秋田県農山村におけるフィールドワーク教育の 可能性に関する調査研究 2014 年度活動報告書 国際教養大学地域環境研究センター 椙本歩美 はじめに 近年、大学と地域社会の連携が求められています。大学や地域はそれぞれ特色があるよ うに、連携の目的やしくみも多様です。全国でも高い人口減尐率や高齢化率にある秋田県 では、地域によって抱える課題も様々ですが、大学は多様な地域課題に取り組むべく、授 業や交流事業などを実施してきました。国際教養大学でも、地域行事への学生派遣、授業 での地域調査、地方自治体からの委託による調査など、地域課題に取り組むため、さまざ まなレベルで地域と連携してきました。 授業においては、2013 年度から秋田県農山村の地域課題に取り組む「課題解決型学習 (Project-based Learning: PBL) 」として、地域環境論が開講されました。この PBL 授業 では、日本人学生と留学生の混成チームを編成し、秋田市雄和の集落でフィールドワーク やアクションリサーチを行い、地域課題を理解するとともに、課題解決に向けた提案をし ます。PBL 授業では、セメスターごとに履修学生や調査テーマが変わります。しかし地域 住民と担当教員と学生のつながりは、授業後も続きます。この人と人のつながりから、授 業以外での交流活動が生まれています。これらは、教育目標に基づいて、セメスターごと に完結する大学の授業では扱いきれない、中長期的な社会実践を含んでいます。したがっ て、PBL 授業をきっかけとする交流自体が、新たな教育機会や大学と地域の連携を生み出 す可能性を持っているのではないでしょうか。本報告書では、PBL 授業およびそこから派 生した地域交流をあわせて、フィールドワーク教育とし、大学教育や地域づくりにとって どのような可能性を有するのか考察します。 結びに、本報告書の作成にあたり、雄和地域住民のみなさま、国際教養大学学生および 教職員には、多くのご理解ご協力をいただきました。様々な関係者からの支援や理解なく して、地域社会でフィールドワーク教育を実施することは不可能です。本活動に関わる全 ての方々に、厚く御礼申し上げます。本報告書が、秋田の農山村に生きる人びとと本学関 係者の思いを未来につなぎ、大学と地域の連携による地域づくりの可能性を広げる一助に なればと心より願っております。 平成 27 年 5 月 椙本歩美 国際教養大学基盤教育 1 助教 目次 1.概要 (1)目的 ・・・3 (2)方法 ・・・5 2.結果 (1)PBL 授業+単発交流 -秋田市雄和新波地区「秋田の知恵袋ワークショップ」 ① 授業の成果と課題 ② 授業後の交流 ③ 考察 ・・・6 ・・・7 ・・・9 (2)PBL 授業+年間交流 -秋田市雄和萱ヶ沢地区「自治会準会員プロジェクト」 ① 授業の成果と課題 ・・・11 ② ③ 授業後の交流 考察 ・・・12 ・・・14 (3)まとめ ・・・15 3.関連資料 (1)学生作成パンフレット (2) 「こらぼ・らぼ」説明資料 ・・・16 ・・・17 (3)メディア等への掲載 (4)執筆・発表リスト (5)発表資料 ① 多文化社会研究会 ・・・18 ・・・19 ② ・・・20 第 21 回大学教育研究フォーラム 2 ・・・25 授業は、教室での学習(下調べ、課題 1.概要 文献、発表、ディスカッション、データ分 析)とフィールドワーク(計 5 日間)を交 (1)目的 本報告書は、国際教養大学で 2013 年度 互に行います。1-1 の通り、学生グループ から 2014 年度に開講した PBL 地域環境論 の学習テーマは多様です。テーマや計画は、 授業と、それから派生した地域交流を事例 授業前半に行う住民との意見交換をふまえ に、秋田農山村でのフィールドワーク教育 て学生が決定します。中間発表会で調査の の可能性について考察するものです。PBL 進捗状況を確認し、改善した後、地域活動 地域環境論(Project-based Learning に参加しながら調査を行うアクションリサ Community and Environment)授業は、 ーチを採用しています。最後に、報告会を これまで合計 4 回開講されました。1 セメ 開催し、学生の学びを地域関係者と共有し、 スター、約 3 ケ月半で完結します。 地域に還元することを心がけています。 この PBL 授業では、日本人学生と留学 授業の学習目標は、①調査のデザイン 生の混成グループを編成し、秋田の農山村 や方法を学ぶ、②グローバル/ナショナル の地域課題を調査します。大学での授業や /ローカルな事象のつながりを理解する力 グループ活動では、英語を用いますが、フ を養う、③批判的多角的な視点から地域が ィールドワークでは、日本語で情報を収集 抱える問題を理解する力を養う、④持続的 します。フィールドワーク中、日本人学生 な地域環境に向けた解決策を思考する力を は留学生の通訳をしながら、地域住民と留 養う、という 4 項目です。学習成果をみる 学生の橋渡しもします。多文化多言語 PBL と、学生は上記の目標をある程度達成して であることが、授業の最大の特徴です。 おり、とくに複雑な地域社会のあり方を現 場から思考する力を身につけていることが 時期 AIU 生 2013 5名 春 2013 6名 秋 2014 4名 春 2014 9名 秋 学習テーマ 分かります(授業報告書を参照)。他方、住 1名 地域の絆、経済活 民も、地域活動の一環として授業を受け入 (米国) 性化、環境保全 れる姿勢が見られます。 5名 農業政策、小学校 行動力やコミュニケーション力の向上 (米国) 統合、神社と祭典 といった点以外にも、学生の内省や社会的 留学生 6 名(台湾、 祭典の維持にお な作法獲得といった成長に地域の力が与え フランス、 る効果は大きいと言われています(仲野 ける住民と外部 米国、英国) 者の役割 2010) 。たとえば藤田(2011)は、大学と 3 名(米国、 マコモダケ栽培 地域の連携という教育機会により、学生が ブルネイ) 文献や教室で得た知識を現場で実態として と地域づくり 1-1.授業の履修状況 学び、さらに人間関係の重要性や人とのつ 出典.筆者作成 ながりを構築する必要性も学ぶことができ *AIU 生とは国際教養大学学生を指す ると指摘します。住民の考え方を学ぶこと 3 が、学生の視野を広げることにつながる点 ような学びの場があることで、教育効果を が、地域社会におけるフィールドワーク教 さらにあげることができるのではないでし 育の意義と言えます。ここで学生が、コミ ょうか。 ュニケーション力や課題発見、説明能力な PBL 地域環境論授業では、授業終了後 どを鍛えることにつながるため、キャリア も、大学と地域の交流を継続しています。 教育としても注目されています。さらに各 これは PBL 授業+交流事業で、より多様な 自の得意なものを持ち寄って何かをつくり フィールドワーク教育の機会を学生に提供 あげるポジティブさ、地域を比較する目を することができると考えるからです。本報 養う、将来の地域間交流の芽、学生が住民 告書は、大学と地域社会の双方にとってよ 意識のキーパーソンとなるなどの教育効果 り意味のある高等教育を目指して、PBL 授 もその理由とされています。 業と交流事業を組み合わせたフィールドワ しかしながら、セメスターごとに完結 ーク教育の実践を記録し、その可能性を検 する授業では、時間的な制約などから、深 討します。 く地域を理解することはできません。松本 (2013)は、PBL 授業の今後の課題に、学 【参考文献】 習の深化をあげています。すなわち、課題 椙本歩美編『PBL 地域環境論 2013 秋田 基盤型学習は、専門的な深みがないまま終 県秋田市新波で学ぶ地域社会 春』 、国 わることが尐なくないため、2 年次以降に 際教養大学、p.1-86、2014 年 椙本歩美編『PBL 地域環境論 2013 秋田 専門教育科目で得た知識や体験を活用しつ つ、学習を深化できる科目を設定する必要 県秋田市新波で学ぶ地域社会 秋』 、国 があると指摘されています。 際教養大学、p.1-104、2014 年 本 PBL 授業においても、学生が地域課 椙本歩美編『PBL 地域環境論 2014 秋田 題を考察し、解決策を発表することで止ま 県秋田市新波で学ぶ地域社会』 、国際教 り、それが有効か適切であるか検討するこ 養大学、p.1-94、2015 年 椙本歩美編『PBL 地域環境論 2014 秋田 とはできません。本来、地域づくりには長 い時間が必要で、住民の主体的な取り組み 県秋田市萱ケ沢で学ぶ地域社会』、国際 なくして解決は困難です。しかし、授業で 教養大学、p.1-110、2015 年 あるが故に、地域課題の解決に不可欠な継 仲野誠「地域学教育の当面の成果」 『地域学 論集』7(2) p.197-219、2010 年 続的な取り組み、中長期的な影響評価、地 域社会ダイナミクスの理解、内部者と外部 藤田正「地域に向き合う大学」柳原邦光他 者の相違と連携の可能性などの、地域づく 編『地域学入門』ミネルヴァ書房 りに本質的な部分を学生が理解でないとい p.279-297、2011 年 う限界があるのです。 松本茂「『問題基盤型学習』と『課題基盤型 秋田の農山村で PBL 授業を実施する 学習』の過去・現在・未来」、初年次教 ためには、授業だけでなく、授業以外で学 育学会編、 『初年次教育の現状と未来』、 生が自らの気づきを再検討し、実践できる 世界思想社 p.191-201、2013 年 4 域と大学の交流を行うことになりました。 (2)方法 その一環として、新波自治会役員の要請を 本報告書では、PBL 授業と交流事業を 受け、2015 年 2 月 7 日に「秋田の知恵袋ワ 組み合わせたフィールドワーク教育を検討 ークショップ」を開催しました。こうして します。具体的には、PBL 地域環境論授業 新波地区では、 「PBL+単発交流」というフ の成果と課題を明らかにしたうえで、授業 ィールドワーク教育が生まれました。 後の交流活動を記録し、その教育的効果と 他方、萱ケ沢地区では、2014 年度秋セ 今後の可能性を考察します。 メスターの授業成果報告会で、学生や教員 PBL 地域環境論授業は、2013 年度か の提案と住民の要望を受け、今後も PBL 授 ら 2014 年度春セメスターまでの 3 回、秋 業を実施するとともに、年間を通して学生 田市雄和の新波地区で行い、2014 年度秋セ が定期的に地域を訪問し、地域づくりに携 メスターからは近隣の萱ケ沢地区に場所を わることになりました。そのしくみとして、 移して実施しています(1-2)。新波地区と 自治会役員の提案から、地域づくりに関わ 萱ケ沢地区では、大学と地域の連携のあり る学生が、年間 1000 円程度の自治会費を納 方は異なっています。学生の主体的な学び めて自治会準会員(以下、学生会員)にな や継続性を考慮して、常に PBL 授業のデザ ることにしました。また教員と学生が、学 インを修正してきましたが、それらは地域 生と地域との連携を仲介するための中間組 社会との関係に基づく修正でもあります。 織を設立することになりました。こうして、 したがって授業後の交流のあり方も、地域 萱ケ沢地区では、 「PBL+年間交流」という によって異なる深化が見られるのです。 フィールドワーク教育が生まれました。 ここでは 2 事例における異なるフィー ルドワーク教育のあり方、学生の学びや地 域との関わり方、住民の教育への期待と関 わり方について記録します。PBL 授業の成 果と課題については、授業報告書をもとに しています。その後の実践については、自 治会と教員学生による話し合いの議事録、 参加学生の感想や作品を含む活動プロセス をもとにしています。本報告書を通して、 大学と地域の連携によるフィールドワーク 1-2.調査地の位置 教育の効果、課題、可能性についての多面 出典.萱ケ沢郷土史誌より作成 的な検討を行い、国際教養大学と雄和地域 の集落にとって、より効果的で持続的なフ 新波地区では、PBL 授業を 3 回実施し ィールドワーク教育のデザインを模索しま た後、双方の実施負担が大きいことから、 す。 授業を終了し、その後は、必要に応じて地 5 授業を継続するためには、大学と地域 を仲介してくれる人材、若い世代や女 2.結果 性の参加が必要。これにより、自治会 (1)PBL 授業+単発交流 -秋田市雄和新波地区 「秋田の知恵袋ワークショップ」 役員と教員の調整にかかる負担を軽減 し、地域に広く学習成果を還元できる。 これらの課題を改善するため、3 回目の 授業では新たに以下の点を修正しました。 ① 授業の成果と課題 学びの継承 2013 年度から PBL 地域環境論授業を 前回の学生レポートをまとめた授業報 開始するにあたり、本学と継続的に交流し 告書を課題文献とし、学生たちはそれ てきた新波地区を対象地に選定しました。 をふまえて地域を調査する。 新波地区はこれまで、運動会や祭典など地 学びの共有 域行事に学生を参加させたり、本学設立前 授業後に提出するワークシートに書か にあったミネソタ州立大学秋田校とも交流 れた学生の感想等を次回授業で紹介、 をしたりと、学生の受入れ経験が豊富だっ Moodle でフィールドノート等を共有。 たことが選定理由になっています。また郷 学びの協働 土史研究をする住民も複数おり、住民から 郷土史年表、住宅地図、昔の写真や映 地域の歴史や文化を学ぶことができます。 像を住民に提供してもらい、それをも PBL 授業開始前に、担当教員と新波自 とに学習を進める。フィールドワーク 治会役員で打ち合せを行い、受入れ体制を では住民が講師となる。 確認しました。また、セメスター終了後に 学びの還元 は、教員と自治会役員で振り返りを行い、 住民との意見交換、成果発表会、報告 次回への改善策を話し合いました。3 回目 書贈呈、ホームページを通して地域社 となる 2014 年度春セメスターの授業にあ 会に学びを還元する。 たり、教員は以下の課題を抱えていました。 学生の最終レポートから、多文化多言語 多文化多言語 PBL 授業のデザイン PBL 授業をするうえで、フィールドワーク 学生の自律性を向上するため、地域情 の重要性が明らかになりました。文献とフ 報の英語教材を増やし、日本人学生と ィールドを往復するなかで、学生たちは、 留学生の間の知識や情報の差を縮小す 「地域にとって本当の問題とは何か」を何 ること。1 セメスターで実施可能な学 度も問いました。文献や学生レポートと、 習課題を設定すること。 自ら地域で見聞きしたことを比較し、学生 数値化しにくい学びの評価方法 間で意見を交わすなかで、課題だけでなく 重要な学びである学習プロセスを確認 地域の資源や魅力にも注目するようになり する方法や自己評価を導入して、学習 ました。一般常識、先輩、自分自身の考え の質的側面を可視化すること。 を問い直し、新たな視点を獲得する学習プ 継続的な授業のための地域連携 ロセスは、批判的思考といえます。 6 また授業の最初と最後に行った自己評価 【参考資料】 でも、コミュニケーション、リーダーシッ 椙本歩美、「多文化多言語 PBL の成果と課 プ、分析力など、数値化しにくい 20 の能力 題」、第 21 回大学教育研究フォーラム について、平均してすべての能力が向上し 発表論文集、pp.216-217、2015 年 たとの回答を得られました。とくにリーダ 椙本歩美編、 『PBL 地域環境論 2013 秋田 ーシップとチームワークの伸び率は大きく 県秋田市新波で学ぶ地域社会 春』 、国 なりました。 際教養大学、p.1-86、2014 年 授業前の課題であった「継続的な授業の 椙本歩美編、 『PBL 地域環境論 2013 秋田 ための地域連携」について、3 回目の PBL 県秋田市新波で学ぶ地域社会 秋』 、国 授業では、フィールドワークでの調査を減 際教養大学、p.1-104、2014 年 らし、代わりに地域行事の参加を加えまし 椙本歩美編、 『PBL 地域環境論 2014 秋田 た。これにより学生は、1 つの地域行事を 県秋田市新波で学ぶ地域社会』 、国際教 グループごとに異なる視点から調査し、よ 養大学、p.1-94、2015 年 秋田魁新報 2014 年 5 月 27 日 り多面的に地域を理解することができまし た。しかし学生からは、準備時間が足りな 「住民と語らい活性化策探る」 いという指摘もありました。 この工夫により、住民からも調査協力の ② 負担が多尐軽減され、受入れやすくなった 授業後の交流 と感想がありました。地域行事への参加と 授業終了後、新波自治会役員から、冬 いう実践を取り入れ、アクションリサーチ 期の除雪に学生を派遣してもらえないかと を採用したことで、住民と教員の負担軽減 教員の相談がありました。とくに 1 人暮ら につながりました。学生の主体性を学習テ しの高齢者にとって自宅の除雪をするのが ーマの多様さで測るのではなく、1 つのテ 困難であり、人口減尐や高齢化にある新波 ーマを多様な視点で分析し、統合すること 地区では、地域課題のひとつです。行政や で全体として学びを深化させることが重要 民間に依頼し、手間賃等を支払えば、除雪 なのです。新たに学びの機会を提供しても は可能ですが、経済的負担が大きいそうで らうのではなく、行事のなかで授業を運営 す。そこで屋根からの落雪を畑に寄せる作 していく方が、継続的な地域連携ができる 業を学生にお願いしたい、というのが当初 と考えられます。 の相談でした。 しかしながら、授業協力が自治会にとっ 2014 年 12 月 19 日、自治会役員や除雪 て大きな負担となる点は変わらず、新波地 を依頼する住民と教員が話し合い、ワーク 区での PBL 授業は終了することになりま ショップという学習の一環として実施する した。今後は授業ではなく、地域行事への ことになりました。学生を単純な労働力と 学生派遣など地域と大学交流を単発で行い、 して期待するよりも、冬期のにぎわいを創 自治会が大学に申請して実施する既存の形 出したいという住民の希望もあり、単発の に戻すことになりました。 交流事業として実施することになりました。 7 ワークショップは、 「秋田の知恵袋」と名付 け、冬の暮らし(衣食住)の知恵を、学生 が住民から体験的に学ぶ内容です。 2015 年 2 月 7 日に、 「秋田の知恵袋ワー クショップ:第 1 回新波のおばあさんから 冬の暮らしを学ぶ」を開催しました(2-6)。 まず、 「住」の知恵として、住民から除雪の 方法を教えてもらい、住民と学生で 2 軒の 除雪を行いました(2-1,2-2)。その後、新波 自治会館に移動し、 「衣」の知恵として和裁 2-2. 除雪の集合写真 について(2-3)、 「食」の知恵として干し餅、 山菜の塩漬け、漬物など保存食について (2-4) 、住民が学生に説明しました。 参加した学生は、大学の公募に申し込ん だ 7 名(日本人 4 名、米国 1 名、台湾 2 名) でした。新波地区からは、 「住」の知恵者と して男性 7 名、 「衣」 「食」の知恵者として 女性 4 名が参加しました。学生たちは作業 をしながら、住民に冬の暮らしに関して質 問をし、情報を得ていました。台湾の留学 生は、母国の保存食との違いを住民に説明 するなど、国際交流にもなりました。 2-3. 農作業着の試着 2-1. 除雪の様子 2-4. 保存食の試食 8 また、住民の感想には、以下のような ものがありました。 いつも大変だと思っていた雪が学生の おかげで明るく楽しいものになった。 できれば、これをきっかけにして、将 来は、雪が多く降った時、学生に雪よ せをしに来てほしい。 【参考資料】 秋田魁新報 2015 年 2 月 8 日 2-5. ワークショップ参加者集合写真 「教養大生 ワークショップ終了後、教員と学生が話 雄和新波地区住民と交流 暮らしの『知恵』学ぶ」 し合い、学びをまとめたパンフレットを作 成することになりました。巻末の資料集の 通り、学生 1 名が 2 ページのパンフレット ③ を作成しました。ここには、衣食住の知恵 考察 上記の感想から、学生と住民ともワーク や参加者の感想が紹介されています。 ショップで得るものがあったと考えられま パンフレットは、今後、秋田の農山村と す。学生は地域社会に触れ、秋田の冬の暮 くに新波地区を訪れる学生が、事前に地域 らしを体験する機会を得ることができ、住 文化を知るための資料として作成しました。 民は地域課題の解消に向けたひとつの試行 後日、大学のホームページで公開するとと ができたと考えられます。 もに、印刷したものを、大学の事務局や新 単発の交流から教育効果を生み出すしく 波住民に配布して、広く活用してもらいた みとして、今回は参加学生によるパンフレ いと考えています。 ットの作成を行いました。学生の体験を他 パンフレットの学生の感想を抜粋します。 学生や留学生と共有することで、より多く 台湾には保存食や干した食べ物はほと の学生が秋田農山村への関心を深めるきっ んどないので、ワークショップで食べ かけになると考えます。またパンフレット たものは大変真新しく感じた(台湾)。 を地域にも配布すれば、住民と学生間で喜 雪かきは初めてだったが、とても楽し びや気づきを共有することできます。 1 回で完結する「秋田の知恵袋」ワーク むことができた。また挑戦したい(米 国) 。 ショップという形式は、状況や必要に応じ 馴染みのない雪国の生活について知る て開催できる柔軟性があり、準備にかかる ことができたのは、非常によい経験だ 地域と大学の負担も軽減できるため、地域 った。同じ日本でも死んでいる地域に と大学の連携によるフィールドワーク教育 よって文化や風習が異なるのは大変興 として汎用性が高いと考えられます。 味深い(日本) 。 9 2-6. 地域・大学への説明資料 2014 年度 CRESI プロジェクト 秋田の知恵袋ワークショップ 第1回 新波のおばあさんから冬の暮らしを学ぶ 【 概要および目的 】 秋田の暮らしの成り立ちや変化を研究する地域環境史プロジェクトの一環として、本 学学生が秋田県内の集落を訪問し、住民が持つ冬の衣食住に関する知恵や経験を学ぶ参 加型ワークショップを開催します。学生は、 (1)住民から暮らしの知恵を学び、地域の 理解を深めるとともに、 (2)サービスラーニング(地域活動の手伝いなど)を通して、 地域課題の解決に向けた取り組みを行います。ワークショップ後、活動記録を大学ホー ムページ等で紹介します。 【 場所 】 秋田市雄和新波地区、伊藤操宅・岡部ミネ宅および新波自治会館 【 時期 】 2 月 7 日(土)8 時半から 13 時 【 参加者 】 引率者:椙本歩美(基盤教育助教) 学生:7 名 【 スケジュール 】 8:30 大学出発 9:00~11:00 活動 1 「住」雪かきボランティア (住民による送迎) 伊藤操宅・岡部ミネ宅 知恵者:自治会役員 11:00~11:30 休憩 11:30~12:00 活動 2 「食」冬の保存食を食す 新波自治会館へ移動、着替え等 干し柿、漬物、揚げ餅 知恵者:伊藤操、岡部ミネ 12:00~12:30 活動 3 「衣」和裁の達人と出会う 袢纏、着物リフォーム 知恵者:伊藤操、佐藤ツギエ、種村満子 12:30 新波出発 (住民による送迎) 【 その他 】 住民の準備:送迎、除雪道具、安全指導員(3~4 名)、知恵者 学生の準備:防寒具、長靴、手袋、飲み物、タオル、着替え 大学の準備:学生ボランティア保険 10 する、大学内でマコモダケを直売するなど (2)PBL 授業+年間交流 -秋田市雄和萱ヶ沢地区 「学生自治会準会員プロジェクト」 の提案です。 この成果報告会とその後の懇親会におい て、学生教員と住民の間で、今後も PBL 授 業をするだけでなく、年間を通した交流を ① 授業の成果と課題 していこうという話になりました。授業で 2014 年度秋セメスターでは、秋田市雄 は、マコモダケ販売と萱ケ沢地区文化祭に 和の萱ケ沢地区をフィールドに PBL 授業 学生が参加しましたが、学生が地域を訪問 を行いました。これまでの授業実践をふま するだけで、にぎわいの創出につながった えて、 「マコモダケの 6 次産業化を通した地 と自治会役員は評価してくださったのです。 域づくり」という学習テーマにしぼり、学 学生が発表した地域課題と解決策のなかに 習しました。学生 12 名(日本人 9 名、留学 は、住民の感覚や地域の実情と乖離してい 生 3 名)が 3 グループに分かれ、それぞれ るものもありましたが、PBL 授業の実施に 異なる問いを設定して、萱ケ沢地区での 4 よって、大学と連携しながら地域づくりを 回のフィールドワークを含むアクションリ 行う可能性が、萱ケ沢地区住民と学生から サーチに取り組みました。 見出されたことは、授業の副次的効果とい 授業報告書にある通り、萱ケ沢地区での えます。 PBL 授業でも、学生たちは文献調査とフィ ールドワークを往復しながら、多角的な視 点で地域課題への理解を進めました。学生 の自己評価は、ほぼ全ての項目で能力が向 上したと回答しています。とくに、異文化 理解力、分析力、コミュニケーション力(話 す) 、問題発見力が、高評価になりました。 成果報告会や最終レポートで、学生たち はマコモダケ栽培を地域づくりにつなげる うえでの課題を明らかにし、多様な提案を 行いました。とくに、マコモダケの売り上 げ向上を図るため、まずは認知度の向上に 向けた情報発信やイベントの開催、販路拡 大にむけた加工商品の提案などがありまし た。3 つの学生グループに共通していた提 案として、国際教養大学との連携がありま 2-7. 萱ケ沢地区での PBL 授業 した。学生をアルバイトとして雇用する、 ※ JA 新あきた提供 農業の授業を開講して住民に講師をお願い 11 3 回行いました。ここで大枞を決定した後、 2015 年 4 月 5 日に自治会の全役員に対して、 教員と学生が説明を行いました。 このなかで、ある程度固定した学生メン バーが、定期的継続的に地域を訪問して活 動を行うという方向性が話し合われました。 活動内容については、①マコモダケの六次 産業化に向けた活動を継続すること、②今 後は収穫体験や販売だけでなく、栽培にも 2-7. 萱ケ沢地区文化祭への参加 学生が参加して、認知度向上にむけた活動 にも取り組むこと、③既存の地域行事に学 生が参加することなどの意見がありました。 さらに自治会副会長から、 「萱ヶ沢力を高 めるものにしたい。学生だけでなく、地区 の若い人がたに地域を覚えて欲しい。そん な機会にしたい」との話があり、学生が自 治会費を払い、自治会準会員として内部者 の立場で地域づくりに取り組む方法が提案 されました。 授業という限られた教育機会だけでなく、 2-8. PBL 授業の成果発表会 自治会準会員制度を使って、学生が住民と 同等の立場で地域づくりに携われることは、 【参考資料】 本当の意味での地域課題に取り組む教育と 椙本歩美編、 『PBL 地域環境論 2014 秋田 いえます。また自治会準会員になった学生 県秋田市萱ケ沢で学ぶ地域社会』、国際 が、2015 年度冬セメスターに開講する PBL 教養大学、p.1-110、2014 年 授業で、アシスタントとして参加してもら うなど、学生が仲介役として授業運営に携 わることも期待できます。 ② 新波地区での PBL 授業の課題にもあげ 授業後の交流 PBL 授業を履修した学生 12 名のうち 10 た通り、大学と地域の連携を続けるために 名は、授業終了後、帰国したり、1 年間の は、両者を仲介してくれる中間組織の存在 留学に行きました。そこで、教員と自治会 が必要になります(藤田 2011)。まして年 役員の間で、2015 年度の年間交流のしくみ 間を通しての交流を実現するためには、よ づくりについて話し合いました。萱ケ沢自 り多くの連絡調整が必要になります。さら 治会役員と教員の話し合いは、2014 年 12 に、新たな活動をする場合、予算を獲得す 月 11 日、2015 年 1 月 21 日、3 月 26 日の る必要もあります。 12 そこで、教員と学生が萱ケ沢地区と若者 6 月 7 日の萱ケ沢地区運動会で、学生や (主に国際教養大学の学生、留学生)をつ 留学生を公募して、そこから準会員を見出 なぐ任意団体「こらぼ・らぼ」を設立する すことにしています。その他、萱ケ沢の地 ことになりました。正式には、2015 年 4 月 域資源である、人・自然・文化を活用した 7 日の設立総会をもって、活動を開始しま 地域づくりに取り組むため、地域行事への した。代表は椙本歩美(基盤教育助教)、副 参加、野菜の直売、歴史や文化を知るワー 代表と監事は、本学学生が務めます。 クショップを計画しています。冬期は、PBL 2-9 に示したように、年間交流の実現の要 授業(秋田農村学)を実施します。 となる自治会準会員制度を実現するため、 様々な交流を企画運営するのが、こらぼ・ 時期 事業名 場所 らぼスタッフです。スタッフも自治会準会 4/5 自治会役員と話し合い 萱ケ沢 員になります。また運動会や文化祭など、 4/7 こらぼ・らぼ設立総会 国際教養大学 より多くの学生や留学生の参加が必要な場 5/6 マコモダケ定植 萱ケ沢 合には、大学事務局を通して参加学生を公 5/16 日枝神社祭典 萱ケ沢 募します。この学生は、こらぼ・らぼ活動 6/7 萱ケ沢地区運動会 萱ケ沢 のスポット参加になります。 7/5 野菜直売 遊学舎 8/1 戦争ワークショップ 萱ケ沢 9/27 野菜直売 遊学舎 10/11 野菜直売 遊学舎 10/18 秋田市場祭り 秋田市場 11/8 萱ケ沢文化祭 萱ケ沢 1/10 野菜直売 遊学舎 1月 PBL 授業フィールドワ 萱ケ沢 ーク 2-9. こらぼ・らぼメンバーシップ 2/7 野菜直売 遊学舎 2月 PBL 授業フィールドワ 萱ケ沢 ーク 3月 こらぼ・らぼ設立時の 2015 年度年間計画 PBL 授業成果発表会 2-10. は、2-10 の通りです。初年度は、PBL 教育 +年間交流のしくみづくりを目標に掲げて 国際教養大学 2015 年度の交流計画 【参考文献】 います。萱ケ沢地区での活動の軸は、学生 藤田正「地域に向き合う大学」柳原邦光他 や地域外の若者が自治会準会員になり、住 民と同様に地域づくりに取り組むことです。 こらぼ・らぼは、自治会準会員を募集した り、地域との調整を行うための仲介役です。 13 編『地域学入門』ミネルヴァ書房 p.279-297、2011 年 組み合わせて実施することにより、相互補 ③ 考察 完性が期待できます。授業では調査分析が 萱ケ沢地区におけるフィールドワーク教 学習の中心ですが、交流であれば授業の枞 育は、PBL 授業を契機として始まった住民 にとらわれることなく、学生がより主体的 と学生の年間交流です。PBL 授業を受け入 に地域と関わることができます。また PBL れるだけでも、地域の負担は尐なくないと 授業で学んだ知見を、学生が実践の場で活 考えられますが、萱ケ沢地区では大学との 用する機会もつくることができます。 連携を、自らの地域づくりに活用しようと さらに、年間交流をしている自治会準会 いう積極性と主体性がみられます。地域住 員やこらぼ・らぼスタッフの学生が、PBL 民に大学との連携の可能性を見出してもら 授業のフィールドワークにアシスタントと えたことは、PBL 授業における学生のアク して同行してもらうことも考えられます。 ションリサーチや提案が、地域にとって尐 これらの可能性は、今後の実践のなかで、 なからず意味あるものとして受け入れられ その成果が見えてきます。PBL 授業と年間 たからと考えられます。 交流の相互補完性については、今後の調査 ただし、ほとんどの履修学生が、留学や 課題にしたいと考えています。 帰国によって、実際に交流活動を実現する ことはできなかったため、担当教員が自治 会役員と話し合って準備することになりま した。地域課題に取り組む PBL 授業は本来、 1 セメスターで完了するよりも、1 年程度を かけてじっくり学習できるような科目にす るべきだと考えます。しかし本学の履修シ ステム上、 それは困難なため、 結果的に PBL 授業+年間交流というデザインになりまし た。 また、地域にとっても、目的やスケジュ ールが決まっており、手間のかかる授業よ りも、交流の方か受け入れやすいかもしれ ません。そこで、年間交流を実現するため に必要な中間組織として、教員と学生が「こ らぼ・らぼ」をつくりました。これにより、 年間交流を推進するとともに、授業を履修 できなかった学生も含め、より多くの学生 が地域と出会い、地域を学ぶ機会を提供し たいと考えています。 ひとつの地域で、PBL 授業と年間交流を 14 (3)まとめ ーク教育の可能性について追求していきた いと考えています。 本報告書では、PBL 授業と交流事業を組 PBL 授業の限界は、地域課題を知るため み合わせたフィールドワーク教育のデザイ の入門編で終わってしまったり、課題解決 ンや可能性について考察しました。具体的 に向けた提案をしても、その有効性や適切 には、秋田市雄和の新波地区と萱ケ沢地区 さを検証できないままになってしまうこと で実施した、PBL 地域環境論授業の成果と であると報告者は考えてきました。授業と 課題を明らかにしたうえで、授業後の交流 しては仕方がない面もあります。しかしな 活動を記録しました。 がら、本来、時間をかけ、多様な意見を調 学生が地域課題を学び、解決策について 整しながら、住民主体で行う地域づくりの 思考する PBL 授業は、国内外を問わず、 複雑さや大変さを、学生が理解できず、か 様々に行われています。しかし、実際に授 えって学習成果が実態と乖離してしまえば、 業を組み立て、継続していくために、教員 結局、教育目標を達成できなかったといえ と住民が担う負担も尐なくありません。ま るのではないでしょうか。 た、学生が地域を体験的に学ぶことはでき 大学の地域貢献への社会的要請が高まる ても、理解を深めるに至らない場合も見ら なかで、それぞれの大学のミッションや特 れます。他大学では、PBL 授業の専門性な 色、科目の専門性、そして地域社会の状況 どを確保するため、1~2 年間の中期事業と に合わせて、PBL 授業のデザインも工夫す して取り組むケースも見られます。各大学 る必要があります。本報告書は、その試行 の状況にあわせて、PBL 授業を工夫する必 錯誤を記録したものであり、途中経過を報 要があるのです。 告したものです。これからも引き続き、地 国際教養大学では 1 年間の留学が卒業要 域と大学にとって意味のある、そして学生 件となっており、短期留学生も多く学んで が知識や経験を増やし、視野を広げられる います。この状況に即して、より継続的で ようなフィールドワーク教育を模索してい 質の高い学びを実現するため、PBL 授業+ きたいと考えています。みなさまから忌憚 交流事業というフィールドワーク教育のデ ないご意見をいただければ幸いです。 ザインにたどり着きました。2 つの事例と も、PBL 授業を契機として、住民から交流 を求める声があがったことは、PBL 授業の 副次的効果として評価できると考えます。 授業終了後、交流活動を行う、また準備 したのは、2015 年 1 月から 3 月です。した がって、本報告書のなかで、交流事業の成 果や、PBL 授業への効果などを検討するこ とはできませんでした。今後の研究課題と して、PBL 授業+交流というフィールドワ 15 3.関連資料 (1)学生作成パンフレット 作成:小堺なお(国際教養大学学生) 16 (2)「こらぼ・らぼ」説明資料 ※ 暫定版 作成:椙本歩美(国際教養大学教員) Q&A Q. 「こらぼ・らぼ」の意味は何ですか? A. 地域内外の多様な人びとが協働'コラボレーション(して、地域づくり をするための、様々な手法や活動を生み出し、協働の可能性を追 求する組織'研究所(になろうという思いをこめた名称です。 Q. 参加資格はありますか? A. 特にありません。趣旨に賛同してくださる方であれば、どなたでもご 参加いただけます。ただし、萱ケ沢地区を大切に思い、地域住民 の考えを尊重しながら、主体的に活動できることが前提になります。 Q. 会費はありますか? A. こらぼ・らぼの入会費、年会費は不要です。ただし、自治会準会員 になる場合は、年会費1000円が必要になります。 6 17 (3)メディア等への掲載 秋田魁新報 2014 年 5 月 27 日 秋田魁新報 2015 年 2 月 8 日 「住民と語らい活性化策探る」 「教養大生 雄和新波地区住民と交流 らしの『知恵』学ぶ」 秋田魁新報 2014 年 9 月 20 日 「水とともに 116 ―マコモダケ 用、産地化図る 水田活 留学生らもPRに一肌」 秋田魁新報 2014 年 11 月 5 日 「人口減社会を生きる 地域社会維持へ危 機感」 秋田魁新報 2014 年 11 月 11 日 「教養大生、児童と交流 大正寺地区の歴 史学ぶ」 秋田魁新報 2014 年 11 月 14 日 「教養大生萱ヶ沢集落と交流 心に触れ視 野広がる」 秋田魁新報 2014 年 12 月 9 日 「マコモダケで活性化を ―教養大の学生 十二人認知度向上へ提言」 秋田市立大正寺小学校校報ふるさと 263 号 2014 年 11 月 「国際教養大学との交流学習 11 月 7 日 (金) 」 JA新あきた広報誌いぶき vol.189 2014 年 12 月号 「国際教養大学の学生と交流を深めマコモ ダケを一緒にPR」 読売新聞 2015 年 1 月 1 日 「気づきが秋田導く」 18 暮 (4)執筆・発表リスト Cultural PBL Workshop 2014, Akita View 【論文】 Hotel, January 11th, 2014 椙本歩美、 「多文化多言語 PBL の成果と課 題」 、第 21 回大学教育研究フォーラム発表 椙本歩美、 「国際教養大学の留学生の受入れ 論文集、pp.216-217、2015 年 体制と PBL 授業の展開」 、多文化社会研究 会、大東文化大学大東文化会館、2014 年 5 月 31 日 【授業報告書】 椙本歩美編、 『PBL 地域環境論 2013 秋田 県秋田市新波で学ぶ地域社会 春』 、平成 椙本歩美、 「多文化多言語プロジェクト型学 23 年度国際化拠点整備事業(文部科学省) 習の実践報告」、第 3 期 MOST フェローシ 大学の世界展開力事業報告書、公立大学法 ップ合宿、京都大学吉田和泉殿、2014 年 8 人国際教養大学、p.1-86、2014 年 月 20 日 椙本歩美編、 『PBL 地域環境論 2013 秋田 椙本歩美、「多文化多言語 PBL 授業の成果 県秋田市新波で学ぶ地域社会 秋』 、平成 と課題」、第 3 期 MOST フェローシップ金 23 年度国際化拠点整備事業(文部科学省) 沢合宿、金沢星稜短期大学、2015 年 2 月 1 大学の世界展開力事業報告書、公立大学法 日 人国際教養大学、p.1-104、2014 年 椙本歩美、「多文化多言語 PBL の成果と課 椙本歩美編、 『PBL 地域環境論 2014 秋田 題」、第 21 回大学教育研究フォーラム、分 県秋田市新波で学ぶ地域社会』 、平成 23 年 科会 10、京都大学吉田南総合館、2015 年 3 度国際化拠点整備事業(文部科学省)大学 月 14 日 の世界展開力事業報告書、公立大学法人国 際教養大学、p.1-94、2015 年 椙本歩美編、 『PBL 地域環境論 2014 秋田 県秋田市萱ケ沢で学ぶ地域社会』 、平成 23 年度国際化拠点整備事業(文部科学省)大 学の世界展開力事業報告書、公立大学法人 国際教養大学、p.1-110、2015 年 【口頭発表】 Ayumi Sugimoto and Sean Hollander, “PBL Learning Result from Community and Environment (INT231-1) in Spring and Fall 2013,” The Japan-US Cross 19 (5)発表資料 ① 多文化社会研究会 2014 年 5 月 31 日 これって本当? すべて英語で授業するの? 就職率100% ? 学生は英語 使えるの? Yes じゃあ 留学生も多いの? 外国人教員 多いらしいね? 1 4 国際教養大学的 多文化共生キャンパスづくり 数字で見ると・・・確かに すべて英語で授業するの? 就職率100% ほぼ100です ? 留学生じゃあ 約160人 留学生も多いの? 5人に1人 提携校 44カ国 160大学 2 自己紹介 学生は英語 留学前TOEFL550 使えるの? 1年次 EAP 外国人教員 外国人教員 56.2% 多いらしいね? 出身 16の国と地域 日本、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーラン ド、韓国、中国、ロシア、香港、ポーランド、英国、 アイルランド、内蒙古、スペイン、台湾、タイ 5 さらに・・・ 秋田 フィリピン タルラック州 Yes! 尐人数授業 1クラス平均学生数17人 '学部生870人、大学院生52人、1学年175人( 1年間の海外留学が義務 '交換留学制度なので授業料は相互免除、単位互換( 1年次の寮生活が義務 '学内居住率90%、留学生とルームメート( 図書館24時間開館 東京 3 6 20 Entrance to Exit 入ってからが大変 町内運動会 専門教養 Basic Education English for Academic Purposes フキ刈り 3年次に1年間 海外へ! Global Business 英語基礎 社会科学 芸術・人文科学 数学・自然科学 学際研究 世界の言語 保健体育 コンピュータ EAP 3 EAP 2 EAP 1 1年 卒 業 留学 稲刈り体験 Global Studies 2年 高校生とお茶会 3~4年 留学生'1年間~数週間( =3年次の学生 留学生なしに成立しない大学! 8 11 角館観光キャンペーン 留学生数 料理教室'5大学連携( 250 220 Inbound International Students Middle East 1 202 Africa 5 4 200 2 3 Oceania 46 161 Asia 3 145 53 Europe 150 161 3 10 10 North & South America 114 46 27 7 44 79 48 100 70 1 76 41 36 42 48 2 29 3 22 7 8 2004 14 31 3 2005 North & South America Canada 4 Mexico 5 USA 78 26 76 87 94 66 56 15 23 14 0 34 36 50 40 20 2006 Europe Czech Republic 3 Denmark 3 Finland 5 France 11 Germany 5 2007 Latvia 2 Lithuania 4 Netherlands 6 Norway 18 Poland 1 Portugal 1 2008 Sweden 4 Romania 1 Russia 1 UK 4 2009 2010 Oceania Australia 4 New Zealand 1 Middle East Lebanon 1 2011 Asia Brunei 6 Hong Kong 5 Korea 2 Mongolia 2 2012 Singapore 7 Taiwan 22 Thailand 2 2013 Africa Egypt 1 Morocco 1 ヤマハゲ 9 留学生受入れ 小学校交流 12 ウワサは本当です 26カ国 167名(2014年4月) GPA 科目コード 日本語教育 春秋2回入学式(留学生も名前呼ばれる) サークル 大学提供イベント 大学祭 年間200以上 バストリップ 多言語多文化学習 「極限」の環境 Yes!!! 留学生なくして 成立しない 角館花見、能・歌舞伎、竿灯祭り、なまはげ祭り 地域交流 運動会、田植え・稲刈り、フキ刈り、ヤマハゲ、サンタクロース 小中学校訪問、秋田県民に英語教室etc… 学生は勉強熱心 外国人教職員なくして 成立しない 秋田でないと成立しない 10 13 21 Tow Campuses! Field 秋田市 新波地区 AIU Discussion, Analysis 秋田だからこそ・・・ 18 15 秋田県 日本一の人口減尐 男性 学生×秋田×PBL 女性 地域環境論 Age 1970 1940 2010 秋田県の人口ピラミッド 内容:地域環境の変遷を調査し、地域性をふまえた持続的な地域のあり方を考察 【平成22年】 '年齢( 100歳以上 95 ~ 99 歳以上 90 ~ 65 94 85 ~ 89 80 ~ 84 75 ~ 79 70 ~ 74 65 ~ 69 60 ~ 64 55 ~ 59 50 ~ 54 45 ~ 49 40 ~ 45 15-65歳 35 ~ 39 30 ~ 34 25 ~ 29 20 ~ 24 15 ~ 19 10 ~ 14 5 ~ 15歳以下 9 0 ~ 4 80000 目的:地域社会の課題を複眼的な視点から理解する力を養う 29.6% 特徴: 日本人・留学生混成チーム 学生が調査テーマや方法全般を考える 教員は課題など授業のデザイン・指導 地域住民は特別講師として講義 調査法、農村社会論、文明論、社会技術論 Moodle, DropBox プレゼンテーション、ディスカッション中心 フィールドワーク'月1回、計6日間( 学生成果発表会 59.0% 11.4% 40000 0 40000 80000 '単位:人( 合計: 1,035,000 1,241,376 1,085,997 秋田県統計局 16 19 Project-Based Learning:PBL 学習プロセス 課題基盤型学習 地域環境論 フランス 日本'秋田( 日本'北海道( 台湾 Goal 教室 • 課題文献 • グループディスカッション フィールドワーク • 調査 • 体験学習 日本'埼玉( Useful knowledge Evaluation Presentation Feedback 台湾 Action Research 日本'東京(・ナイジェリア フランス 学生のインタビュー調査 7 アメリカ Analysis W11: Field Work イギリス Research Data W6: Field Work Start Plan W14:Presentation W12-13: Discussion W10:Midterm Presentation W7-9: Discussion Goal W3: Workshop Preparation 17 22 W1-5: Research methods Plan 20 これまでの履修生 今回のプロジェクト 本学学生 留学生 グループ課題 2013年春 5人 1人'米国( 地域の絆、経済活性、 環境ビジネス 2013年秋 6人 5人'米国( 農業縮小、小学校統合、 神社と祭り 2014年春 4人 To maintain Arawa Village Insiders: enhancing community ties 6人'台湾、フランス、 持続的な地域づくりにおける内 米国、英国( 部者と外部者の役割 Outsiders: attracting visitors Aranami shrine festival (esp. Bonden) Theme: To maintain Arawa community by enhancing community ties and attracting outsiders using traditional culture 地域の祭りに参加 コミュニティ マッピング 小学校英語活動の参加 21 24 2013年春 新波神社の祭典&梵天奉納 1. Workshop 5. Festival 2. Farming, Mapping, Local Lecturers 4. Guest Speaker Interview 3. Farming Interview 25 22 2013年秋 秋田魁新報 2014年5月27日 留学生'米国( 「人口減が進む中、住民の思いを聞く ことができた。集落と大学が交流を深 めることも活性化につながると思う。 祭りには仲間を誘って参加したい」 1. Self-introduction, Lectures, Arawa walk, Farm work etc… 自治会長 「学生と語らうことは、住民にとっても 勉強になる。青年会と協力して、楽し みながら盛り上げてほしい」 前自治会長 「いつか世界平和につながる・・・」 2. Data gathering 1’. Key Informant Interview 26 23 23 これまでの結果 • 学生の自律性 知識を得る → 探す、見つける、使う • 異文化間コミュニケーション 出身地、世代、専門、宗教 コテージでの合宿'温泉、自炊( • プロセス評価 ワークシート、フィールドノート、中間発表会 27 留学生がいるからこそ 課題設定の仕方 日本人学生だけでは選びにくい宗教 批判的思考 人口減は問題? 世代間交流は促進すべき? 比較対象/多角的視点 多様な背景 日本・地域は特殊なのか?自分は一般的か? ディスカッション力 28 学生と地域住民の出会い 下駄箱で始まり掃除機で終わる はっぴから日本の作法を知る 飲み会で宗教を知る 突然のバーベキュー 引き戸から秋田の未来を語る 29 24 ② 第 21 回大学教育研究フォーラム 2015 年 3 月 14 日 第21回大学教育研究フォーラム 2015年3月14日 授業概要 Project-Based Learning 地域環境論 秋田農村の地域課題と解決策を考える 多文化多言語PBLの成果と課題 学生'2014年春( 日本人学生4名、留学生6名'台湾2、フランス2、アメリカ1、イギリス1( 2グループに分かれて学習 2~4年生、専攻多様 解決志向ではない 椙本歩美 国際教養大学基盤教育 第3期MOSTフェロー 学習目標 分析プロセス重視 1.調査デザイン・方法を学ぶ 2.グローバル・ナショナル・ローカルのつながりを理解する 3.批判的多角的な視点で地域を理解する 4.持続的な地域環境に向けた解決策を思考する 1 PBL 秋田農村の課題と解決策 地域環境論 地域環境の持続性に必要なものは? 学習プロセス 4 ゴール 【フィールド3】アクションリ サーチ'新波神社祭典、梵天 評価 奉納、インタビュー、アンケー ト、撮影( 成果発表会 分析 【教室】 課題文献、発表、ディ スカッション、データ分 析、中間発表会 中間発表会 調査・実践 計画・準備 スタート 準備・調査法 【フィールド2】 下調べ 町歩き、神社訪問、イン タビュー、梵天練習 課題設定 【フィールド1】 ワークショップ 2 5 秋田で学ぶ意味 式を成立させるには? 解'効果・成果(は? 人口減尐率、高齢化率が最も高い県 ' 日学生+ 留学生 (×' 秋田 + 課題 解決 ( 自分の位置 秋田県人口ピラミッド 読売新聞2015年1月1日より 3 6 25 1-'2( グループ学習をつなぐ 教員にとっての課題 調査テーマ:地域の伝統行事'新波神社祭典の梵天奉納( を事例に、地域社会の持続性を考える 1.授業デザイン 2.評価方法 現実的な学習課題 地域の英語教材 数値化しにくい学習成果 プロセスの可視化 グループ1 外部者の役割 グループ2 住民の役割 3.地域連携 中間組織/仲介者 不在 会えない住民 住民と教員の負担 地域環境の持続性に必要なものは何か 7 10 工夫1.地域行事の事例に絞る 工夫2.学びの継承と共有 神社祭典の梵天奉納 2‐'1( 学生レポートから プロブレムマップ作成 • • • • 地域像を事前に把握 ゴールをイメージできる 住民も会話しやすい 学生レポートを問い直す • ローカルとグローバルの つながり 8 11 1‐'1( 調査からアクションリサーチへ 2-'2( 学習記録の共有 実践+調査 • 計画 • 学生10名を招待 下調べ:ファクトシート 調査:フィールドノート 授業:ワークシート 学生募集、オリエンテーション、 ボランティア保険、引率、アンケート • • • • • 学生・住民でふりかえり 9 Moodleで共有 言語の壁 緩和 学生の学び合い プロセス把握 12 26 成果つづき 工夫3.自己評価 • 地域が主体、外部者は限界があるため、 まず地域の声を聞くべき I had to change my perception and my reasoning. We had to understand what do they wanted to do for their community and also and mainly what do they really needed to make it thrive. '仏国/3年生/女子a( • 将来、自分の地域をもっと学び、貢献したい Through this course, I wanted to know Akita more detail academically because I thought it is responsibility for me, living for long time in Akita.…It is seems that there is nothing special but I like my hometown so I want to solve the depopulation and get back the spark to my hometown.'日本・秋田/3年生/女( • 地域の事象は国が違っても共通する Furthermore, when I was living in England I developed a strong interest in the influence of the current economic system on small towns and individual enterprises. When I came to Japan I found that such problems were extremely relevant here and my interest developed further. In my opinion, the influence of capitalist economic policies (in Japan and on a global scale) was extremely apparent in Arawa. Strolling down the shopping street, the amount of closed businesses we saw was distressing.'英国/4年生/女子( 13 成果:学生の学び'学生レポートより( 16 今後の課題 • 学生レポートでプロブレムマップ作成の有効性 • • • • • • Unlike typical courses, this Project-based Learning course is very different and doesn’t bring the same knowledge and experiences. We had the luck to work on a concrete problem, a concrete research question. Since the early beginning, thanks to the previous researches made, we globally understood what the main purpose of this class was. The evolving nature of our research and understanding of the subject allowed us to feel involved in this class.'仏国/4年生/女a( Firstly, this course has helped me to develop practical problem solving skills. From the first lesson, where we used a problem tree to understand the problems in Arawa and how they were linked together, I realized that I would be using a different set of skills in this class compared to classes I had taken before.'英国/4年生/女( 郷土史誌を英訳 学年と留学生比率を上げる ファクトシートの活用 能力自己評価と学習達成度は区別 調査地の継続性 授業以外の交流 • 多様な学生相互の学び Since we need to find out the way to solve the problem, we spent a lot of time meeting in group, expressing what we thought about the topic. Coming from different countries, we shared our opinion from different aspect of perspectives and even diminished misunderstanding via our communication. '台湾/3年生/女子a( 14 17 成果つづき つづきは… • 問題を問い直す However, as we carried out our research, we found out that our focus might not be a main issue in Arawa; when we conducted a survey, 100% respondents to our questionnaire answered that they already have strong enough community ties.'日本/3年生/男( • MOST スナップショット • 地域は多様で複雑 https://most-keep.jp/keep25/toolkit/html/snapshot.php?id=206124901032192 I frequently confronted the situation where young people seemed hesitant to say something about Arawa in public especially in the case that their opinion seems different from what older people tend to have. …. This remark made us feel like there was a varied level of motivation among the residents in Arawa.'日本/3年生/男( • 大学の授業ホームページ http://web.aiu.ac.jp/icpt/pbl/int231 • 課題を見つけるのは難しく、解決は時間を要し さらに難しい • 授業報告書 However, the problems in Arawa were not ones that could be solved easily. In fact, it was extremely difficult to work out what the main problems were, let alone to consider the solution. Although our group initially based our research on the issue of weak community ties in Arawa, as we continued our project we came to realize that this was not at all the main issue facing the town. This was an important lesson for me as I realized that a real project is not at all like an essay question, in fact, you may have to change the direction of your ideas many times before the thesis works. 15 '英国/4年生/女子( http://web.aiu.ac.jp/icpt/pbl/onlinejournal 18 27
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