセさん(当時93歳)がおぼろげに織
り方を記憶していることが分かり、唐津市教育委員会が技術復元実習の場を用
意、試行の中で松尾さんへの継承につながった。この時使われた地機(じば
た)は、唐津市の歴史民俗資料館に保存されている。
◎引用・参考文献(出典)
技術をつないだ松尾さんは、モジ織りを専門としているわけではない。さま ◆『末盧國 第3巻』148、
ざまな素材を選び、多様な染め、織りを駆使して独創性あふれる作品を作り出 149号 原口泱泰著
◆『絲と色 松尾鏡子
している。継承したモジ織りの技術は、自然染料で染められた絹糸に葛糸が織 織物選』 松尾鏡子著
◆『西日本 織物の民俗誌』
後藤為義著
◆『佐志の葛布』野間吉夫著
よみがえっている。
◆『日本の伝統織物』
富山弘基・大野力著
光沢が特色のモジ織りの糸づくり工程は松尾鏡子著『絲と色 松尾鏡子織物 ◆洋々閣HP―女将のご挨拶
第28号
り込まれるなど、気品あふれた現代作品として
選』や『末盧國』149号掲載の「モジ織りについて 2」などに詳しく紹介さ
れているが、時間と根気を必要とする手仕事だ。
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