演劇教師と元不登校生徒が演劇活動を通じて 成長した軌跡を描く

巻 頭 イン タビュー | ミュー ジ カ ル「 赤 い 日 々 の 記 憶 」
特 集 1 | カリヤ
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劇団ポプラ ミュージカル﹁赤い日々の記憶﹂
原作・兵藤友彦 演出・木島 恭 巻頭インタビュー
演劇教師と元不登校生徒が演劇活動を通じて
高 校 教 師 と 不 登 校 経 験の あ る 生 徒 た ち が 高 校
演 劇 全 国 大 会 を 目 指 す 様 子 を 描いた、 刈 谷 東
高校の兵 藤友彦 先生によるノンフィクション﹃ 今、
ここにあなたといること ﹄を 元にしたミュージカ
ルが、この 夏 アイリスで上 演 されます。 見 た 目
ちょっとアウトローだけどどこか人 情 深い、 原 作
の 兵 藤 先 生 と 演 出の 木 島 恭 さん︵ 劇 団 ポプラ︶
に、自 身の創作から作品のテーマ、不 登校まで、
あれこれ語っていただきました。
兵藤﹁不登校ってそんな特殊なテーマじゃな
いと思う。﹂
年前に劇団ポプラが上演したミュージカル
木島﹁僕は不登校でしたよ。
﹂
――
﹃今、ここにあなたといること﹄を、今回﹃赤い日々
る訳ですが、ミュージカル化を最初にお聞きした
の記 憶 ﹄とタイトルを変えて中 身もリメイクされ
時はいかがでした?
兵藤 : 自分が生徒たちと取り組んできたことが
舞台化されるのは嬉しかったですよ。
――実際の舞台を観た感想は?
兵 藤 : 役 者 達が本 当に一生 懸 命 役になりきって
た。 真 摯に原 作の内 容 を 受け止めてくれてるな
と思いました。
――原作の中で、兵藤先生が書かれた脚本を生
徒が批判するシーンがあります。当事者でないの
て同様のわだかまりは無かったですか?
に何が分かるの? と。 舞 台 化されたものに対し
兵藤 : これはエンターテイメントとして成立して
ネルギーを舞台上で表現できればと思ってます。
兵藤 : 不登校の子たちって、生きてる実感みた
いなものにすごくこだわるの。そういう実感を表
した色なんだよね。具体的に言えば血液だけど、
身体とか生命とかに繋がる色でもある。もっと言
と は あ る と 思 う け ど、
かに 感 動 するというこ
木島 : 劇場って、見知らぬ人と隣同士で一つのモ
に来て鑑賞する価値ってどんなものだと思いますか?
―― こういう施設なので聞くんですが、実際に劇場
欲しいんです。
たプロセスの記録だから、その大切さをぜひ観て
えて生 徒と向き合う事で生きる実 感を引き出し
て欲しいと思ってて。なぜかと言うと、困難を越
うとこの舞 台は、 先 生や親 御さんたちに特に来
プロの演劇はまた違う感動かな。
んなパソコンだったりスマホだったり、一人だけで
兵 藤 : 僕は昔ピーター・ ブルックの舞 台が名 古
8/28(金) 1 回目 13:00 ∼ 2 回目 18:30 ∼
ノを観るでしょ? それが価値だと思います。今み
兵藤﹁困難を越えて生徒と向き合ったプロ
セスを観て欲しい。﹂
木島﹁今の時 代、 見 知らぬ人と一つの作 品
を共有するっていうのが重要。﹂
成長した軌跡を描くミュージカル
いる もの だからそ れは
無かったね。 僕 が生 徒
と創る芝 居は、 実 際に
元 不 登 校の生 徒と 創っ
ている 訳 で、 お 客 さん
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ミュージカル「赤い日々の記憶」
木島 : そうだね、あらゆる手法を使ってその状
屋に来た時があって観たの。椅子に座るとすぐ隣
体 験するものが多いじゃない? そうではなくて、
なみに「不登校」っていうテーマが特別視されがち
りの人なんか気になるじゃない? そんな感じで横
フランス料理みたいなもので(笑)、一方兵藤さん
だけど、 僕はそんな特 殊なものではないと思う。
を気にしながら開演まで待ってたんだけど、いざ
見知らぬ人と一つの作品を共有するっていうのが、
何か簡単なきっかけで不登校やひきこもりに誰で
始まると舞台と自分が繋がってく様な気がしたん
公共施設として重要な機能だと思う。
も成りうる。その意味で日常の中で引っかかりを
だよね。舞台と自分だけがある、みたいな意識の
兵藤 : そうそう、僕のはまさに刺し身(笑)
。ち
持っている人にとって普遍的なテーマです。
フォーカスがされて。そういう作品を劇場では観
の方は素材の良さをそのまま出す。
校に行かないとか、そういうことは無かったけど、
たいよね。今度の「赤い日々の記憶」がそういう作
木島 : 僕は不登校でしたよ。ただね、一个月も学
何となく行きたくなくて、休み休み行ってた(笑)。
品になることを期待してます。
~」の「赤」
って、何を象
―― 最後に、「赤い日々
徴してるんでしょうか?
木 島 : 僕 は 怒 りや 衝
動の 色 だと 思ったんで
す。生きていく上でのプ
レッシャーに抵 抗してい
く 衝 動 ね。 そ ういうエ
INFOR MATION
況を描き出すからね。 素 材を徹 底 的に調 理する
はその克 服の過 程 なん
右:木島 恭(きじま きょう)
1949年島根県出身。演劇集団
「銅羅」
演出部に入団。その後、木山事務所
演出部に移籍し、「はだしのゲン」で、
東京都優秀児童演劇賞を受賞。
ニュー
ヨーク公演も成功させた。劇団ポプラ
ではミュージカル作品すべての脚本・
演出に携わる。
左:兵藤友彦(ひょうどう ともひこ)
1964年愛知県出身。高校教諭。
「Making of『赤い日々の記憶』」で
全国高等学校演劇大会出場。以来、
10年間で 3度定時制の刈谷東高校演
劇部を全国大会に導く。文部科学大
臣賞、愛知県芸術文化奨励賞、愛
知県教育文化奨励賞など受賞多数。
兵 藤 : 木 島 さん そ れきっと 不 登 校 じゃないよ
学校に矛先が向かなかったタイプだね。
( 笑 )! エネルギーは有 り余ってるんだけど 単に
木 島 : そうかもね( 笑 )。 社 会 人には絶 対になれ
劇の道に進んだけど、
結局稽古中は一緒なんだよね。
ないと思った。毎日同じ時間に通勤とか。それで演
一个月毎日同じ時間に稽古に行くんだから(笑)
。
兵藤:いや、稽古は一个月で済むけど社会人はずっ
とそれを続けるんだから全然違う(笑)!
今回の公演では関連イベントも沢山あります。詳しくはチラシやアイリスの WEB をご覧ください。
教育に関する講座や公演当日の演劇ワークショップ、バックステージツアーを予定しています。
公演担当 O の karitter
!
大ホール
一般:¥2,000 高校生以下:¥1,000
(全席指定・税込)
※未就学児の入場は出来ません。
木島 恭/脚本・作詞:大谷美智浩
岡田基哉、鳥越脩平、中島達哉、照井紀子他
兵藤友彦(刈谷東高等学校 教諭)
「今、ここにあなたといること」
(角川学芸出版)
「Making of『赤い日々の記憶』」
(季刊高校演劇)
好評発売中